にしはら
DONE【耀玲】『ただしたがりのロンド』無自覚に懐いている生真面目玲ちゃんの話
ワンドロお題「 その男、誰?」より
ただしたがりのロンド*
「お高くとまりやがって、この姫気取りが……ッ」
捨て台詞と共に向けてしまったその背を、私はぽかんと見送った。この手の暴言にもはや慣れてしまっているというのもあるが、先ほどまでは大層にこやかに対応されていたので、その手のひら返しに呆れることすら出来なかったからだ。
同じマトリといえど、異例の入庁者を九段下の職員すべてが等しく認めている訳ではない。先の男性のような態度など珍しくなかった。ため息をひとつだけ吐くに留め、当初の目的だったオフィスの自販機コーナーへと足を進める。
「分かりやすくて、いっそ感心するなあ……」
それでも多少のストレスはついて回る。こちらも分かりやすい甘さが欲しくて、いつものカフェオレでなくココアのボタンに指を添わせたところで。
4096「お高くとまりやがって、この姫気取りが……ッ」
捨て台詞と共に向けてしまったその背を、私はぽかんと見送った。この手の暴言にもはや慣れてしまっているというのもあるが、先ほどまでは大層にこやかに対応されていたので、その手のひら返しに呆れることすら出来なかったからだ。
同じマトリといえど、異例の入庁者を九段下の職員すべてが等しく認めている訳ではない。先の男性のような態度など珍しくなかった。ため息をひとつだけ吐くに留め、当初の目的だったオフィスの自販機コーナーへと足を進める。
「分かりやすくて、いっそ感心するなあ……」
それでも多少のストレスはついて回る。こちらも分かりやすい甘さが欲しくて、いつものカフェオレでなくココアのボタンに指を添わせたところで。
にしはら
DONE【耀玲+荒木田】『寝た子であれば起こさなかった』https://poipiku.com/4976035/8981112.html
↑の続編。何故か続いたとばっちり話。
耀玲のとばっちりを食らう夏目くんの話。(not春玲)
【耀玲+夏目】『鳴かざる雉でも撃たれそう』*
【耀さんに特定の女が出来たっぽくてさ~。掴んだ情報送ります♪】
【夏目くんも何か知ってたら、共有ヨロシク!】
――いや、俺が知るわけないでしょ。夏目は携帯電話を片手に、気だるげなため息を落とした。半目で捉える傍から、菅野とのトーク画面にどうでもいい情報が次々と羅列されていく。
それでも本日のタスクを終えた定時間際の手持ち無沙汰には、丁度良い小ネタだった。元より、菅野の突拍子もないメッセージには慣れている。
むしろこれは、誰かに言いふらしたくてたまらないというところだろう。確かにあの大魔王が特定の彼女を作るというのは、空前前後のゴシップかもしれない。人間離れした美貌だけでも寄ってくる蝶は数知れずだろうし、隙のない仕事ぶりは当然ながら、何事も器用にやってのける男だと服部班経由だったりで聞かされているし、夏目自身も直接目の当たりにしている。
4113【耀さんに特定の女が出来たっぽくてさ~。掴んだ情報送ります♪】
【夏目くんも何か知ってたら、共有ヨロシク!】
――いや、俺が知るわけないでしょ。夏目は携帯電話を片手に、気だるげなため息を落とした。半目で捉える傍から、菅野とのトーク画面にどうでもいい情報が次々と羅列されていく。
それでも本日のタスクを終えた定時間際の手持ち無沙汰には、丁度良い小ネタだった。元より、菅野の突拍子もないメッセージには慣れている。
むしろこれは、誰かに言いふらしたくてたまらないというところだろう。確かにあの大魔王が特定の彼女を作るというのは、空前前後のゴシップかもしれない。人間離れした美貌だけでも寄ってくる蝶は数知れずだろうし、隙のない仕事ぶりは当然ながら、何事も器用にやってのける男だと服部班経由だったりで聞かされているし、夏目自身も直接目の当たりにしている。
にしはら
DONE【耀玲】いつまでもずぶ濡れになる玲ちゃんの話。ツイに上げてるものと一緒です。深水の残り香『深水の残り香』
