編集
AA_373
INFO2/11 BURST OUT3にて発行予定の再録短編集「幸せな秋の鹿」より収録話「同じ月」を途中まで公開します。
高校のとき付き合ってた沢深が渡米前に深から別れを切り出されて別れて以来、大人になって再会する話です。
同じ月 ビルの自動ドアをくぐり外に出ると、予想よりも肌寒い空気が半袖から伸びた腕や首筋を撫でた。もう今年も九月が終わる。所狭しと建ち並ぶビル群の照明と、そのビルの間を縫うように走る三車線の道路や首都高を行き交う車のライトに照らされた都会の夜は、煌々と明るかった。
深津は左腕にはめたスマートウォッチで時間を確認し、道路に面した歩道まで歩きながら車の流れを注視した。
「深津さーん!」
ちょうどタイミングよくタクシーが流れてきたのを片手を上げて捕まえたところで後ろから声を掛けられる。振り返れば、先ほど深津が出てきたビルの出入り口から黒いキャップにマスクをした長身の男がこちらに向かって走っていた。
「一緒に乗って良いっすか?」
7050深津は左腕にはめたスマートウォッチで時間を確認し、道路に面した歩道まで歩きながら車の流れを注視した。
「深津さーん!」
ちょうどタイミングよくタクシーが流れてきたのを片手を上げて捕まえたところで後ろから声を掛けられる。振り返れば、先ほど深津が出てきたビルの出入り口から黒いキャップにマスクをした長身の男がこちらに向かって走っていた。
「一緒に乗って良いっすか?」
ニウカ
MENU墓場鬼水+恋する女不意に触れようとして大火傷した話
女性は水木に恋していた
※ 5/5に出す短編集の一篇です
あなたさえいれば 会社の人たちは水木さんのことを「いい加減な男」や「でくのぼう」だと陰で揶揄しているけれど、果たしてそうだろうか。
確かに日がな一日、目まぐるしく駆け回る営業の同僚や出世欲まみれの宴席好きな上司とは違い、出社直後に自席でゆっくり一杯の緑茶を飲む姿は男らしさに欠ける。埃が溜まる隅の席で大して会話もせず、黙々と書類をまとめる姿はまさに窓際族そのもの。
かくいう私も入社当時は「目立たなくて大人しい人」くらい薄い印象で、噂好きな事務の先輩から「水木さんってあんな年寄りみたいなのに、まだお若いし独身なのよ」と聞いた時には素直に驚いた。てっきり自分よりもうんと年上だと決めつけていたからだ。彼女の「あなたなら嫁にもらってくれるんじゃない?」という言葉には水木さんへの軽い侮りが含まれていて、いわゆる退屈しのぎ程度に弄れる格好の的なのだと知った。
4175確かに日がな一日、目まぐるしく駆け回る営業の同僚や出世欲まみれの宴席好きな上司とは違い、出社直後に自席でゆっくり一杯の緑茶を飲む姿は男らしさに欠ける。埃が溜まる隅の席で大して会話もせず、黙々と書類をまとめる姿はまさに窓際族そのもの。
かくいう私も入社当時は「目立たなくて大人しい人」くらい薄い印象で、噂好きな事務の先輩から「水木さんってあんな年寄りみたいなのに、まだお若いし独身なのよ」と聞いた時には素直に驚いた。てっきり自分よりもうんと年上だと決めつけていたからだ。彼女の「あなたなら嫁にもらってくれるんじゃない?」という言葉には水木さんへの軽い侮りが含まれていて、いわゆる退屈しのぎ程度に弄れる格好の的なのだと知った。
phnoch
DONE小1しょたなかくん掌編集「たなかくんと!」より居候のイゾーが風邪をひき、たなかくんが拗ねる話です。
▼しょたなかくんシリーズの他の話はこちら▼
https://galleria.emotionflow.com/113773/656724.html
たなかくんとむやむやバカは風邪をひかないというのは、どうやら迷信だったらしい。さんざん雪遊びをした次の日、先生も新兵衛もぴんぴんしているのに、なぜか以蔵が熱を出した。
「こたつで寝るのがやっぱり良くないんじゃないか」
体温計を見ながら先生が言う。以蔵がカスカスの声でいや雪合戦のせいじゃろと口答えをする。こたつはベッドよりあったかいのに、どうして風邪をひくのだろう。よくわからないが、こたつが以蔵に占拠されなくなるなら良いことだ。
「こたつなんぞで寝ちょっでだ。はよ自分の家に帰れ」
「新兵衛、そういう言い方はやめなさい。病人だぞ」
