Jeff
DOODLEお題:「ひとりじめ」たまにはスポイルされた子どものように
#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/09/15
Rosegarden 勘違いしていた。自分に、執着心などないと。
と、ヒュンケルは思う。
「この前話しただろ、やっと咲いたんだ。自信作だから――」
興奮気味に言うと、ラーハルトはあくび混じりに、
「また今度な」
今日も忙しい、と言い捨てて、いつものように出勤していった。
ラーハルトの主君であるバランの息子、希望の勇者ダイが帰ってきてから。
彼はずっとこんな調子だ。
――仕方ないだろう、生きていくための仕事は要る。
などど言い訳しているが、勿論「ダイ様」のためだ。
分かっている。ラーハルトの邪魔はしたくない。
けれど。
「今は俺の方が稼いでるぞ、結構」
ぶつくさ呟きながら、秘密の薔薇園へと向かう。
たわむれに魔界から持ち帰ったその枝は、伝説的希少種だった。
1083と、ヒュンケルは思う。
「この前話しただろ、やっと咲いたんだ。自信作だから――」
興奮気味に言うと、ラーハルトはあくび混じりに、
「また今度な」
今日も忙しい、と言い捨てて、いつものように出勤していった。
ラーハルトの主君であるバランの息子、希望の勇者ダイが帰ってきてから。
彼はずっとこんな調子だ。
――仕方ないだろう、生きていくための仕事は要る。
などど言い訳しているが、勿論「ダイ様」のためだ。
分かっている。ラーハルトの邪魔はしたくない。
けれど。
「今は俺の方が稼いでるぞ、結構」
ぶつくさ呟きながら、秘密の薔薇園へと向かう。
たわむれに魔界から持ち帰ったその枝は、伝説的希少種だった。
Jeff
DOODLEお題:「会心の一撃」謎理論と会心・必中。
#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/09/15
Metal ――どっちがやる?
無言のつばぜり合いを制したのは、ヒュンケルだった。
武器も持たず、奇っ怪な扉の前に進み出る。
「待たんかヒュンケル。話を聞いていたのか」
巨大な鉄のスライムが描かれた鈍色の壁には、古代文字で呪詛が綴られている。
秘宝を求める盗っ人どもよ。
我が扉を破るは、会心の一撃のみ。
資格無き者、たちどころに鉄と成れ。
扉に挑戦した盗賊たちがそこここで、アスパラガスよろしく石化している。
ここは某国僻地、財宝伝説の眠るひなびた村。
おかしな扉が発掘されてからと言うもの、欲にかられた旅人の犠牲者が絶えない。
純朴な村民たちに懇願された国王に懇願された暇人二人が、解決に駆り出された。
先の戦いの功労者、アバンの使徒ヒュンケルと元陸戦騎ラーハルトは、すっかり便利屋扱いだ。
1092無言のつばぜり合いを制したのは、ヒュンケルだった。
武器も持たず、奇っ怪な扉の前に進み出る。
「待たんかヒュンケル。話を聞いていたのか」
巨大な鉄のスライムが描かれた鈍色の壁には、古代文字で呪詛が綴られている。
秘宝を求める盗っ人どもよ。
我が扉を破るは、会心の一撃のみ。
資格無き者、たちどころに鉄と成れ。
扉に挑戦した盗賊たちがそこここで、アスパラガスよろしく石化している。
ここは某国僻地、財宝伝説の眠るひなびた村。
おかしな扉が発掘されてからと言うもの、欲にかられた旅人の犠牲者が絶えない。
純朴な村民たちに懇願された国王に懇願された暇人二人が、解決に駆り出された。
先の戦いの功労者、アバンの使徒ヒュンケルと元陸戦騎ラーハルトは、すっかり便利屋扱いだ。
きのこ
DONE #LH1dr1wr2024/08/31 お題「卵」100分程
卵は生で食べるよりも加熱したほうが良いらしいですよ。温泉卵とか良いらしいです。
先生はいつだって虎視眈々とその場を狙っていると思います。 3
Jeff