ついてない、と感じる時はとことんついてないことばかりが雪崩れを打って押し寄せてくる。
全身の沼に浸かり込んだような倦怠感があるのは、水気をたっぷり吸い込んだスーツのせいだろう。
退庁時を襲ったのは突発的な土砂降りだった。夜更けにもかかわらず、一人きりで黒く濁った低天の下を力なく歩き進めていく。不用心なのは勿論承知だったが、課内は上長会議や代休取得も相まって人気もなかった。お気に入りの折り畳み傘は先日壊れたばかり。ロッカーの置き傘はビニール製故か誰かが持ち去ってしまった。
絶対にずぶ濡れると分かってしまったら不思議と走る気にはならなくて、九段下駅へ真っ直ぐ進める筈の脚は反対方向のお堀沿いの道を選ぶ。広大な堀の中で気持ち良さそうに泳ぐ鯉も、この雨嵐の中では気配を見せない。状況としては、私も水の中を泳ぐ魚と一緒かも知れないなと雨に打たれる頭が取り留めのないことを考える。パンプスも膝下ストッキングもパンツスーツの腰周りも全部ぐしょぐしょで、浸水していないところなんかありはしない。必要最低限の荷物だけを入れたオフィスバッグだけは腕の中で死守しているが、恐らく徒労に終わるだろう。
6859ついてない、と感じる時はとことんついてないことばかりが雪崩れを打って押し寄せてくる。
全身の沼に浸かり込んだような倦怠感があるのは、水気をたっぷり吸い込んだスーツのせいだろう。
退庁時を襲ったのは突発的な土砂降りだった。夜更けにもかかわらず、一人きりで黒く濁った低天の下を力なく歩き進めていく。不用心なのは勿論承知だったが、課内は上長会議や代休取得も相まって人気もなかった。お気に入りの折り畳み傘は先日壊れたばかり。ロッカーの置き傘はビニール製故か誰かが持ち去ってしまった。
絶対にずぶ濡れると分かってしまったら不思議と走る気にはならなくて、九段下駅へ真っ直ぐ進める筈の脚は反対方向のお堀沿いの道を選ぶ。広大な堀の中で気持ち良さそうに泳ぐ鯉も、この雨嵐の中では気配を見せない。状況としては、私も水の中を泳ぐ魚と一緒かも知れないなと雨に打たれる頭が取り留めのないことを考える。パンプスも膝下ストッキングもパンツスーツの腰周りも全部ぐしょぐしょで、浸水していないところなんかありはしない。必要最低限の荷物だけを入れたオフィスバッグだけは腕の中で死守しているが、恐らく徒労に終わるだろう。
にしはら
DONE耀玲小話。ツイのワンドロに投稿したものです。お題「好きという言葉よりキスをして」よりサウンド・オブ・サイレンス*
声帯をふるわせ音にした瞬間から、陳腐で安っぽいものに成り下がる。鼓膜へ反響する味気なさにがっかりする。敬虔な祈りであり醜悪な劣情でもある複雑怪奇な感情の坩堝をたった二文字に埋めることなど出来っこなくて、欠如なく外界に反映させられる利便な手法だとは思えなかった。
手と手や唇、肌を触れ合わせる方がまだ実感させられる。生まれ出る温もりは表面的な体温だけではなく、心臓の奥まで見えざる炎を灯してくれる。紫煙のように苦い感傷を押し撫でるばかりの燻る火種だった頃が、今は少し懐かしい。そうしてそろそろ短くもない時を経ているというのに、彼女は相も変わらず陳腐な音を欲しがる。
「別に愛されてないなんて思ってませんよ。耀さんであるからこその愛情表現の行動方式なんだなって分かってますし、納得してます。でも私は私であるからこそ、言葉にも重きを置いてしまいがちで――」
1566声帯をふるわせ音にした瞬間から、陳腐で安っぽいものに成り下がる。鼓膜へ反響する味気なさにがっかりする。敬虔な祈りであり醜悪な劣情でもある複雑怪奇な感情の坩堝をたった二文字に埋めることなど出来っこなくて、欠如なく外界に反映させられる利便な手法だとは思えなかった。
手と手や唇、肌を触れ合わせる方がまだ実感させられる。生まれ出る温もりは表面的な体温だけではなく、心臓の奥まで見えざる炎を灯してくれる。紫煙のように苦い感傷を押し撫でるばかりの燻る火種だった頃が、今は少し懐かしい。そうしてそろそろ短くもない時を経ているというのに、彼女は相も変わらず陳腐な音を欲しがる。
