ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ お題:お金/money。寶さんとママ。紅灯祭 まだ、母さんが生きていた頃の話だ。
隠れ住んでいた街は祭りの日で、夜になっても紅い灯や青い灯が明るく、小さいおれも浮かれた気分になって夜店のくじ引きをねだった。母さんは少し考えたようだったが、おれの手をひいてどこかの店に入り、肌身離さずしていた腕輪を手放して、数枚の銅貨をおれにわたしてくれた。
かあさん、あの腕輪は、と聞くと「いつも同じのをしてて飽きちゃった」と答えが返ってきた。とうさんが生きていて、まだ後宮にいられるのなら、それは本当のことだったのかもしれない。
あのときから今までずっと、欲の裏側にうしろめたさが貼り付いていて、その二つを分けて考えられない。
母さんが手放した腕輪で何を手に入れたのか、もう忘れてしまった。おおよそくだらないものだったのだろう。そうしておれを生かして、母さんは死んでいった。母さんはおれに、金鋼族の復興を果たすように言い残したけれど、それはおれが、母さんみたいな女の人を増やすことになるのを、どれだけわかっていたのか?
576隠れ住んでいた街は祭りの日で、夜になっても紅い灯や青い灯が明るく、小さいおれも浮かれた気分になって夜店のくじ引きをねだった。母さんは少し考えたようだったが、おれの手をひいてどこかの店に入り、肌身離さずしていた腕輪を手放して、数枚の銅貨をおれにわたしてくれた。
かあさん、あの腕輪は、と聞くと「いつも同じのをしてて飽きちゃった」と答えが返ってきた。とうさんが生きていて、まだ後宮にいられるのなら、それは本当のことだったのかもしれない。
あのときから今までずっと、欲の裏側にうしろめたさが貼り付いていて、その二つを分けて考えられない。
母さんが手放した腕輪で何を手に入れたのか、もう忘れてしまった。おおよそくだらないものだったのだろう。そうしておれを生かして、母さんは死んでいった。母さんはおれに、金鋼族の復興を果たすように言い残したけれど、それはおれが、母さんみたいな女の人を増やすことになるのを、どれだけわかっていたのか?
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ お題:緑/green, greenery。樹果さん一人語り。雑草図鑑 全ての植物が優しいとは限らない。
あいつらは基本、自陣を拡大することしか考えてない。そのためには多少犠牲が伴っても構わないとさえ思ってる。植物の世話をしていると、ときどきそう考えてしまう。地面を埋め尽くし、交雑を続けるミントの絨毯を見つめていれば、誰だってそういう考えに辿り着いてしまう。俺みたいに。
おとうさまには「草木を育て、花を愛で、星の犠牲となれ、それが卉樹族の使命だ」と教えられた。でも、星の犠牲となるってどういうことか、おとうさまはおしえてくれなかった。星々を構成しているのが俺たち一人ひとりの生命だとするなら、他人を助けて死ねってことなのか? わからない。
確かに他人や植物を癒すのは好きで、向いていると思うし、やらずにはいられない。けれど治療を手伝ってくれるこっぱでさえ、身を犠牲にして滅びていく姿を見続けていると、いずれ俺にもその順番がまわってくるとしか思えない。
512あいつらは基本、自陣を拡大することしか考えてない。そのためには多少犠牲が伴っても構わないとさえ思ってる。植物の世話をしていると、ときどきそう考えてしまう。地面を埋め尽くし、交雑を続けるミントの絨毯を見つめていれば、誰だってそういう考えに辿り着いてしまう。俺みたいに。
おとうさまには「草木を育て、花を愛で、星の犠牲となれ、それが卉樹族の使命だ」と教えられた。でも、星の犠牲となるってどういうことか、おとうさまはおしえてくれなかった。星々を構成しているのが俺たち一人ひとりの生命だとするなら、他人を助けて死ねってことなのか? わからない。
確かに他人や植物を癒すのは好きで、向いていると思うし、やらずにはいられない。けれど治療を手伝ってくれるこっぱでさえ、身を犠牲にして滅びていく姿を見続けていると、いずれ俺にもその順番がまわってくるとしか思えない。
