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MAIKING画家パロ。小さい頃から夢で見るひとの絵を描く干空ちゃんのお話。ちまちま続きます。夢を見た。
きんいろの波が風にやさしく揺れていて。
そこに、誰かがたたずんでいた。
視線に気づくと、風になびくしろい髪をそっと手で掻き上げて。
そのひとは、ふわりとやわらかくわらった。
目をあけると、ウソみたいにまっさおに晴れた空とやさしい陽射しがカーテンごしに覗いた。見回しても、そのおもかげはどこにも見当たらなくて。
つきん、と胸の奥が痛くなる。
おもかげを追い求めるように窓を開けると、一陣の風が吹き付けた。
視界をかすめるしろいはなびらに、ひどく寂寥感を誘われて。
気がついたら、涙がこぼれていた。
なにがかなしいのか。
なにがさみしいのか。
……それはわからない。
否。きっと。
夢の中の、ほんのわずかな邂逅が。そのひとが目の前にいないことが。
1163きんいろの波が風にやさしく揺れていて。
そこに、誰かがたたずんでいた。
視線に気づくと、風になびくしろい髪をそっと手で掻き上げて。
そのひとは、ふわりとやわらかくわらった。
目をあけると、ウソみたいにまっさおに晴れた空とやさしい陽射しがカーテンごしに覗いた。見回しても、そのおもかげはどこにも見当たらなくて。
つきん、と胸の奥が痛くなる。
おもかげを追い求めるように窓を開けると、一陣の風が吹き付けた。
視界をかすめるしろいはなびらに、ひどく寂寥感を誘われて。
気がついたら、涙がこぼれていた。
なにがかなしいのか。
なにがさみしいのか。
……それはわからない。
否。きっと。
夢の中の、ほんのわずかな邂逅が。そのひとが目の前にいないことが。
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DONE千ゲ職業パロ。年齢逆転。消防士の干空ちゃんと駆け出しマジシャンのゲのやつ
『○○区××3丁目で火災発生、芸能事務所。ほぼ避難は完了だが、事務所内に取り残された要救助者がいる可能性がある。現場に急行せよ』との報を受け、この春転属でレスキュー隊に配属になったばかりの彼も、現場へ出場することとなった。
オレンジ色の救助服に袖を通し、補強部分の点検を行う。納まりの悪い髪を後ろで一つに束ねて、ヘルメットを小脇に抱えた。
「 早く来い、新入り!」
「 うす 」
短く返して、足早に現場へ向かう。
到着すると、現場はすでに先着の隊によりほぼ鎮火されていたが、ソーラーパネルの設置された一角には漏電や感電の危険があり、広範囲の放水ができないため、膠着状態になっているようだった。
「 太陽電池モジュールの発電を強制シャットダウンさせるか、遮光剤の噴霧で何とかならねぇんすか?」
1566オレンジ色の救助服に袖を通し、補強部分の点検を行う。納まりの悪い髪を後ろで一つに束ねて、ヘルメットを小脇に抱えた。
「 早く来い、新入り!」
「 うす 」
短く返して、足早に現場へ向かう。
到着すると、現場はすでに先着の隊によりほぼ鎮火されていたが、ソーラーパネルの設置された一角には漏電や感電の危険があり、広範囲の放水ができないため、膠着状態になっているようだった。
「 太陽電池モジュールの発電を強制シャットダウンさせるか、遮光剤の噴霧で何とかならねぇんすか?」
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DONEお互いの色に染まる奇病にかかった千ゲの話colorsそれは、突然のことだった。
ある朝起きて、いつものように、隣に眠る恋人の髪を撫でると、白い髪が触れた部分からうすい緑色に染まっていった。色の変化は、そこに留まらず。
黒い髪も、徐々にその色を変えていく。白黒半々の髪が、すっかり自分と同じ色に染まった頃、ようやくゲンは目を開けた。
「 ……うん?……おはよー、せんくーちゃん……なんか、あった?」
開いた目は、いつもの青みがかった闇色ではなく、茶色みがかった赤色で。
