出待ち
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MAIKING万年出待ちの古代兵装さん5ある少年の視点1/1+プロローグ
オルタナティブの卵5 物心ついた時にはもう、腹の奥の方がソワソワする感じがあった。
そのソワソワはおれにどこかへ行くようにずっと言っていて、気が付くと辺りの野山を歩き回っていた。
「リンク! 席に座りなさい!」
「……」
「返事ぐらいしないか!」
「………………ぁぃ」
これが父さんとのいつものやりとり。
どうしてじっとしていられないの? と母さんにはため息をつかれる。食事の時に立ち上がって何度も父さんに怒られた。近所のおばちゃんたちからも、落ち着きのない子だとヒソヒソされてるのも知っていた。そのたびに母さんが悲しい顔をするのだけが申し訳なかった。
特に嫌いなのが学校。ずっと椅子に座っているとお尻がむずむずする。大大大っ嫌いだ。気を抜くと走り出したくなる。それで走ると先生に怒られる。毎日怒られる。友達にも笑われた。
11741そのソワソワはおれにどこかへ行くようにずっと言っていて、気が付くと辺りの野山を歩き回っていた。
「リンク! 席に座りなさい!」
「……」
「返事ぐらいしないか!」
「………………ぁぃ」
これが父さんとのいつものやりとり。
どうしてじっとしていられないの? と母さんにはため息をつかれる。食事の時に立ち上がって何度も父さんに怒られた。近所のおばちゃんたちからも、落ち着きのない子だとヒソヒソされてるのも知っていた。そのたびに母さんが悲しい顔をするのだけが申し訳なかった。
特に嫌いなのが学校。ずっと椅子に座っているとお尻がむずむずする。大大大っ嫌いだ。気を抜くと走り出したくなる。それで走ると先生に怒られる。毎日怒られる。友達にも笑われた。
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MAIKING万年出待ちの古代兵装さんある乳母の視点3/3
オルタナティブの卵4-3 人形の存在が伏せられることが決定したのは、それからほどなくのことだった。
仮に人形であったとしても、命の形、姿、力量、その全てが厄災を討伐するに足るのであれば、勇者を名乗るのは誰でもよいというのが陛下や将軍たちの判断であった。
また、彼は古代シーカー族に作られたことから、現代を生きるシーカー族たちが彼の補佐に就くことが決まった。主にはあの薄気味悪い研究部とやらの変人奇人たちだ。ここ数年、不思議と対厄災用のガーディアンなどという兵器開発が進んでいると思っていたが、どうやら秘密裏に彼の躯体の情報を転用していたらしい。
おかげさまで彼には今までの武具甲冑に加え、シーカー製のところどころに青く光る模様の入った新しい甲冑が与えられた。騎士たちはそれを見目好いとはやし立てたが、黒い色も相まってわたくしには不気味にしか見えなかった。
3138仮に人形であったとしても、命の形、姿、力量、その全てが厄災を討伐するに足るのであれば、勇者を名乗るのは誰でもよいというのが陛下や将軍たちの判断であった。
また、彼は古代シーカー族に作られたことから、現代を生きるシーカー族たちが彼の補佐に就くことが決まった。主にはあの薄気味悪い研究部とやらの変人奇人たちだ。ここ数年、不思議と対厄災用のガーディアンなどという兵器開発が進んでいると思っていたが、どうやら秘密裏に彼の躯体の情報を転用していたらしい。
おかげさまで彼には今までの武具甲冑に加え、シーカー製のところどころに青く光る模様の入った新しい甲冑が与えられた。騎士たちはそれを見目好いとはやし立てたが、黒い色も相まってわたくしには不気味にしか見えなかった。
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MAIKING万年出待ちの古代兵装さんある乳母の視点2/3
