summeralley
DONEンデちゃんが活躍する番外。本編の数ヶ月後。完結済みの、マスター💅と客🍚がバーテンダー🅿️を取り合う、ネイPシーン多めの連載。全員の番外をぼちぼち載せていきます。
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/ダージリンクーラー 月曜の夜、定休日の『Veil』で、僕らは水煙草を囲んでいた。今日は、ピッコロさんの部屋にあった鉢植えをデンデの温室の側へ植え替えた、そのお祝いだ。扉の小窓には、「貸切」と手書きで貼り出してある。いつもより明るくした照明に、賑やかなラジオ放送。営業中とは全く違う雰囲気だったが、居心地は良い。普段は飲まないネイルさんも、僕に付き合って飲んでくれている。もともと特別強いわけでもない僕は、二杯目を終える頃には、ほろ酔いのあたたかい気分だった。
トレイを持ったネイルさんが、カウンターから戻ってくる。
「ダージリンクーラーと……ピッコロとデンデは普通のアイスティー、少し甘くしてあるから」
ネイルさんがテーブルの端に置いたグラスを、デンデがそれぞれの席に回してくれる。開け放った窓からは、初夏の心地よい夜風が吹き込み、繁華街の喧騒がかすかに聞こえた。
4061トレイを持ったネイルさんが、カウンターから戻ってくる。
「ダージリンクーラーと……ピッコロとデンデは普通のアイスティー、少し甘くしてあるから」
ネイルさんがテーブルの端に置いたグラスを、デンデがそれぞれの席に回してくれる。開け放った窓からは、初夏の心地よい夜風が吹き込み、繁華街の喧騒がかすかに聞こえた。
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DONE前回の「研究棟に幽霊がいる」噂の続き。ネイPの先輩方に読んでいただけて本当に嬉しいです、ありがとうございます😍💅さんはポストボーイじゃないので運転技術は中の上です。上の上でも良いけど、職場から徒歩で行けるほど近い良い部屋に住んでてほしい。車で移動する必要がない。
【ネイP】解剖台で夢を見た/06.十分間 時計の針は、既に日付をまたごうとしていた。仮眠室の狭いベッドで向き合って横たわり、ネイルはピッコロの背に手を置いていた。
「明日から何日かは、雨が続くらしい」
「……ここにいたら、関係ないな」
ネイルの肩に額を預け、ピッコロは冗談めかして呟く。ネイルはしばし逡巡し、口を開きかけては閉じ、ピッコロの背中にある手にわずかに力を入れた。身体と身体は密着してこそいないが、身じろぐたびに動く背骨のかたさと、眠気によって少し高まった体温が、ネイルの手のひらに感じられる。抑えた声で、ピッコロ、と呼びかけると、顔が上がった。
「ここはもう、危ないかもしれない」
ネイルが声を潜めて告げても、返事はない。ただ無造作に下ろされていた手で、シーツをぐっと握る気配がした。
3960「明日から何日かは、雨が続くらしい」
「……ここにいたら、関係ないな」
ネイルの肩に額を預け、ピッコロは冗談めかして呟く。ネイルはしばし逡巡し、口を開きかけては閉じ、ピッコロの背中にある手にわずかに力を入れた。身体と身体は密着してこそいないが、身じろぐたびに動く背骨のかたさと、眠気によって少し高まった体温が、ネイルの手のひらに感じられる。抑えた声で、ピッコロ、と呼びかけると、顔が上がった。
「ここはもう、危ないかもしれない」
ネイルが声を潜めて告げても、返事はない。ただ無造作に下ろされていた手で、シーツをぐっと握る気配がした。
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DONEネイPのみの番外、🍚ちゃんと出会う何年も前。完結済みの、マスター💅と客🍚がバーテンダー🅿️を取り合う連載。ンデちゃん含む全員の番外あるのでぼちぼち載せます。
これは🅿️がバーテンダーなりたてで、カクテル練習する話。真面目だからバーテンダー修業も頑張ったはず🥹
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/サイドカー 元々あまり酒を飲まないから、カクテルというものにこんなにも種類があることに驚いた。ネイルは「覚える必要はない、レシピを確認して作っても構わない」と言うが、よく出るカクテルは嫌でもレシピを覚えてしまう。サイドカーも、そうだ。
ネイルの店へ立つようになって、四ヶ月経った。あいつは元々、この街へ出てきた時からずっとバーテンダーをやっていたが、おれはまったくの初心者だ。それでも、開店前にあれやこれやと教わって、一通りのことは出来るようになったつもりでいた。実際、これまで客から褒められこそすれ、苦言を呈されたことなどなかった。
「このサイドカー……なんとなく、味が尖ってる気がする」
そう言われたのは半月前だ。甘い、苦い、ぬるいなら分かるものの……尖っている? そもそもこの客が、ただの感想を言っているのか、文句のつもりで言っているのか、判別できなかった。なんと答えていいか分からないところに、ネイルが横合いから口を出す。
4649ネイルの店へ立つようになって、四ヶ月経った。あいつは元々、この街へ出てきた時からずっとバーテンダーをやっていたが、おれはまったくの初心者だ。それでも、開店前にあれやこれやと教わって、一通りのことは出来るようになったつもりでいた。実際、これまで客から褒められこそすれ、苦言を呈されたことなどなかった。
「このサイドカー……なんとなく、味が尖ってる気がする」
そう言われたのは半月前だ。甘い、苦い、ぬるいなら分かるものの……尖っている? そもそもこの客が、ただの感想を言っているのか、文句のつもりで言っているのか、判別できなかった。なんと答えていいか分からないところに、ネイルが横合いから口を出す。