新兵衛はきゅっと身をすくめた。先生と同じことを言ったつもりだったのに、叱られてしまった。悪いのは以蔵のはずなのに。先生と以蔵はそのまま、ホケンショウはあるのかとか何とかついていけない話を始めてしまって、新兵衛は唇をへの字にしたままランドセルを掴んで外へ飛び出した。玄関がバタンと閉まった瞬間、黄色い帽子を忘れたことに気がついたけれど、取りに戻る気にはなれなかった。
3262「こたつで寝るのがやっぱり良くないんじゃないか」
体温計を見ながら先生が言う。以蔵がカスカスの声でいや雪合戦のせいじゃろと口答えをする。こたつはベッドよりあったかいのに、どうして風邪をひくのだろう。よくわからないが、こたつが以蔵に占拠されなくなるなら良いことだ。
「こたつなんぞで寝ちょっでだ。はよ自分の家に帰れ」
「新兵衛、そういう言い方はやめなさい。病人だぞ」
新兵衛はきゅっと身をすくめた。先生と同じことを言ったつもりだったのに、叱られてしまった。悪いのは以蔵のはずなのに。先生と以蔵はそのまま、ホケンショウはあるのかとか何とかついていけない話を始めてしまって、新兵衛は唇をへの字にしたままランドセルを掴んで外へ飛び出した。玄関がバタンと閉まった瞬間、黄色い帽子を忘れたことに気がついたけれど、取りに戻る気にはなれなかった。
Crocus
PASTロ一モバ過去絵その222023年8月
宇宙猫イベント(画像2枚目)期間のやつ
グローバル版へのエントリー結果がParticipation Prizeの一方で同じこの絵のタイムラプスをアイビスペイントの機能で無編集出力しただけの動画がStandout Prizeとかいう意味不明すぎる判定基準に萎えて日本語版に続きグローバル版への参加もこの回を最後に止めた 2
Crocus
PASTロ一モバ過去絵その82023年2月
なんかロ一モバ公式Twitter日本語版がア卜チャレ優秀賞絵を公式アカウントから紹介するとか言ってたので暇も無いのに張り切って描いた辺境士官航空部隊
しかし該当回の優秀賞紹介ツイート3件には入れてなかった上にその中の1件では公式配布素材を無編集で貼っただけの参加ツイートが優秀賞として紹介される始末
ヤケクソでグローバル版に1キャラずつエントリーして各々優秀賞 4
TORAmamire
MOURNING※バイオレンスやね動画に使ったものの一部です 大きめキャンバスしといてから基準枠を引き、その中に絵を納めているため編集用のトリミング版となっております
比較すると面白いのでラフも同封するね 34
deathpia
DOODLE131(※機械飜譯)Rating:
-怪談風短編集
Caution:
-原作世界線っぽいというか、一般人っぽいというか、とにかく概ね水銀黄金成分を含んでいます。
1. Smoke and Mirrors
報告を終えた部下が敬礼をしていると、誰かがドアを叩いた。 執務室の机に座っていたラインハルトの頭に疑問が浮かんだ。 この時間に来るはずの者はいなかったのだ。 部下にしばらくその場に待機するよう手振りで命令し、ラインハルトはドアの外から聞こえるほど声を上げた。
「誰だ?」
「宣伝省のクラフトです、ハイドリッヒ中将閣下」
冠をつけた男のはっきりとした声に、ラインハルトはかすかに眉をひそめた。 さすがに深セン城に一角を占めるような詐欺師であろうことは何となく納得したが、クラフトという名前も、そのような声も聞いたことがなかったからだ。 ひどく不思議なことだった。 彼の言葉が本当なら、彼が深セン城に入城する際、適否の選別に何らかの形でラインハルトが関わったはずだったからだ。 違和感を感じると同時に、ラインハルトはこれまで秘密警察の長として命じた数々の内偵と諜報を思い出し始めた。
12459報告を終えた部下が敬礼をしていると、誰かがドアを叩いた。 執務室の机に座っていたラインハルトの頭に疑問が浮かんだ。 この時間に来るはずの者はいなかったのだ。 部下にしばらくその場に待機するよう手振りで命令し、ラインハルトはドアの外から聞こえるほど声を上げた。
「誰だ?」
「宣伝省のクラフトです、ハイドリッヒ中将閣下」
冠をつけた男のはっきりとした声に、ラインハルトはかすかに眉をひそめた。 さすがに深セン城に一角を占めるような詐欺師であろうことは何となく納得したが、クラフトという名前も、そのような声も聞いたことがなかったからだ。 ひどく不思議なことだった。 彼の言葉が本当なら、彼が深セン城に入城する際、適否の選別に何らかの形でラインハルトが関わったはずだったからだ。 違和感を感じると同時に、ラインハルトはこれまで秘密警察の長として命じた数々の内偵と諜報を思い出し始めた。