鏡で見慣れた色のはずなのに、ゲンの目に嵌っていると硝子玉めいていて。……ねこの目のように見えた。
小首を傾げるゲンに、鏡を差し出すときょとんと目を見開いた。
「 えっ、千空ちゃんカラーになってる?なにこれカラコン?」
1056ある朝起きて、いつものように、隣に眠る恋人の髪を撫でると、白い髪が触れた部分からうすい緑色に染まっていった。色の変化は、そこに留まらず。
黒い髪も、徐々にその色を変えていく。白黒半々の髪が、すっかり自分と同じ色に染まった頃、ようやくゲンは目を開けた。
「 ……うん?……おはよー、せんくーちゃん……なんか、あった?」
開いた目は、いつもの青みがかった闇色ではなく、茶色みがかった赤色で。
鏡で見慣れた色のはずなのに、ゲンの目に嵌っていると硝子玉めいていて。……ねこの目のように見えた。
小首を傾げるゲンに、鏡を差し出すときょとんと目を見開いた。
「 えっ、千空ちゃんカラーになってる?なにこれカラコン?」
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MAIKINGパラレル千ゲ。親の口約束で許婚になってる設定の両片思いネタ。
めちゃくちゃ途中ですが書いたとこまで
JUST FALL IN LOVE① ……恋は落ちるもの、なんてよく言うけれど、そんなの創作の中だけのことで。
本当にそうだなんて思わなかった。
君に、出会うまでは。
親同士が決めた許婚との顔合わせの席で、手持ち無沙汰にカードをいじっていたら。
突然。
君が視界に飛び込んできた。
「 おいテメー今のどうやりやがった!?」
それは初歩的なカード消失マジックだったけれど、よほど彼の興味を引いたらしく。
好奇心に、きらきらとおおきなあかい瞳を輝かせて彼はずい、とこちらに詰め寄った。すべてを暴こうとするようなその視線から、目が離せなくて。
どくん、と大きく響いた鼓動とともに、時間が止まる。
この顔は知っている。事前に母から渡された写真にあった顔だ。けれど、写真ではもっと無表情で。こんな。
2674本当にそうだなんて思わなかった。
君に、出会うまでは。
親同士が決めた許婚との顔合わせの席で、手持ち無沙汰にカードをいじっていたら。
突然。
君が視界に飛び込んできた。
「 おいテメー今のどうやりやがった!?」
それは初歩的なカード消失マジックだったけれど、よほど彼の興味を引いたらしく。
好奇心に、きらきらとおおきなあかい瞳を輝かせて彼はずい、とこちらに詰め寄った。すべてを暴こうとするようなその視線から、目が離せなくて。
どくん、と大きく響いた鼓動とともに、時間が止まる。
この顔は知っている。事前に母から渡された写真にあった顔だ。けれど、写真ではもっと無表情で。こんな。
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DONEフォロワーさんと話してた歯医者の干空せんせーと歯科助手のゲのお話。モブ目線「 ……ククク、虫歯退治のお時間だぜ」
診察台に座る少年に、ドリルを片手に凶悪な顔で笑いかけるのは、この歯科医院の若き院長先生だ。
虫歯よりむしろ先生の顔が怖い。
そう震え上がる少年に、隣の愛想の良い男がヘラヘラと笑いながら手を振った。
そのままばさっと滅菌カバーを広げて首から巻きつけると、痛かったら手をあげてくださーい♪と声をかける。
「 大丈夫、千空ちゃんは上手だから痛くないよ〜♬」
「 ……誤解招きそうな言い回しするんじゃねぇよ」
千空ちゃん、と呼ばれた若い医師はてきぱきと手際良く治療を進めながら、苦虫を噛み潰したような顔をした。
……確かにほとんど痛みを感じないが、ドリルで歯を削られる時は流石に怖くて。
904診察台に座る少年に、ドリルを片手に凶悪な顔で笑いかけるのは、この歯科医院の若き院長先生だ。
虫歯よりむしろ先生の顔が怖い。
そう震え上がる少年に、隣の愛想の良い男がヘラヘラと笑いながら手を振った。
そのままばさっと滅菌カバーを広げて首から巻きつけると、痛かったら手をあげてくださーい♪と声をかける。
「 大丈夫、千空ちゃんは上手だから痛くないよ〜♬」