「別に愛されてないなんて思ってませんよ。耀さんであるからこその愛情表現の行動方式なんだなって分かってますし、納得してます。でも私は私であるからこそ、言葉にも重きを置いてしまいがちで――」
にしはら
DONE耀玲『手帳の狭間の恋だった』メモをお守りにしている生真面目玲ちゃんの話。ついったにあげてるものと一緒です
手帳の狭間の恋だった*
「ありゃクロだねえ」
重要参考人から事情聴取を行い、駅前の雑居ビルを出て間もなく、隣で呟かれた低い声音に目を丸くした。
「え、どうしてですか」
「動向と理由があまりに理路整然と過ぎている」
まあ他にも諸々あるけど、と服部さんは淡々と付け加えた。私は目を瞬かせて密かに息を呑む。数分にも満たない会話から、一体どれほどの情報を引き出して精査しているのだろう。
ユルくてのんびり気質と周知される普段の言動からは感じにくいが、いざ事件だと幕が上がり、合同捜査といった近場で彼を臨む時、底の知れなく比類なき能力をありありと肌で感じ取っていく。尊敬は当然ながら、畏怖まで抱いてしまうのはきっと私だけではないだろう。何処までも見透かしてしまう怜悧で深い眼差しに射すくめられたら、誰もが尻尾を巻いて逃げ出してしまうに違いない。
4549「ありゃクロだねえ」
重要参考人から事情聴取を行い、駅前の雑居ビルを出て間もなく、隣で呟かれた低い声音に目を丸くした。
「え、どうしてですか」
「動向と理由があまりに理路整然と過ぎている」
まあ他にも諸々あるけど、と服部さんは淡々と付け加えた。私は目を瞬かせて密かに息を呑む。数分にも満たない会話から、一体どれほどの情報を引き出して精査しているのだろう。
ユルくてのんびり気質と周知される普段の言動からは感じにくいが、いざ事件だと幕が上がり、合同捜査といった近場で彼を臨む時、底の知れなく比類なき能力をありありと肌で感じ取っていく。尊敬は当然ながら、畏怖まで抱いてしまうのはきっと私だけではないだろう。何処までも見透かしてしまう怜悧で深い眼差しに射すくめられたら、誰もが尻尾を巻いて逃げ出してしまうに違いない。
にしはら
DONE【耀玲+荒木田】耀玲のとばっちりを食らう荒木田さんの話。ギャグです。(not蒼玲)
ついったにあげてるものと一緒です
寝た子であれば起こさなかった*
荒木田が外回りから戻って来ると、捜査一課に面する廊下を右往左往する不審人物がいた。室内側と窓側とを、何かを見下ろすようにして行ったり来たりしている。見知った人間だったので不信感は募らせなかったが、それでも訝しげに声をかける。
「……何してんだ、泉」
「あっ荒木田さん! お疲れ様です!」
今日も相変わらず張りのある声で応える玲は、如何にもといった困り顔をしていた。
「……探し物でもしてんのか?」
「え、良く分かりましたね」
きょとんと目を瞠る玲に、呆れにも似たため息を落とす。
「そんだけ念入りに目配せしてウロウロしてりゃ、何となく想像つくだろ」
「あはは、お恥ずかしい限りです……」
不審行動の事情を当てられて居たたまれなさそうだったが、気後れなく玲は頬を掻いた。聞くところによると、ピアスを何処かに落としてしまったのだという。
3622荒木田が外回りから戻って来ると、捜査一課に面する廊下を右往左往する不審人物がいた。室内側と窓側とを、何かを見下ろすようにして行ったり来たりしている。見知った人間だったので不信感は募らせなかったが、それでも訝しげに声をかける。
「……何してんだ、泉」
「あっ荒木田さん! お疲れ様です!」
今日も相変わらず張りのある声で応える玲は、如何にもといった困り顔をしていた。
「……探し物でもしてんのか?」
「え、良く分かりましたね」
きょとんと目を瞠る玲に、呆れにも似たため息を落とす。
「そんだけ念入りに目配せしてウロウロしてりゃ、何となく想像つくだろ」
「あはは、お恥ずかしい限りです……」
