藤丸立香はまだ知らないまだ知らないは今夜まで
「竹中教授! ちょっと質問があって……後で研究室に行っても大丈夫ですか?」
「あぁ、君か。熱心なのは構わないが、足繁く俺を訪ねたところでレポートがお粗末であれば単位はやらないぞ。卒論も然りだ」
「教授、そんなこと言うから皆に用事があっても研究室に行きづらいって言われちゃうんですよ」
「俺の研究室は学生の遊び場ではない。人が来ない方が都合が良いに決まっているだろう!」
彼はどうして教授なんて仕事に就いているのだろう。
デンマーク語専攻、文学ゼミ。私が今苦戦しているのはデンマーク語の書物の翻訳てで、分からないことがあるとたびたび研究室を訪ねている。
なかなか癖のある教授は、それでも毎度訪ねるたびに丁寧に質問に答えてサポートしてくれる。「仕事だから」と言い訳する割には他のゼミの教授と比べると手厚いサポートに、無理のないスケジュール管理。
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