John
SPUR MEサチマル続きました。今シリーズはサッチ26歳×マルコ26歳です。
いつかビアンカやロッサ、サッチとヤブサカがライトニング海賊団でどう親しくなったのかも書きたいものです。
A tempo「"[[rb:漆黒 > ル・ノワール]] "!!!」
「"[[rb:鳳殲火 > ほうせんか]] "!!!」
ドンッッ……!!
「……───!!!」
カトラスとカトラスが切り結べば、その衝撃は互いの掌から肩に伝わっていく。実力者同士の衝突であれば、さらに空気の爆発は大気を震わせ波紋状に広がり、周囲の人間を巻き込む。
その筈、だった。
反射的に備えようと両腕を眼前で十字に交差させていたビアンカは、いつまでも訪れない衝撃に身を低くしていた姿勢から固く閉じていた瞳をゆっくりと瞼同士を引き剥がす様に開き、絶句した。
「ここまでにしておけ、サッチ…マルコ……、兄弟喧嘩はお預けだ。───おまえらァ!!帆を畳め!キャプスタンを回せ!!」
11621「"[[rb:鳳殲火 > ほうせんか]] "!!!」
ドンッッ……!!
「……───!!!」
カトラスとカトラスが切り結べば、その衝撃は互いの掌から肩に伝わっていく。実力者同士の衝突であれば、さらに空気の爆発は大気を震わせ波紋状に広がり、周囲の人間を巻き込む。
その筈、だった。
反射的に備えようと両腕を眼前で十字に交差させていたビアンカは、いつまでも訪れない衝撃に身を低くしていた姿勢から固く閉じていた瞳をゆっくりと瞼同士を引き剥がす様に開き、絶句した。
「ここまでにしておけ、サッチ…マルコ……、兄弟喧嘩はお預けだ。───おまえらァ!!帆を畳め!キャプスタンを回せ!!」
John
DONEサチマル続きました。ここまでお読みいただいたことに、感謝の念が尽きません。少しだけ私の語りにお付き合い下さい。
私は海外の児童向けの小説を読むのを趣味にしているのですが、子供の頃に好きだった作品の作者の作品を読み漁る日々が続いていました。うまい!うまい!活字がうまい!!と貪る中で、この作品は面白いけれど私にはちょっと向いてなかったかしらん、と頬杖をつきなが(以下pixiv掲載)
Q.Did you find it 心の中で、ほんの僅かに気持ちが揺らいだ。
小石一粒、大海原に投げ込んだところで構いはしないだろうか、と。人生、最後の最後に思い残してしまったら台無しになるだろうか、と。
そうして、すぐに打ち消した。死に際で左右される様な生き方ではなかった、胸を張ってそう言える。断言出来る。
「( なぁ、おれと心中してくれるか? )」
眉一つ、呼吸一つ乱さずとも答えは返ってきていた。
この気持ちを抱いて、海の底まで持っていく。
「( だよな、たった一人じゃ旅は楽しくないもんな )」
だからこそ、言わなかった。
何一つ、いつもと行動を変えることもせず、いつもの様に宴を終えてからの行動は単独で。誰にも怪しまれることがなかった。勘の良い兄弟子にも、好物に囲まれて顔を綻ばせる弟分にも、敬愛する父親にも、勝手に心の片方を預けてしまった男にも。
11724小石一粒、大海原に投げ込んだところで構いはしないだろうか、と。人生、最後の最後に思い残してしまったら台無しになるだろうか、と。
そうして、すぐに打ち消した。死に際で左右される様な生き方ではなかった、胸を張ってそう言える。断言出来る。
「( なぁ、おれと心中してくれるか? )」
眉一つ、呼吸一つ乱さずとも答えは返ってきていた。
この気持ちを抱いて、海の底まで持っていく。
「( だよな、たった一人じゃ旅は楽しくないもんな )」
だからこそ、言わなかった。
何一つ、いつもと行動を変えることもせず、いつもの様に宴を終えてからの行動は単独で。誰にも怪しまれることがなかった。勘の良い兄弟子にも、好物に囲まれて顔を綻ばせる弟分にも、敬愛する父親にも、勝手に心の片方を預けてしまった男にも。
John
SPUR MEサチマル続きました。サッチ25×マルコ45です。
八分音符は二個並んだら繋がりあえるそうで。
八分音符の子供達 唇同士が触れ合うのが接吻、キスなら確かにそうだった。押し付けられるだけの肌の接触と言うなら、それだけかもしれないが、そうしたくはないと掌はしっかり上着の裾を握り締めていた。
三秒前までは。
八分音符の子供達
「………マルコさん、おれ…おれ、あんたのことが好…、」
「フーッ……、まぁ、そんなところだよい。感情的になって悪かったな」