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DONEスタンプとか本当にありがとうございます。ネイPまだよく分からないけど、美しいナメたちがイチャイチャしてると(自分が)嬉しいことは分かってきた🥰【ネイP】解剖台で夢を見た/05.研究棟の幽霊 はじまりは恋愛感情というより、世界から隠れて暮らしているという、共犯意識だったかもしれない。それでも、互いに誰よりも親密に……特別に感じていることは、間違いなかった。
だからこそ、背中合わせだった共寝が、いつしか抱き合って眠るようになるのに、何の疑問も抵抗もなかった。身体は重く吐息は甘く、額が合わさると、どちらも不思議なほど安らいだ。
その晩も、ネイルは仮眠室の書き物机にいた。手元のデスクライトを切って、資料をファイルに綴じる。疲れを覚えた目を瞬いていると、背後で本を閉じる音がした。
「……ネイル」
静かな声に振り向くと、ピッコロはベッドの端に脚を下ろして座っていた。いつもより、やや険しく見えるまなざしで。
2880だからこそ、背中合わせだった共寝が、いつしか抱き合って眠るようになるのに、何の疑問も抵抗もなかった。身体は重く吐息は甘く、額が合わさると、どちらも不思議なほど安らいだ。
その晩も、ネイルは仮眠室の書き物机にいた。手元のデスクライトを切って、資料をファイルに綴じる。疲れを覚えた目を瞬いていると、背後で本を閉じる音がした。
「……ネイル」
静かな声に振り向くと、ピッコロはベッドの端に脚を下ろして座っていた。いつもより、やや険しく見えるまなざしで。
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DONE急いで進めてるけど12話くらいにはなってしまいそう……少し先でベッドシーンで丸々一話使ったせいで……。ネイPのP、ちょっと子どもっぽく書いてしまう。
【ネイP】解剖台で夢を見た/04.聴診器の語るもの ネイルは殆ど、家へ帰らなくなっていた。職員がみな帰るのを待ってから仮眠室へ下りるので、それから帰宅となるとどうしても遅くなる。
元々、仮眠室へ寝泊まりすることはそう珍しくなかった。同じフロアに、簡易的なシャワールームもある。食事は水で事足りる。コインランドリーは研究所の道向かいだ。
――家へ帰ったところで、仮眠室の様子が気になって眠れず、警備員が驚くような早朝に出勤することになる。
自らが切り刻んだ研究対象への執着なのか、単純な個への執着なのかは、判然としなかった。それでも、寝袋を持ち込んで寝泊まりするようになるのは、ネイルにとって自然な選択だった。
その日ネイルは、どこか浮き足立っていた。
石室の標本に関する嘘の報告書は問題なく受理され、更に詳しく検査を進めるようにとの文言を添えた、検査項目のリストだけが戻ってきた。それも、時間がかかることを誰もが理解できる検査項目ばかりで、当分の時間は稼げそうに思われる。
3016元々、仮眠室へ寝泊まりすることはそう珍しくなかった。同じフロアに、簡易的なシャワールームもある。食事は水で事足りる。コインランドリーは研究所の道向かいだ。
――家へ帰ったところで、仮眠室の様子が気になって眠れず、警備員が驚くような早朝に出勤することになる。
自らが切り刻んだ研究対象への執着なのか、単純な個への執着なのかは、判然としなかった。それでも、寝袋を持ち込んで寝泊まりするようになるのは、ネイルにとって自然な選択だった。
その日ネイルは、どこか浮き足立っていた。
石室の標本に関する嘘の報告書は問題なく受理され、更に詳しく検査を進めるようにとの文言を添えた、検査項目のリストだけが戻ってきた。それも、時間がかかることを誰もが理解できる検査項目ばかりで、当分の時間は稼げそうに思われる。
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DONE10話くらいで終わりたいとか言ってたのに、少し先の話に性的なシーンを入れたので予定が狂って10話で終わるの無理になりました。ネイP次いつ書くか分かんないし、どうせならって……。【ネイP】解剖台で夢を見た/03.新しいラベル 「石室の標本について、何か分かったか?」
「報告書の通り、特段変わったことはありません……何しろ前例がないので、手探りで。慎重に進めています」
ムーリは頷き、引き続き任せる、と研究室を出て行く。ケースの観察窓を覗かれなかったことに、ネイルは胸を撫で下ろした。研究者としては、それが正しい振る舞いだ。以前ネイルがそうせずにいられなかった、無闇に観察窓の蓋を開ける行為は、暗闇で保管されていた検体にどのような影響を与えるか分からない。
ネイルの返答は、完全な嘘ではなかった。このような現象に、前例があるはずもない。腐敗せず、硬直もしない遺骸など……ただし「変わったことはない」という部分は、真っ赤な嘘だ。
石室の標本はもう、標本ではない。さりとて、それを報告できようか? おそらく、上層部の判断で、もっと大きな研究所へ送られることになるだろう。戸籍もない古い時代のナメックが、「呼吸する標本」……良くて「実験動物」として扱われることなど、目に見えていた。
3184「報告書の通り、特段変わったことはありません……何しろ前例がないので、手探りで。慎重に進めています」
ムーリは頷き、引き続き任せる、と研究室を出て行く。ケースの観察窓を覗かれなかったことに、ネイルは胸を撫で下ろした。研究者としては、それが正しい振る舞いだ。以前ネイルがそうせずにいられなかった、無闇に観察窓の蓋を開ける行為は、暗闇で保管されていた検体にどのような影響を与えるか分からない。
