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DOODLEハクオロとベナウィとアルルゥ。軽い日常こだわるやつはとことん「……運任せのゲーム……遊戯は苦手だったんだな。意外だ」
「……私は理路整然と考察し実行するのが任務ですので、聖上」
「いやそういうことを言いたいのではないんだが……まあ良い、それで、アルルゥの言う「罰」は実行するのか?」
「ええ、負けたらという、そういうお約束でしたので」
とある昼下がり。
たまにはと愛娘に強請られ、集まれる家族で神経衰弱、と呼ばれる古来の遊びに興じる事になった時のこと。
「一番ドベは、一番上がりの言うこと聞く罰をやる」
「おっ 小さな姐さんいい事言いやすね!」
「おいおい、あくまで問題にならない範囲の罰にしておくれよ?」
「ん!」
自信満々に頷いたアルルゥの頭をいい子だと撫でながら、さてどんな罰を願われているのかな、とハクオロは呟いた。
1654「……私は理路整然と考察し実行するのが任務ですので、聖上」
「いやそういうことを言いたいのではないんだが……まあ良い、それで、アルルゥの言う「罰」は実行するのか?」
「ええ、負けたらという、そういうお約束でしたので」
とある昼下がり。
たまにはと愛娘に強請られ、集まれる家族で神経衰弱、と呼ばれる古来の遊びに興じる事になった時のこと。
「一番ドベは、一番上がりの言うこと聞く罰をやる」
「おっ 小さな姐さんいい事言いやすね!」
「おいおい、あくまで問題にならない範囲の罰にしておくれよ?」
「ん!」
自信満々に頷いたアルルゥの頭をいい子だと撫でながら、さてどんな罰を願われているのかな、とハクオロは呟いた。
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MOURNINGハクエルのはず。ムックルのせくはらムックルがいうにはインカラを落とすべく、食料事情とも戦いながら皆を戦乱へと巻き込んでいた頃のこと。
食料の配給を終えたエルルゥとハクオロのところに、きゅうきゅうと鳴くムックルがやってきた。
「すまない、おまえの言葉はアルルゥではないから分からなくてな」
「きゅう……きゅう」
少ないご飯を食べ終えたアルルゥに振り返ると、ムックルが再びなにかを訴えて啼く。
双子の様な仲の良さにハクオロとエルルゥがほんわかとして一時の癒しを得ていると。
「ムックル、お腹空いたって」
やはり大きくなる獣に、今程度の食料では足りないのだろう。
自明の理とはいえ哀れに思い、エルルゥはその白い頭を撫でながら、ごめんねと小さく溢した。
「皆の分が足りなくなっちゃうから、我慢してくれるかしら……って、きゃああっな、なにするのムックルっや、ちょっと!?」
864食料の配給を終えたエルルゥとハクオロのところに、きゅうきゅうと鳴くムックルがやってきた。
「すまない、おまえの言葉はアルルゥではないから分からなくてな」
「きゅう……きゅう」
少ないご飯を食べ終えたアルルゥに振り返ると、ムックルが再びなにかを訴えて啼く。
双子の様な仲の良さにハクオロとエルルゥがほんわかとして一時の癒しを得ていると。
「ムックル、お腹空いたって」
やはり大きくなる獣に、今程度の食料では足りないのだろう。
自明の理とはいえ哀れに思い、エルルゥはその白い頭を撫でながら、ごめんねと小さく溢した。
「皆の分が足りなくなっちゃうから、我慢してくれるかしら……って、きゃああっな、なにするのムックルっや、ちょっと!?」
w(ねこくち)
PAST「マシロさまとショタトルくん」シリーズの漫画イラスト再録です。パスワードは2025年5月4日発行
「マシロさまとオシュトルくんの××なおはなし」の
4ページに掲載してます。※期間未定※ 16