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ お題:蝶。最後ちょっとだけチル蘭が入っているかも。「少年の日の思い出」の感想。ドイツ語では蝶と蛾の区別はないんだそうです。わたしはドイツ語わかりませんが。そういう奴「忘れないうちに返しておくよ。まーさーか、中等部の教科書持ってこい、って言われるなんて思わなかったよ」
「生徒会室の忘れ物の在庫が役に立っただけだよ」
樹果がうるうに中学国語の教科書を渡した。
白い制服を着た四人の生徒たちはもう食べ終わって、食器も下げ終えてしまったのに、誰も教室へ戻る様子はない。
「でもさあ、「君はつまりそういう奴なんだな」って言われたら、俺立ち直れないよ〜」
樹果がおおげさに嘆いてみせると、焔が話題に乗ってきた。
「ああ、あのいけすかない金持ち、ああいうイヤミの言い方するやつ、ここにもいるよな、どこの誰とは言わねえけどよ」
「盗みを働き規律を乱した人間は、罰を受けて当然だろう? 相変わらず火炎族は情に流されやすく出来ていると見える」
775「生徒会室の忘れ物の在庫が役に立っただけだよ」
樹果がうるうに中学国語の教科書を渡した。
白い制服を着た四人の生徒たちはもう食べ終わって、食器も下げ終えてしまったのに、誰も教室へ戻る様子はない。
「でもさあ、「君はつまりそういう奴なんだな」って言われたら、俺立ち直れないよ〜」
樹果がおおげさに嘆いてみせると、焔が話題に乗ってきた。
「ああ、あのいけすかない金持ち、ああいうイヤミの言い方するやつ、ここにもいるよな、どこの誰とは言わねえけどよ」
「盗みを働き規律を乱した人間は、罰を受けて当然だろう? 相変わらず火炎族は情に流されやすく出来ていると見える」
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ お題:妖精の焔。椎菜さんを引っ込み思案だと思ってるのは椎菜さんだけだと思うけど…イマジナリーブラザー 目が痛い。うたたねから目覚めた椎菜が真っ先に思ったのはそのことだった。ネーム切るときくらい、ライトボックスから離れるべきだった。顔をくっつけて寝てしまったせいか、目の奥が熱く、鼻がぐずぐずする。嫌だな。睡眠不足にネーム提出が重なって、変なことで涙ぐんじゃったのかもしれない。どうしよう。いくら絵面がキレイだからといって、闇に落ちた妖精の剣で焔を刺しちゃうのは、やりすぎだったのかも。それとも私、自分で作ったキャラなのに、焔くんに感情移入しすぎかな。感情移入とは少し違うかもしれない。私が焔くんの気持ちになる、というより、私の理想のおにいさんのような。
引っ込み思案で、そう明るい性格でもなかったから、ひとりで鉛筆にぎって絵を描く方向にいった。一枚絵を描くだけではもの足りず、お話をつけたくなった。このキャラクターがどれほどかっこいいか、かわいいか、はらただしいか。
717引っ込み思案で、そう明るい性格でもなかったから、ひとりで鉛筆にぎって絵を描く方向にいった。一枚絵を描くだけではもの足りず、お話をつけたくなった。このキャラクターがどれほどかっこいいか、かわいいか、はらただしいか。
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ お題:バジル/basil。エ・フランデミューズ学園の学生たち。屋上で「屋上で歩照瀬が何やらよからぬことをしているという噂が立っている。全く、これだから火焔族は…」
誰に対しても丁寧なくせに、焔にだけはどうしてああなんだろうね、と樹果は蘭丸に話しかけたが、「えー。そうかなあ」といつものように曖昧な返答が戻ってくるばかりだった。
俺と蘭丸まで連れてくるってことは、やっぱりうるうは、焔のこと怖いのかな。屋上への階段を上りながら樹果はそう思った。
「鍵を持ってくる必要もなかったな」
言いながら、うるうが扉を開けると、初夏の風でうるうの長い髪が乱れる。
うるうが顔をしかめる。その視線の先に、寝転がっている焔の姿があった。
「起こす?」
樹果の問いに、うるうは黙って首を振る。寝息を立てている焔の傍を、忍者さながらに息を殺して通り過ぎる。
694誰に対しても丁寧なくせに、焔にだけはどうしてああなんだろうね、と樹果は蘭丸に話しかけたが、「えー。そうかなあ」といつものように曖昧な返答が戻ってくるばかりだった。
俺と蘭丸まで連れてくるってことは、やっぱりうるうは、焔のこと怖いのかな。屋上への階段を上りながら樹果はそう思った。