「 ……誤解招きそうな言い回しするんじゃねぇよ」
千空ちゃん、と呼ばれた若い医師はてきぱきと手際良く治療を進めながら、苦虫を噛み潰したような顔をした。
……確かにほとんど痛みを感じないが、ドリルで歯を削られる時は流石に怖くて。
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PAST千ゲ十○国記パロ12(完)隆国主従を見送って、二人は内殿に戻った。嵐のような王だったが、おかげで様々な問題が解消したことについては本当に感謝している。
そして。
彼にはもうひとつ、解決すべき問題が残っていた。
「 ……千空ちゃん、気づいてたんだね」
そう切り出すと、千空は怪訝な顔をした。
「 あ"ぁ?……何の話だ?」
つか、どれの話だ?と問い返されて。
全部知ってたみたい、と言う羽京の言葉を思い出した。答えに迷っていると、今度は千空の側から口を開く。
「 テメーが麒麟だってことなら蓬山で言った通りだ。俺が王らしいってことなら、…… 」
そこで一旦言葉を切って、手招きをして来た。とことことそばに行くと、おおきな手であたまを撫でられた。
2361そして。
彼にはもうひとつ、解決すべき問題が残っていた。
「 ……千空ちゃん、気づいてたんだね」
そう切り出すと、千空は怪訝な顔をした。
「 あ"ぁ?……何の話だ?」
つか、どれの話だ?と問い返されて。
全部知ってたみたい、と言う羽京の言葉を思い出した。答えに迷っていると、今度は千空の側から口を開く。
「 テメーが麒麟だってことなら蓬山で言った通りだ。俺が王らしいってことなら、…… 」
そこで一旦言葉を切って、手招きをして来た。とことことそばに行くと、おおきな手であたまを撫でられた。
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PAST千ゲ十○国記パロ11「 ……龍水、やりすぎ。そこまでする必要はないだろ? 」
言葉と同時に、髪を掴んでいた手の感触が消える。視線を上げると、龍の手を彼の麒麟が払い除けたところだった。
「 ……ごめんね、大丈夫?……ああ、真っ青だ。千空、どこか彼を休ませられるところはあるかい? 」
頓着なく袖で汗を拭いながら、助け起こしてくれる。
「 あ"ぁ、そこの長椅子使ってくれ。手間かけるな、羽京 」
砕けたいつもの口調。……どうやら、この二人は顔見知りらしい。状況がわからず、ようやく起こした身体を羽京と呼ばれた麒麟が支えてくれた。
「 ……えぇと……?」
そんな二人の様子を、半ば呆れたように、半ば興味深そうに眺めながら、龍が口を開いた。
3206言葉と同時に、髪を掴んでいた手の感触が消える。視線を上げると、龍の手を彼の麒麟が払い除けたところだった。
「 ……ごめんね、大丈夫?……ああ、真っ青だ。千空、どこか彼を休ませられるところはあるかい? 」
頓着なく袖で汗を拭いながら、助け起こしてくれる。
「 あ"ぁ、そこの長椅子使ってくれ。手間かけるな、羽京 」
砕けたいつもの口調。……どうやら、この二人は顔見知りらしい。状況がわからず、ようやく起こした身体を羽京と呼ばれた麒麟が支えてくれた。
「 ……えぇと……?」
そんな二人の様子を、半ば呆れたように、半ば興味深そうに眺めながら、龍が口を開いた。
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PAST千ゲ十○国記パロ10それから二日ほど経ったある日のことだった。相変わらず水面下で忙しく駆け回っている時に内殿から遣いがあって、礼服に着替えてくるように言われた。
来客や式典の予定は春官長から聞いていなかったが、敢えて礼装を求めるのであれば、急な……しかも重要な来客があったのだろう。
急ぎ礼服に改め、身形を整えると、内殿の指示された一画に向かった。
そこには千空の他にもう二人、見慣れない姿があった。
正面に座ったのは、千空と同年輩に見える男だった。おそらくこの男が主賓なのだろう。脇には、ゲンと同世代か、少し年長と思われる青年が控えている。