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DOODLE無配にし損ねたもん。珍しく書いた、カルラとベナウィ盃と朝「あらあ、朝から勤勉ですわねえ、侍大将様?」
「……貴女ですか」
とある城での朝、朝の鍛錬を終え、木簡を盛りだくさん腕に抱えたベナウィが主の執務室に顔を出すと、そこに居たのは思っていた人物ではなかった。
大瓶を傾け、女傑と呼ばれる女性がいかにも朝まで飲み明かしたのだと分かる風景があった。断り切れなかったのか相手をさせられ飲み潰れた皇……ハクオロが床に臥せって苦し気な寝息を見下ろして、盛大な溜息を落とすと、ベナウィは額をこつこつと叩いて木簡を文机へと音を立てぬように下ろした。
部屋の隅においてある毛布を主の肩にかけると、散乱したように転がる瓶と盃を盆に乗せ、未だ飲み足りないとばかりに最後の一滴を盃に乗せようとする手首を握った。
1539「……貴女ですか」
とある城での朝、朝の鍛錬を終え、木簡を盛りだくさん腕に抱えたベナウィが主の執務室に顔を出すと、そこに居たのは思っていた人物ではなかった。
大瓶を傾け、女傑と呼ばれる女性がいかにも朝まで飲み明かしたのだと分かる風景があった。断り切れなかったのか相手をさせられ飲み潰れた皇……ハクオロが床に臥せって苦し気な寝息を見下ろして、盛大な溜息を落とすと、ベナウィは額をこつこつと叩いて木簡を文机へと音を立てぬように下ろした。
部屋の隅においてある毛布を主の肩にかけると、散乱したように転がる瓶と盃を盆に乗せ、未だ飲み足りないとばかりに最後の一滴を盃に乗せようとする手首を握った。
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DOODLEこちらから素案を頂き出来たものです…あまりソッチ方向は期待しないで笑カルラとハクオロとエルルゥ
https://x.com/MV1OYkFqVQ75966/status/1897199053550837905
ある種の白昼夢それは日差しがやや傾いた昼さがりの事だった。
ここ暫くの執務の過労が重なったせいだろうか、目を赤くしていた皇が部屋で一旦休むと言い出した。
薬師としては放置出来る筈もなく、また家族として、乙女心としてもそんな時くらい傍にいたい――そんな思いから、薬草茶を抱えて、ぽてぽてと城の隅にある部屋へとエルルゥが向かっていった。
「ハクオロさん、このところよく眠れないって言ってたものね……よし、按摩でもしてあげたら少しはよくなるはず!」
ぐっと拳を作って盆を持った手に力を込めた。
階段を昇っていくと、少し苦し気な呻き声が聞こえてくる。
いつかの、悪夢を見ていた時のような、放置できない声のようで。
「……ハクオロ、さん?!」
1265ここ暫くの執務の過労が重なったせいだろうか、目を赤くしていた皇が部屋で一旦休むと言い出した。
薬師としては放置出来る筈もなく、また家族として、乙女心としてもそんな時くらい傍にいたい――そんな思いから、薬草茶を抱えて、ぽてぽてと城の隅にある部屋へとエルルゥが向かっていった。
「ハクオロさん、このところよく眠れないって言ってたものね……よし、按摩でもしてあげたら少しはよくなるはず!」
ぐっと拳を作って盆を持った手に力を込めた。
階段を昇っていくと、少し苦し気な呻き声が聞こえてくる。
いつかの、悪夢を見ていた時のような、放置できない声のようで。
「……ハクオロ、さん?!」
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DOODLEワンライ名刺SS、ハクオン。とあるツールはウェブのを利用。
千年経過の結果どうにかボロギギリから逃げ果せ、苦しそうに雪の上でヘタレていたハクは、必死に声を振り絞って目の前の美少女に礼を告げた。
「た、助けてくれて、ありがとうごさい、ますっ 」
「……わの顔がどうがすた?」