「鍵を持ってくる必要もなかったな」
言いながら、うるうが扉を開けると、初夏の風でうるうの長い髪が乱れる。
うるうが顔をしかめる。その視線の先に、寝転がっている焔の姿があった。
「起こす?」
樹果の問いに、うるうは黙って首を振る。寝息を立てている焔の傍を、忍者さながらに息を殺して通り過ぎる。
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ お題:お祝い/congratulation。その後の亜瑠さん。そつえんおめでとう いつも見送る立場になっていた。仲良くしていた同期の子も産休に入り、そのまま退職していった。子供たちは好きだけど、いつまでも続ける仕事じゃないと、親にさえ言われた。子供たちは二年ごとに入れかわる。いつも、わたしだけが残されるっす。
やばいっす、手をうごかしていると余計な考えが止められなくなってきちゃうっす。
亜瑠はハサミを動かす手を止め、背伸びをした。広いスペースが欲しかったので、園のばら組の教室で作業をしていたが、やはり園児向けの机に座って作業するのは腰にくる。
園長がその座を退いても、亜瑠の仕事量はさほど変わらなかったが、自分で仕事の舵を取れるようになったことだけは、以前よりマシといえるだろう。
724やばいっす、手をうごかしていると余計な考えが止められなくなってきちゃうっす。
亜瑠はハサミを動かす手を止め、背伸びをした。広いスペースが欲しかったので、園のばら組の教室で作業をしていたが、やはり園児向けの机に座って作業するのは腰にくる。
園長がその座を退いても、亜瑠の仕事量はさほど変わらなかったが、自分で仕事の舵を取れるようになったことだけは、以前よりマシといえるだろう。
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ お題:桜/cherry blossoms。カップリング要素のない焔さんと樹果さんと寶さん。無駄に偽客(サクラ)要素がはいりました。最後だけちょっとチル蘭。サクラ「ええっ、ばーえふ? カレーがおいしいあのおみせ?」
「ようせいさんが願いを叶えてくれるって、いまSNSで話題らしいよ……ていうか、焔、声が大きいのはいいけど、棒読み」
bar Fの店内。カウンター前のスツールには、焔と樹果が座っている。
「しょうがねえだろ、嘘がつけない性格なんだからよ」
言いながら、焔がタンブラーの水を一気に半分ほど飲み干した。
「君たち、バイト代出すんやさかい、あんじょうやりや」
カウンター内から、寶が有無を言わさぬような笑顔を浮かべている。
「金の亡者め…。SNSとリアル口コミ併用で店の宣伝、とか上手くいくのかよ」
樹果は携帯をいじり始めた。
「ばーえふは、都内にあるちいさなおみせです。不定休、ランチ営業あり、くらい書いときゃいいだろ、ねえ寶」
810「ようせいさんが願いを叶えてくれるって、いまSNSで話題らしいよ……ていうか、焔、声が大きいのはいいけど、棒読み」
bar Fの店内。カウンター前のスツールには、焔と樹果が座っている。
「しょうがねえだろ、嘘がつけない性格なんだからよ」
言いながら、焔がタンブラーの水を一気に半分ほど飲み干した。
「君たち、バイト代出すんやさかい、あんじょうやりや」
カウンター内から、寶が有無を言わさぬような笑顔を浮かべている。
「金の亡者め…。SNSとリアル口コミ併用で店の宣伝、とか上手くいくのかよ」
樹果は携帯をいじり始めた。
「ばーえふは、都内にあるちいさなおみせです。不定休、ランチ営業あり、くらい書いときゃいいだろ、ねえ寶」
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ お題:マシュマロ/marshmallow。カップリング要素のないうるうさんと樹果さん。ほむーるが入ってるかもしれません。仕返し「串刺しにして火で炙るとかいってたから、どんな怖いやつかと思ったよ」
余ったマシュマロを頬張りながら樹果が言った。
「ラッピングの手伝いに来てくれて助かったよ」
生徒会室の机上に、おそらく返礼用の大量のラッピングされたマシュマロが整然と並んでいる。
「ところでさー、なんで蘭丸呼ばなかったの? ああいう細かい仕事好きそうじゃん、あいつ」
「奴は、マシュマロをバックンに横流ししそうで怖い」
自分のぶんの紅茶を席に持ってきながら、うるうは答えた。