サッチの指先が確かに摘んでいた上着と共に、覆い被さっていた姿は呆気ないほど簡単に身を引いてしまっていた。それはもう、温度差で風邪を引くのではないかとサッチが寒気を感じる程に。
さっきまで触れていた肌は確かに火傷する位熱かったのが、嘘のようだった。
「……好きだったなら、言ってくれりゃ良かったのに…」
14060三秒前までは。
八分音符の子供達
「………マルコさん、おれ…おれ、あんたのことが好…、」
「フーッ……、まぁ、そんなところだよい。感情的になって悪かったな」
サッチの指先が確かに摘んでいた上着と共に、覆い被さっていた姿は呆気ないほど簡単に身を引いてしまっていた。それはもう、温度差で風邪を引くのではないかとサッチが寒気を感じる程に。
さっきまで触れていた肌は確かに火傷する位熱かったのが、嘘のようだった。
「……好きだったなら、言ってくれりゃ良かったのに…」
John
SPUR MEサチマル続きました。サッチ25×マルコ45なのですが、今回回想シーンのみです。6.5と表記するか悩みましたが、間に入れ込む都合上7になりました。
12月4日ということで、1.2.4番隊隊長達の一幕です。
七つの海の子守唄「……告白、された……、」
その時の衝撃と言ったらない。
マルコは摘んでいたピックの先から危うくオリーブの実を床に転がすところだったし、サッチは泡酒を口に含んだ瞬間だっただけに蛸墨のように吹き出していた。
─── アンタらにしか、絶対に相談できないことがある。
そう頭を下げてきた可愛い弟分の表情がまるで父親に見せるように真剣なものだったから。マルコは予めサッチとどのような話がエースの口から飛び出したとしても受け止め、本人にとって一番良い回答を出来るように数日頭を悩ませていたのである。
「……なんて?」
「だから、こ……告白されたんだよ…、告白ってあれだぞ、罪とかそういうのの告白じゃなくて!!す…好きとか嫌いとかの、そういうのだ…ッ、」
12054その時の衝撃と言ったらない。
マルコは摘んでいたピックの先から危うくオリーブの実を床に転がすところだったし、サッチは泡酒を口に含んだ瞬間だっただけに蛸墨のように吹き出していた。
─── アンタらにしか、絶対に相談できないことがある。
そう頭を下げてきた可愛い弟分の表情がまるで父親に見せるように真剣なものだったから。マルコは予めサッチとどのような話がエースの口から飛び出したとしても受け止め、本人にとって一番良い回答を出来るように数日頭を悩ませていたのである。
「……なんて?」
「だから、こ……告白されたんだよ…、告白ってあれだぞ、罪とかそういうのの告白じゃなくて!!す…好きとか嫌いとかの、そういうのだ…ッ、」
John
SPUR MEサチマル続きました。サッチ25×マルコ45
歌を忘れたカナリアと
願いを叶えられない青い鳥
降れ、六花 歌を忘れたカナリアと、ひとりぼっちの青い鳥
降れ、六花
実に長い沈黙だった。
肯定はなかったが、否定の言葉もなかったのがサッチの憶測を静かに決定付けていく。
マルコが不意に立ち上がったかと思えば、机の引き出しを開けた様だった。視線で追うことは出来ずに、情けないことながら脱力を一度してしまった身体は振り返ってまで視線を動かすのも億劫で、サッチは両方の掌を顔に押し当てて背もたれに頭を預け天井を仰ぐのが精一杯であった。
最初から、違和感を感じてはいたが非現実的なことは思い浮かべもしなかった。せいぜい、知り合いと顔がそんなに似ていたのかと見当をぼんやり付ける程度で。あとは、ただの推測に過ぎなかった。
12158降れ、六花
実に長い沈黙だった。
肯定はなかったが、否定の言葉もなかったのがサッチの憶測を静かに決定付けていく。
マルコが不意に立ち上がったかと思えば、机の引き出しを開けた様だった。視線で追うことは出来ずに、情けないことながら脱力を一度してしまった身体は振り返ってまで視線を動かすのも億劫で、サッチは両方の掌を顔に押し当てて背もたれに頭を預け天井を仰ぐのが精一杯であった。
最初から、違和感を感じてはいたが非現実的なことは思い浮かべもしなかった。せいぜい、知り合いと顔がそんなに似ていたのかと見当をぼんやり付ける程度で。あとは、ただの推測に過ぎなかった。
John
SPUR MEサチマル続きました、若干シャンマル?シャン→→マル風味なのでタグ付けしましたがこの作品はサチマルです。サッチ25×マルコ45(予定)
Q.シャンクスは当て馬なんですか?