ネイルの返答は、完全な嘘ではなかった。このような現象に、前例があるはずもない。腐敗せず、硬直もしない遺骸など……ただし「変わったことはない」という部分は、真っ赤な嘘だ。
石室の標本はもう、標本ではない。さりとて、それを報告できようか? おそらく、上層部の判断で、もっと大きな研究所へ送られることになるだろう。戸籍もない古い時代のナメックが、「呼吸する標本」……良くて「実験動物」として扱われることなど、目に見えていた。
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DONEどうにか10話くらいで終わらせたい……屍姦は書きませんでした、やはり。【ネイP】解剖台で夢を見た/02.アクリル越しの視線 この研究所で正式な「宿直」が廃止されてから、五年ほど経つ。
研究室の真下にある、地下の仮眠室。ネイルだけが鍵を持ち、時おり利用していた。研究熱心なあまり、誰よりも帰宅が遅くなることが多い。今夜も、ネイルのいる部屋にのみ煌々と明かりが灯っている。
石室の標本は、死んではいない。
そう感じるたび、ネイルは「死んでいる」証拠がいくつもあると、論理で直感を抑えようとしていた。目の前に横たわるのは、「誰か」ではなく「何か」なのだと。
その晩、予定していた検査を終えたネイルは、検査機器と記録用の端末を止めて、解剖台の上のN037を見つめた。検査機器の唸りが止むと、検査室はかすかな空調の震えだけを残して静まり返る。
3363研究室の真下にある、地下の仮眠室。ネイルだけが鍵を持ち、時おり利用していた。研究熱心なあまり、誰よりも帰宅が遅くなることが多い。今夜も、ネイルのいる部屋にのみ煌々と明かりが灯っている。
石室の標本は、死んではいない。
そう感じるたび、ネイルは「死んでいる」証拠がいくつもあると、論理で直感を抑えようとしていた。目の前に横たわるのは、「誰か」ではなく「何か」なのだと。
その晩、予定していた検査を終えたネイルは、検査機器と記録用の端末を止めて、解剖台の上のN037を見つめた。検査機器の唸りが止むと、検査室はかすかな空調の震えだけを残して静まり返る。
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DONE前回のバーカウンターでネイPシーンいっぱい書いたらネイP好きになっちゃったので、書きます。龍族≒下半身凹、戦士型≒下半身凸、更にPは「龍族の先代神 の片割れのパッパ の生まれ変わり だから龍族」という勝手な思い込みで書いてます。そんなに触れないけど……。
【ネイP】解剖台で夢を見た/01.夢より静かに、死より美しく 気味の悪いものが運び込まれた、とため息をついたのは、ムーリだった。
第四処理室の照明は極端に抑えられ、気温は低く保たれている。静まり返った室内に、二つの足音が響いていた。
「ナメックのことはナメックに、というわけですか」
この研究所に何年も勤めているネイルも、この処理室では、自然と小声になってしまう。生きたものは自分とムーリだけのはずなのに、無数の視線を感じる気がしてならない。検体として提供されたもの、身元の分からないもの、司法解剖や病理解剖を待つもの、すべての処置を終え、月に二度の火葬処理日を待っているもの……。
「標本はそこのケースだ。37番。発見された石室の気温と湿度を再現してある……いたって普通の気温だ。自治体の記録を辿るだけでも、少なくとも七百年は閉じ込められていたのに、腐敗も硬直もない」
3438第四処理室の照明は極端に抑えられ、気温は低く保たれている。静まり返った室内に、二つの足音が響いていた。
「ナメックのことはナメックに、というわけですか」
この研究所に何年も勤めているネイルも、この処理室では、自然と小声になってしまう。生きたものは自分とムーリだけのはずなのに、無数の視線を感じる気がしてならない。検体として提供されたもの、身元の分からないもの、司法解剖や病理解剖を待つもの、すべての処置を終え、月に二度の火葬処理日を待っているもの……。
「標本はそこのケースだ。37番。発見された石室の気温と湿度を再現してある……いたって普通の気温だ。自治体の記録を辿るだけでも、少なくとも七百年は閉じ込められていたのに、腐敗も硬直もない」
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DONE15話も書くつもりじゃなかったんだけど、ナメのイチャイチャも、バーもカクテルも書けて楽しかった! 読んでくださった方、ありがとうございます。そのうち全員分の番外を書いて、できれば本にもしたい。【飯PネイP】煙るバーカウンターにて(終)/15ライム入りトニックウォーター 送別会シーズンの忙しさも落ち着き、バー『Veil』へは通常の雰囲気が戻ってきていた。とはいえ日曜の夜は、それなりに賑やかだ。繁華街に面した窓は閉まっていて、外の音は聞こえないはずなのに、浮かれた人々の喧騒が店内にまで届いてくる心地がする。
カウンターの花瓶には、デンデが育てた青い花が飾られていた。かすみ草の白に囲まれて、雲の中に漂っているように見える。
「悟飯さん、フレーバーは何にしますか?」
「バニラと……デンデに任せるよ、その方が間違いないから」
「バニラなら、カルダモンかな? 準備しますね」
僕の前まで水煙草を持ってきて、デンデが炭を熾こしてくれる。はじめの頃に比べて、すっかり迷いのない手付きだった。忙しい週末は手織りのカーテンに覆い隠されていた水煙草も、デンデが扱えるようになったため、今は見える位置に堂々と置かれている。