「焔は?」
「そのことについて、相談したい」
「えっ、なになにー? なんでも聞くよ!」
樹果は好奇心に瞳を輝かせている。
「僕は傷ついた。だから復讐したい」
樹果の肩が強張って、笑顔がそのまま凍った。
701余ったマシュマロを頬張りながら樹果が言った。
「ラッピングの手伝いに来てくれて助かったよ」
生徒会室の机上に、おそらく返礼用の大量のラッピングされたマシュマロが整然と並んでいる。
「ところでさー、なんで蘭丸呼ばなかったの? ああいう細かい仕事好きそうじゃん、あいつ」
「奴は、マシュマロをバックンに横流ししそうで怖い」
自分のぶんの紅茶を席に持ってきながら、うるうは答えた。
「焔は?」
「そのことについて、相談したい」
「えっ、なになにー? なんでも聞くよ!」
樹果は好奇心に瞳を輝かせている。
「僕は傷ついた。だから復讐したい」
樹果の肩が強張って、笑顔がそのまま凍った。
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DONE #F蘭ワンドロ お題:ツインテール/pigtail。ウィントラ時代の女王さま。ひとつとふたつ かわいいままだとナメられる。人間界に来て真っ先に気づいたことはそれだった。近衛のふたりにとって、かわいいことや美しいことは仕事だし、何よりわたしが望んだことだ。だから、わたしはかわいくなくていい。強く、人間どもの折衝に負けない程度に相手を威圧できればいい。装うことは武装で、強くなっていく自分のことも好きになれた。前髪は庇のようにどんどん大きく目立ち、まわりが見えなくなっていったのも、そのせいかもしれない。
服装や髪型は変えられても、髪色までは変えられなかった。
ツボドームでのライブの初日、タクシーを降りると駅前では大勢の女の子たちの姿が見えた。シリウスとベテルギウスを模して、女の子にしたようなかわいい服装。ご丁寧にも背中に白い羽まで背負っている。近衛のふたりはひとつ結びだが、この子たちは二つ結びだ。
440服装や髪型は変えられても、髪色までは変えられなかった。
ツボドームでのライブの初日、タクシーを降りると駅前では大勢の女の子たちの姿が見えた。シリウスとベテルギウスを模して、女の子にしたようなかわいい服装。ご丁寧にも背中に白い羽まで背負っている。近衛のふたりはひとつ結びだが、この子たちは二つ結びだ。
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ お題:時計/watch。ほむらさん一人語り。胸の振子「人間とおれたちでは、持っている時計が違いすぎる」
なぜ人間と深く関わってはいけないのか、とうさんに聞いたとき、そう言われた。とうさんは、おれの髪を編んでいた。そのとき、おれは掌の上の火トカゲに炎の吐き方を教わっていたから、とうさんがどんな顔をしていたのかはわからない。戦でうちにいないのは寂しかったけれど、帰ってきたときにはいっぱい相手をしてくれた。他愛無い話も聞いてくれたし、祭にも連れていってくれた。子供でなくなった今にして思えば、おれはウザいガキだったのかもしれない。とうさんがいなくなってからは、もっとウザくなった。残されたとうさんの部下たちが優しく差し伸べてくれた手を跳ね除けて、ただ一人で泣いていた。大人たちの気遣いは、イヤな噂がおれの耳に届く速度を、少しだけ遅くしてくれた。奴等が懲りずにしつこく構ってくれたせいで、とうさんのいない生活に少しずつ慣れていった。
584なぜ人間と深く関わってはいけないのか、とうさんに聞いたとき、そう言われた。とうさんは、おれの髪を編んでいた。そのとき、おれは掌の上の火トカゲに炎の吐き方を教わっていたから、とうさんがどんな顔をしていたのかはわからない。戦でうちにいないのは寂しかったけれど、帰ってきたときにはいっぱい相手をしてくれた。他愛無い話も聞いてくれたし、祭にも連れていってくれた。子供でなくなった今にして思えば、おれはウザいガキだったのかもしれない。とうさんがいなくなってからは、もっとウザくなった。残されたとうさんの部下たちが優しく差し伸べてくれた手を跳ね除けて、ただ一人で泣いていた。大人たちの気遣いは、イヤな噂がおれの耳に届く速度を、少しだけ遅くしてくれた。奴等が懲りずにしつこく構ってくれたせいで、とうさんのいない生活に少しずつ慣れていった。