オルタナティブの卵4-2 それから姫様が穏やかな日常を取り戻されるまで、いくらもかからなかった。気づけば笑顔が戻り、兵士たちや下女たちにも元気いっぱいに手を振る姫様が戻ってきていた。
さらには数年の年月が経てば、未成年ながらも王妃様の代わりを必死で努めようと、陛下のご政務をお手伝いされるようにもなった。もちろん女神さまへのお祈りを欠かすこともなく、あるいは騎士をはじめとする兵士たちを慰問することもあった。
ただし以前と大きく変わったのは、その傍らに彼の少年の姿があったことだ。
「リンク殿がいてくださってよかった」
そんなことを自分がつぶやく日が来ようとは、わたくしは夢にも思っていなかった。
姫様が彼をお傍に置くことを望まれたためだが、周囲も、かくいうわたくしもすぐに違和感を覚えなくなっていった。姫様が東の孤児院へ行かれるとすれば彼もついていったし、西に修行へ行かれるとしても彼はついていった。
4567さらには数年の年月が経てば、未成年ながらも王妃様の代わりを必死で努めようと、陛下のご政務をお手伝いされるようにもなった。もちろん女神さまへのお祈りを欠かすこともなく、あるいは騎士をはじめとする兵士たちを慰問することもあった。
ただし以前と大きく変わったのは、その傍らに彼の少年の姿があったことだ。
「リンク殿がいてくださってよかった」
そんなことを自分がつぶやく日が来ようとは、わたくしは夢にも思っていなかった。
姫様が彼をお傍に置くことを望まれたためだが、周囲も、かくいうわたくしもすぐに違和感を覚えなくなっていった。姫様が東の孤児院へ行かれるとすれば彼もついていったし、西に修行へ行かれるとしても彼はついていった。
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MAIKING万年出待ちの古代兵装さんある乳母の視点1/3
オルタナティブの卵4-1 今代の勇者は一兵卒上がりの十五歳というから、きっと立場をわきまえていない小汚い少年に違いない。何かあった時には、乳母たるわたくしが姫様の盾にならねば!
そんなつもりで臨んだ謁見式であったが、わたくしの覚悟は杞憂に終わった。
「彼が勇者でよかった!」
少年が退席したあと、姫様はニコニコしながらそう呟かれた。本来であれば不用意な発言は聞きとがめるところだが、今回ばかりは背後に立つわたくしも思わず頷いてしまった。
「本当に、良い少年でございました」
「まぁ貴女もそう思う?」
無邪気に振り向く姫様に、私は先ほどの少年の風体を思い出しつつ、しぶしぶ頷いた。
陛下と王妃様、および姫様への謁見に際しては当然のことながら、入念に磨き上げられて作法も叩き込まれ手から臨むものだ。それでも下賤の者は、残念ながらそう分かってしまう。
4613そんなつもりで臨んだ謁見式であったが、わたくしの覚悟は杞憂に終わった。
「彼が勇者でよかった!」
少年が退席したあと、姫様はニコニコしながらそう呟かれた。本来であれば不用意な発言は聞きとがめるところだが、今回ばかりは背後に立つわたくしも思わず頷いてしまった。
「本当に、良い少年でございました」
「まぁ貴女もそう思う?」
無邪気に振り向く姫様に、私は先ほどの少年の風体を思い出しつつ、しぶしぶ頷いた。
陛下と王妃様、および姫様への謁見に際しては当然のことながら、入念に磨き上げられて作法も叩き込まれ手から臨むものだ。それでも下賤の者は、残念ながらそう分かってしまう。
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MAIKING万年出待ちの古代兵装さんある兵士の視点3/3
オルタナティブの卵3‐3 目が光る人間なんて聞いたこともない!