「……なんて?」
かわいい顔からなんか聞いたことのない言葉が出てきた。多分、私の顔がどうかしたか、と聞かれたのだろうが。視線を揺らして、どうにか首を横に振る。
「い、いやあ、別に……」
「それにすても、わんつか目離すた隙さ居ねぐなったど思ったっきゃ、あったごどになってらなんて…間に合ったはんでえがったものの、あまり困らせねで欲すいじゃ」
「……だから、なんてぇ?!」
目覚めたばかりのハクは、まず記憶喪失以前の現地人との疎通困難により、暫く頭を抱える羽目に陥った。
334「た、助けてくれて、ありがとうごさい、ますっ 」
「……わの顔がどうがすた?」
「……なんて?」
かわいい顔からなんか聞いたことのない言葉が出てきた。多分、私の顔がどうかしたか、と聞かれたのだろうが。視線を揺らして、どうにか首を横に振る。
「い、いやあ、別に……」
「それにすても、わんつか目離すた隙さ居ねぐなったど思ったっきゃ、あったごどになってらなんて…間に合ったはんでえがったものの、あまり困らせねで欲すいじゃ」
「……だから、なんてぇ?!」
目覚めたばかりのハクは、まず記憶喪失以前の現地人との疎通困難により、暫く頭を抱える羽目に陥った。
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DOODLEワンライリク頂く企画より。オボロとユズハで頂いて、選りに選ってここを書いたひと。
鈴音、ひとつ、おにい、さま。小さなちいさな震える手が、榛摺の瞳孔へと向けられる。
まだ目も開かない赤子の悲鳴にも似た泣き声が部屋中に響いているのに、何故かオボロにはか細く途切れそうな妹のそれだけが凛と響いて聞こえた。
「あかちゃんは、ハクオロ様の赤ちゃんは元気、ですか」
「ああ、とてもっ とても元気だっ なにも心配いらないぞ! とても綺麗で、お前によく似た、娘だ。だから、だから、ユズハ……」
「おにい、さま」
ひゅうっと息が漏れ聞こえた。
掠れた、地が遠くなるような、響きが付き纏う、けれど鈴を鳴らすような高く優しい、頼りないのに凜とした響きが。
「あかちゃん、かわいがってあげて、ユズハにしてくれたように、愛して、ね?」
「ユズ、ハ」
578まだ目も開かない赤子の悲鳴にも似た泣き声が部屋中に響いているのに、何故かオボロにはか細く途切れそうな妹のそれだけが凛と響いて聞こえた。
「あかちゃんは、ハクオロ様の赤ちゃんは元気、ですか」
「ああ、とてもっ とても元気だっ なにも心配いらないぞ! とても綺麗で、お前によく似た、娘だ。だから、だから、ユズハ……」
「おにい、さま」
ひゅうっと息が漏れ聞こえた。
掠れた、地が遠くなるような、響きが付き纏う、けれど鈴を鳴らすような高く優しい、頼りないのに凜とした響きが。
「あかちゃん、かわいがってあげて、ユズハにしてくれたように、愛して、ね?」
「ユズ、ハ」
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DOODLEロスフラ時空、ヴラエン的ではありますが、ほぼ日常話、アクタとスズリとクゥランと二人。ヴライとエントゥアもアクタ麾下な感じ。しばらく羽根があるやつはみたくない今日も今日とて平和な一日だ。
空は不自然なうねりを帯びているし、女が仕事をして住まっている此処には何か間違って触れてしまうと何を起こすかわからぬ現人神がおわすから、平々凡々な、とはとても言いきれまい。
だがそれでも手に職がありきちんとした住まいがあって、日々の糧をそれほど心配せずに済み、更に戦乱からは程遠い……それがコトゥアハムルでなくて何なのだと、戦乱しかなかった國から流れ着いた女は思う。
今になって思えば、ヤマトもまた此処のように一つの巨大な王権により安定していた世界の一つだったのだと分かる。
