脱獄
NANO
DONED4長編(二度目の脱獄後)■元ネタ:石田衣良著 池袋ウエストゲートパーク『骨音』収録 『西一番街テイクアウト』より
西一番街テイクアウト誰か助けて。
闇の中で必死に叫ぶあの悲鳴が、あんたの耳には聞こえるか?
都会の片隅で起こっている小さな戦争。
紛争地は隣り合う二本の裏路地。
片方はギラギラと目に痛いネオンがひしめき合う遊女の楽園。
もう片方は街灯すらまばらな薄暗いどん詰まり。
どちらの路地でも性を売る女達が手をこまねいて男達を惑わせる。
若くてスレンダーな美貌と手練れたグラマラスな魅惑が、互いに目を光らせて客を奪い合いぶつかり合う。
欲望巻く煌びやかな世界のその影で、流れる涙なんて誰も気に留めない。
争いはいつだって権利と自由を唄ってるのに、誰も救いはしないのだ。
D4。二度も脱獄を成功させた懲りない犯罪者達が今宵語るのは、煌びやかな娼婦達のしがらみではなく、小さなリュックサックに文庫本を一冊入れた、物静かな十一歳の少女の物語だ。
30640闇の中で必死に叫ぶあの悲鳴が、あんたの耳には聞こえるか?
都会の片隅で起こっている小さな戦争。
紛争地は隣り合う二本の裏路地。
片方はギラギラと目に痛いネオンがひしめき合う遊女の楽園。
もう片方は街灯すらまばらな薄暗いどん詰まり。
どちらの路地でも性を売る女達が手をこまねいて男達を惑わせる。
若くてスレンダーな美貌と手練れたグラマラスな魅惑が、互いに目を光らせて客を奪い合いぶつかり合う。
欲望巻く煌びやかな世界のその影で、流れる涙なんて誰も気に留めない。
争いはいつだって権利と自由を唄ってるのに、誰も救いはしないのだ。
D4。二度も脱獄を成功させた懲りない犯罪者達が今宵語るのは、煌びやかな娼婦達のしがらみではなく、小さなリュックサックに文庫本を一冊入れた、物静かな十一歳の少女の物語だ。
貧血玉子
SPOILERルクファン 描きたかった部分だけ。ルークが手紙に「いつかまた一緒に暮らせたら」と書いてたから、ファントムが一日だけ脱獄してそれを叶えようとするけど、すれ違いで一晩しか一緒にいられなくなったから、ルークがお願いしていっしょに寝る事になったっていうあらすじが一応ある🥺 4
datugokunyantyu
DONE本編後妄想燐童視点の再脱獄話。
カーテンコール 本当はあの時やり過ごして、自分だけどうにか助かる算段をつけていた。追われた身とはいえ、中王区にはまだ顔のきく奴らもいる。それがどうしてか、共に戦いそしてまた牢獄に逆戻りだ。今度は四人別々の場所へ。
「は~ほんっと、なんで乗せられちゃったかな。」
また一からやり直しかぁ。看守に取り入って、人間関係を構築して……ここから出るにはしばらく時間がかかりそうだ。
固いベッドの上で染みだらけの天井を眺める。東都でアジトにしていた廃墟の天井よりはまぁマシかもな。
あの時、倒れている俺を助けに来るものはいなかった。飴村に放った言葉の数々はそのまま自分へと向けられた言葉だ。わかりきっていた事、仲間じゃない、利用してただけなんだから。
2909「は~ほんっと、なんで乗せられちゃったかな。」
また一からやり直しかぁ。看守に取り入って、人間関係を構築して……ここから出るにはしばらく時間がかかりそうだ。
固いベッドの上で染みだらけの天井を眺める。東都でアジトにしていた廃墟の天井よりはまぁマシかもな。
あの時、倒れている俺を助けに来るものはいなかった。飴村に放った言葉の数々はそのまま自分へと向けられた言葉だ。わかりきっていた事、仲間じゃない、利用してただけなんだから。
NANO
DONED4(一度目の脱獄)⚠️読後感、自己責任です。
⚠️彼らの犯行がすべて重罪です。
箱庭の雛鳥今、D4の前に聳え立つ高い壁。
この壁の向こうにあるのは政権でも伝説でもない。
とある反社会組織の根城だ。
「本当にここで良いんですか?」
燐童の半信半疑な問いかけに、有馬は「あぁ」と確かに頷く。
「武器も物資も確実に補給できる。あと車もな」
ここまで乗ってきた車はつい先程警察とのカーチェイスで故障してしまった。
追っ手からは何とか逃げ切ったはいいが、ここは今日到着しようと思っていた目的地にはまだ少し遠い位置。
時刻は22時を過ぎた、闇の濃い夜。
中途半端な場所で足を失い、寝床の確保も見通しがつかず。どうしようかと話し合っていた最中、有馬が提案してきたのがこの反社への襲撃だったのだ。