こいつ人間じゃねぇ。ハイリア人じゃねぇ、でもマモノでもねぇ! こいつは、いったい何なんだ
頭の中ではうるさいぐらいに慌てているのに、実際には目と口を丸くして腰を抜かしていた。対照的にリンクは落ち着いていた。というよりも、こいつが人間らしく慌てた姿を思い出せないことに、ふと気が付く。
リンクは口をあんぐりと開けた俺に向かって居住まいを正し、目を細めた。それがほんのり申し訳なさそうに見えたのが少し意外だった。
「私は厄災を封じる際にゼルダ姫を補佐するようにと、太古のシーカー族によって作られた人形だ。正体も明かさずにいなくなるのは、先輩には怒られると経験から推測したので明かしておく」
3766こいつ人間じゃねぇ。ハイリア人じゃねぇ、でもマモノでもねぇ! こいつは、いったい何なんだ
頭の中ではうるさいぐらいに慌てているのに、実際には目と口を丸くして腰を抜かしていた。対照的にリンクは落ち着いていた。というよりも、こいつが人間らしく慌てた姿を思い出せないことに、ふと気が付く。
リンクは口をあんぐりと開けた俺に向かって居住まいを正し、目を細めた。それがほんのり申し訳なさそうに見えたのが少し意外だった。
「私は厄災を封じる際にゼルダ姫を補佐するようにと、太古のシーカー族によって作られた人形だ。正体も明かさずにいなくなるのは、先輩には怒られると経験から推測したので明かしておく」
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MAIKING万年出待ちの古代兵装さんある兵士の視点‐2/3
オルタナティブの卵3‐2 リンクは、討伐隊が組まれるたびに武勲を上げていった。
ヒノックスを筆頭に、白銀個体のモリブリンやリザルフォス、ウィズローブに果てはライネルなんぞを仕留めたこともあった。どのマモノも今までは騎士数人、兵卒数十名からの討伐隊が組まれていた強個体だ。
それらをリンクは悠々と一人で、かすり傷一つなく倒してしまう。
言うまでもなく、俺の堂々とした先輩面は半年で終わった。多少目端が利くのと在籍年数だけで上っていた階級はあっと言う間に追いつかれ、気付けばあいつは俺と同じ兵卒の中では地位の高い部類に属していた。
「……と言うことは、もう敬語は必要ない?」
「理論上はな」
「心理的側面を加味するならば」
「一応俺は先輩だ、そこは変わらねぇ」
3196ヒノックスを筆頭に、白銀個体のモリブリンやリザルフォス、ウィズローブに果てはライネルなんぞを仕留めたこともあった。どのマモノも今までは騎士数人、兵卒数十名からの討伐隊が組まれていた強個体だ。
それらをリンクは悠々と一人で、かすり傷一つなく倒してしまう。
言うまでもなく、俺の堂々とした先輩面は半年で終わった。多少目端が利くのと在籍年数だけで上っていた階級はあっと言う間に追いつかれ、気付けばあいつは俺と同じ兵卒の中では地位の高い部類に属していた。
「……と言うことは、もう敬語は必要ない?」
「理論上はな」
「心理的側面を加味するならば」
「一応俺は先輩だ、そこは変わらねぇ」
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MAIKING万年出待ちの古代兵装さんある兵士の視点‐1/3
オルタナティブの卵3-1「ということで、ヒーのことをよろしく頼む!」
ゼルダ姫様の五歳の誕生パーティーの次の日だったからよく覚えている。
突然現れた母さんの姉さんの旦那さんの従妹の息子の嫁さんの伯父というオッサンにものすごい勢いで詰め寄られ、俺は「はぁ」と間の抜けた返事をしてしまった。
超超超遠縁を言い張るオッサンは、ハイラル城でも特に影の部署と呼ばれる研究部に所属の研究者だった。要は何の影響力もない、金食い虫部署の所属の、要は変人だ。
で、ぐいと押し出されたのがこいつ。リンクと言うらしい。
「よろしくたのむ」
第一印象は「口のきき方のなってねぇガキだな」だった。
年の頃は俺よりだいぶ下、たぶん十五、六といったところか。
3502ゼルダ姫様の五歳の誕生パーティーの次の日だったからよく覚えている。
突然現れた母さんの姉さんの旦那さんの従妹の息子の嫁さんの伯父というオッサンにものすごい勢いで詰め寄られ、俺は「はぁ」と間の抜けた返事をしてしまった。
超超超遠縁を言い張るオッサンは、ハイラル城でも特に影の部署と呼ばれる研究部に所属の研究者だった。要は何の影響力もない、金食い虫部署の所属の、要は変人だ。
で、ぐいと押し出されたのがこいつ。リンクと言うらしい。
「よろしくたのむ」