不審行動の事情を当てられて居たたまれなさそうだったが、気後れなく玲は頬を掻いた。聞くところによると、ピアスを何処かに落としてしまったのだという。
yurio_wotaku
DONE【Stmy】耀玲stmy深夜の真剣お絵描き文字書き六十分一本勝負 さんのお題
📝お題
「 元気、でた?」
📷時間
2時間30分くらい… 超超過スミマセン
👩❤️👨CP
服部耀×泉玲(付き合ってない) 【1/3】
まだ未開封の芋焼酎のボトルが3種類。
お茶、ソーダ、お湯、水、氷、各種割材も一歩も動かないで、手をのばせば届く位置セッティング済みだ。さらに、頂きものの明太子を軽く炙れば、テーブルの上にはあっという間に楽園が完成する。
「よーし、呑むぞぉ」
元々お酒は飲まない日のほうが少ないけれど、やはり平日は社会人として少し抑えめになる。けれど今は金曜日の22:30。そして明日は暦通りの休日。貴重なこの夜を無駄にしてはなるまい。私は意気揚々と1つボトルを選び、グラスにいれるとまずはストレートで飲み干す。
「くーーーっ」
のどの奥に染み渡る刺激が『ああ、最高に生きてるな』って実感に変わっていく。
さぁ、間髪いれずにもう一杯。と。
5226お茶、ソーダ、お湯、水、氷、各種割材も一歩も動かないで、手をのばせば届く位置セッティング済みだ。さらに、頂きものの明太子を軽く炙れば、テーブルの上にはあっという間に楽園が完成する。
「よーし、呑むぞぉ」
元々お酒は飲まない日のほうが少ないけれど、やはり平日は社会人として少し抑えめになる。けれど今は金曜日の22:30。そして明日は暦通りの休日。貴重なこの夜を無駄にしてはなるまい。私は意気揚々と1つボトルを選び、グラスにいれるとまずはストレートで飲み干す。
「くーーーっ」
のどの奥に染み渡る刺激が『ああ、最高に生きてるな』って実感に変わっていく。
さぁ、間髪いれずにもう一杯。と。
yurio_wotaku
PAST【Stmy】耀玲stmy深夜の真剣お絵描き文字書き六十分一本勝負 さんのお題
📝お題
モブにアタックされてる玲ちゃんにヤキモチ妬いて奪い去っちゃうヒーローズ
⏰時間
2時間くらい
👩❤️👨CP
服部耀×泉玲(付き合ってない) 7
hnsimi7
INFO5/3スパコミ発行予定の耀玲会話文本サンプルです。Twitterにあげていた1ページ完結のお話を40篇(加筆修正有り)+書き下ろしが5篇。
付き合ってない二人から恋人同士の二人まで。基本的に内容は繋がってません。
※耀玲前提として一部のキャラクター(渡部、羽鳥、京介)が当て馬として登場します。ご注意ください。
『Ones to Two』
B6/全年齢/本文50P/予価¥400(会場価格) 5
s_k_r_5
DONEソフトが使いこなせない人なのでデータ上でも力技でやったときの画像。4枚目はえぐみパーカーが描きたかったけど色んなところに載せられないので文字のあるやつはここに置きますそうです字が全部手書き。ラストは計算したはずが上手くいかなかったやつ。 5@trdmvga
MOURNING仕事にお疲れの玲ちゃんを書こうと思ったものの途中で方向転換し玲ちゃんに兎になってもらったが特にオチが思いつかず投げた小説正月小説1月4日、世間のサラリーマンやOLが正月休みを終え、仕事を始めた日に私はようやく仕事を終え正月休みを始めることができた。非常に残念なことにニューイヤーパーティーで薬物が使われることがあるようで、今年の年越しは盛り上がるパーティーに冷や水をかけているうちに終わってしまった。それから犯人の聴取やら報告書の作成やらで初日の出を庁舎の窓から眺め、いまだ初夢が見えるほどには睡眠がとれていない。それでもなんとか明日の午前休をもらい決して早いとは言えない時間に帰宅した。事件が起こったのは風呂に入る気力も食事をとる気力もないままにこれまた夢を見ることもなく熟睡した次の日の朝のことだった。
「う、うさ耳が生えてる…」
940「う、うさ耳が生えてる…」