A.シャンクスがマルコを欲しいのは本当ですが、あくまで欲しいものの中のひとつです。特別ではありますが、特別と唯一とはどうやら違うようです。
五指を伸ばして、その先に「よっと……、協力に感謝する。変に暴れないでいてくれたおかげで運びやすかった」
「もがっ……!!ぜぇ、はぁ……っぜ…、ひ、人の口と鼻塞いでおいて…、あ、あんな、速さで……、か、海賊……!!」
「あはは、"海賊"か。面白いこと言うんだな。別に攫ったわけじゃないだろう?ここには、元々顔を出すつもりだったんだ……、」
広々とした、小高い丘だった。
色とりどりの花が美しく咲いていた。鳥が歌い、蝶々が戯れるあまりに美しい草原に、二つの墓石が並んでいた。そして、それらを取り込む様に無数の───主人を失ったカトラスや剣の類が無言で鎮座していた。
「ここは……」
「何だ、マルコは連れてきてくれなかったのか?」
下ろしたきり暫く噎せて込んだいたものの、すっかり立ち尽くすサッチを脇目に何処に隠し持っていたのか。取り出した酒瓶の蓋を、盃と共に取り出したシャンクスに、慌ててサッチは歩み寄る。
11075「もがっ……!!ぜぇ、はぁ……っぜ…、ひ、人の口と鼻塞いでおいて…、あ、あんな、速さで……、か、海賊……!!」
「あはは、"海賊"か。面白いこと言うんだな。別に攫ったわけじゃないだろう?ここには、元々顔を出すつもりだったんだ……、」
広々とした、小高い丘だった。
色とりどりの花が美しく咲いていた。鳥が歌い、蝶々が戯れるあまりに美しい草原に、二つの墓石が並んでいた。そして、それらを取り込む様に無数の───主人を失ったカトラスや剣の類が無言で鎮座していた。
「ここは……」
「何だ、マルコは連れてきてくれなかったのか?」
下ろしたきり暫く噎せて込んだいたものの、すっかり立ち尽くすサッチを脇目に何処に隠し持っていたのか。取り出した酒瓶の蓋を、盃と共に取り出したシャンクスに、慌ててサッチは歩み寄る。
John
SPUR MEサチマル続きました。サッチ25×マルコ45(未定)
若干のシャン→マル風味を添えて。
立ち止まった君の手を取りたい僕と。
四番目の男 さて、いつものちょっとした余談の…おれの完璧なプライベートな日記を書いておこう。うん、書いてて実感がまだ湧かないが、十三の頃からモビーの母船に乗って、それからもう七年経つって言うから時の流れはまさに矢の如しってやつだ。一生を掛けてオールブルーを探す旅の中で、まだたったの七年といえば確かにそうだが、ペン先が迷っちまうよ、いつだったかな。この日記は未来に向けてのラブレターとか書いた記憶がある。(書いてなかったら、思ってたってだけなんだが)その中に紛れて、本当の意味でのラブレターを紛れ込ませる日が来るだなんてな。
いやもう、恋だの愛だの?
出来ればしたくなかったよ、おれ!
いや、恋も愛もしたかったけれど、もう少しロマンティックな忘れられない良い思い出ってやつが欲しかった。コックって生き物は皆、ロマンティックに決まってる。全員が全員、オールブルーに憧れてるだなんて盲目的なことを言うつもりはないが、それに近い形で憧れる感情ってものが存在している。言い方はあれだが、人生のスパイス。人生に彩りを添えてくれる歌やダンスみたいなものであってほしかった。
10554いやもう、恋だの愛だの?
出来ればしたくなかったよ、おれ!