青年は薄い栗色の髪を短くまとめていたが、その輪郭を縁取るように、ごく淡く金色の光を纏っていた。──そう見えた。
2821来客や式典の予定は春官長から聞いていなかったが、敢えて礼装を求めるのであれば、急な……しかも重要な来客があったのだろう。
急ぎ礼服に改め、身形を整えると、内殿の指示された一画に向かった。
そこには千空の他にもう二人、見慣れない姿があった。
正面に座ったのは、千空と同年輩に見える男だった。おそらくこの男が主賓なのだろう。脇には、ゲンと同世代か、少し年長と思われる青年が控えている。
青年は薄い栗色の髪を短くまとめていたが、その輪郭を縁取るように、ごく淡く金色の光を纏っていた。──そう見えた。
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PAST千ゲ十○国記パロ9「 ……オイ、こらゲン、テメーちゃんと寝てるんだろうな?」
ある日、ふいにそんなふうに呼び止められた。……作り慣れた表情の筈なのに、何処か綻びが出ていたのだろうか。
内心の焦りを笑顔でコーティングして、勿論、と応えを返す。
「 ここんとこ忙しくって、ちゃんと寝れてないの、むしろ千空ちゃんの方でしょ?……すごいクマ。あとの事は俺が処理しとくから、少し休んだら?」
「 あ"ぁ、おありがてぇな。んじゃ、ちぃっと休ませてもらうわ 」
言葉と共に玉座からすくっと立ち上がり、……何故か寝所ではなくこちらに歩いてきた。無造作に腕を掴み、そのままずるずるとゲンを引きずっていく。
「 冢宰!……あ"ぁ、黒曜、俺は台輔と少し休む。その間、水路の修繕計画の書類の取りまとめを頼む。あと先延ばしになってる即位の祭礼についてはあまり予算は割けねぇ。春官長と話を詰めたら報告くれ 」
1400ある日、ふいにそんなふうに呼び止められた。……作り慣れた表情の筈なのに、何処か綻びが出ていたのだろうか。
内心の焦りを笑顔でコーティングして、勿論、と応えを返す。
「 ここんとこ忙しくって、ちゃんと寝れてないの、むしろ千空ちゃんの方でしょ?……すごいクマ。あとの事は俺が処理しとくから、少し休んだら?」
「 あ"ぁ、おありがてぇな。んじゃ、ちぃっと休ませてもらうわ 」
言葉と共に玉座からすくっと立ち上がり、……何故か寝所ではなくこちらに歩いてきた。無造作に腕を掴み、そのままずるずるとゲンを引きずっていく。
「 冢宰!……あ"ぁ、黒曜、俺は台輔と少し休む。その間、水路の修繕計画の書類の取りまとめを頼む。あと先延ばしになってる即位の祭礼についてはあまり予算は割けねぇ。春官長と話を詰めたら報告くれ 」
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PAST千ゲ十○国記パロ8ぴたり。
前を行く千空の足が止まって、思わず身構える。不安を余所に、千空からはクク、と押し殺した笑声がこぼれた。
「 ……なるほどこりゃあ、おありがてぇ。ご親切なこった 」
怪訝に思って一歩踏み出すと、即座に言葉の意味を知る。
── 何か、電流のようなものが足元から脳裏に駆け抜けた。それをきっかけに、膨大な情報が流れ込んでくる。
一歩進むごと、天地の成り立ち、国の成り立ち、制度の成り立ち。歴史、天子の責務と役割、宰相の責務と役割。天の定めた規範。
── 太綱の一に曰く、王は仁道を以って国を治むるべし。
蓬蘆宮の書庫でも目にした一節だ。
民は慈しまねばならぬ。虐げてはならぬ。民を売り買いしてはならぬ。奢侈暴虐に耽ってはならぬ。税を重くし、令を重くしてはならぬ。公地を蓄えてはならぬ。それを売り買いしてはならぬ。国政を蔑ろにしてはならぬ。徒らに戦を嗜んではならぬ。仁道と礼を以って国を治めよ。
2474前を行く千空の足が止まって、思わず身構える。不安を余所に、千空からはクク、と押し殺した笑声がこぼれた。
「 ……なるほどこりゃあ、おありがてぇ。ご親切なこった 」
怪訝に思って一歩踏み出すと、即座に言葉の意味を知る。
── 何か、電流のようなものが足元から脳裏に駆け抜けた。それをきっかけに、膨大な情報が流れ込んでくる。