DOODLEお題:「涙」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/08/25
Goddess「おおかた、偽装だ」
と、ヒュンケルがこともなげに言う。
「もしくは、科学だ。多孔質の瞳を埋め込まれている。雨をため込み、条件が揃えば水滴が漏れ出る」
今回の依頼は、涙を流す女神像の謎だ。
美しく整った街の中心にそびえる、異教の女神。
彼女の涙は凶兆であり、伝統を重んじる人々を恐怖に陥れていた。
「そんなわけだから。この樹脂でこっそり瞳をコーティングしてしまおう。彼女は二度と涙を流さない」
ヒュンケルは眉一つ動かさず、透明な液体を塗りつけている。
「それでいいのか」と、ラーハルト。
「伝承は伝承だ。迷信だとしても、意味はあるのではないか」
ヒュンケルは驚いたように、相棒を見下ろした。
759と、ヒュンケルがこともなげに言う。
「もしくは、科学だ。多孔質の瞳を埋め込まれている。雨をため込み、条件が揃えば水滴が漏れ出る」
今回の依頼は、涙を流す女神像の謎だ。
美しく整った街の中心にそびえる、異教の女神。
彼女の涙は凶兆であり、伝統を重んじる人々を恐怖に陥れていた。
「そんなわけだから。この樹脂でこっそり瞳をコーティングしてしまおう。彼女は二度と涙を流さない」
ヒュンケルは眉一つ動かさず、透明な液体を塗りつけている。
「それでいいのか」と、ラーハルト。
「伝承は伝承だ。迷信だとしても、意味はあるのではないか」
ヒュンケルは驚いたように、相棒を見下ろした。
Jeff
DOODLEお題:「旅行」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
現ぱろです🙏
2024/08/19
Arrival 飛ぶのが好きだ。
はるか昔、子供のころから。
ヒュンケルは楕円の窓にこめかみを付けて、主翼の先を見る。
上下し始めたフラップの向こうに、オレンジ色の朝日。
最新鋭機のガラスは霜も降りず、視界はクリア。人工的な色膜が張られているようで、どこか味気ない。
まだ眠っている家々の灯火を、朝焼けが優しく包み込む。
夜よ、君らの役割は終わった。目覚めのときだ。
――皆様。
当機は間もなく、着陸態勢に入ります。
シートベルトをしっかりとお締めください。
現地時刻は午前5時57分、外気温は摂氏14度。
天候は曇り。
滑走路の混雑が予想されております。
そのため今後の状況次第では――
大きく旋回するボーイング787の下に、街の全貌が見えた。
1947はるか昔、子供のころから。
ヒュンケルは楕円の窓にこめかみを付けて、主翼の先を見る。
上下し始めたフラップの向こうに、オレンジ色の朝日。
最新鋭機のガラスは霜も降りず、視界はクリア。人工的な色膜が張られているようで、どこか味気ない。
まだ眠っている家々の灯火を、朝焼けが優しく包み込む。
夜よ、君らの役割は終わった。目覚めのときだ。
――皆様。
当機は間もなく、着陸態勢に入ります。
シートベルトをしっかりとお締めください。
現地時刻は午前5時57分、外気温は摂氏14度。
天候は曇り。
滑走路の混雑が予想されております。
そのため今後の状況次第では――
大きく旋回するボーイング787の下に、街の全貌が見えた。
きのこ
DONE #LH1dr1wr2024/08/17 お題「旅行」100分程。
この後、数百年後の世界まで『ラーヒュン旅行記』として残ることになる一品である。
※よくあるゲーム本編には関係ないけど、民家や城や図書館とかの本棚を調べるとこっそりあったりするちょっとその地方のヒントが書いてあったりするやつになる。 2
Jeff
DOODLEお題:「新品」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/08/04
Flashbacks「見てくれ、ラーハルト」