ahotamanZ
PAST雨想オンリー一周年ということで、自分の担当した「寒空」の原稿を再掲します。編集していても本当に皆さんの発想と展開とご自身の好きであろうあめそらの姿の詰まり具合に毎日奮い立たせてもらっていました。関われて本当に光栄でした。宝物です。 4karabanamachi
DOODLEうちの子のイメソンまとめ増えたら編集します
うちの子イメソンアングレカム かみさま、あなたの言うとおり
アリウム とある一家の御茶会議
アリウム ちちんぷいぷい
アリウム flos
アリウム&アングレカム 阿吽のビーツ
パイライト ラストアメジスト
オオデマリ しかばねの踊り
オオデマリ&黒ダイヤモンド 懺悔参り
オオデマリ&黒ダイヤモンド 1000年生きてる
白菊 孤独の宗教
クロユリ 言って。
クロユリ 真生活
クロユリ きゅうくらりん
リアン あとのまつり
リアン ヒトサマアレルギー
リアン ベノム
リアン ぴんく
リアン ダダダダ天使
ワスレナグサ ノウナイディスコ
ワスレナグサ 自傷無色
ワスレナグサ 40歳くらいで死にたい。
クルクマ 我儘姫
クルクマ バケモノ信者
エニシダ 失敗作少女
571アリウム とある一家の御茶会議
アリウム ちちんぷいぷい
アリウム flos
アリウム&アングレカム 阿吽のビーツ
パイライト ラストアメジスト
オオデマリ しかばねの踊り
オオデマリ&黒ダイヤモンド 懺悔参り
オオデマリ&黒ダイヤモンド 1000年生きてる
白菊 孤独の宗教
クロユリ 言って。
クロユリ 真生活
クロユリ きゅうくらりん
リアン あとのまつり
リアン ヒトサマアレルギー
リアン ベノム
リアン ぴんく
リアン ダダダダ天使
ワスレナグサ ノウナイディスコ
ワスレナグサ 自傷無色
ワスレナグサ 40歳くらいで死にたい。
クルクマ 我儘姫
クルクマ バケモノ信者
エニシダ 失敗作少女
gerkej1006_cp
MAIKING現パロスモロ書いてる時に思いついちゃった短編集現パロだったり原作軸だったり❤️🔥さんがいたりいなかったり🚬や🦩、❤️🔥さんとくっついてたりくっついてなかったり闇鍋状態
短編集・コラさんの羽共同募金(現パロチックなコラロ)
「何これ」
二週間の出張から帰ってきたら、いつの間にか共同部屋の机の上に置かれていた箱二つ。一つはくじ引きの様な箱でもう一つは募金箱の様なものだった。箱には「コラさんの羽共同募金」と書かれている。少なくとも出張に行く前にはなかった。
くじ引きの様な箱に手を突っ込んでみるとふわふわした感触があって中身を一つ取り出してみればそれは良く羽織っている黒い羽コートから取れたとおもしき黒い羽根だった。募金箱の方は持ち上げたら時にチャリチャリ音がしたのでコインが何枚か入っているのだろう。首を傾げていれば丁度ペンギンが共同部屋へとやって来て目が合ったので説明して貰った。
1492「何これ」
二週間の出張から帰ってきたら、いつの間にか共同部屋の机の上に置かれていた箱二つ。一つはくじ引きの様な箱でもう一つは募金箱の様なものだった。箱には「コラさんの羽共同募金」と書かれている。少なくとも出張に行く前にはなかった。
くじ引きの様な箱に手を突っ込んでみるとふわふわした感触があって中身を一つ取り出してみればそれは良く羽織っている黒い羽コートから取れたとおもしき黒い羽根だった。募金箱の方は持ち上げたら時にチャリチャリ音がしたのでコインが何枚か入っているのだろう。首を傾げていれば丁度ペンギンが共同部屋へとやって来て目が合ったので説明して貰った。
雪雨風樹
INFOついこないだこちらにて投稿した新作のゴウコハイラストですが、実は小説の表紙用に描いたものでして、先程pixivにてゴウコハ小説を投稿いたしました☆(^_^)ゞ一応センシティブなので編集した画像にワンクッション貼らせていただきますが、🔞にして長編小説となってしまったので、お時間に余裕のあるゴウコハ民の方々にオススメいたします(^-^)
mksm
DONEイベント召装の可愛さに毎日やられてて、イベント終わるのがほんとに名残惜しいです毎日報告書ニチャニチャしながら眺めてるオシショにあと1日で終了なんて言わないでほしいー!