一歩進むごと、天地の成り立ち、国の成り立ち、制度の成り立ち。歴史、天子の責務と役割、宰相の責務と役割。天の定めた規範。
── 太綱の一に曰く、王は仁道を以って国を治むるべし。
蓬蘆宮の書庫でも目にした一節だ。
民は慈しまねばならぬ。虐げてはならぬ。民を売り買いしてはならぬ。奢侈暴虐に耽ってはならぬ。税を重くし、令を重くしてはならぬ。公地を蓄えてはならぬ。それを売り買いしてはならぬ。国政を蔑ろにしてはならぬ。徒らに戦を嗜んではならぬ。仁道と礼を以って国を治めよ。
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PAST千ゲ十○国記パロ⑦千空を伴って甫渡宮に戻ると、女仙たちに囲まれた。空を見上げると、日が傾きかけていて。
思ったより長く、留守にしてしまっていたことに気付いた。
「 ……公、そちらのかたは 」
見慣れない若者に、警戒の目が向けられる。
それを、すっと手で制した。
「 ……俺の、王様。そんな怖い顔で囲まないであげて? 」
そこでひと呼吸置いて。
「 我が君に対し奉り、無礼であろう? 」
この上なくやわらかい声で、にこやかな笑顔で、そう告げる。
「 こ、これは……その、公……天啓、でございますか? 」
普段人畜無害に振る舞っていた主の、思いがけない反撃に動揺して、女仙の一人がようやくそう問いかけた。
「 うん、そう。……ちょうど、みんながそばにいなかったから、驚かせてメンゴね。
1890思ったより長く、留守にしてしまっていたことに気付いた。
「 ……公、そちらのかたは 」
見慣れない若者に、警戒の目が向けられる。
それを、すっと手で制した。
「 ……俺の、王様。そんな怖い顔で囲まないであげて? 」
そこでひと呼吸置いて。
「 我が君に対し奉り、無礼であろう? 」
この上なくやわらかい声で、にこやかな笑顔で、そう告げる。
「 こ、これは……その、公……天啓、でございますか? 」
普段人畜無害に振る舞っていた主の、思いがけない反撃に動揺して、女仙の一人がようやくそう問いかけた。
「 うん、そう。……ちょうど、みんながそばにいなかったから、驚かせてメンゴね。
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PAST千ゲ十○国記パロ6「期間いっぱいは興行手伝う約束で来てるから、次の中日まではこっちにいる。
なんか愚痴りたくなったら来りゃいい。」
やさしい言葉に、胸を抉られる。慰めてもらっていい立場でもないのに。
約束を守れなかったのに。
それでも会いたくて、時間が許す限り千空に会いに行った。
彼の様子に、女仙たちも今回の昇山者の中に王はいなかったのだと判断したようで、断りさえ入れておけば咎められることはなかった。
中日が近づき、興行もまもなく店仕舞いとなる。名残を惜しむゲンに、千空はいつもどおり、シニカルな笑みを浮かべた。
「まあ、器じゃなかったってんなら仕方ねぇわ。これまで通りコツコツやってくだけだ。テメーが新しい王を選んで戻ってきたら、せいぜいお抱え学者にでも登用してくれや。期待してんぞ」
1834なんか愚痴りたくなったら来りゃいい。」
やさしい言葉に、胸を抉られる。慰めてもらっていい立場でもないのに。
約束を守れなかったのに。
それでも会いたくて、時間が許す限り千空に会いに行った。
彼の様子に、女仙たちも今回の昇山者の中に王はいなかったのだと判断したようで、断りさえ入れておけば咎められることはなかった。
中日が近づき、興行もまもなく店仕舞いとなる。名残を惜しむゲンに、千空はいつもどおり、シニカルな笑みを浮かべた。
「まあ、器じゃなかったってんなら仕方ねぇわ。これまで通りコツコツやってくだけだ。テメーが新しい王を選んで戻ってきたら、せいぜいお抱え学者にでも登用してくれや。期待してんぞ」
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PAST千ゲ十○国記パロ⑤夏至が来て、事前に聞いていた通り、大勢の人間たちが昇山してきた。