そこに親しみを覚えることはないけれど、郷愁を越える微かな羨みが増したのは事実だった。
手の中で布をパンと広げて竿に干していく。
3406空は不自然なうねりを帯びているし、女が仕事をして住まっている此処には何か間違って触れてしまうと何を起こすかわからぬ現人神がおわすから、平々凡々な、とはとても言いきれまい。
だがそれでも手に職がありきちんとした住まいがあって、日々の糧をそれほど心配せずに済み、更に戦乱からは程遠い……それがコトゥアハムルでなくて何なのだと、戦乱しかなかった國から流れ着いた女は思う。
今になって思えば、ヤマトもまた此処のように一つの巨大な王権により安定していた世界の一つだったのだと分かる。
そこに親しみを覚えることはないけれど、郷愁を越える微かな羨みが増したのは事実だった。
手の中で布をパンと広げて竿に干していく。
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DOODLEお年賀にアンケート取ったりリクの日に頂いたものをまとめて。ほのぼのハクエル、ハクオン、ライシチ、キウネコ
お年賀ワンライ【ライコウ&シチーリヤ】
足跡を必死に追う。
歩幅の違う――それ以前に歳が違い過ぎる上司は時を無駄にするのを好まない。その性質を知っている少年は必死に駆ける。ふと眼前の長い影が立ち止まった。
口元だけが困ったように彼が笑った。
「早く来い、夕餉に遅れるぞ」
「……はいっ」
早く大きくなれ、そう言いながら頭を撫でられた。
【ハクオロ&エルルゥ】
はい、ハクオロさん。いつもの口調が微笑んで粥の入った器を差し出してくる。
モロロの甘味と、微かに入れられた塩、そして煮込むヒトの腕が絶妙に良く混ざり合い、美味である筈――だった。
「ぐふっ え、エルルゥ……このモロロ粥、何だか苦味が……」
「何ですか? ハクオロさん?」
「お、怒っているのかい。昨晩のカルラとは何も……」
1038足跡を必死に追う。
歩幅の違う――それ以前に歳が違い過ぎる上司は時を無駄にするのを好まない。その性質を知っている少年は必死に駆ける。ふと眼前の長い影が立ち止まった。
口元だけが困ったように彼が笑った。
「早く来い、夕餉に遅れるぞ」
「……はいっ」
早く大きくなれ、そう言いながら頭を撫でられた。
【ハクオロ&エルルゥ】
はい、ハクオロさん。いつもの口調が微笑んで粥の入った器を差し出してくる。
モロロの甘味と、微かに入れられた塩、そして煮込むヒトの腕が絶妙に良く混ざり合い、美味である筈――だった。
「ぐふっ え、エルルゥ……このモロロ粥、何だか苦味が……」
「何ですか? ハクオロさん?」
「お、怒っているのかい。昨晩のカルラとは何も……」
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DOODLE近禰衆のわちゃわちゃ。某さまからネタ頂きらくがき爆笑ホオズキとザクロとイナヅマ
ホオズキの時々の日常とある帝都付近の温泉もとい、湯船にて。
麗人とも呼べる男が一人、湯船で格闘していた……自分の尻尾の『生え変わり』の端っこを掴んで。
ホオズキ、彼の場合は、蛇の遺伝子を持つ。つまり脱皮する、たまに。
だが、普通の大きさはでは無いため毎回皮膚の生え変わりの度に苦労している次第なのである。
こんな時ばかりはすでに天に召された親父殿への文句が口の中に浮かんでくるのだろう。
「うーんう゛ーんっ あー今回はちょっと厄介だなあ。仕方ない、もう少し湯船に浸そうか、茹るから長時間の風呂はあんまり好きじゃないんだけど…」
「よっホオズキっ一人で湯浴みとは珍しいじゃね……」
「おおホオズキも風呂か!皆で背を洗い合…そんな季節だったか」
1128麗人とも呼べる男が一人、湯船で格闘していた……自分の尻尾の『生え変わり』の端っこを掴んで。
ホオズキ、彼の場合は、蛇の遺伝子を持つ。つまり脱皮する、たまに。