oc_pp_httr
DONEAgent meeting7耀玲新刊「つぎはぎつないで」の後日談。⚠️後日談は全年齢ですが新刊はR18です
サンプル▷https://poipiku.com/3347771/7905689.html
通販▷https://www.melonbooks.co.jp/fromagee/detail/detail.php?product_id=1733339 3456
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MOURNING服部誕20222022服部誕生日(服部本編完結おめでとう!) 体半分を覆うシャンプーを一気にシャワーで洗い流していく。何も残らないように、傷をつけないように、極力その表面に手が触れない触れないように。じょろじょろとした水に流されて泡が溶け出すように落ちていった。つるりとした曲線が登ったばかりのやわい日に照らされて、水滴が光る。
タオルで拭うと、まるで鏡面のような車体にホースを持った自分と、この空間で異物たる彼女が映る。仕事中は見れないカジュアルな彼女はどこかぼんやりとしていて、俺の視線に気づくと慌てて無い襟を正してこちらを見返した。
付き合い始めたばかりだからだろうか、それとも生来の彼女の性質だろうか、そしてまだそんなカノジョに喉で笑う。
「退屈でしょうに」
1870タオルで拭うと、まるで鏡面のような車体にホースを持った自分と、この空間で異物たる彼女が映る。仕事中は見れないカジュアルな彼女はどこかぼんやりとしていて、俺の視線に気づくと慌てて無い襟を正してこちらを見返した。
付き合い始めたばかりだからだろうか、それとも生来の彼女の性質だろうか、そしてまだそんなカノジョに喉で笑う。
「退屈でしょうに」
にしはら
DONE耀玲小話。玲ちゃんと喧嘩しちゃった耀さん目線。キッチンシンク・エゴイスト*
玲と喧嘩した。当初の原因は些細な理由だったように思うが、話がこじれにこじれて論点の行き場は消えてしまった。
これまでにも小さなきっかけで他愛のない応酬を繰り返してきたものだが、今回ばかりは風向きが少し違った。プライベートにおいての、食事中の穏やかなひと時には一層あどけなさをたたえる玲の純な丸い瞳が、スッと色味を失くして俺をねめつけた。そして、「そもそも耀さんは、」「大体本当は耀さんが、」と過去の不満を突如列挙し始め、怒涛の勢いで噛み付いてきた。
日々の溜まりに溜まったものが、臨界点を超えて爆発したというお決まりの流れではある。言いたいことがあるなら溜め込まずに、その時その場できちんと言えば良いものを。まるで他人事のような冷めた心境をあちらは敏感に感じ取ったようで、「もういいです」という言葉と共に席を立ち、ダイニングテーブルから離れていった。
1755玲と喧嘩した。当初の原因は些細な理由だったように思うが、話がこじれにこじれて論点の行き場は消えてしまった。
これまでにも小さなきっかけで他愛のない応酬を繰り返してきたものだが、今回ばかりは風向きが少し違った。プライベートにおいての、食事中の穏やかなひと時には一層あどけなさをたたえる玲の純な丸い瞳が、スッと色味を失くして俺をねめつけた。そして、「そもそも耀さんは、」「大体本当は耀さんが、」と過去の不満を突如列挙し始め、怒涛の勢いで噛み付いてきた。
日々の溜まりに溜まったものが、臨界点を超えて爆発したというお決まりの流れではある。言いたいことがあるなら溜め込まずに、その時その場できちんと言えば良いものを。まるで他人事のような冷めた心境をあちらは敏感に感じ取ったようで、「もういいです」という言葉と共に席を立ち、ダイニングテーブルから離れていった。
oc_pp_httr
INFO*6/26にて発行予定の耀玲本のサンプルです。*暗い感情の話をする耀玲の短編集です。耀玲しか出てきません。
*文庫サイズ/54p/全年齢/500円
*アンケートにご協力いただきありがとうございました!