月光のごとく滑らかな頬を引き上げて、ヒュンケルが笑う。
「新品同様だ」
ラーハルトは黙って、力強い腕に触れる。
魔槍とは比べ物にならない重量を纏いながらも己を翻弄した、その無尽蔵の体力に。
「これでやっと、お前と並び立てる。戦士と名乗れる」
人形のような笑みに、ラーハルトは眼を閉じる。
「健康で、頑健で。お前と同じ速度で走れるんだ」
ヒュンケルの明朗な宣言に、ふと引きこまれそうな自分がいる。
すべての不安は解消。
腹の底に巣食う絶望は幻と化し、永遠の安堵にたゆたうことができる。
だが。
それでも。
「戻って来い」
と、ラーハルトは呼びかける。
冷徹で真摯な言葉に、ヒュンケルは俯く。
888月光のごとく滑らかな頬を引き上げて、ヒュンケルが笑う。
「新品同様だ」
ラーハルトは黙って、力強い腕に触れる。
魔槍とは比べ物にならない重量を纏いながらも己を翻弄した、その無尽蔵の体力に。
「これでやっと、お前と並び立てる。戦士と名乗れる」
人形のような笑みに、ラーハルトは眼を閉じる。
「健康で、頑健で。お前と同じ速度で走れるんだ」
ヒュンケルの明朗な宣言に、ふと引きこまれそうな自分がいる。
すべての不安は解消。
腹の底に巣食う絶望は幻と化し、永遠の安堵にたゆたうことができる。
だが。
それでも。
「戻って来い」
と、ラーハルトは呼びかける。
冷徹で真摯な言葉に、ヒュンケルは俯く。
きのこ
DOODLE #LH1dr1wr2024/07/27 お題「スイカ」170分程。
唐突な現パロ。現パロなのでラーの耳は尖ってないし紋様もないパターンのやつです。
https://poipiku.com/5185671/9719039.html
ここの二人です。古民家で生活している二人。
家庭菜園とか初めて始めた方たちでたまに起きるお話。 5
Jeff
DOODLEお題:「くさったしたい」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/07/14
現パロですすみません!
Zombies 「うわ、速い」
ヒュンケルはポップコーンを掬いながら呟く。
「走るゾンビって反則じゃないか」
深夜二時。
ラーハルトが最近買った、豪華で孤独なマンションのリビングで。
高層階の眺望に目もくれず、二人ソファにあぐらをかいて、安いホラー映画を味わっていた。
クリスタルの大皿には、ヘタだけになった苺の山。
ヒュンケルが食べたいとねだったマカロニチーズとドミノピザ・スーパーデラックスの残骸。
すっかり溶け切った氷が、ビールとシャンパンの空き瓶を冷やしている。
「腐った死体って、もっとこう」
とジェスチャーで示すヒュンケルの口に、ラーハルトがポップコーンを数粒押し込む。
「こぼすな」と叱ると、
「むぐ」ヒュンケルは大人しく咀嚼して、画面に目を戻す。
1675ヒュンケルはポップコーンを掬いながら呟く。
「走るゾンビって反則じゃないか」
深夜二時。
ラーハルトが最近買った、豪華で孤独なマンションのリビングで。
高層階の眺望に目もくれず、二人ソファにあぐらをかいて、安いホラー映画を味わっていた。
クリスタルの大皿には、ヘタだけになった苺の山。
ヒュンケルが食べたいとねだったマカロニチーズとドミノピザ・スーパーデラックスの残骸。
すっかり溶け切った氷が、ビールとシャンパンの空き瓶を冷やしている。
「腐った死体って、もっとこう」
とジェスチャーで示すヒュンケルの口に、ラーハルトがポップコーンを数粒押し込む。
「こぼすな」と叱ると、
「むぐ」ヒュンケルは大人しく咀嚼して、画面に目を戻す。
きのこ
DONE #LH1dr1wr2024/07/13 お題「くさったしたい」140分程。
ラーにはアミノ酸とかが豊富に含まれている疑惑。
それはそうと、うちのヒュンはいつだって欠食ハラヘリ青年です。 4
Jeff