第一印象は「口のきき方のなってねぇガキだな」だった。
年の頃は俺よりだいぶ下、たぶん十五、六といったところか。
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MAIKING万年出待ちの古代兵装さんある研究者の視点2/2
オルタナティブの卵2‐2 滑りやすい石の階段も難なく上り、日差しの元へ出る。眩しい光に目を細める動作が、彼の妙な人間臭さを浮き彫りにしていた。
「……ああは言ったが、もちろん尋問などする気はない。ただユーのボディーには大変興味があるので、研究には協力してもらえると助かる」
「約束を守ってもらえるのならば問題ない」
「すぐに会うのはさすがに無理だぞ?」
「猶予はある。すぐでなくともゼルダ姫様にお仕えできるようになるれば、それでいい」
「ハードだが、善処しよう」
二人して肩を並べ、意気揚々と監獄を後にする。オホリ橋へ続く小道を行く彼の足取りは、心なしか嬉しそうに見えた。
ふと思う。
「ミーを疑ったりはしないのか?」
橋を渡り、貯水池のあたりで、ふと彼は足を止めた。きょろきょろ周囲を見たあとで、遠目に見えるハイラル城に目を細めている。それは初めての場所を見回しているというよりも、どこか懐かしい風景を探しているように見えた。
4856「……ああは言ったが、もちろん尋問などする気はない。ただユーのボディーには大変興味があるので、研究には協力してもらえると助かる」
「約束を守ってもらえるのならば問題ない」
「すぐに会うのはさすがに無理だぞ?」
「猶予はある。すぐでなくともゼルダ姫様にお仕えできるようになるれば、それでいい」
「ハードだが、善処しよう」
二人して肩を並べ、意気揚々と監獄を後にする。オホリ橋へ続く小道を行く彼の足取りは、心なしか嬉しそうに見えた。
ふと思う。
「ミーを疑ったりはしないのか?」
橋を渡り、貯水池のあたりで、ふと彼は足を止めた。きょろきょろ周囲を見たあとで、遠目に見えるハイラル城に目を細めている。それは初めての場所を見回しているというよりも、どこか懐かしい風景を探しているように見えた。
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MAIKING万年出待ちの古代兵装さんある研究者の視点-1/2
オルタナティブの卵2-1「ユーが姫様に会わせろと押し掛けてきたクレイジー野郎か」
ミーの声に、立ち尽くしていた彼はすぐに瞼を持ち上げた。
青い瞳がじめじめと薄暗い地下牢の中で輝いている。比喩ではなく、目の奥から発光するようにじんわりと青い光を放っていた。その異様さに冷や汗が噴き出した。
「目が光るなんてクールだな」
顔つきだけで判断するならば普通のハイリア人だが、身体を覆う黒い鎧は現在ハイラルに住むどの種族のものとも合致しない。しかしミーにはその鎧に見覚えがあった。
我々シーカー族の鎧、しかも恐ろしく古い時代の物に酷似していた。
「ゼルダ姫様にお仕えしたい」
意外に柔らかな声で述べた彼がハイラル城に現れたのは、今から十日ほど前のことだ。
4065ミーの声に、立ち尽くしていた彼はすぐに瞼を持ち上げた。
青い瞳がじめじめと薄暗い地下牢の中で輝いている。比喩ではなく、目の奥から発光するようにじんわりと青い光を放っていた。その異様さに冷や汗が噴き出した。
「目が光るなんてクールだな」
顔つきだけで判断するならば普通のハイリア人だが、身体を覆う黒い鎧は現在ハイラルに住むどの種族のものとも合致しない。しかしミーにはその鎧に見覚えがあった。
我々シーカー族の鎧、しかも恐ろしく古い時代の物に酷似していた。
「ゼルダ姫様にお仕えしたい」
意外に柔らかな声で述べた彼がハイラル城に現れたのは、今から十日ほど前のことだ。
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MAIKING万年出待ちの古代兵装さんある少女の視点-3
オルタナティブの卵1-3「どうした」
彼の方から声をかけてくるのは、初めて出会った夜以来のことだった。
私の方がまともに言葉を発することができないぐらいにむせび泣いていた。彼の方も声をかけるのをしばらく待っていたぐらいだ。
どうしたと問われても、私はしばらく答えられなかった。どうしようもなく、彼に言いたくなかったからだ。
でも言わなければもっと後悔する。息を整え、こぶしを握りしめ、意を決して口を開いた。
「あのね、今日はお別れを、言いに来たの」
「……どこへ行く」
「お城だって」