いゆーのいちゃこいてるのを笑って眺めてるへーが天使だったし編集者の顔がチラッチラしてるきょもよかった…なんでそんなにかわいいのかよ
そしてみんなでつくる気軽なアンソロジーみたいなこと言ってますがあまりにも豪華ですよね
どこで販売してるんだほしい 2
wesker_uji
PAST【2020】さんだる短編集ルシサン『二人乗りの船』※当時めちゃくちゃ締め切りヤバヤバだったので絵や装飾むちゃくちゃ雑いです。
絵のヤバさをスルーしてみれる方推奨です
パスワード トリプルゼロ英数字 13
yorusuke_risei
DONEsgoの日に付きもっかいweb再録〜短編集「そしてあなたと居るのです」に収録の夏のお話。
全年齢です🥰
Such a summer つう、と耳の下から首をつたって汗が流れる。暑い。じわりじわりと、細胞が死んでいくような感覚がある。俺でこれだけ暑いのだから、暑がりの汗っかきである杉元には堪ったもんじゃねぇだろうなと思ってしまって、あー、片想いなんてするもんじゃねぇなとサンダルを脱ぎ捨てる。室内に戻りベランダのガラス戸を閉めて、クーラーの直風を浴びながら今日の荷物の到着予定を確認した。
在宅ワークで他人と関わる頻度が特段低い俺が杉元と知り合ったきっかけは、杉元が運送業者の配達員だったからだ。
あれも確か馬鹿みたいに暑い夏の日、チャイムに応じてドアを開ければ随分な男前が荷物を抱えて立っていた。制服はいつも利用するところのものなのに、顔が見慣れない。うちの担当は初老の髪の薄い男だったのに。休みか何かかと考えながらサインをしていると、溌剌とした声が頭に降ってくる。
6841在宅ワークで他人と関わる頻度が特段低い俺が杉元と知り合ったきっかけは、杉元が運送業者の配達員だったからだ。
あれも確か馬鹿みたいに暑い夏の日、チャイムに応じてドアを開ければ随分な男前が荷物を抱えて立っていた。制服はいつも利用するところのものなのに、顔が見慣れない。うちの担当は初老の髪の薄い男だったのに。休みか何かかと考えながらサインをしていると、溌剌とした声が頭に降ってくる。
あずみ
PAST遅ればせながら2023年の総数はイラスト20枚/漫画21枚でした。今年は本の編集作業に時間をかけたので、去年に比べて漫画が描けなかったんですが、念願のお花千ゲ本+二年半分のすべてを出し切ったWEB再録2で合計ジャスト200頁フルカラー!なかなかに狂気でした。笑 ここから私の千ゲ同人3期目が始まったかと思うと、不思議とまだまだ新鮮な気持ちです(5年目だけど)gesshirui94
DONE本当はもうちょっと作業残っているのですが、ひとまずサンプルアップします。◆ロ君が30年後以降に転化する前提で、転化前やその後のドラロナや周囲の人々の話を詰めた短編集です。
◆B5/全年齢向け/52P イベント頒布価格:700円 書店価格:990円(税込み)
◆1/7 インテックス大阪 2号館さ48a「FLIP FLAP」にて頒布いたします。 17
Mcy1119g
DOODLE※水父 ⚠️転生パロ(編集者💧×作家👁️)頭を空っぽにして読む系SSです。
設定ゆるふわ・アホな話のはずです(当社比)
寝る前にちょっとでも笑ってもらえたら。
書き初めでした。新年よろしくお願いいたします。
※転生編集作家設定発案者:コマユさん 2914
welxest
DONEライトとハルマ年賀状で旅ただせるやつ。文字が残っちゃったので編集で消しました(笑)
ハルマは何回か描いたんだけど、過去一番可愛く描けた気がする…。ライトは初めてだったけど、髪型がなかなか結構難しかった。 2
3Dの進捗どうですか
PAST230218から配布までの期間のスクショデータ整理していて出てきたので共有
1.テクスチャ作業時の画面構成
psdをテクスチャにさす→ペイントソフトで編集、保存→Blenderでテクスチャ更新
このやり方だとレイヤーで管理できるのでやり直し効いてよかったです。
※画面の白のところにリファレンス置いてます
2.袖をミラーでつくってた結果、半袖ジャージベストの格好になったきん 4
東雲 琥珀
MENU絵チャグループ「ふあめいと。」様のヘッダーを作成させていただきました!本当に仮のようなものですし、がっつりは作ってないのでまた立ち絵が定まったらにさせていただきます!