いや、恋も愛もしたかったけれど、もう少しロマンティックな忘れられない良い思い出ってやつが欲しかった。コックって生き物は皆、ロマンティックに決まってる。全員が全員、オールブルーに憧れてるだなんて盲目的なことを言うつもりはないが、それに近い形で憧れる感情ってものが存在している。言い方はあれだが、人生のスパイス。人生に彩りを添えてくれる歌やダンスみたいなものであってほしかった。
John
SPUR MEサチマル続きました。サッチ25×マルコ45。マルコが心底面倒臭いことになってます。次回あの人出ます。(予定)
三日月だけは知っている いつもの通り、ここからはおれの超プライベートな部分になる。ふと思ったんだけど、この日記はもしかしたら後世、オールブルーに辿り着いた偉大な海賊船のコックの手記として残るんじゃないか?だとしたらどうしよう、こういう部分は書かないで、もっとこう崇高な文章にした方が良いんだろうか。オヤジが航海日誌を記しているのは当然だけど、その中身までは知らない。おれも正しい航海日誌なんて書き方はわからないから、大体の進路や気候、あったことを書いているだけ。
つまり、まぁ、誰かが読むことになっても問題はないはず。ここでおれは、声を大にして言いたい。
モンブラン・ノーランドを笑ってた奴ら!!これで証明されただろ、空島はあるってこと!!
13849つまり、まぁ、誰かが読むことになっても問題はないはず。ここでおれは、声を大にして言いたい。
モンブラン・ノーランドを笑ってた奴ら!!これで証明されただろ、空島はあるってこと!!
John
SPUR MEサチマル続きました。サッチ25×マルコ45(予定)
手探りの二人です。ステファンは空気を読む犬です。
落ちた涙の二元論 ───ここまでが今日の記録、以下余談!
今日はマルコと盃の兄弟になった記念すべき日だ。祝い事に必要なのは、飾り付けられた豪華なケーキ!!…ってェのは勿論無理だけど、海の男達にとって兄弟の契りを交わすのは、海賊の掟を新しく結ぶのと同じくらいデッカくてすごいことだってのは分かった。……って書きはしたけど、ここでおれは顎に羽ペンを押し当てながら考える。ぶっちゃけ、義兄弟になろう!って、おれは結構軽い気持ちで酌み交わしちゃったりしてた。船長さんと盃を交わして配下になりたいって海賊達が、かなり物々しい面持ちであんな小さな盃を両手に押し抱く光景に仰々しいなァ…って思ってたのが本音。
義兄弟、義理の兄弟って言うとよそよそしい。じゃあ何だっておれなりに解釈してみた。
11324今日はマルコと盃の兄弟になった記念すべき日だ。祝い事に必要なのは、飾り付けられた豪華なケーキ!!…ってェのは勿論無理だけど、海の男達にとって兄弟の契りを交わすのは、海賊の掟を新しく結ぶのと同じくらいデッカくてすごいことだってのは分かった。……って書きはしたけど、ここでおれは顎に羽ペンを押し当てながら考える。ぶっちゃけ、義兄弟になろう!って、おれは結構軽い気持ちで酌み交わしちゃったりしてた。船長さんと盃を交わして配下になりたいって海賊達が、かなり物々しい面持ちであんな小さな盃を両手に押し抱く光景に仰々しいなァ…って思ってたのが本音。
義兄弟、義理の兄弟って言うとよそよそしい。じゃあ何だっておれなりに解釈してみた。
John
SPUR MEサチマル続編シリーズです。シリーズも変えようと思ったのですが、ウォッチリストに入れてくださってる皆様にも読み続けて欲しいな〜と私も願いを込めてこのままで。
サッチ25歳×マルコ45歳(予定)
余談ですがこの三連休中、空前絶後の体調不良に振り回されましたが最終日に力を出し切りました。書いてて楽しすぎてハイになったのでメンタル面は健康健康!!