3519カウンターの花瓶には、デンデが育てた青い花が飾られていた。かすみ草の白に囲まれて、雲の中に漂っているように見える。
「悟飯さん、フレーバーは何にしますか?」
「バニラと……デンデに任せるよ、その方が間違いないから」
「バニラなら、カルダモンかな? 準備しますね」
僕の前まで水煙草を持ってきて、デンデが炭を熾こしてくれる。はじめの頃に比べて、すっかり迷いのない手付きだった。忙しい週末は手織りのカーテンに覆い隠されていた水煙草も、デンデが扱えるようになったため、今は見える位置に堂々と置かれている。
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DONE今回ネイPシーンのみなので繊細な飯P派の方はすみません🥺客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い。ネイP描写多めで書きますがラストは飯P予定。
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/14ヴァージンモヒート 四人分のティーカップを片付けながら、デンデはネイルに温室の鍵とメモを渡した。
「週末には戻りますので、改良中の鉢だけメモの通り世話をお願いします。ネイルさんなら安心です!」
「ああ、カルゴによろしくな」
温室はすっかり任されているというのは、本当らしかった。ネイルも、メモの内容についてあれこれ詳しく質問している。悟飯にも分からない話ばかりのようで、おれたちは蚊帳の外だった。
その晩の閉店は、少し遅くなった。日曜は長居する客が多い。「仕事帰りに一杯」ではなく、最初から飲むつもりで来ているからだ。
CLOSEDの看板を下げ、カウンター以外の照明を落とす。
「せっかく炭が熾きているから、水煙草はどうだ?」
3999「週末には戻りますので、改良中の鉢だけメモの通り世話をお願いします。ネイルさんなら安心です!」
「ああ、カルゴによろしくな」
温室はすっかり任されているというのは、本当らしかった。ネイルも、メモの内容についてあれこれ詳しく質問している。悟飯にも分からない話ばかりのようで、おれたちは蚊帳の外だった。
その晩の閉店は、少し遅くなった。日曜は長居する客が多い。「仕事帰りに一杯」ではなく、最初から飲むつもりで来ているからだ。
CLOSEDの看板を下げ、カウンター以外の照明を落とす。
「せっかく炭が熾きているから、水煙草はどうだ?」
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DONE今回は飯P比重が高めかな客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い。ネイP描写多めで書きますがラストは飯P予定。
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/13スカイダイビング 「……それ、綺麗な色ですね。何のお酒ですか?」
ネイルさんが静かに注いでいるのは、真っ青なリキュールだ。土曜の夜、『Veil』は週末の割にはゆったりとした雰囲気だった。十一月も後半に差し掛かり、外はすいぶん寒さが深まった。ピッコロさんは、デンデに引きずられてキッチンへ引っ込んでいる。
「ブルーキュラソーです。オレンジの皮だけを使ったリキュールで、元は無色……グリーン、レッドなんかもありますね」
「僕にもそれで、何か作ってもらえますか?」
ネイルさんは頷き、シェイカーへ次々に材料を注ぐ。ここへ初めて来た時は分からなかったラムの瓶も、ラベルを読まなくても分かるようになった。ネイルさんがシェイカーを振る。一分の隙もない正確さで、銀色のシェイカーの上を照明が行き来する。専門外の僕から見ても、その技術がどれほど高いか感じられる繊細な美しさだ。
3733ネイルさんが静かに注いでいるのは、真っ青なリキュールだ。土曜の夜、『Veil』は週末の割にはゆったりとした雰囲気だった。十一月も後半に差し掛かり、外はすいぶん寒さが深まった。ピッコロさんは、デンデに引きずられてキッチンへ引っ込んでいる。
「ブルーキュラソーです。オレンジの皮だけを使ったリキュールで、元は無色……グリーン、レッドなんかもありますね」
「僕にもそれで、何か作ってもらえますか?」
ネイルさんは頷き、シェイカーへ次々に材料を注ぐ。ここへ初めて来た時は分からなかったラムの瓶も、ラベルを読まなくても分かるようになった。ネイルさんがシェイカーを振る。一分の隙もない正確さで、銀色のシェイカーの上を照明が行き来する。専門外の僕から見ても、その技術がどれほど高いか感じられる繊細な美しさだ。
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DONEこの人の内面はじめて書いたって思ったけどピアニスト飯Pの時に書いてました。あの時はネイPではなかっただけで。
客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い。ネイP描写多めで書きますがラストは飯P予定。
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/12ラストワード テーブル席にウイスキーを出すピッコロを、カウンターの中から見ていた。一気に入った注文があれで片付くから、暫くは落ち着くだろう。
コリンズグラスに、切ったばかりのライムとスペアミントを入れる。バースプーンで軽く潰すと、やや窄まったグラスの口から、涼やかな香りがここまで上がってくる。