ふあめいと。様は他にもメンバー様の3Dモデルや編集もさせていただきます!(ありがたい…)ガッツリ作ったらまた上げます!
ふあめいと。様のSNS↓(3こ圧縮してます!)
https://kuku.lu/tfae5
ichizero_tkri
DONE12/12頒布の将参(🌟🎈)同人誌の書き下ろし分の、🔞シーンをカットしたものをこちらに再録します。行為を匂わせる描写はありますが、18歳以下の方もお読みになれる全年齢対応編集版になっています。
◆それから愛は未来を唄う
「──うむ、良い報告書だ。ありがとう、下がっていいぞ」
部下の一人から差し出された報告書に、ツカサは微笑を携えて頷く。ありがとうございます、と返した部下は深々と頭を下げ、その傍に控える元参謀にも和やかに会釈をして執務室を去っていく。未だ慣れないながらも、ルイも小さく頭を下げる。
かつて──大臣に道具として飼われていた頃は、こうも心穏やかに職務に励むことなどあっただろうか。それを労わるように頭を下げられることなど。ツカサにこの心身を捧げ、仕えるようになってからもう随分と経つが未だ、慣れない。──というよりは、落ち着かない、気恥ずかしいという言葉の方が相応しいのかも知れない。
一人静かに戸惑うルイを横目に、ツカサは先刻受け取った報告書に再度視線を落とす。黒い油の研究経過報告書。あの大臣が、ルイを遣わしてまで奪おうとした理由もわからないでもない。どうやらルイは、現存する大臣の部下の中でもとりわけ実力のある人物であったらしい。それだけ早々に心を殺して操り人形になることを選択した結果なのだろうと思うと、手離しに褒めてやれる気分にはなれない。いつか見た夢の、幼い姿の彼を思い返す。あんなに小さな頃から、家族という拠り所を失い一人苦悶の中生きてきたのだろう。ツカサはその顔に痛みを浮かべる。この幼子の道筋に思いを馳せる度、同等と呼ぶには傲慢な感情に胸が痛むのだ。
30192「──うむ、良い報告書だ。ありがとう、下がっていいぞ」
部下の一人から差し出された報告書に、ツカサは微笑を携えて頷く。ありがとうございます、と返した部下は深々と頭を下げ、その傍に控える元参謀にも和やかに会釈をして執務室を去っていく。未だ慣れないながらも、ルイも小さく頭を下げる。
かつて──大臣に道具として飼われていた頃は、こうも心穏やかに職務に励むことなどあっただろうか。それを労わるように頭を下げられることなど。ツカサにこの心身を捧げ、仕えるようになってからもう随分と経つが未だ、慣れない。──というよりは、落ち着かない、気恥ずかしいという言葉の方が相応しいのかも知れない。
一人静かに戸惑うルイを横目に、ツカサは先刻受け取った報告書に再度視線を落とす。黒い油の研究経過報告書。あの大臣が、ルイを遣わしてまで奪おうとした理由もわからないでもない。どうやらルイは、現存する大臣の部下の中でもとりわけ実力のある人物であったらしい。それだけ早々に心を殺して操り人形になることを選択した結果なのだろうと思うと、手離しに褒めてやれる気分にはなれない。いつか見た夢の、幼い姿の彼を思い返す。あんなに小さな頃から、家族という拠り所を失い一人苦悶の中生きてきたのだろう。ツカサはその顔に痛みを浮かべる。この幼子の道筋に思いを馳せる度、同等と呼ぶには傲慢な感情に胸が痛むのだ。