輝いて、一番星 今、おれは真夜中の窓辺でこの日記を書いている。
部屋の時計は、チクタク。
身体は疲れ切っててクタクタ。
それでも眠るには目が冴えて仕方がない。窓外からは穏やかな波の音がしている、これならあと数分もしたら健やかに眠れてる気もする。本当は今までも船暮らしだったのだから、特殊な環境にある訳じゃないだろう。だとしたら、心が落ち着かないのが理由じゃなくて今までは皆のイビキがすごくて眠れなかったのかも、だ。
─── ほんと、コイツ寝息がほとんどしねェから心配にもなるよな〜…。
そっと二階建てベッドを覗き込めば、多少胸を上下させている姿がある。うん、いつ見てもこの髪型は面白い。刈り上げてるのかな、とかマジマジ流石に観察したこともあったけれど、どうやら昔からそうらしい。パイナップルが化けて出たっておれの感想は極々自然だ。綺麗な金髪だなぁ、なんて思ったり。船長さんも綺麗な長髪だ、マルコのと違って波打ってるあの髪───、ヌードルだよなぁ。うん、早く厨房で色々と使える人間になりたい。一度浮かんじまうと頭から離れねェもん。
10453部屋の時計は、チクタク。
身体は疲れ切っててクタクタ。
それでも眠るには目が冴えて仕方がない。窓外からは穏やかな波の音がしている、これならあと数分もしたら健やかに眠れてる気もする。本当は今までも船暮らしだったのだから、特殊な環境にある訳じゃないだろう。だとしたら、心が落ち着かないのが理由じゃなくて今までは皆のイビキがすごくて眠れなかったのかも、だ。
─── ほんと、コイツ寝息がほとんどしねェから心配にもなるよな〜…。
そっと二階建てベッドを覗き込めば、多少胸を上下させている姿がある。うん、いつ見てもこの髪型は面白い。刈り上げてるのかな、とかマジマジ流石に観察したこともあったけれど、どうやら昔からそうらしい。パイナップルが化けて出たっておれの感想は極々自然だ。綺麗な金髪だなぁ、なんて思ったり。船長さんも綺麗な長髪だ、マルコのと違って波打ってるあの髪───、ヌードルだよなぁ。うん、早く厨房で色々と使える人間になりたい。一度浮かんじまうと頭から離れねェもん。
John
SPUR MEサチマル続きました。次回より続編シリーズスタートです。
Colorless Earth 大勢が船縁を叩き、靴の踵を思い思いに鳴らして焚き付ける。
手拍子は不規則で拍子なんてものはあってないものだから、それが逆に乱れる心臓の音が何かの様だった。飛ぶ野次の中に、止める言葉が一切ないうえに、どちらに賭けるか海の上では使いようがないのは確かだが、右に左にどちらの勝利に賭けるかベリー札を握り締め口々に声を張り上げる野太さに、ビアンカはパイロットケースを両手に抱き締めて右往左往を繰り返す。
「誰か、サッチの野郎に賭けてやれよ!アイツがカワイソウだろうが!!」
「マルコが相手じゃ、まず無理だね。おれも勝ちはマルコに」
「賭けになんね〜〜おい、一対一じゃなくてタッグを組めよ!!ビスタがサッチに着いてやれよ!」
10590手拍子は不規則で拍子なんてものはあってないものだから、それが逆に乱れる心臓の音が何かの様だった。飛ぶ野次の中に、止める言葉が一切ないうえに、どちらに賭けるか海の上では使いようがないのは確かだが、右に左にどちらの勝利に賭けるかベリー札を握り締め口々に声を張り上げる野太さに、ビアンカはパイロットケースを両手に抱き締めて右往左往を繰り返す。
「誰か、サッチの野郎に賭けてやれよ!アイツがカワイソウだろうが!!」
「マルコが相手じゃ、まず無理だね。おれも勝ちはマルコに」
「賭けになんね〜〜おい、一対一じゃなくてタッグを組めよ!!ビスタがサッチに着いてやれよ!」
John
SPUR MEサチマル続きました。Q.サチマルなのに肝心の二人よりサブキャラ(オリジナル)が多くないですか。
A.仕様です。
Blind Black目を瞑って、暗闇
わたしの名前は、ビアンカ。
母国の言葉で白を表す私だけれど、その名前に特に思い入れはない。白って言うより、無色透明、本当にそんな感じだ。生い立ちの話をすると、少し長くなるし誰かに話すべき話でもない。
悪魔の実を食べてしまったせいで、人生がこんがらがったり逆転して幸せを掴んだり、目玉が飛び出る価値で取引される貴重な実を奪う為に、殺されてしまったり───、名前の通り"悪魔の実"は悪魔を生み出す実に違いない。
さてさて、本当にたまたま偶然食べてしまった私はどっちだったかって?