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ お題:カレー/curry。学生さんと学食。カレーうどん パート先が無事に見つかって三ヶ月が過ぎた。仕事はいわゆる「学食のおばちゃん」。自分の子と同じような年齢の子たちの相手を毎日している。
十二時前にいつもやってくる赤い髪の子は、いつもラーメンを頼む。ちょっとせっかちで怖いけど、オーダーを間違えたとき、キレなかったくらいには優しいのかもしれない。後から来る子たちの席取りをしているのかもしれないし。
十二時過ぎるとやってくる長髪の子は、生徒会長とのことだ。長髪でも生徒会長になれるとは、自由な校風に万歳といったところか。私が時代錯誤なのか。いつも冷やしたぬきを頼んで、すぐ席を立つのは、生徒会長の役職の忙しさからだろうか。
それより少し遅れてやってくる、ふわふわ頭にヘッドホンの子と地味なメガネの子。いつも仲良しそうに二人で連れ立ってやってくる。
852十二時前にいつもやってくる赤い髪の子は、いつもラーメンを頼む。ちょっとせっかちで怖いけど、オーダーを間違えたとき、キレなかったくらいには優しいのかもしれない。後から来る子たちの席取りをしているのかもしれないし。
十二時過ぎるとやってくる長髪の子は、生徒会長とのことだ。長髪でも生徒会長になれるとは、自由な校風に万歳といったところか。私が時代錯誤なのか。いつも冷やしたぬきを頼んで、すぐ席を立つのは、生徒会長の役職の忙しさからだろうか。
それより少し遅れてやってくる、ふわふわ頭にヘッドホンの子と地味なメガネの子。いつも仲良しそうに二人で連れ立ってやってくる。
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ お題:癒し/healing。豊穣さんの短い話。おつかい「わしの顔ばかり見ていては息もつまるじゃろう。豊穣、菓子でも持ってあやつらの様子でも見がてら人間界で息抜きでもしてこい」
女王陛下は膝に乗せたケモナマを撫でながらそういった。初めてお仕えした頃の女王陛下は、初めて見たおとなの女のひとで、まだ幼かった私を気遣ってか、頻繁にお茶の時間に付き合わされたり、何かと理由をつけてお菓子を食べさせられたり、持ち帰らされたりしたものだった。小さな子供の姿になっても、あのおかたは、子供との付き合い方がわかっていない。まだ自分のことを子供だとでも思っているのか。ただお菓子だけを与えていればよいと思っているのか、それしかできなかったのか。
平日の割には混雑しているデパートの地下で適当に菓子を包ませ、BAR Fへ向かう。
519女王陛下は膝に乗せたケモナマを撫でながらそういった。初めてお仕えした頃の女王陛下は、初めて見たおとなの女のひとで、まだ幼かった私を気遣ってか、頻繁にお茶の時間に付き合わされたり、何かと理由をつけてお菓子を食べさせられたり、持ち帰らされたりしたものだった。小さな子供の姿になっても、あのおかたは、子供との付き合い方がわかっていない。まだ自分のことを子供だとでも思っているのか。ただお菓子だけを与えていればよいと思っているのか、それしかできなかったのか。
平日の割には混雑しているデパートの地下で適当に菓子を包ませ、BAR Fへ向かう。
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ お題:stole。うるうさんの思い出。ほむうるが入ってるかもしれません。本来のストールと盗んだの意味と両方いれてみた。虹の根元 ふだん身につけない白く長い布が、肩に重かったのを覚えている。あれはまだ幼い頃、おとうさまと水潤族の祭礼に出席したときの話だ。
儀式に使う小さな神殿のまわりには屋台が立ち並び、色とりどりの灯が夕闇を照らしていた。
従者の子たちがついてきてくれている。おとうさまは準備で神殿の中にいる。普段見慣れない食べ物や玩具に心惹かれたけれど、どうせ家までは持って帰れない。
「ねえとうさん、見てみて! あれ食べたい!」
大声が上から降ってきたので驚いてみてみると、肩車をされた火焔の子がそこにいた。うるさい。肩のストラの重さが増す。これは翼ではなくて重りなのだと思う。たかだか火焔の男の身長の差しかないはずの距離が、天と地ほどの差に感じる。自分には望むべくもない幸福を、当然だと思っている間の抜けた顔。その間抜けづらと、はしゃぎように腹が立ったので、ひっそりと水の夭力を使う。