DOODLEお題:「裸足」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/07/07
Sauvage こ こここ こここここ
ここ
こ。
リズミカルな足音が途絶えた。
舞踏会場から抜け出た先に、延々と続く薄暗い階段。
その先には、豪奢な大理石の玄関。
もう夜も更けたが、饗宴は明け方まで続くだろう。
逃げ道はすぐそこだ。
「まったく、大した肝っ玉だあの女王は。よりによって俺たちを、外交の場で飾り物にするとは。わが国には大魔王を倒した勇者の仲間が控えている、女王の命令に馳せ参じるのだと示したかったのだろう。都合よく使ってくれる……ええい、この刺繍の凝った襟、きつくてかなわん。とにかくやることはやった、報酬は期待できる。この忌々しい正装も、館から出るまでの辛抱だ。そうだろう、ヒュンケル――」
しばし虚空に話しかけていたことに気づく。
1545ここ
こ。
リズミカルな足音が途絶えた。
舞踏会場から抜け出た先に、延々と続く薄暗い階段。
その先には、豪奢な大理石の玄関。
もう夜も更けたが、饗宴は明け方まで続くだろう。
逃げ道はすぐそこだ。
「まったく、大した肝っ玉だあの女王は。よりによって俺たちを、外交の場で飾り物にするとは。わが国には大魔王を倒した勇者の仲間が控えている、女王の命令に馳せ参じるのだと示したかったのだろう。都合よく使ってくれる……ええい、この刺繍の凝った襟、きつくてかなわん。とにかくやることはやった、報酬は期待できる。この忌々しい正装も、館から出るまでの辛抱だ。そうだろう、ヒュンケル――」
しばし虚空に話しかけていたことに気づく。
きのこ
DONE #LH1dr1wr2024/06/29 お題「おねだり」130分程。
うちのラーヒュンはいつだってやりたい放題なので、こんなの二人じゃない!!と思われる方には大変申し訳なく。
それはさておき、ネタがマンネリ化してきているのはどうにかしないといけない…。 4
Jeff
DOODLEお題:「雷」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/06/23
Storm「俺は、結構好きだ」
ヒュンケルは呟いて、ラーハルトの頭頂部に鼻を埋めた。
埃っぽい山小屋の寝台で。
酢漬けのニシンみたいに、二人ぴったりとくっついて。
蒼い額に皺が寄る。
「雷が?」
と、ラーハルトは絞り出すように言って、シーツをたくし上げた。
「そう」
ヒュンケルは彼の長い耳を覆うように腕を回すと、ぷあ、とあくびをした。
嵐の夜は、いつもこうだ。
ラーハルトは三度目の雷鳴で、必ず相棒のベッドに忍び込んでくる。慣れたもので、ヒュンケルは何も言わずに、大きな猫を抱きしめる。
互いの過去、心の傷については、過剰に踏み込まない。
旅を続けるうちに出来上がった、暗黙のルールだった。
子供特有の、水蜜桃みたいに柔らかな精神。
2787ヒュンケルは呟いて、ラーハルトの頭頂部に鼻を埋めた。
埃っぽい山小屋の寝台で。
酢漬けのニシンみたいに、二人ぴったりとくっついて。
蒼い額に皺が寄る。
「雷が?」
と、ラーハルトは絞り出すように言って、シーツをたくし上げた。
「そう」
ヒュンケルは彼の長い耳を覆うように腕を回すと、ぷあ、とあくびをした。
嵐の夜は、いつもこうだ。
ラーハルトは三度目の雷鳴で、必ず相棒のベッドに忍び込んでくる。慣れたもので、ヒュンケルは何も言わずに、大きな猫を抱きしめる。
互いの過去、心の傷については、過剰に踏み込まない。
旅を続けるうちに出来上がった、暗黙のルールだった。
子供特有の、水蜜桃みたいに柔らかな精神。
chihomuuran
DONE #LH1dr1wrラーヒュンワンドロ
お題「日焼け」
R18ほどではないがそういう雰囲気は少し
ヒュンケルは白や銀色の男だと思われているが、近づいてみるといろんな色が隠れている。