ジャミジャミの実、それが私がひもじくて齧ってしまった果実の名前だ。果実だったのかすら危うい、なんて表現したら良いのか腐った牛乳を拭いた雑巾を更に三日干さずに放置していた味が正しい。悪魔も食べられたくないから、あんな奇妙な見た目で白目を剥くような味なんだろうけれど、餓死寸前の人間の貪欲さの方がそれを上回っていたってことになる。
10712わたしの名前は、ビアンカ。
母国の言葉で白を表す私だけれど、その名前に特に思い入れはない。白って言うより、無色透明、本当にそんな感じだ。生い立ちの話をすると、少し長くなるし誰かに話すべき話でもない。
悪魔の実を食べてしまったせいで、人生がこんがらがったり逆転して幸せを掴んだり、目玉が飛び出る価値で取引される貴重な実を奪う為に、殺されてしまったり───、名前の通り"悪魔の実"は悪魔を生み出す実に違いない。
さてさて、本当にたまたま偶然食べてしまった私はどっちだったかって?
ジャミジャミの実、それが私がひもじくて齧ってしまった果実の名前だ。果実だったのかすら危うい、なんて表現したら良いのか腐った牛乳を拭いた雑巾を更に三日干さずに放置していた味が正しい。悪魔も食べられたくないから、あんな奇妙な見た目で白目を剥くような味なんだろうけれど、餓死寸前の人間の貪欲さの方がそれを上回っていたってことになる。
John
SPUR MEサチマル続きました。薔薇の蕾は、実らない恋、叶わない恋、咲かなかった恋。誰も同じで微妙に違う気がしてます。
Funeral Shellpinkシェルピンクの葬列
桜吹雪に拐われてしまいそうだなんて言葉は、似合わない。
むしろ、全ての花をその怒気で散らしてしまうのではないか。
覆い被さるマルコの、金の髪に触れて滑って風に遊ばれ落ちて行く花弁が一枚、一枚、金の月に照らされ、五年の月日を思い知る。
あどけなさの失われた頬
きっと寄せられる事がずっと多くなった眉頭。
顎髭が似合っているというのは、決して茶化したのではなく本音だった。
アルコールが入っていなかったら、怒りに震える肩を考えなしに抱き締めて再会を祝ってしまったかもしれなかった。急激に取り込んだアルコールが、普通の人体に対して真逆の作用で働くのはサッチの体質と言って良かった。
11117桜吹雪に拐われてしまいそうだなんて言葉は、似合わない。
むしろ、全ての花をその怒気で散らしてしまうのではないか。
覆い被さるマルコの、金の髪に触れて滑って風に遊ばれ落ちて行く花弁が一枚、一枚、金の月に照らされ、五年の月日を思い知る。
あどけなさの失われた頬
きっと寄せられる事がずっと多くなった眉頭。
顎髭が似合っているというのは、決して茶化したのではなく本音だった。
アルコールが入っていなかったら、怒りに震える肩を考えなしに抱き締めて再会を祝ってしまったかもしれなかった。急激に取り込んだアルコールが、普通の人体に対して真逆の作用で働くのはサッチの体質と言って良かった。
John
SPUR MEサチマル続きました。Q.サチマルの話のはずなのに、何故こんなにハルタの過去回想が多いんですか。
A.サチマルを取り巻く環境全てが大好きだからです。
Triumph of Cherry Blossom 桜の凱旋
桜が咲いて散って、はらりはらりと舞い降りる。
咲くが盛りか、散るが極みか。侍の心を持った男が深々と下げた頭を扇片手に身を起こす様は、喧騒を好む海の荒くれ者達でさえ息飲む美しさである。
父は白ひげ唯一人、主君は光月おでん唯一人。だからこそ黒地絹の紋服の左胸には光月紋、本来の利腕側である右胸には白ひげの証を染め抜いて。
白足袋、右手に翳す舞扇。
左手の袖口を小指から中指まで揃えて抑えては、三味線がチントンシャン。太鼓が追いかけ鼓を拾い、鮮やかに色を付けていく。ワノ国花柳流の祝いの時にだけ特別に舞われる"素踊り"を見られる機会は、そうはない。大金を出してでも同席出来るならばと願い出る輩は大勢居ても、金で首を振る者が生憎一人もいないのだ。
10887桜が咲いて散って、はらりはらりと舞い降りる。
咲くが盛りか、散るが極みか。侍の心を持った男が深々と下げた頭を扇片手に身を起こす様は、喧騒を好む海の荒くれ者達でさえ息飲む美しさである。
父は白ひげ唯一人、主君は光月おでん唯一人。だからこそ黒地絹の紋服の左胸には光月紋、本来の利腕側である右胸には白ひげの証を染め抜いて。
白足袋、右手に翳す舞扇。
左手の袖口を小指から中指まで揃えて抑えては、三味線がチントンシャン。太鼓が追いかけ鼓を拾い、鮮やかに色を付けていく。ワノ国花柳流の祝いの時にだけ特別に舞われる"素踊り"を見られる機会は、そうはない。大金を出してでも同席出来るならばと願い出る輩は大勢居ても、金で首を振る者が生憎一人もいないのだ。
John
SPUR MEサチマル続きました最後にちらっとですが、マルコが男娼を買ってる(抱いていると思わせる)シーンがあります。苦手な方は注意お願いします。モロなシーンは入ってないので全年齢対象です。
Crossing Magenta 赤い果実は、掌に心地良い大きさだ。
大振りのを一つ選んで、美味いかどうかは果実自体が教えてくれる。赤くて、ツヤがあって、自分は美味いと全身で主張している様なのが良い。見栄えなんてものは味には関係ないと思うのは大いに違う。味は、舌で感じなるものだけではない。嗅覚と視覚とが大きく働いている。
舌を誘う甘酸っぱい香りはするか?