ライムは、通常のレシピよりも少し多く入れる。それがピッコロの好みだと、分かっているからだ。砂糖は入れない。氷を入れ炭酸水を注ぎ、手早く混ぜる。ちょうどカウンターへ戻ってきたピッコロに差し出すと、両手で受け取って笑った。
「ありがとう、ネイル。足りないものはないか?」
「今はない。何かあれば声をかけるよ」
頷いて、カウンター客の前へ戻っていく。読んだ本の内容について、尋ねているらしい。それを受けた彼は身を乗り出すように研究を語り、ピッコロも微笑みながら聞いている。
4025コリンズグラスに、切ったばかりのライムとスペアミントを入れる。バースプーンで軽く潰すと、やや窄まったグラスの口から、涼やかな香りがここまで上がってくる。
ライムは、通常のレシピよりも少し多く入れる。それがピッコロの好みだと、分かっているからだ。砂糖は入れない。氷を入れ炭酸水を注ぎ、手早く混ぜる。ちょうどカウンターへ戻ってきたピッコロに差し出すと、両手で受け取って笑った。
「ありがとう、ネイル。足りないものはないか?」
「今はない。何かあれば声をかけるよ」
頷いて、カウンター客の前へ戻っていく。読んだ本の内容について、尋ねているらしい。それを受けた彼は身を乗り出すように研究を語り、ピッコロも微笑みながら聞いている。
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DONE書いてる私にもンデちゃんだけが癒し……。客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い。ネイP描写多めで書きますがラストは飯P予定。
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/11トワイライト 十月も半ばに差しかかった月曜だった。急に打ち合わせが中止になった僕は、国道沿いの広い歩道を一人歩いていた。午後遅い穏やかな日差しの中、街路樹の金木犀が満開で、辺りは目の覚めるような香りに包まれている。
『Veil』のすぐそば、小さな植物園の前に差し掛かって、デンデの昼の職場がここだったと思い出した。途端、門をくぐる誰かが目に入る。長い手足に、柳葉のような膚……ネイルさんだ。僕へ気付くと、笑って手を振ってくれる。
「お仕事帰りですか? 店に飾る花を受け取りに来たんです。ご一緒しませんか?」
「お邪魔になりませんか」
「まさか。デンデも喜びます」
ネイルさんの言葉の通り、僕らを迎えたデンデはとても喜んでくれた。まずは花壇をひとまわりし、育てている花の説明をしてくれる。どの花もいきいきと咲いており、デンデがどれほど大切に世話をしているか伝わってくる。
4478『Veil』のすぐそば、小さな植物園の前に差し掛かって、デンデの昼の職場がここだったと思い出した。途端、門をくぐる誰かが目に入る。長い手足に、柳葉のような膚……ネイルさんだ。僕へ気付くと、笑って手を振ってくれる。
「お仕事帰りですか? 店に飾る花を受け取りに来たんです。ご一緒しませんか?」
「お邪魔になりませんか」
「まさか。デンデも喜びます」
ネイルさんの言葉の通り、僕らを迎えたデンデはとても喜んでくれた。まずは花壇をひとまわりし、育てている花の説明をしてくれる。どの花もいきいきと咲いており、デンデがどれほど大切に世話をしているか伝わってくる。
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DONEまた🍚ちゃんに良い思いをさせる話ですが、ネイPシーンも濃い目です。客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い。取り合いと書いてますがギスギス激しい対立はしません。ネイP描写多めで書きますがラストは飯P予定。
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/10アルマニャック ネイルは酒を飲まない。
熱に浮かされながら抱きしめた時、イエーガーマイスターの香りがして、妙だな、とは思った。
暫くの後に声が聞こえて、抱き合った相手がネイルではなく悟飯だったのだと分かった。なのに……。
開店まで、まだ一時間以上ある。それでも店に着いた時には既にネイルがいて、カウンターの中でライムを切っていた。カウンター上の照明だけが一つ灯って、ナイフを持つ手元を照らしている。
「ネイル、何か手伝うことは?」
「いや、大丈夫だ。……お前は、大丈夫か?」
カウンターへ入りながら、ネイルの横顔に目を遣った。たった今来たばかりのおれに、おかしなことを訊く。何年も前から見慣れた横顔は、目を上げもせず、ナイフに集中している。
4639熱に浮かされながら抱きしめた時、イエーガーマイスターの香りがして、妙だな、とは思った。
暫くの後に声が聞こえて、抱き合った相手がネイルではなく悟飯だったのだと分かった。なのに……。
開店まで、まだ一時間以上ある。それでも店に着いた時には既にネイルがいて、カウンターの中でライムを切っていた。カウンター上の照明だけが一つ灯って、ナイフを持つ手元を照らしている。
「ネイル、何か手伝うことは?」
「いや、大丈夫だ。……お前は、大丈夫か?」
カウンターへ入りながら、ネイルの横顔に目を遣った。たった今来たばかりのおれに、おかしなことを訊く。何年も前から見慣れた横顔は、目を上げもせず、ナイフに集中している。
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DONE転機となるお話です。客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い。取り合いと書いてますがギスギス激しい対立はしません。ネイP描写多めで書きますがラストは飯P予定。