例えばここ。肩から背中にかけて薄らと影を落としたような幾つかの細かな模様。
「そばかすだ」
ラーハルトがそう言って背後から指でなぞると、風呂上がりのヒュンケルが驚いたように首を左右から後ろに捻る。が、残念ながらそばかすの部分までは見えない角度である。
「自分で気づいてなかったのか?」
「いや、知っていたが…まだ残っているとは思わなかった。昔、子供の頃に酷い日焼けをして…」
「地底魔城で日に焼けるようなことがあったのか?」
「いや、アバンに連れられていた頃だ」
曰く、アバンと旅をしていた頃のヒュンケルは、師を仇と思い心を開くまいとしていても教わる内容はやはり面白く、結果黙々と教わった事に没頭することで会話を避けつつも師事の建前は守るという絶妙な距離の弟子として過ごしていた、らしい。
1157例えばここ。肩から背中にかけて薄らと影を落としたような幾つかの細かな模様。
「そばかすだ」
ラーハルトがそう言って背後から指でなぞると、風呂上がりのヒュンケルが驚いたように首を左右から後ろに捻る。が、残念ながらそばかすの部分までは見えない角度である。
「自分で気づいてなかったのか?」
「いや、知っていたが…まだ残っているとは思わなかった。昔、子供の頃に酷い日焼けをして…」
「地底魔城で日に焼けるようなことがあったのか?」
「いや、アバンに連れられていた頃だ」
曰く、アバンと旅をしていた頃のヒュンケルは、師を仇と思い心を開くまいとしていても教わる内容はやはり面白く、結果黙々と教わった事に没頭することで会話を避けつつも師事の建前は守るという絶妙な距離の弟子として過ごしていた、らしい。
きのこ
DONE #LH1dr1wr2024/06/08 お題「けいけんち」120分ほど。
がっつりネタ被りしてしまいましたが気にしない。ヒュンは色んな本読んで知識だけはあるけどいろんなことの経験が伴ってないイメージがありますね。
なお、本は姫から借りました。 4
きのこ
DOODLE #LH1dr1wr2024/06/01 お題「ソフトタッチ」130分ほど。
お前は何よりも優しく触れないと簡単に壊れてしまいそうで…。そう思い、俺は硝子細工を扱うよりも丁寧に、大切に、触れるしかなかった… 4
Jeff
DOODLEお題:「ダイエット」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/05/26
Dungeon「お前が」
ヒュンケルは、自分の声量に驚いて俯いた。
ぽそぽそと続ける。
「お前が……言ってくれたから」
ラーハルトは頭を抱えて突っ伏したまま、「何をだ」と言い返す。
「俺の、頬骨がきれいだって」
そうだ、確かに言った。
戦後にひと回り細くなってしまった相棒は、彫刻めいた美を纏っている。
痩せた腕を切なそうに見ている元戦士に、慰め半分、情欲半分で。
青白い頬に触れ、甘く囁いてみたのだった。
まさかその一言が、ヒュンケルの歪んだ美意識に着火してしまうとは。うかつだった。
「だから、その。お前もやはり、ああいうのが好みなんだろうなと」
当人はもじもじと顔を赤らめる。
「?」
「もう少しだけ痩せたら、近づけるかと思ったんだ」
1968ヒュンケルは、自分の声量に驚いて俯いた。
ぽそぽそと続ける。
「お前が……言ってくれたから」
ラーハルトは頭を抱えて突っ伏したまま、「何をだ」と言い返す。
「俺の、頬骨がきれいだって」
そうだ、確かに言った。
戦後にひと回り細くなってしまった相棒は、彫刻めいた美を纏っている。
痩せた腕を切なそうに見ている元戦士に、慰め半分、情欲半分で。
青白い頬に触れ、甘く囁いてみたのだった。
まさかその一言が、ヒュンケルの歪んだ美意識に着火してしまうとは。うかつだった。
「だから、その。お前もやはり、ああいうのが好みなんだろうなと」
当人はもじもじと顔を赤らめる。
「?」