*部数アンケートにご協力いただけますと幸いです
https://forms.gle/U5cW5CLDU6f7pL8J8
よろしくお願いいたします! 5277
にしはら
DONE耀玲お花見話、『融けない淡いあまやかさ』https://poipiku.com/4976035/6519347.htmlの一年後。付き合ってから日が浅い二人。
わたしたちの春がくる 二人きりの花見をしてから一年後、再来の機会は訪れる。都市圏近郊の某河川敷、その堤防沿いに百はくだらない本数の桜が立ち並んでいる。咲き誇った花々の下には屋台が出回り、休日なのもあって大変な賑わいを見せていた。
「耀さん耀さん! すごいです! 満開の大盛況です!」
玲の見えないしっぽがぶんぶんと振り回されている。目一杯に見開いた紫苑の瞳はきらきらと、薄淡の桜花と屋台の行列を忙しなく右往左往。繋いだ左手を離してしまえば、何処へなりとも駆け出してしまいそうで言わずもがなに苦笑がこぼれる。
「前見てないと転ぶよ。随分と大はしゃぎしちゃってまあ」
「だってわくわくしませんか? 去年は結局……わっ!」
いきなり何もないところで玲がつんのめり、ぐらついた重心はリードを引っ張る要領でこちらに引き戻す。
3628「耀さん耀さん! すごいです! 満開の大盛況です!」
玲の見えないしっぽがぶんぶんと振り回されている。目一杯に見開いた紫苑の瞳はきらきらと、薄淡の桜花と屋台の行列を忙しなく右往左往。繋いだ左手を離してしまえば、何処へなりとも駆け出してしまいそうで言わずもがなに苦笑がこぼれる。
「前見てないと転ぶよ。随分と大はしゃぎしちゃってまあ」
「だってわくわくしませんか? 去年は結局……わっ!」
いきなり何もないところで玲がつんのめり、ぐらついた重心はリードを引っ張る要領でこちらに引き戻す。
にしはら
DONE耀玲お花見話。くっつく寸前のもだもだした期間融けない淡いあまやかさ 警視庁捜査一課へ捜査関連資料を届けに行くのは、専らマトリの下っ端である私の役目だった。
今日も仕事の昼休憩をいただく際に、関さんから申し訳なさそうに頼まれて二つ返事で了承する。最近はデスクに齧りついている時間が多く、運動不足になりがちな身体を動かすには丁度いい。戻りは遅くなっても構わないからと、課員への寛大すぎる気配りをしてくれる上司に深く頭を下げて、庁舎から警視庁への道を徒歩で向かう。
「耀さん? 朝から見てないなー」
「昨晩から明朝にかけてはいましたよ、恐らく仮眠を取りに行ったのでしょう」
服部班のメンバーたちは事もなげに激務の片鱗を口にするので、思わず苦笑してしまう。
「そうですか、関さんから頼まれていたものだったので本人に直接渡したかったのですが……。思い当たる場所を知りませんか?」
3661今日も仕事の昼休憩をいただく際に、関さんから申し訳なさそうに頼まれて二つ返事で了承する。最近はデスクに齧りついている時間が多く、運動不足になりがちな身体を動かすには丁度いい。戻りは遅くなっても構わないからと、課員への寛大すぎる気配りをしてくれる上司に深く頭を下げて、庁舎から警視庁への道を徒歩で向かう。
「耀さん? 朝から見てないなー」
「昨晩から明朝にかけてはいましたよ、恐らく仮眠を取りに行ったのでしょう」
服部班のメンバーたちは事もなげに激務の片鱗を口にするので、思わず苦笑してしまう。
「そうですか、関さんから頼まれていたものだったので本人に直接渡したかったのですが……。思い当たる場所を知りませんか?」