「こんなに高い塀で建物を囲っているなんて、刑務所とあまり変わりませんね」
12858この壁の向こうにあるのは政権でも伝説でもない。
とある反社会組織の根城だ。
「本当にここで良いんですか?」
燐童の半信半疑な問いかけに、有馬は「あぁ」と確かに頷く。
「武器も物資も確実に補給できる。あと車もな」
ここまで乗ってきた車はつい先程警察とのカーチェイスで故障してしまった。
追っ手からは何とか逃げ切ったはいいが、ここは今日到着しようと思っていた目的地にはまだ少し遠い位置。
時刻は22時を過ぎた、闇の濃い夜。
中途半端な場所で足を失い、寝床の確保も見通しがつかず。どうしようかと話し合っていた最中、有馬が提案してきたのがこの反社への襲撃だったのだ。
「こんなに高い塀で建物を囲っているなんて、刑務所とあまり変わりませんね」
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DONED4 脱獄から東都までの道中。Sea Glass監獄の爆破、高い壁を突き破るようにして脱獄を果たしたあの夜。
あれから早5日。中王区のお膝下、東都まで高速道路など順当な経路であれば2、3日で到着するところを、各所に配置された検問を掻いくぐりながら物資調達、情報収集などを行っているうちに今日を迎えた。現在地はイバラキ。
脱獄直後からトウホクエリアへの道中は、追手が昼夜問わず現れるせいで碌に休息もとれなかったがそれも今では大分落ち着いた。
海沿いを有馬の運転で走る車中、参謀役の燐童を中心にこれからの計画を話し合う。そんな中、後部座席に座る谷ケ崎は窓の外をぼんやり眺めるばかりだった。
「伊吹、そんなに海が珍しいですか。」
乳白色の糖分をたしなみながら、隣でその様子をうかがっていた時空院から声がかかる。
2066あれから早5日。中王区のお膝下、東都まで高速道路など順当な経路であれば2、3日で到着するところを、各所に配置された検問を掻いくぐりながら物資調達、情報収集などを行っているうちに今日を迎えた。現在地はイバラキ。
脱獄直後からトウホクエリアへの道中は、追手が昼夜問わず現れるせいで碌に休息もとれなかったがそれも今では大分落ち着いた。
海沿いを有馬の運転で走る車中、参謀役の燐童を中心にこれからの計画を話し合う。そんな中、後部座席に座る谷ケ崎は窓の外をぼんやり眺めるばかりだった。
「伊吹、そんなに海が珍しいですか。」
乳白色の糖分をたしなみながら、隣でその様子をうかがっていた時空院から声がかかる。
NANO
DONED4(一度目の脱獄中)桃の缶詰脱獄囚達にとって何台目かの強奪をされた車が、とあるビジネスホテルの駐車場でゆっくりとテールライトを消す。
「僕が聞いてきますね」
宿泊出来る空室があるかを尋ねに、燐童は助手席を降りる。車内に残る面々は その僅かな時間でふぅと息をついていた。
今日の運転席は時空院だった。
ずっと運転出来ることを誤魔化してきたのだが、先日逃走中にうっかりバレてしまい、有馬にはずいぶん叱られた。それからは、たまには有馬と運転を代わっている。
「………」
ずっと気になっていることがあった。
バックミラー越しに、後部座席を見やる。
有馬は先程奪ったスマートフォンを操作していて、その隣では谷ケ崎が窓に頭をつけて静かに目を閉じていた。
「伊吹」
6649「僕が聞いてきますね」
宿泊出来る空室があるかを尋ねに、燐童は助手席を降りる。車内に残る面々は その僅かな時間でふぅと息をついていた。
今日の運転席は時空院だった。
ずっと運転出来ることを誤魔化してきたのだが、先日逃走中にうっかりバレてしまい、有馬にはずいぶん叱られた。それからは、たまには有馬と運転を代わっている。
「………」
ずっと気になっていることがあった。
バックミラー越しに、後部座席を見やる。
有馬は先程奪ったスマートフォンを操作していて、その隣では谷ケ崎が窓に頭をつけて静かに目を閉じていた。
「伊吹」
NANO
DONE谷ケ崎伊吹(二度目の脱獄後)名前のない怪物「伊吹!待ってください!」
有馬がやられた。必死で彼を肩に掛けて戻ってきた燐童も重傷だった。
朦朧としている二人は、生きてここまで戻ってきたのが不思議なくらいに傷だらけで、それがただのヒプノシスマイクの攻撃だけではないとすぐに分かった。
「伊吹!」
拠点にしていた廃屋の部屋。厳しく言いつける時空院の声は、激しく開け放たれたドアの音で叩き消される。