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/09ウィンナーコーヒー 『Veil』の入口で、店内を振り返ったデンデが中の誰かに話しかけている。また来ますね、と挨拶をして、こちらへ向き直った。
「こんばんは。もう帰っちゃうの?」
「悟飯さん! 今日は……いえ、どうぞお店へ! 歓迎してくれますよ、きっと!」
明るく話しながら、デンデが僕の手を引く。一体なんだか分からずにいると、店の扉が細く開いてピッコロさんが顔を出した。いつもと違い、ベストはなく、シャツの袖を捲ってアームバンドで留めている。襟元のボタンも二つ外され、リラックスした出で立ちだ。
「デンデ、どうした? 話し声が……ああ、お客様」
よく見ると、扉にはCLOSEDの看板が下げられている。ずいぶん早い閉店だ。僕の視線に気付いて、ピッコロさんが肩を竦める。
3741「こんばんは。もう帰っちゃうの?」
「悟飯さん! 今日は……いえ、どうぞお店へ! 歓迎してくれますよ、きっと!」
明るく話しながら、デンデが僕の手を引く。一体なんだか分からずにいると、店の扉が細く開いてピッコロさんが顔を出した。いつもと違い、ベストはなく、シャツの袖を捲ってアームバンドで留めている。襟元のボタンも二つ外され、リラックスした出で立ちだ。
「デンデ、どうした? 話し声が……ああ、お客様」
よく見ると、扉にはCLOSEDの看板が下げられている。ずいぶん早い閉店だ。僕の視線に気付いて、ピッコロさんが肩を竦める。
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DONE客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い。取り合いと書いてますがギスギス激しい対立はしません。ネイP描写多めで書きますがラストは飯P予定。【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/08カフェ・ロワイヤル 盛夏を過ぎ、夜風が吹くとかすかに涼しさも感じるようになってきた。仕事帰りによく寄っていたのに、あの日以来なんとなく気まずくて、僕の足はバー『Veil』から遠のいていた。
ネイルさんが「部屋を訪ねたのは悟飯」と告げたあの時も、ピッコロさんに何か言われたわけではなかった。高熱に浮かされて、かなり朦朧としていたから、詳しく覚えていないのかもしれない。
自分に言い聞かせながら、僕は半屋外のビルの階段を上がっていた。向かいのビルの色とりどりのネオンが、低く垂れ込める晩夏の夜空を彩っている。手のひらが汗ばむように感じるのも、やけに喉が渇くのも、風のない夜だからだろう。
「いらっしゃいませ……ああ、悟飯さん」
2951ネイルさんが「部屋を訪ねたのは悟飯」と告げたあの時も、ピッコロさんに何か言われたわけではなかった。高熱に浮かされて、かなり朦朧としていたから、詳しく覚えていないのかもしれない。
自分に言い聞かせながら、僕は半屋外のビルの階段を上がっていた。向かいのビルの色とりどりのネオンが、低く垂れ込める晩夏の夜空を彩っている。手のひらが汗ばむように感じるのも、やけに喉が渇くのも、風のない夜だからだろう。
「いらっしゃいませ……ああ、悟飯さん」
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DONE客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い。取り合いと書いてますがギスギス激しい対立はしません。ネイP描写多めで書きますがラストは飯P予定。【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/07イエーガーマイスター その日、バー『Veil』はいつになく忙しそうだった。
居酒屋のように騒がしい客はいないものの、週末だけあって全ての席が埋まっている。ネイルさんの作るカクテルや、注がれたウィスキーをデンデが忙しく運び、キッチンへ何度も引っ込んでは、洗い終えたグラスを持って足早に出てくる。
ピッコロさんは、いなかった。
僕はカウンターの隅で大人しく待ち、やや落ち着いたタイミングを見計らってネイルさんへ話しかけた。
「ピッコロさん、お休みですか……?」
「夏風邪で寝込んでまして……開店の直前に発熱したようで。お待たせしてすみません」
カクテルを頼むのは忍びなく、今日はネイルさんに任せて出してもらったリキュールを飲んでいた。何十種類ものハーブで作られているということで、ちょっと薬のような癖のある味だ。
3935居酒屋のように騒がしい客はいないものの、週末だけあって全ての席が埋まっている。ネイルさんの作るカクテルや、注がれたウィスキーをデンデが忙しく運び、キッチンへ何度も引っ込んでは、洗い終えたグラスを持って足早に出てくる。
ピッコロさんは、いなかった。
僕はカウンターの隅で大人しく待ち、やや落ち着いたタイミングを見計らってネイルさんへ話しかけた。
「ピッコロさん、お休みですか……?」
「夏風邪で寝込んでまして……開店の直前に発熱したようで。お待たせしてすみません」
カクテルを頼むのは忍びなく、今日はネイルさんに任せて出してもらったリキュールを飲んでいた。何十種類ものハーブで作られているということで、ちょっと薬のような癖のある味だ。
