絶対領域喫茶における一考察「蘭丸くん、何頼まれて帰ってきとんのん…」
溜息まじりの寶の発言が、その場の空気を表しているかのようだ。
「ボケボケしてるから、何でも頼まれちゃうんだよね」
ややあきれた風に、樹果がカレーの合間に口を挟む。
「俺は休む。サボる。その日は風邪を引く予定にする」
ツボスコをカレーに振りまくっていた焔は、話をふられたわけでもないのに、断固とした口調で断言する。
「僕は賞味期限間近の茶葉を提供して乗り切るつもりだよ。肉を切らせて骨を絶つ、だ」
うるうが冷静ぶった口調でマウントをとってきた。いつものことだ。
「僕、別に服とか作ったことないのに、なんで絶対領域喫茶の制服デザインとか引き受けてきちゃったんだろう……じゃんけんで負けたからだけど。」
蘭丸が呟く。カレーが減っていない。
「そりゃあ」
そりゃ蘭丸の夭聖体のイメージが人間たちにも漏れ出ているからじゃないか? 樹果は言いかけて、やめた。他夭聖のことをいえた義理ではない。
「言っておくが、僕が提案したのは「チャリティー喫茶」までで、絶対領域の話は一言も出してはいない」
「てめえ……ふざけんな、自分だけは逃げる気で、生徒全員参加にしやがって」
殺意が含まれているような目で、焔はうるうを睨みつける。
「ここの差だよ、ここの」
うるうは人差し指で自分の頭を指す。
「うるうくんと焔くんは最近仲ええな」
思わず漏れでた寶の意見に、
「どこがだ!」との反論の声がダブる。
「寶が余裕なの、自分に絶対領域がないからでしょ」
蘭丸の発言に、皆何か納得したような雰囲気だ。
「ズボンの布切ろっか?」と樹果。
「上半身の露出度と足したらプラマイゼロやがな」
あぶないあぶない。墓穴を掘るところだった、と寶は思う。
「絶対って、よくわからないけど、シリウスというか、チルカのあれはどこからどこまでが領域なんだろう……」
白黒どっち? と樹果がつっこみ、この際どっちでもええやん、とターゲットから外れ胸を撫で下ろした寶が返す。
「訊いてみよっかな〜」
携帯を取り出した樹果を
「樹果、プロキオンにライン送るのだけはやめて!」
蘭丸に鋭い口調で止められた。アイドル時代のトラウマか、プロキオン夭聖体の絶対領域についての質問を禁じられたのか。そういえば豊穣さんにも絶対領域があるな、と樹果は思った。