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    ストーカー

    吉良の作業ログ

    MAIKINGストーカーネタの導入。少しグロいかもしれない。サバイバーズ・ギルト

     人体がひしゃげる音を聞いたことがある。息をするのがやっとな程の苦痛を味わいながら、原型のない足を引きずって地を這い回ったことがある。
     燃える故郷の光景を今も覚えている。傍で真っ赤に身を染め上げた兄弟の体温の生温かさも、瓦礫から飛び出る手の薬指にはまった指輪が見慣れた母のものであったことも、眼前でうつ伏せに転がる父の身体に深々と突き刺さる鉄柱も、まるで昨日のことであるかのように。
     長い長い歳月を経てもなお、こびり付いたままの記憶が風化することはない。毎夜見る夢がそれを許さなかったのだ。真っ白なはずの故郷は赤く色付き、整えられていたはずの街並みは無惨にも崩れ去り、深く積もった雪がもたらす静謐にまどろんでいたはずの人々は皆、厄災によってその息を永遠に止めてしまった。なんの因果か一人息を続けていた自分だけが瓦礫の海で溺れていたのを、救援に来た軍の先遣隊が引き上げてしまったのが運の尽きだったのだと、今でも思っている。
     潰れた右足が元に戻ることはなく、けれどそれだけで済んでしまった自分は、かれこれ二十年弱もの間、ほとんど死んだように生きてきた。家系図の端っこにいるか 4932