こんなに沢山の人を見るのは、こちらに来てから初めてかもしれない。
いつもより豪華な衣を着せられて、進香の女仙たちに連れられて、普段とは違う離宮──甫渡宮に通される。ここが、いわゆる謁見の間のようなものなのだろう。
じっとしていても退屈なので、許可を得て散策してみることにした。いつも閑散としている区画には集落がひとつふたつ出来ており、露店なども軒を連ねている。
女仙たちから含まされていたことは三つ。
王気を感じたら……つまりお告げがあったら女仙たちに知らせること。
王がいたら、古来からのしきたり通り礼を。
御前を離れず、詔命に背かず、忠誠を誓うと誓約し、叩頭礼をする。
1358こんなに沢山の人を見るのは、こちらに来てから初めてかもしれない。
いつもより豪華な衣を着せられて、進香の女仙たちに連れられて、普段とは違う離宮──甫渡宮に通される。ここが、いわゆる謁見の間のようなものなのだろう。
じっとしていても退屈なので、許可を得て散策してみることにした。いつも閑散としている区画には集落がひとつふたつ出来ており、露店なども軒を連ねている。
女仙たちから含まされていたことは三つ。
王気を感じたら……つまりお告げがあったら女仙たちに知らせること。
王がいたら、古来からのしきたり通り礼を。
御前を離れず、詔命に背かず、忠誠を誓うと誓約し、叩頭礼をする。
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PAST千ゲ十○国記パロ4「 その蓬山ってとこに行けば、王様を選べるんだね? 」
確認するように問いかけると、彼女はゆったりと頷いた。しゃらん、と音がして、なんだかいい匂いがした。
「 ……じゃあ、行く。」
ではすぐに、と彼女は二匹の蛇が絡まったような、銀色の環を床に置く。原理はわからないが、どうもワープ装置のようなものらしい。おっとりした様子にそぐわず、意外とせっかちだ。
「 待って!俺ここの人にゴイスーお世話になってんのよ!挨拶くらいさせてよ!」
「 ……まあ、それは配慮が足りず、申し訳ありません。こちらでお待ちしておりますので、どうぞごゆるりと 」
口ではごゆるりとと言うものの、きっとそう長くは待ってもらえない。
いざとなれば、強制的に連行することも辞さないのだろうから。
1913確認するように問いかけると、彼女はゆったりと頷いた。しゃらん、と音がして、なんだかいい匂いがした。
「 ……じゃあ、行く。」
ではすぐに、と彼女は二匹の蛇が絡まったような、銀色の環を床に置く。原理はわからないが、どうもワープ装置のようなものらしい。おっとりした様子にそぐわず、意外とせっかちだ。
「 待って!俺ここの人にゴイスーお世話になってんのよ!挨拶くらいさせてよ!」
「 ……まあ、それは配慮が足りず、申し訳ありません。こちらでお待ちしておりますので、どうぞごゆるりと 」
口ではごゆるりとと言うものの、きっとそう長くは待ってもらえない。
いざとなれば、強制的に連行することも辞さないのだろうから。
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PAST千ゲ十二国記パロ3その日から、二人ぼっちの科学王国の建国が始まった。毎日素材を集め、試行錯誤を繰り返していく。ただし、残念なことに互いに肉体労働は不得手だったため、素材回収だけで一日が終わることもままあった。
ドイヒーな強制労働、などと嘯きながらも、その日々自体を苦痛に思ったことはなく、千空が作り出す様々なアイテムに、ゲンは内心胸を踊らせていた。
千空は次々と、科学で便利なものを作り出していった。
それが広まり、少しずつ周りに人が増えてきて、賑やかになっていったけれど、依然として麒麟も王も現れる気配がなく。
周囲の村や里は、今も荒れ放題だった。
二〇年もその麒麟はなにをしてるんだろう。どうして戻ってこないんだろう。
……俺がもし麒麟だったら、すぐに千空ちゃんを選ぶのに。そしたら、千空ちゃんの望みを叶えてあげられるのかなあ。
2060ドイヒーな強制労働、などと嘯きながらも、その日々自体を苦痛に思ったことはなく、千空が作り出す様々なアイテムに、ゲンは内心胸を踊らせていた。