彼はただ「そうか」と答えた。今はその無感動な声が少しだけ恨めしかった。
黒リザルフォスを手刀で仕留めて以来、彼の体勢は変わらない。本当に動く気がないらしい。せめて最後ぐらい私の方を見てくれればいいのに、彼はうつむき加減のまま指に絡まり始めた蔓草の先っぽを見ていた。
1852彼の方から声をかけてくるのは、初めて出会った夜以来のことだった。
私の方がまともに言葉を発することができないぐらいにむせび泣いていた。彼の方も声をかけるのをしばらく待っていたぐらいだ。
どうしたと問われても、私はしばらく答えられなかった。どうしようもなく、彼に言いたくなかったからだ。
でも言わなければもっと後悔する。息を整え、こぶしを握りしめ、意を決して口を開いた。
「あのね、今日はお別れを、言いに来たの」
「……どこへ行く」
「お城だって」
彼はただ「そうか」と答えた。今はその無感動な声が少しだけ恨めしかった。
黒リザルフォスを手刀で仕留めて以来、彼の体勢は変わらない。本当に動く気がないらしい。せめて最後ぐらい私の方を見てくれればいいのに、彼はうつむき加減のまま指に絡まり始めた蔓草の先っぽを見ていた。
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MAIKING万年出待ちの古代兵装さんある少女の視点-2
オルタナティブの卵1-2 初めて青い目の彼と話をしてから三度の冬を越えるころには、私も少々心が強くなった。図太くなったとも言う。
相変わらず村の人は私を手厚く庇護してくれるので、申し訳なさは募った。だがお礼は欠かさなかったし、十三にもなれば手伝いも色々できる。ついでに「いつかもっと恩返しをするからね」と冗談交じりに言えるぐらいの愛嬌も身に着けた。
それでも私は青い目の彼のところへ通うことを止めなかった。
「また来たのか」
ほほ笑むでもなく、苦笑いするでもない。彼の表情はまるっきり変わらない。ただ声色を聞けば、嗜めながらも少し喜んでいると思った。私の勝手な思い込みかもしれないけれど、そういうことにしておく。
「だって草取らなきゃ、また埋もれちゃうよ」
2527相変わらず村の人は私を手厚く庇護してくれるので、申し訳なさは募った。だがお礼は欠かさなかったし、十三にもなれば手伝いも色々できる。ついでに「いつかもっと恩返しをするからね」と冗談交じりに言えるぐらいの愛嬌も身に着けた。
それでも私は青い目の彼のところへ通うことを止めなかった。
「また来たのか」
ほほ笑むでもなく、苦笑いするでもない。彼の表情はまるっきり変わらない。ただ声色を聞けば、嗜めながらも少し喜んでいると思った。私の勝手な思い込みかもしれないけれど、そういうことにしておく。
「だって草取らなきゃ、また埋もれちゃうよ」
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MAIKINGあまりにも長い期間開いちゃったので、次を流し始める前に分割してこっちに流し始めます万年出待ちの古代兵装さん
ある少女の視点-1
話の元絵→ https://x.com/Z4W3k/status/1831667903206453630
オルタナティブの卵1-1 私が初めて彼と言葉を交わしたのは夏、満月の夜のことだった。
以前から、村から少し離れた樹海の遺跡の一角に、人の形のように草木が生い茂っている場所があるなとは思っていた。だが、自然の造形の中に、たまたま人の形に見える物などたくさんある。木目や石の模様が人の顔に見えるのと同じだ。
だからそれが本当に人で、しかも目が開くとは思うまい。
「ひっ……」
草木の間に突然現われた青い目に、私は必死で自分の手で口を塞いだ。
訳あって人目を忍んで声を押さえながら泣いていたこともある。まるで生きている人間のようにパチパチと瞬きをする青い目に恐怖さえ覚えたが、悲鳴が漏れないように後ずさりした。
すると生い茂る草木の間に開いた青い目は私を追いかけるように動き、首から上がかすかに動く。次の瞬間、ボロリと音を立てて苔の塊が落ちて現れたのは、綺麗な人間の顔だった。
2635以前から、村から少し離れた樹海の遺跡の一角に、人の形のように草木が生い茂っている場所があるなとは思っていた。だが、自然の造形の中に、たまたま人の形に見える物などたくさんある。木目や石の模様が人の顔に見えるのと同じだ。
だからそれが本当に人で、しかも目が開くとは思うまい。
「ひっ……」
草木の間に突然現われた青い目に、私は必死で自分の手で口を塞いだ。