556儀式に使う小さな神殿のまわりには屋台が立ち並び、色とりどりの灯が夕闇を照らしていた。
従者の子たちがついてきてくれている。おとうさまは準備で神殿の中にいる。普段見慣れない食べ物や玩具に心惹かれたけれど、どうせ家までは持って帰れない。
「ねえとうさん、見てみて! あれ食べたい!」
大声が上から降ってきたので驚いてみてみると、肩車をされた火焔の子がそこにいた。うるさい。肩のストラの重さが増す。これは翼ではなくて重りなのだと思う。たかだか火焔の男の身長の差しかないはずの距離が、天と地ほどの差に感じる。自分には望むべくもない幸福を、当然だと思っている間の抜けた顔。その間抜けづらと、はしゃぎように腹が立ったので、ひっそりと水の夭力を使う。
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ お題:コーヒー。二つ目。八百屋の恵夢さんの話。病院内のスタバやタリーズのシャバっ気に心をお助けされたので…フラペチーノ おとうさんの退院が決まったし、今日はちょっと贅沢してもいいかな。恵夢は病院構内のコーヒーショップに立ちよろうと決めた。今日こそは、フラペチーノを頼むんだ。いきなり倒れられてびっくりしたけど、大したことなくて本当によかった。
水道水をペットボトルに入れて持ち歩いていた半月前だったら考えられない。それも、花園せんせいのおかげだ。過払金がどうとかいう話で、借金がいきなり無くなった。未だに信じられない。
いままで身に余る贅沢だと思っていたことが、当たり前になるかもしれない。少しずつ、ほんの少しずつ、身なりを整えるだけの贅沢もできそうだ。
そうしたら、同じ年の友達だって、好きな人だってできるかもしれない。
635水道水をペットボトルに入れて持ち歩いていた半月前だったら考えられない。それも、花園せんせいのおかげだ。過払金がどうとかいう話で、借金がいきなり無くなった。未だに信じられない。
いままで身に余る贅沢だと思っていたことが、当たり前になるかもしれない。少しずつ、ほんの少しずつ、身なりを整えるだけの贅沢もできそうだ。
そうしたら、同じ年の友達だって、好きな人だってできるかもしれない。
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ お題:コーヒー。泥濘の味 ここはエ・フランデミューズ学園の学生食堂。一本の缶コーヒーを、男子高校生を装った四人の夭聖たちが凝視している。
「ウツボのヌルヌル成分配合のコーヒー……ウツボ成分1%配合…」
蘭丸は心ここにあらずといった風に成分表を読み上げている。
「うちの学食、ここかどうかしてんじゃねえか?」
と焔。授業のサボり、かつせっかちな焔はもう昼食を済ませてしまったらしい。
「飲み物というのは飲めればよいというものでもないと思うが、これは冒険心に富みすぎるとでもいうべきか……」
冷やしたぬきを啜る合間にうるうが感想を述べる。
「うるうさあ、生徒会長の権力を使ってニンジンジュースとか青汁とか入れてよ」
樹果が自分のぶんのカレーうどんを席まで運んで来ながら言った。
743「ウツボのヌルヌル成分配合のコーヒー……ウツボ成分1%配合…」
蘭丸は心ここにあらずといった風に成分表を読み上げている。
「うちの学食、ここかどうかしてんじゃねえか?」
と焔。授業のサボり、かつせっかちな焔はもう昼食を済ませてしまったらしい。
「飲み物というのは飲めればよいというものでもないと思うが、これは冒険心に富みすぎるとでもいうべきか……」
冷やしたぬきを啜る合間にうるうが感想を述べる。
「うるうさあ、生徒会長の権力を使ってニンジンジュースとか青汁とか入れてよ」
樹果が自分のぶんのカレーうどんを席まで運んで来ながら言った。
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ お題:絶対領域。絶対領域喫茶における一考察「蘭丸くん、何頼まれて帰ってきとんのん…」
溜息まじりの寶の発言が、その場の空気を表しているかのようだ。
「ボケボケしてるから、何でも頼まれちゃうんだよね」
ややあきれた風に、樹果がカレーの合間に口を挟む。
「俺は休む。サボる。その日は風邪を引く予定にする」
