Rhea_season
DONEディミレト短編。なにも致していませんがBLなおはなしとして綴ってますので、苦手なかたはご注意ください。(同じ内容を支部にも載せてます)
或日 扉が軽く叩かれ、低く整った声が届く。
「猊下、そろそろ参りましょうか」
ベレトは小さく瞬きをして、話し相手であるディミトリから視線を外し、扉越しに顔を覗かせたセテスに頷いた。
「ああ、もうそんな時間か」
「ええ、割と時間が押してます」
返された声にはわずかばかり焦りの色が浮かんでいたが、セテスのいつもの律儀さと、それでも最後までこちらの時間を尊重して待ってくれている優しさを感じて、ベレトはわずかに微笑を浮かべた。
楽しい時間ほど、過ぎるのは早い。そんなあたりまえの事実に、胸の奥で名残惜しさが滲む。
「すまない。今日のところはこのあたりで。…また、帰る前に立ち寄るよ。無理のない程度に執務をするんだぞ、ディミトリ」
2319「猊下、そろそろ参りましょうか」
ベレトは小さく瞬きをして、話し相手であるディミトリから視線を外し、扉越しに顔を覗かせたセテスに頷いた。
「ああ、もうそんな時間か」
「ええ、割と時間が押してます」
返された声にはわずかばかり焦りの色が浮かんでいたが、セテスのいつもの律儀さと、それでも最後までこちらの時間を尊重して待ってくれている優しさを感じて、ベレトはわずかに微笑を浮かべた。
楽しい時間ほど、過ぎるのは早い。そんなあたりまえの事実に、胸の奥で名残惜しさが滲む。
「すまない。今日のところはこのあたりで。…また、帰る前に立ち寄るよ。無理のない程度に執務をするんだぞ、ディミトリ」
針🐝
TRAINING1個前の続きの夜秋の夜。
里のざわめきも落ち着いた頃、ヤチヨの居酒屋には静かな灯りが灯っていた。
「…もう、そんなに熱くないな」
猪口を傾けていたクラマの隣に、どかっと勢いよく誰かが腰を下ろす。
「おう」
この声に顔を上げなくても分かる。
「おかえりなさい、クラマ様」
「カイさんもお疲れ様」
そう言ってヤチヨが、二人の前に熱燗と猪口をそっと置いた。
「私も一緒に乾杯していいかしら?」
「お、いいじゃねぇか。じゃあ……」
カイが猪口を持ち上げる。
「乾杯しようぜ、50年ぶりの晩酌に」
三つの猪口が静かに触れ合う。音が響いた瞬間、時間がゆるりと巻き戻っていくようだった。
──
「お前がいねぇ間にさ、こんだけツケ溜まったわ」
酔いが回って頬を赤くしたカイが、何故か自慢げに言う。
644里のざわめきも落ち着いた頃、ヤチヨの居酒屋には静かな灯りが灯っていた。
「…もう、そんなに熱くないな」
猪口を傾けていたクラマの隣に、どかっと勢いよく誰かが腰を下ろす。
「おう」
この声に顔を上げなくても分かる。
「おかえりなさい、クラマ様」
「カイさんもお疲れ様」
そう言ってヤチヨが、二人の前に熱燗と猪口をそっと置いた。
「私も一緒に乾杯していいかしら?」
「お、いいじゃねぇか。じゃあ……」
カイが猪口を持ち上げる。
「乾杯しようぜ、50年ぶりの晩酌に」
三つの猪口が静かに触れ合う。音が響いた瞬間、時間がゆるりと巻き戻っていくようだった。
──
「お前がいねぇ間にさ、こんだけツケ溜まったわ」
酔いが回って頬を赤くしたカイが、何故か自慢げに言う。
Orr_Ebi
DONEアラサー沢深が大人になってやっとくっつく話。🏀プロ選手×会社員パロ。深津さんが少し女々しいかもなので注意。沢深ハッピーになあれ🪄タイトルは同名の楽曲より。
Love U like that 「結婚しないんですか?」
麺をずるずると啜っていた俺は、その言葉に一瞬動きを止めた。結婚。また結婚の話か、と頭の中で反芻して麺を最後まで啜りきった。
「なんでまた」