訳あって人目を忍んで声を押さえながら泣いていたこともある。まるで生きている人間のようにパチパチと瞬きをする青い目に恐怖さえ覚えたが、悲鳴が漏れないように後ずさりした。
すると生い茂る草木の間に開いた青い目は私を追いかけるように動き、首から上がかすかに動く。次の瞬間、ボロリと音を立てて苔の塊が落ちて現れたのは、綺麗な人間の顔だった。
DINAmadlover
DOODLE※フェニックス君とアルバート君の女装(メイド服)と上裸の書きかけの落書きがあり(ましたが何故かうpできないんで今日はこれで)悪い噂のあるぼったくりメイドカフェに行って厄介クソ客(稀にボディタッチしてくるし出待ちするカス)になったキールスというパロディ、とてもなんかしっくり来たので……
フェニックス君は【https://picrew.me/ja/image_maker/10948】
Jeff
DOODLEお題:「高嶺の花」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/04/28
出待ちの陸せん騎💐
Etoile ヒュンケルは頬杖をつき、あらためて目の前の男をじっと見た。
ベンガーナ中心街をやや外れた、洒落た一角のカフェにて。
初夏の風を楽しむ余裕もないのか、ラーハルトは呆然と掌を見つめたままだ。
「そろそろじゃないか」
ヒュンケルが声をかけると、ああ、と蚊の鳴くような声で答える。いつもの鉄面皮はどこへやら、頬の産毛が数えられそうなくらい幼く見える。
久しぶりだ、相棒のこんな姿は。
ヒュンケルはほくそ笑んで、冷たいライム水を一口含んだ。
彼の相棒、世界一の戦士ラーハルトは。
意外なことに、惚れっぽい。
数年前なら、魔界まで踏み抜く大喧嘩に発展していただろう。実際何度か揉めて、罪もない山岳が半分消し飛んだりもした。
2438ベンガーナ中心街をやや外れた、洒落た一角のカフェにて。
初夏の風を楽しむ余裕もないのか、ラーハルトは呆然と掌を見つめたままだ。
「そろそろじゃないか」
ヒュンケルが声をかけると、ああ、と蚊の鳴くような声で答える。いつもの鉄面皮はどこへやら、頬の産毛が数えられそうなくらい幼く見える。
久しぶりだ、相棒のこんな姿は。
ヒュンケルはほくそ笑んで、冷たいライム水を一口含んだ。
彼の相棒、世界一の戦士ラーハルトは。
意外なことに、惚れっぽい。
数年前なら、魔界まで踏み抜く大喧嘩に発展していただろう。実際何度か揉めて、罪もない山岳が半分消し飛んだりもした。
greensleevs00
DOODLEフリーナの演技に惚れ込んだファンが出待ちして贈り物を渡そうとする話。かみさま 見晴るかす空は朱く暮れなずむ。昼には暖かった風はやや冷たさを帯びて、石畳を撫でていく。縋るようにして腰を落ち着けた石のベンチも、とうにひんやりとしていた。
流石に帰らなきゃ、と思いながらも、私は立つことができずにいた。膝には贈ることのできなかった小箱がひとつ。忙しさの合間を縫い、今日のために心を込めて用意した贈りもの。
今頃、あの方はどうしていらっしゃるのだろう?
今日の舞台はーーいや、今日の舞台も素晴らしかった。『水の娘』がこのエピクレシス歌劇場でロングラン公演をするようになってからというもの、もう数えきれないほど足を運んでいるけれども、幾度観ても、このお芝居にはいつも初めて観たかのように心を震わせられてしまう。
2170流石に帰らなきゃ、と思いながらも、私は立つことができずにいた。膝には贈ることのできなかった小箱がひとつ。忙しさの合間を縫い、今日のために心を込めて用意した贈りもの。
今頃、あの方はどうしていらっしゃるのだろう?
今日の舞台はーーいや、今日の舞台も素晴らしかった。『水の娘』がこのエピクレシス歌劇場でロングラン公演をするようになってからというもの、もう数えきれないほど足を運んでいるけれども、幾度観ても、このお芝居にはいつも初めて観たかのように心を震わせられてしまう。
kawaO_1008
DONEあなたは1時間以内に4RTされたら 、俳優と一般人の設定で同居して暮らし始めたもものラーヒュンの、漫画または小説を書きます。一般人ラーさんと俳優ヒュン。こっちはちゃんと一緒に住んでる。
出待ちに関する表現は特段私の私見というわけではないです。念のため。 1693
yonisoba
SPOILER九龍(ネタバレ有)卒業後やりたいことほのぼの二つ
①は響君を仲間に出来た時空
響君も強くなってるといいね・・・
これ、本当に実現したら主人公泣きながら出待ちしてトーヤ君にバラの花束を渡すよ。
②素晴らしい親子ですね 2