千空は次々と、科学で便利なものを作り出していった。
それが広まり、少しずつ周りに人が増えてきて、賑やかになっていったけれど、依然として麒麟も王も現れる気配がなく。
周囲の村や里は、今も荒れ放題だった。
二〇年もその麒麟はなにをしてるんだろう。どうして戻ってこないんだろう。
……俺がもし麒麟だったら、すぐに千空ちゃんを選ぶのに。そしたら、千空ちゃんの望みを叶えてあげられるのかなあ。
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PAST千ゲ十○国記パロ②「 で?なんでそのメンタリストサマがこんなとこに流されて来やがった?首都圏中心に大津波でも来たか? 」
「 物騒なこと言わないでよ、縁起でもない!」
「 じゃあ何だよ?」
さして興味もなさそうに訊き返されて、言葉に詰まった。あまりにも荒唐無稽すぎて、説明できる気がしない。
「 ……千空ちゃん、笑わない?頭おかしいとか言わないって約束してくれる? 」
「 おう、こっちは情報はいくらあっても足りねぇくらいだ。笑わねぇからサクサク話せ 」
促されて、いつになく重い唇を持ち上げる。
「 ……オバケに、引きずり込まれたの 」
「 ……………………はぁ?」
流石に予想外だったのか。何とも言えない顔で千空はそう聞き返した。
「ほらぁ〜!やっぱりそうなるでしょ!俺だってわけわかんないもん!でもそうなんだもん!」
2387「 物騒なこと言わないでよ、縁起でもない!」
「 じゃあ何だよ?」
さして興味もなさそうに訊き返されて、言葉に詰まった。あまりにも荒唐無稽すぎて、説明できる気がしない。
「 ……千空ちゃん、笑わない?頭おかしいとか言わないって約束してくれる? 」
「 おう、こっちは情報はいくらあっても足りねぇくらいだ。笑わねぇからサクサク話せ 」
促されて、いつになく重い唇を持ち上げる。
「 ……オバケに、引きずり込まれたの 」
「 ……………………はぁ?」
流石に予想外だったのか。何とも言えない顔で千空はそう聞き返した。
「ほらぁ〜!やっぱりそうなるでしょ!俺だってわけわかんないもん!でもそうなんだもん!」
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PAST十○国記パロ千ゲ①麒麟のゲと王様の千の妄想が爆発して書いたやつ
千ゲ一作目
一応元作品知らなくても読めるように書いたつもり
「 …………あ」
月のきれいな夜だった。いつになく大きな、白い光に誘われるように辺りを逍遥して、帰り着いた玄関先で、ふと忘れ物に気づいた。
「あちゃ〜……コーラ買ってくるの忘れちゃった」
明日は久しぶりのオフで。
ゆっくりお風呂で寛いだあとのお楽しみに、買って帰ろうと思っていたのに。
今や売れっ子マジシャンである彼は、にも関わらず、コンビニでお手軽に買える、あのチープなカラメル色の液体が大好きだった。
いつでもどこでも手に入る自由さや、楽しげなイメージが好ましかったのかもしれない。
「う〜ん……まあちょっとそこまでだしね」
玄関で気づいてラッキーだったよね、とひとりごちて、今閉めたばかりのドアをくぐった。
オートロックを確認して、伊達眼鏡をかけ、帽子を目深にかぶる。
2701月のきれいな夜だった。いつになく大きな、白い光に誘われるように辺りを逍遥して、帰り着いた玄関先で、ふと忘れ物に気づいた。
「あちゃ〜……コーラ買ってくるの忘れちゃった」
明日は久しぶりのオフで。
ゆっくりお風呂で寛いだあとのお楽しみに、買って帰ろうと思っていたのに。
今や売れっ子マジシャンである彼は、にも関わらず、コンビニでお手軽に買える、あのチープなカラメル色の液体が大好きだった。
いつでもどこでも手に入る自由さや、楽しげなイメージが好ましかったのかもしれない。
「う〜ん……まあちょっとそこまでだしね」
玄関で気づいてラッキーだったよね、とひとりごちて、今閉めたばかりのドアをくぐった。
オートロックを確認して、伊達眼鏡をかけ、帽子を目深にかぶる。