シルエットは?
ついでに聴覚も働かせて、指先で丁寧にノックすれば色良い返事をしてくれる。
林檎よ、林檎。
この店の中で一番美味い林檎は、君で合ってるかい?
一口齧れば、目覚めるような甘さは持っているかい?
コンコン、と高い澄んだ音がすれば、まず歯触りの良い林檎であることに間違いない。目深に帽子を被った男の口元が笑みを浮かべる。顎には整えられた髭が、彼は成熟した男であることを伝えていた。
11171大振りのを一つ選んで、美味いかどうかは果実自体が教えてくれる。赤くて、ツヤがあって、自分は美味いと全身で主張している様なのが良い。見栄えなんてものは味には関係ないと思うのは大いに違う。味は、舌で感じなるものだけではない。嗅覚と視覚とが大きく働いている。
舌を誘う甘酸っぱい香りはするか?
シルエットは?
ついでに聴覚も働かせて、指先で丁寧にノックすれば色良い返事をしてくれる。
林檎よ、林檎。
この店の中で一番美味い林檎は、君で合ってるかい?
一口齧れば、目覚めるような甘さは持っているかい?
コンコン、と高い澄んだ音がすれば、まず歯触りの良い林檎であることに間違いない。目深に帽子を被った男の口元が笑みを浮かべる。顎には整えられた髭が、彼は成熟した男であることを伝えていた。
John
SPUR MEサチマル続きました。ハッピーバースデーマルコ。間に合ってよかったです。
今は優しい眠りに、おやすみなさい。
Good-bye Snow Whiteさよなら、スノウホワイト
まったく、恋する女ってのは綺麗なもんだ───。
白魚の様な指先が、天に向かって伸ばされて。
温かく柔らかで、無防備な雛の子でも包む様にしてその掌に載せるのは、真逆の無機質な冷たさなのだから、マルコは鼻を啜って自分の愛用のブランケットを肩に羽織直すのだった。
「トキよい、雪にはしゃぐ気持ちは分からないでもないけどさ、風邪引いちまうよ?」
「あら、マルコ。ごめんなさい、起こしてしまったかしら」
「見習いの朝は早いんだ、気にすんな」
まだ、光月おでんがトキと共に船に乗っていた頃の話だ。
空には月がまだ冴えざえと残っていたが、青みがかった銀の皿の下では昨日の夜から雪が止むことなく降り続けていた。さくり、とブーツを踏み出せば甲板に跡がくっきりと付く。そのまま歩み寄って、華奢な掌に自分の手袋を外して付けてやれば鼻の先を仄かに赤くした女が瞳を瞬かせた後、少女の様に屈託なく笑う。
10861まったく、恋する女ってのは綺麗なもんだ───。
白魚の様な指先が、天に向かって伸ばされて。
温かく柔らかで、無防備な雛の子でも包む様にしてその掌に載せるのは、真逆の無機質な冷たさなのだから、マルコは鼻を啜って自分の愛用のブランケットを肩に羽織直すのだった。
「トキよい、雪にはしゃぐ気持ちは分からないでもないけどさ、風邪引いちまうよ?」
「あら、マルコ。ごめんなさい、起こしてしまったかしら」
「見習いの朝は早いんだ、気にすんな」
まだ、光月おでんがトキと共に船に乗っていた頃の話だ。
空には月がまだ冴えざえと残っていたが、青みがかった銀の皿の下では昨日の夜から雪が止むことなく降り続けていた。さくり、とブーツを踏み出せば甲板に跡がくっきりと付く。そのまま歩み寄って、華奢な掌に自分の手袋を外して付けてやれば鼻の先を仄かに赤くした女が瞳を瞬かせた後、少女の様に屈託なく笑う。
John
SPUR MEサチマル続きました。サッチは見聞色の覇気がありますが、意識して他人のそういう自分に向ける感情の機微とか遮断してる気がします。