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DONE客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い、やっと恋愛色が濃くなってきました。連載ラストは飯Pに帰結しますが、この6話はネイP色がかなり濃いめなので、繊細な飯P派の方は避けてください🥺 とはいえネイPほとんど書いたことないので、好きな人に楽しんでもらえたら嬉しい。
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/06カンパリ 急な呼び出しを受けた僕は、夕暮れの住宅街を職場へ向けて歩き出していた。梅雨が近く湿度が高いためか、濃い絵の具をべったりと塗りつけたような、目に焼きつく夕映えだ。
「こんばんは!」
すれ違い様に声をかけられ、目を向けると、大きな紙袋を三つも抱えたデンデだった。
「こんばんは……大荷物だね、何?」
「摘んだハーブです! このあと家で邪魔なものを取り除いて、ブレンドして……。お店に持っていくので、飲んでくださいね」
なんとも朗らかな笑顔で、デンデが説明してくれる。こんな時間から職場へ向かうなど気が重かったが、屈託のないデンデの様子にたちまち明るい気分になった。
「楽しみだな。この辺りに住んでるの? 僕もだよ」
4645「こんばんは!」
すれ違い様に声をかけられ、目を向けると、大きな紙袋を三つも抱えたデンデだった。
「こんばんは……大荷物だね、何?」
「摘んだハーブです! このあと家で邪魔なものを取り除いて、ブレンドして……。お店に持っていくので、飲んでくださいね」
なんとも朗らかな笑顔で、デンデが説明してくれる。こんな時間から職場へ向かうなど気が重かったが、屈託のないデンデの様子にたちまち明るい気分になった。
「楽しみだな。この辺りに住んでるの? 僕もだよ」
summeralley
DONE客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い毎度言ってますが🍚がぴ意識しすぎて💅との距離が気になるだけで、プロの💅は客の前で匂わせはしません。と言い訳して匂わせを書いてます、CPものなので🫶
ナメ店員いてP受けの匂いを感じる店があるなら通います……週七で……
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/05ニコラシカ 『Veil』のカウンターには、ひとつ間を空けてもう一人、客が座っていた。長く通っているらしく、マスターと談笑しながらグラスを傾けている。
僕は作ってもらったカクテルを飲みながら、言葉少ななピッコロさんにとりとめもない話を聞かせていた。水煙草を共有して以来、ほんの時たま笑顔を見せてくれるのがたまらなく嬉しい。とはいえ先日の路地裏で見た荒んだ雰囲気など、まだ分からないことの方が多かった。
「何か飲まれますか」
残り少なくなっている僕のグラスを見て、ピッコロさんが尋ねてくれる。
「どうしようかな……」
まだ酔いは回っていないが、酒に詳しくないので何が飲みたいというものもない。いつも「甘いもの」「さっぱりしたもの」というような注文をしている。思案していると、隣の客がマスターへ、ニコラシカを、と言うのが聞こえた。かしこまりました、と答えたマスターが半身だけ振り返り、棚から小さな瓶を取り出す。
3807僕は作ってもらったカクテルを飲みながら、言葉少ななピッコロさんにとりとめもない話を聞かせていた。水煙草を共有して以来、ほんの時たま笑顔を見せてくれるのがたまらなく嬉しい。とはいえ先日の路地裏で見た荒んだ雰囲気など、まだ分からないことの方が多かった。
「何か飲まれますか」
残り少なくなっている僕のグラスを見て、ピッコロさんが尋ねてくれる。
「どうしようかな……」
まだ酔いは回っていないが、酒に詳しくないので何が飲みたいというものもない。いつも「甘いもの」「さっぱりしたもの」というような注文をしている。思案していると、隣の客がマスターへ、ニコラシカを、と言うのが聞こえた。かしこまりました、と答えたマスターが半身だけ振り返り、棚から小さな瓶を取り出す。
summeralley
DONEバーテンダーPとマスター💅と客🍚の三角関係。ネイPシーン多めで飯P帰結予定です。ジキルのレシピ色々あるようですが、視覚的に綺麗な部分の良いとこ取りで書いてます。それに二層に分かれてて一気飲みするタイプのカクテルはマスター💅の店みたいなお上品バーでは出ないと思いますが、全ては、バー小説でなくてネイP飯P小説なので……🥹
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/04ジキル 今日の食事会は、本当に気分が悪かった。研究者の集まりというのは、高め合うことが出来る時もあれば、牽制と探り合いが渦巻く時もある。今日は、後者だった。
そう飲まされたわけではなかったが、場の空気にあてられた僕はひどく苛立っていた。いつしかあの店のことを思い出し、足は勝手に表通りから一本入り込む。
地面を睨みながら歩いていると、ビルとビルの間の暗闇から話し声が聞こえた。ちらと目線を向ければ、気の荒そうな男が、どうやら学生に絡んでいる。肩がぶつかったとか、なんとか、ろくでもない理由で……咄嗟に二人の間に入り込み、苛立ちそのままに雑に声をかけた。
「もういいだろ、どっちも早く帰りなよ」
絡まれていた学生は、間に僕が入ったことでこれ幸いと駆け出す。絡んでいた男は、矛先を僕に向けはじめた。当然の結果だろう。
3317そう飲まされたわけではなかったが、場の空気にあてられた僕はひどく苛立っていた。いつしかあの店のことを思い出し、足は勝手に表通りから一本入り込む。