ツボスコをカレーに振りまくっていた焔は、話をふられたわけでもないのに、断固とした口調で断言する。
「僕は賞味期限間近の茶葉を提供して乗り切るつもりだよ。肉を切らせて骨を絶つ、だ」
うるうが冷静ぶった口調でマウントをとってきた。いつものことだ。
「僕、別に服とか作ったことないのに、なんで絶対領域喫茶の制服デザインとか引き受けてきちゃったんだろう……じゃんけんで負けたからだけど。」
978溜息まじりの寶の発言が、その場の空気を表しているかのようだ。
「ボケボケしてるから、何でも頼まれちゃうんだよね」
ややあきれた風に、樹果がカレーの合間に口を挟む。
「俺は休む。サボる。その日は風邪を引く予定にする」
ツボスコをカレーに振りまくっていた焔は、話をふられたわけでもないのに、断固とした口調で断言する。
「僕は賞味期限間近の茶葉を提供して乗り切るつもりだよ。肉を切らせて骨を絶つ、だ」
うるうが冷静ぶった口調でマウントをとってきた。いつものことだ。
「僕、別に服とか作ったことないのに、なんで絶対領域喫茶の制服デザインとか引き受けてきちゃったんだろう……じゃんけんで負けたからだけど。」
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ F蘭ワンドロ用 お題:着物・和服。はごろも「蘭丸くん、シリウスのこと何か思い出してへん?」
風呂の時間に無粋かもしれない、と思いながら寶は蘭丸に探りを入れる。だが時間がない。皆の気持ちが緩み、口が軽くなる今がチャンスだ。スパの大きな湯船に浸かりながら、うるうが焔の胸元を見ているのがわかる。傷はおおかた治ったとはいえ、話題に出さなければよかったか。
「何か……と言われましても」
蘭丸はしばらく天井に視線をやり、バックンの泳ぎを目で追い、ようやく答えだした。
「あの人、何か羽織ったほうがいいと思う。何か一枚足りない」
「そこじゃないんじゃん?」
髪を洗って湯船に帰ってきた樹果がつっこむ。
「確かにあの格好はふしだらきわまりないな」
湯船に浸かっていた焔は不愉快そうに顔をしかめる。
740風呂の時間に無粋かもしれない、と思いながら寶は蘭丸に探りを入れる。だが時間がない。皆の気持ちが緩み、口が軽くなる今がチャンスだ。スパの大きな湯船に浸かりながら、うるうが焔の胸元を見ているのがわかる。傷はおおかた治ったとはいえ、話題に出さなければよかったか。
「何か……と言われましても」
蘭丸はしばらく天井に視線をやり、バックンの泳ぎを目で追い、ようやく答えだした。
「あの人、何か羽織ったほうがいいと思う。何か一枚足りない」
「そこじゃないんじゃん?」
髪を洗って湯船に帰ってきた樹果がつっこむ。
「確かにあの格好はふしだらきわまりないな」
湯船に浸かっていた焔は不愉快そうに顔をしかめる。
ひわ@turoporfali
DONE #F蘭ワンドロ F蘭ワンドロ用 お題:ゲーム。F蘭ワンドロ用 お題:ゲーム。「やばっ、蘭丸これ見てよ!」
蘭丸は樹果に差し出されたタブレットを覗き込む。
「『妖精の焔』ゲーム化・オリジナルキャラ紹介第一弾! 果樹園に住む若き漢方医・樹下!」
「ゲームのオリジナルキャラクターって、典型的な地雷じゃないのか」
読みかけていた本に栞を挟んだうるうがいった。
「美麗の鞭使い・うるるだって!」樹果の声に赤面し、絶句し、二の句が告げなくなったようだ。しばらくして十訓、十訓とブツブツ呟き続けた。そこに焔が黙って水を持ってくる。下手に口をきいたら大事になりそうで、対応としてはそこそこ正しい。
「拳ひとつで国を取れ! 肉じゃがしか作れない居酒屋主人・金宝って……」
皿を洗っていた寶は、まんざらでもなさそうだ。
728蘭丸は樹果に差し出されたタブレットを覗き込む。
「『妖精の焔』ゲーム化・オリジナルキャラ紹介第一弾! 果樹園に住む若き漢方医・樹下!」
「ゲームのオリジナルキャラクターって、典型的な地雷じゃないのか」
読みかけていた本に栞を挟んだうるうがいった。
「美麗の鞭使い・うるるだって!」樹果の声に赤面し、絶句し、二の句が告げなくなったようだ。しばらくして十訓、十訓とブツブツ呟き続けた。そこに焔が黙って水を持ってくる。下手に口をきいたら大事になりそうで、対応としてはそこそこ正しい。
「拳ひとつで国を取れ! 肉じゃがしか作れない居酒屋主人・金宝って……」
皿を洗っていた寶は、まんざらでもなさそうだ。