「もう少しだけ痩せたら、近づけるかと思ったんだ」
Jeff
DOODLEお題:「なんだこれ」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/05/19
Passenger 電車が減速するひとときが、何とも言えず好きだ。
と、ラーハルトは思う。
どうせ大した事故じゃない。
線路わきで未知の救難信号を傍受したとか、つむじ風に煽られた世界樹がごっそり毒の花粉を飛ばしたとか。
『永遠の若さを手に ○○化粧品』
『欠陥品アウトレット 全品半額』
『洗濯革命 ナノ分子の強力浄化』
『歴史ある舞台○○ ついに終演』
賑やかな看板が、緩慢に通り過ぎていく。
線の塊だった高速の車窓が、徐々に収束し、像を結ぶ。
踏切のむこうで俯く会社員。薄汚れたベランダにはためくシーツ。
売春宿のネオンと、歯医者の自撮りポスター。
どこまでも続く四角張った世界と、その奥にあるくたびれた営み。
ささいな日常が、不意打ちのように視界に飛び込んでくる。
1803と、ラーハルトは思う。
どうせ大した事故じゃない。
線路わきで未知の救難信号を傍受したとか、つむじ風に煽られた世界樹がごっそり毒の花粉を飛ばしたとか。
『永遠の若さを手に ○○化粧品』
『欠陥品アウトレット 全品半額』
『洗濯革命 ナノ分子の強力浄化』
『歴史ある舞台○○ ついに終演』
賑やかな看板が、緩慢に通り過ぎていく。
線の塊だった高速の車窓が、徐々に収束し、像を結ぶ。
踏切のむこうで俯く会社員。薄汚れたベランダにはためくシーツ。
売春宿のネオンと、歯医者の自撮りポスター。
どこまでも続く四角張った世界と、その奥にあるくたびれた営み。
ささいな日常が、不意打ちのように視界に飛び込んでくる。
Asuka774_
DONE #LH1dr1wr「日課」です(お題間違ってましたらすみません)
1時間強前にワンドロの存在を知り、すぐさま書いたものですのでクオリティはかなり酷いです(汗
お目汚しすみません!
オレたちの日課(?)オレたちの日課と言えば『打ち合わせ』だ。つまるところダイを探すための場所にいつも目印を付けていくことだ。それは毎回朝食後に行われる。
「ラーハルト、今日の打ち合わせだがこの辺りにしてみないか?」
いつも大きな地図を出し、いくつかのポイントを挙げていく。すると背後からラーハルトが抱きついてきた。
「ヒュンケル…オレはお前と寝たい…」
「早朝から何を言っているんだお前は…さては昨日、飲み過ぎただろう!?」
ヒュンケルはやれやれとため息をついた。
「寝るどころか起きたばかりだぞ、テキパキ動け!」
「嫌だ、お前と寝たい…」
叱ってみても駄目らしい。
「お前の主人(あるじ)のためでもあろう!」
「今日ならきっとダイ様は許してくださるさ…」
1006「ラーハルト、今日の打ち合わせだがこの辺りにしてみないか?」
いつも大きな地図を出し、いくつかのポイントを挙げていく。すると背後からラーハルトが抱きついてきた。
「ヒュンケル…オレはお前と寝たい…」
「早朝から何を言っているんだお前は…さては昨日、飲み過ぎただろう!?」
ヒュンケルはやれやれとため息をついた。
「寝るどころか起きたばかりだぞ、テキパキ動け!」
「嫌だ、お前と寝たい…」
叱ってみても駄目らしい。
「お前の主人(あるじ)のためでもあろう!」
「今日ならきっとダイ様は許してくださるさ…」
きのこ
DOODLE #LH1dr1wr2024/05/11 お題「休憩」120分ほど。
ダ様のことに関しては周りと自分が見えなくなるラーのストッパーはヒュンだと思うので。お互いにお互いのストッパーであってほしい 4
きのこ
DOODLE #LH1dr1wr2024/05/04 お題「タンデム」120分ほど。
100回おめでとうございます!毎週お題をありがとうございます!これからもよろしくお願いします!