Perplex Paraiba Tourmalineパライバトルマリンの困惑
通信部に最近入ったばかりの若者は壁にピンボールの様に何度か衝突しながらも、若さから来る体力と根性が備わっていた。
天候は[[rb:時化 > シケ]]。横殴りに吹き付ける暴雨にどうにか抗おうと甲板に括り付ける荷やら、マスト登りの達人達が指示役の号令に合わせ一斉に引かれるロープ。揺れに揺れる船の通路は、クルー達が駆り出されているせいで走りやすくはあったが、それが逆に肌を粟立たせる様な、静かな不気味さを併せ持っている。
「船長!!電伝虫からの連絡が…!!」
半ば体当たりに近い形で開いた扉の向こう、船長室に転がり込んだ若者は部屋の主の圧倒的な品位に顔を挙げた瞬間に蹲って頭を垂れるのだ。そのズボンの丈が膝下から足りていなかろうと全くの問題はない。自分が憧れ仰ぐ船長の、僅かな憩いの時間を潰してしまったのだ。申し訳なさで自然と身体が赤い絨毯の上で丸まり床を這う。
11604通信部に最近入ったばかりの若者は壁にピンボールの様に何度か衝突しながらも、若さから来る体力と根性が備わっていた。
天候は[[rb:時化 > シケ]]。横殴りに吹き付ける暴雨にどうにか抗おうと甲板に括り付ける荷やら、マスト登りの達人達が指示役の号令に合わせ一斉に引かれるロープ。揺れに揺れる船の通路は、クルー達が駆り出されているせいで走りやすくはあったが、それが逆に肌を粟立たせる様な、静かな不気味さを併せ持っている。
「船長!!電伝虫からの連絡が…!!」
半ば体当たりに近い形で開いた扉の向こう、船長室に転がり込んだ若者は部屋の主の圧倒的な品位に顔を挙げた瞬間に蹲って頭を垂れるのだ。そのズボンの丈が膝下から足りていなかろうと全くの問題はない。自分が憧れ仰ぐ船長の、僅かな憩いの時間を潰してしまったのだ。申し訳なさで自然と身体が赤い絨毯の上で丸まり床を這う。
John
SPUR MEサチマル続きました。さらっとラク←←←ベイ匂わせがあります。
ラクヨウ最古参説、推してます。
Blood orange of Tea cup ティーカップにはブラッドオレンジ
収穫月が、昇って降りての頃だった。
「サッチ、回収した"こいつ"はお前のだろう。柄に名前が入ってたぜ」
「あぁ…ありがとうございます、そっか…海に沈んだまんまだと思ってたんで、嬉しいです」
サッチの敬語は今更なので、白ひげは好きにさせている。使うも使わないも、息子達の自由だ。それだけで距離を感じるような繊細さは持ち合わせていない。
[[rb:A・O > アー・オー]]海賊団は、解散することなく白ひげに心酔して配下へと下ることを誓った一団である。その中の、泳ぎが達者なクルー達がわざわざ引き揚げてくれたというのだから感謝しかない。サッチは大きな掌の上、柔らかな布地に置かれた包丁の柄に指先で触れる。
11023収穫月が、昇って降りての頃だった。
「サッチ、回収した"こいつ"はお前のだろう。柄に名前が入ってたぜ」
「あぁ…ありがとうございます、そっか…海に沈んだまんまだと思ってたんで、嬉しいです」
サッチの敬語は今更なので、白ひげは好きにさせている。使うも使わないも、息子達の自由だ。それだけで距離を感じるような繊細さは持ち合わせていない。
[[rb:A・O > アー・オー]]海賊団は、解散することなく白ひげに心酔して配下へと下ることを誓った一団である。その中の、泳ぎが達者なクルー達がわざわざ引き揚げてくれたというのだから感謝しかない。サッチは大きな掌の上、柔らかな布地に置かれた包丁の柄に指先で触れる。