だが、普通の大きさはでは無いため毎回皮膚の生え変わりの度に苦労している次第なのである。
こんな時ばかりはすでに天に召された親父殿への文句が口の中に浮かんでくるのだろう。
「うーんう゛ーんっ あー今回はちょっと厄介だなあ。仕方ない、もう少し湯船に浸そうか、茹るから長時間の風呂はあんまり好きじゃないんだけど…」
「よっホオズキっ一人で湯浴みとは珍しいじゃね……」
「おおホオズキも風呂か!皆で背を洗い合…そんな季節だったか」
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MOURNINGコメディ。ハクとクオンとウコンさん。あほです、ロスフラ。年越し恒例行事その朝、ハクは詰所で潰れていた。
なんてことはない、アクタに頼まれた書類がわんさか増え、朝まで部屋に戻れなかったのだ。
眠気で文机に突っ伏して数時間程経った頃か、朝日が昇ったかどうかの明かりが隙間から差して、簱長代理の瞼がぴくりと動いた。
「ふああ……なん、だ?」
わっせわっせと詰所の窓の外から聞こえてくる喧騒に目元を擦り首を傾げる。
それはどうやら大社の境内から聞こえてくるらしく、ちょうど窓の下方からもよく見える場所だと、寝ぼけた頭で男が察した。
「ふああ……なんなんだ朝から。……そういやあ今日はこっちでいう正月なのか。ってことは、祭りでもあるのか?」
ただでさえまともに寝ていないのに、無理やり起こされてしまったことを不満そうに吐き出し、ハクは眠い目を擦って窓を開けた。
1418なんてことはない、アクタに頼まれた書類がわんさか増え、朝まで部屋に戻れなかったのだ。
眠気で文机に突っ伏して数時間程経った頃か、朝日が昇ったかどうかの明かりが隙間から差して、簱長代理の瞼がぴくりと動いた。
「ふああ……なん、だ?」
わっせわっせと詰所の窓の外から聞こえてくる喧騒に目元を擦り首を傾げる。
それはどうやら大社の境内から聞こえてくるらしく、ちょうど窓の下方からもよく見える場所だと、寝ぼけた頭で男が察した。
「ふああ……なんなんだ朝から。……そういやあ今日はこっちでいう正月なのか。ってことは、祭りでもあるのか?」
ただでさえまともに寝ていないのに、無理やり起こされてしまったことを不満そうに吐き出し、ハクは眠い目を擦って窓を開けた。
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DOODLEハクオロさん帰還…めでたくない話帰還皇の黄昏「聖上……いえ、ハクオロ様、お帰りなさいませ。そしてエルルゥ様、楔の巫女のお役目大変ご苦労様でした」
城の門前で頭を深々と下げて、自分とエルルゥを迎えてくれたのはベナウィだった。あの生真面目な男が眦に雫を溜め、ぎりぎり流さないようにこそしているが、感極まった感情を抑える事が出来ない様子など初めて見る。
「ベナウィさん、こちらこそ、我儘を通させてくださってありがとうございました……あの子は元気ですか?」
「ええ。貴女の娘で聖上の御実子……ついでにその育ての父も大変元気でいらっしゃいますよ。ご安心ください」
「……ベナウィ?」
何かぞくりと背筋を凍らせる気配を感じて、ハクオロは固まる。
涙に誤魔化されてしまったが。
1009城の門前で頭を深々と下げて、自分とエルルゥを迎えてくれたのはベナウィだった。あの生真面目な男が眦に雫を溜め、ぎりぎり流さないようにこそしているが、感極まった感情を抑える事が出来ない様子など初めて見る。
「ベナウィさん、こちらこそ、我儘を通させてくださってありがとうございました……あの子は元気ですか?」
「ええ。貴女の娘で聖上の御実子……ついでにその育ての父も大変元気でいらっしゃいますよ。ご安心ください」
「……ベナウィ?」
何かぞくりと背筋を凍らせる気配を感じて、ハクオロは固まる。
涙に誤魔化されてしまったが。