現パロの二人。ヒュンは原作軸よりちょっとしたたかでわがままにしがちです。ラーはより振り回されがち。
タンデム自転車は全国で去年から公道オッケーになったみたいです。 4
Jeff
DOODLEお題:「高嶺の花」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/04/28
出待ちの陸せん騎💐
Etoile ヒュンケルは頬杖をつき、あらためて目の前の男をじっと見た。
ベンガーナ中心街をやや外れた、洒落た一角のカフェにて。
初夏の風を楽しむ余裕もないのか、ラーハルトは呆然と掌を見つめたままだ。
「そろそろじゃないか」
ヒュンケルが声をかけると、ああ、と蚊の鳴くような声で答える。いつもの鉄面皮はどこへやら、頬の産毛が数えられそうなくらい幼く見える。
久しぶりだ、相棒のこんな姿は。
ヒュンケルはほくそ笑んで、冷たいライム水を一口含んだ。
彼の相棒、世界一の戦士ラーハルトは。
意外なことに、惚れっぽい。
数年前なら、魔界まで踏み抜く大喧嘩に発展していただろう。実際何度か揉めて、罪もない山岳が半分消し飛んだりもした。
2438ベンガーナ中心街をやや外れた、洒落た一角のカフェにて。
初夏の風を楽しむ余裕もないのか、ラーハルトは呆然と掌を見つめたままだ。
「そろそろじゃないか」
ヒュンケルが声をかけると、ああ、と蚊の鳴くような声で答える。いつもの鉄面皮はどこへやら、頬の産毛が数えられそうなくらい幼く見える。
久しぶりだ、相棒のこんな姿は。
ヒュンケルはほくそ笑んで、冷たいライム水を一口含んだ。
彼の相棒、世界一の戦士ラーハルトは。
意外なことに、惚れっぽい。
数年前なら、魔界まで踏み抜く大喧嘩に発展していただろう。実際何度か揉めて、罪もない山岳が半分消し飛んだりもした。
Jeff
DOODLEお題:「修羅場」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/04/14
Deadline それは、ある晩突然やってきた。
否、既にそこにあったのに、あえて目を逸らしていたのだ。
「それで?」
ラーハルトは冷静を保ちつつ、机に突っ伏した相棒を見下ろした。
「助けて欲しい」
と、ヒュンケルはかすれ声で返す。
見事な銀髪はこんな時にも艶めいているが、てっぺんに紙屑が絡まっていた。
「いつからだ」
重々しく問うと、罪深き男はおもむろに視線を上げた。
徹夜明けの頬に謎の文字が転写されている。インクが乾かぬまま寝入ったのだろう。
「……三日」
「本当は?」
「一週間」
「正直に言え」
「一か月、くらいだ」
「締め切りは、一か月前?」
こくり、と頷くヒュンケル。
「誤解しないでくれ、ラーハルト。これは単純なミスだ。姫の提示する原稿提出期限にはかなりの余裕がある。一か月くらい超過して丁度いい。いつもなら問題ないんだ。だが、複数の記事を請け負っていたことをすっかり忘れていて」
1874否、既にそこにあったのに、あえて目を逸らしていたのだ。
「それで?」
ラーハルトは冷静を保ちつつ、机に突っ伏した相棒を見下ろした。
「助けて欲しい」
と、ヒュンケルはかすれ声で返す。
見事な銀髪はこんな時にも艶めいているが、てっぺんに紙屑が絡まっていた。
「いつからだ」
重々しく問うと、罪深き男はおもむろに視線を上げた。