咀嚼して飲み込んでからそう答えると、隣の席で同じ豚骨ラーメンを啜っていた後輩が、うーんと唸る。
「だって深津さんの歳って、周り結構結婚してません?」
「してる」
「なんか焦りません?そういうの」
三つ下の後輩は、人によっては無神経だと感じらるような発言をなんて事ないように言った。焦るか、と改めて自分に問うて見る。確かに、高校時代の友人たちはほとんど既婚者だ。
河田は早々に学生時代からの彼女と入籍して3人のパパだし、松本はつい最近結婚したばかりだ。イチノは…、恋人はいるけどまだかなと言っていたような気がする。野辺も確か二年前に結婚式を挙げていたはずだ。そう考えると、学生時代につるんでいた5人の中で半分以上は結婚したことになる。まぁ、それもそうか。もう30を過ぎたのだからそういった選択をするようにもなる。
11699麺をずるずると啜っていた俺は、その言葉に一瞬動きを止めた。結婚。また結婚の話か、と頭の中で反芻して麺を最後まで啜りきった。
「なんでまた」
咀嚼して飲み込んでからそう答えると、隣の席で同じ豚骨ラーメンを啜っていた後輩が、うーんと唸る。
「だって深津さんの歳って、周り結構結婚してません?」
「してる」
「なんか焦りません?そういうの」
三つ下の後輩は、人によっては無神経だと感じらるような発言をなんて事ないように言った。焦るか、と改めて自分に問うて見る。確かに、高校時代の友人たちはほとんど既婚者だ。
河田は早々に学生時代からの彼女と入籍して3人のパパだし、松本はつい最近結婚したばかりだ。イチノは…、恋人はいるけどまだかなと言っていたような気がする。野辺も確か二年前に結婚式を挙げていたはずだ。そう考えると、学生時代につるんでいた5人の中で半分以上は結婚したことになる。まぁ、それもそうか。もう30を過ぎたのだからそういった選択をするようにもなる。
針🐝
TRAININGクラマの顕現シーンを、自分なりに想像補足して書いてみました。50年という時間の重みと、それでも変わらない関係性。
里民の前に出るのをためらっていたクラマが、カイの何気ない一言で救われるような、
そんな静かな再会の空気が好きです。
二次創作は久々で手探りですが、少しずつ形にしていけたらと思っています。
カイが喧嘩神輿を舞手に話し出した時から、嫌な予感はしていた。
やっぱり俺を引き摺り出そうとするのはお前なんだな――と、クラマは思った。
けれど、今更里民に合わせる顔がない。そう思って逃げた自分を、悔やむ暇もなく顕現させられ、これからのことに少しだけ怯えていた。
「まあまあ、そう言うなって。お前も久々にシャバの空気が吸えてよかっただろ?」
まるで変わらない。
50年の時を経ても、変わらないその男の一言に、気持ちが落ち着いていくのがわかる。
クラマは御扇を構え、大きな風を起こしてカイを山の方へ吹き飛ばした。
――俺らはこうだったよな。
「まったく酷い目にあったぜ…やっぱり絆されて妙なことするもんじゃねえなあ」
そう言ったカイの顔は少し嬉しそうだった。
390やっぱり俺を引き摺り出そうとするのはお前なんだな――と、クラマは思った。
けれど、今更里民に合わせる顔がない。そう思って逃げた自分を、悔やむ暇もなく顕現させられ、これからのことに少しだけ怯えていた。
「まあまあ、そう言うなって。お前も久々にシャバの空気が吸えてよかっただろ?」
まるで変わらない。
50年の時を経ても、変わらないその男の一言に、気持ちが落ち着いていくのがわかる。
クラマは御扇を構え、大きな風を起こしてカイを山の方へ吹き飛ばした。
――俺らはこうだったよな。
「まったく酷い目にあったぜ…やっぱり絆されて妙なことするもんじゃねえなあ」
そう言ったカイの顔は少し嬉しそうだった。