燐童から有馬を受け取っていた時空院は体重を預けてくる彼らを放棄するわけにもいかず、静かな殺意の塊と化して飛び出していく谷ケ崎を引き留めるのは間に合わなかった。
「僕が行きます」
力が入らないふらふらの状態で、燐童が立ち上がる。俯いた頭から血が垂れ落ちて ぼたぼたと床に散った。糸が切れかけた身体に、時空院はぴしゃと言い放つ。
5286有馬がやられた。必死で彼を肩に掛けて戻ってきた燐童も重傷だった。
朦朧としている二人は、生きてここまで戻ってきたのが不思議なくらいに傷だらけで、それがただのヒプノシスマイクの攻撃だけではないとすぐに分かった。
「伊吹!」
拠点にしていた廃屋の部屋。厳しく言いつける時空院の声は、激しく開け放たれたドアの音で叩き消される。
燐童から有馬を受け取っていた時空院は体重を預けてくる彼らを放棄するわけにもいかず、静かな殺意の塊と化して飛び出していく谷ケ崎を引き留めるのは間に合わなかった。
「僕が行きます」
力が入らないふらふらの状態で、燐童が立ち上がる。俯いた頭から血が垂れ落ちて ぼたぼたと床に散った。糸が切れかけた身体に、時空院はぴしゃと言い放つ。
NANO
DONE有馬正弦(一度目の脱獄→二度目の脱獄)どこにいても風は吹く「じゃあ僕と時空院さんで買い出しに行ってきますから、谷ケ崎さんと有馬さんはここで待っていてくださいね」
「大人しく」とやけに語尾を強調されて、二人は裏路地に停車した車内で留守番をする。
派手な脱獄を果たして数日。
The Dirty Dawgをターゲットに決めてから四人で目指しているのは政権宿る都会。有馬にとっては古巣でもある東都だ。
適当に何台か車を拝借しながら乗り継いで、北の地からここまできた。もうしばらく道路の脇に雪を見ていない。おそらく、順調に進んできているのだろう。
思うのは、よくもあんな遠くの地まで人様を送り込んでくれたものだ。ざまあみろ。
谷ケ崎がどれくらい腕の立つ奴なのかは前もって知っていた。でなければ手を組んだりはしない。
4563「大人しく」とやけに語尾を強調されて、二人は裏路地に停車した車内で留守番をする。
派手な脱獄を果たして数日。
The Dirty Dawgをターゲットに決めてから四人で目指しているのは政権宿る都会。有馬にとっては古巣でもある東都だ。
適当に何台か車を拝借しながら乗り継いで、北の地からここまできた。もうしばらく道路の脇に雪を見ていない。おそらく、順調に進んできているのだろう。
思うのは、よくもあんな遠くの地まで人様を送り込んでくれたものだ。ざまあみろ。
谷ケ崎がどれくらい腕の立つ奴なのかは前もって知っていた。でなければ手を組んだりはしない。
NANO
DONE阿久根燐童(再脱獄後)声が聞こえた「燐童!」
危機を知らせる切迫した呼び声。自分が呼ばれていると分かっていても振り返ることは出来なかった。
腹の横が鋭いもので抉られる痛み。
痛み。身体の痛み。
全身の力が抜けて、両膝が地面に落ちた。その瞬間、背後から疾風のごとく横を駆け抜けていく気配。有馬の気配。
「任せろ」
燐童を越えていく最中に聞こえた一瞬の声はいつもの彼から発せられているとは思えないくらい静かだった。刹那に見えた横顔は激しい怒りを放っていて、開かれた瞳孔が逃げていく男を捉えている。あっという間に遠退いていく有馬の背を見送って、身体はついに地面へと突っ伏した。
銃を撃たれたのか、ナイフが刺さったのか。不覚にも不意をつかれた出来事で、自分が今どんな状況だったのか整理しきれない。混乱している。相手は確実に格下だったのに…下手を打った。
3874危機を知らせる切迫した呼び声。自分が呼ばれていると分かっていても振り返ることは出来なかった。
腹の横が鋭いもので抉られる痛み。
痛み。身体の痛み。
全身の力が抜けて、両膝が地面に落ちた。その瞬間、背後から疾風のごとく横を駆け抜けていく気配。有馬の気配。
「任せろ」
燐童を越えていく最中に聞こえた一瞬の声はいつもの彼から発せられているとは思えないくらい静かだった。刹那に見えた横顔は激しい怒りを放っていて、開かれた瞳孔が逃げていく男を捉えている。あっという間に遠退いていく有馬の背を見送って、身体はついに地面へと突っ伏した。
銃を撃たれたのか、ナイフが刺さったのか。不覚にも不意をつかれた出来事で、自分が今どんな状況だったのか整理しきれない。混乱している。相手は確実に格下だったのに…下手を打った。