徹夜明けの頬に謎の文字が転写されている。インクが乾かぬまま寝入ったのだろう。
「……三日」
「本当は?」
「一週間」
「正直に言え」
「一か月、くらいだ」
「締め切りは、一か月前?」
こくり、と頷くヒュンケル。
「誤解しないでくれ、ラーハルト。これは単純なミスだ。姫の提示する原稿提出期限にはかなりの余裕がある。一か月くらい超過して丁度いい。いつもなら問題ないんだ。だが、複数の記事を請け負っていたことをすっかり忘れていて」
きのこ
DOODLE #LH1dr1wr2024/04/13 お題「修羅場」120分ほど。
姫はどこにでも首をつっこんでくるな…。今回いないけどポも。ツッコミ役二人にはいつもお世話になっております。
武器の意思のありなし問題は、ダの剣よりは薄めだけどちゃんとあるという設定です。持ち主のところに帰るし。 2
Jeff
DOODLEお題:「くしゃみ」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/04/07
Blessing 朝風呂は最高の贅沢だ。
と、ラーハルトは思う。
春風そよめくこの家に帰ってくると、つい所望してしまう。
彼の相棒は、汚れてもいないのに長風呂なんて気が知れない、と、子犬のように疑り深い目を向けるけれど。一緒に入るかと揶揄うと、ヒュンケルは片眉を上げるだけで、古文書の解読に没頭してしまった。
パプニカ産の高級綿を肩にかけ、裸の胸を見せつけても、微動だにせずページを繰っている。
――この至福がわからぬとは、不幸な奴め。
煌めく水面に癒されたのち、草原の香りを胸いっぱいに吸い込んで。
途端に冷えが鼻腔を刺激し、ラーハルトは珍しくくしゃみをした。
「へっくし」
「ルビスの加護あれ」と、ヒュンケル。
「む……」
1107と、ラーハルトは思う。
春風そよめくこの家に帰ってくると、つい所望してしまう。
彼の相棒は、汚れてもいないのに長風呂なんて気が知れない、と、子犬のように疑り深い目を向けるけれど。一緒に入るかと揶揄うと、ヒュンケルは片眉を上げるだけで、古文書の解読に没頭してしまった。
パプニカ産の高級綿を肩にかけ、裸の胸を見せつけても、微動だにせずページを繰っている。
――この至福がわからぬとは、不幸な奴め。
煌めく水面に癒されたのち、草原の香りを胸いっぱいに吸い込んで。
途端に冷えが鼻腔を刺激し、ラーハルトは珍しくくしゃみをした。
「へっくし」
「ルビスの加護あれ」と、ヒュンケル。
「む……」
きのこ
DOODLE #LH1dr1wr2024/04/06 お題「くしゃみ」150分ほど。
ちょっとしたことでもすぐに周りが大事にしそう。きっとそれだけみんな心配してるって事ですね。その筆頭がラー。なぜかって?ラーヒュンの民が描いてるからです! 3
きのこ
DONE #LH1dr1wr2024/03/30 お題「傷跡」150分ほど。
なんか勝手な解釈と勝手な捏造してますが、そのへんは御愛嬌ってことでお許しください。
麻さんちのネタとかぶってしまいましたが、開き直っちゃう。 3
きのこ
DOODLE #LH1dr1wr2024/03/16 お題「マーキング」100分ほど。
常々、ラーはヒュンを自らの手で自分好みに全身着飾らせたいと思ってると思うですよね。独占欲を隠しもしない。ヒュンはヒュンでラーの好きにすれば良いとか思ってそう。 3