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    麒麟

    sirasu810

    DOODLE麒麟ギ主上ぐだverの十二国記パロ、くっつき台輔の小話。うまく具現化できなかったけど、お題ポストありがとうございました!
     天と地を貫くかのようにそびえる凌雲山りょううんざん萋州国さいしゅうこくにおいては峯抄ほうしょう山と呼ばれるそのいただきには、王の居城、峇水宮こうすいきゅうがある。この宮を遥かな高みから見下ろすことができたなら、湖のように広がる浅葱あさぎ色の屋根が、本物の水池と重なりながら、典雅な橋の数々によって結ばれている玲瓏れいろうな光景を眺めることができるだろう。
     地にあれば山の頂は天と同じに遠く、頂にあっては地上の街明かりは砂粒のように小さい。それぞれは雲海によって隔絶された別世界だった。それでも宮の庭院にわに芽吹き枝伸ばしている植物たちは、照るの変化を敏感に汲み取り、地上と同じように春には春の、夏には夏の花を咲かせ、見る者たち(その多くが寿命から離れた仙である)に生命の循環があることを知らしめる。王の私室に面した場所に植えられていた空木ウツギもまた、真白の花を満開にしていた。夏の訪れを告げる落葉樹は、陽が落ちれば月光の下、夜風に葉を揺らす。この時期の風に含まれる熱と湿り気は、こずえの合間のみならず、室の中にも流れ込んでいた。
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