地面を睨みながら歩いていると、ビルとビルの間の暗闇から話し声が聞こえた。ちらと目線を向ければ、気の荒そうな男が、どうやら学生に絡んでいる。肩がぶつかったとか、なんとか、ろくでもない理由で……咄嗟に二人の間に入り込み、苛立ちそのままに雑に声をかけた。
「もういいだろ、どっちも早く帰りなよ」
絡まれていた学生は、間に僕が入ったことでこれ幸いと駆け出す。絡んでいた男は、矛先を僕に向けはじめた。当然の結果だろう。
summeralley
DONE客🍚がマスター💅とバーテンダーぴを取り合う話。ネイPシーン多めかつ、飯Pエンド予定です。03話にしてやっと煙り、飯Pの距離が少し縮まりました。店員と客だからなかなか詰まらないね……
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/03ブルームーン 火曜の繁華街は、週末に比べるといくらか落ち着いていた。古びたビルの周りにも、そう酩酊している人はいない。夜の街に生きる人々が足取り軽やかに行き交い、曜日の感覚の薄れている学生たちだけが、酔いのまわった陽気さで語り合っている。
足音の響く薄暗い階段を上がり、四階にある『Veil』の扉を開けると、前回と違いマスターが不在だった。
「いらっしゃいませ、どうぞ」
ピッコロさんは相変わらず微笑みもしないが、僕が二度座ったカウンターの席を手で示してくれる。覚えてもらえていたということが、浮き足立つように嬉しい。
「何になさいますか」
「僕、本当にお酒よく知らなくて……ピッコロさんの好きなカクテル、作ってもらえますか?」
3991足音の響く薄暗い階段を上がり、四階にある『Veil』の扉を開けると、前回と違いマスターが不在だった。
「いらっしゃいませ、どうぞ」
ピッコロさんは相変わらず微笑みもしないが、僕が二度座ったカウンターの席を手で示してくれる。覚えてもらえていたということが、浮き足立つように嬉しい。
「何になさいますか」
「僕、本当にお酒よく知らなくて……ピッコロさんの好きなカクテル、作ってもらえますか?」
summeralley
DONEマスター💅と客🍚がバーテンダーぴを取り合う連載です。が、ギスギスはない予定です。ネイPシーン多めに書くつもりだけど、最終的に飯Pに帰結するはずなので繊細なネイP派の方は避けてね。
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/02アフターエイト 賑やかな表通りから入り込んだ裏通りは、まだ木曜日なのに週末のような様相だった。既に酩酊している集団、あきらかに夜の仕事のきらびやかな男女、電話へ向かって頭を下げる人、缶のお酒を片手に談笑する若者たち……飲食店の照明と看板の灯り、ビルの壁に飾られたネオンが煌々とそれらを照らし出している。
そのビルは比較的古びていて、入口のテナントサインにも抜けている部分が何ヵ所かあった。二階は、20時には閉店の洋食屋とカレー屋、三階は数軒の居酒屋、そして四階に、半月前に訪ねたバー『Veil』がある。
「こんばんは……」
窓つきの扉をゆっくり開くと、店内にはマスターだけがいた。
「おや、少し前に……研究の話を聞かせて下さった……」
3429そのビルは比較的古びていて、入口のテナントサインにも抜けている部分が何ヵ所かあった。二階は、20時には閉店の洋食屋とカレー屋、三階は数軒の居酒屋、そして四階に、半月前に訪ねたバー『Veil』がある。
「こんばんは……」
窓つきの扉をゆっくり開くと、店内にはマスターだけがいた。
「おや、少し前に……研究の話を聞かせて下さった……」
summeralley
DONEマスター💅、バーテンダーぴ、客🍚がじわじわと距離を詰め三角関係に陥る予定の連載です。が、見てて辛いギスギスはないです。ネイPシーン多めに書くつもりだけど、最終的に飯Pに帰結するはずなので繊細なネイP派の方は避けてね。
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/01ウォッカトニック 大人になるにつれ飲酒の場面が増えるとは、大学でもさんざんに聞かされた。自分の飲める量を把握しておかないと、痛い目に遭うと。
ところが実際は、把握していようがいまいが、飲まなければいけない場面は出てくる。今がまさにそうだ。お世話になっている教授に「もう一軒」と言われれば、上手く断る術をまだ僕は知らなかった。
賑やかな飲食店の並ぶ表通りから、少し入り込んだ裏通りは雑多な印象だった。車止めに座り込んで話し込んでいるのは、学生だろうか? ビルとビルの間には不穏な暗闇が蹲り、通りに輝くネオンのせいで余計にその陰を濃くしていた。
教授がビルの階段を上がって行くので、僕もついて行く。もう大人だが、夜の街には慣れていない。こういうビルには、何か悪いものが潜んでいそうで、一人では絶対に踏み入らなかっただろう。
4002ところが実際は、把握していようがいまいが、飲まなければいけない場面は出てくる。今がまさにそうだ。お世話になっている教授に「もう一軒」と言われれば、上手く断る術をまだ僕は知らなかった。
賑やかな飲食店の並ぶ表通りから、少し入り込んだ裏通りは雑多な印象だった。車止めに座り込んで話し込んでいるのは、学生だろうか? ビルとビルの間には不穏な暗闇が蹲り、通りに輝くネオンのせいで余計にその陰を濃くしていた。
教授がビルの階段を上がって行くので、僕もついて行く。もう大人だが、夜の街には慣れていない。こういうビルには、何か悪いものが潜んでいそうで、一人では絶対に踏み入らなかっただろう。