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    nachi_osora

    @nachi_osora

    GW:T、K暁にゴロゴロしてる。書くのはほぼ固定、読むのは雑食。だいたいけけ受肉してるしアジトメンバー全員わちゃわちゃしています。

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    nachi_osora

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    K暁デー。12月のお題「ツリー」「カウントダウン」「冷えた指先」をお借りしました。
    出来上がってるけあき、いつもの事ながら息を吐くように生存ifです。付き合って初めてのクリスマスのお話。

    #K暁

    デザートの行方 目が覚めて、傍らで充電コードにささったままのスマホの受信ランプが光ってることに気がついた。なんとなく嫌な予感がして、ひとつ息を吐いて画面を起動する。メッセージアプリが2件、片方は恋人からもう片方はバイト先からだ。
     覚悟を決めてタップすれば『悪い、依頼が入った。終わったら連絡する』というあの男らしい簡潔なメッセージが目に入って。
     ああ、やっぱりこうなったか。と暁人は寒空の下仕事に行ったであろう年上の苦労を想ったのだった。

    ***************

     今日は12月25日。実を言えばKKと暁人が恋人として付き合い始めて初のクリスマスだったりする。
     二十も年が上の恋人だ、こんな浮かれたイベント今更やってられるかと言われるかと思っていたが、当の本人から「25日、二人で出かけるか」と誘ってくれて驚きと喜びのあまり一も二もなく「行く!」と返して笑われたのも記憶に新しい。
     昼に待ち合わせをし、二人の思い出の地である渋谷をぶらついて、夕方ライトアップされた大きなツリーを見た後予約したケーキを持ってKKの家に行き、暁人がクリスマスディナーを作る予定だった。
     豪勢とまではいかなくともクリスマスだしチキンは食べたい。あまり普段野菜をとらないKKのためにグリーンサラダも用意して、あとは寒いからシチューやポトフもいいかも。そんな風に思っていたのだが。
     依頼の内容によっては、KKは相棒である暁人も連れて行く。でも今回そうではないということは緊急だったか、じっくり作戦をたてるタイプではなくスピード勝負の依頼だったということだろう。『了解。なるべく怪我しないように気をつけて。KKの家で待ってる』そう打ち込んで送信。既読はつかないが、終わったら見てくれるだろう。そしてそのままもう一件のメッセージを確認すればバイト先――もとい、凛子からで。彼女も二人が出かけることを知っていたのでそれに対する謝罪と、今回の依頼に子供が関わっていること、何よりあまり状況が芳しくないので早期決着させないといけないことなどが書かれていて自分の予測が間違っていないことを知る。
     子供を見捨てられない、斜に構えた態度の裏に優しさと正義感を持った男――そんな人だから、暁人はKKが好きなのだ。
     KKの家に行くにしてもまだ時間はある。何か手伝うことがあるかと凛子にメッセージを送ったが、せっかくのクリスマスだからゆっくりしてなさいと返ってきて、それならお言葉に甘えようと思う。
    「一足先に、ケーキ取りに行くか」
     なにせ妹も今日は友人とパーティーだと言っていた。朝食を食べたら麻里にあわせて二人で家を出てもよいかもしれない。

    ***************

     さすがクリスマス、と言える洋菓子屋の人ごみに閉口しつつどうにか予約したケーキを手に入れた。ある意味KKと一緒に来なくて正解だったかも、とあの短気な性格を思い出す。
     そのまま勝手知ったるKKの自宅へと足を向けた。目の端にちらりちらりと映るのは穢れまで行かずとも路地裏にたまりつつあるねっとりとした瘴気や、マレビトの後ろ姿だ。
    「この前祓ったばっかりなのに……」
     どうしても人の情念が渦巻きやすい土地柄である上、クリスマスの悲喜こもごもが力を与えているようだった。まだ明るい時間なのでさほどの影響はないが、これが夜になると様子が変わるかもしれない。とりあえず場所だけを覚えておいてKKの家を目指す。
    「おじゃましまーす」
     誰もいないとわかりつつも、合い鍵で開いた扉をくぐりながら言う。鼻をかすめるほのかな煙草の香りにKKの姿がよぎる。煙草を好んでなかったはずなのに、いつの間にやらKKの香りとしてインプットされてしまった気がする。
     出たのが早朝だったのか部屋はすっかり冷えていて、暁人はためらわずにエアコンのスイッチをいれた。そのままケーキを箱ごと冷蔵庫に入れて、夕食の支度に取りかかる。
     チキンは冷めるとおいしくないだろうから、せっかく時間もあるし下味をつけて寝かせることにする。シチューかポトフか悩んだけれど、チキンが濃いめの味になりそうなのでポトフにした。これは時間をおいたら味が馴染むし、ある程度完成させてしまってもいいだろう。大きめの一口サイズに野菜を切って、ソーセージよりもベーコンの方が好みだとKKが言ってたので厚切りのを入れる。いつもは薄いのだけれど今日はクリスマスだし、そんな日に仕事に行った男へご褒美だ。ブロッコリーはポトフの彩りにしたいしサラダにも使いたいので別茹でにしてボウルに入れておく。サラダは盛り付けてしまっていいだろう、レタスにトマトとキュウリを飾り付けて、ラップをかけたら冷蔵庫にしまった。パンより白米がいいと言うKKのためにご飯も炊き上がった。
     ひとしきり準備は終わったな、と一息ついて外を見ればすでに夜の帳が降りている。スマホを確認しても既読すらついていないところを見ると、まだ解決にいたってないのだろう。
    「……暇だな」
     ソファに腰をおろしたものの落ち着かない。特に見たいテレビなどもないしどうにも手持ち無沙汰だ。
     メッセージアプリは相変わらずうんともすんとも言わないし、料理も終わったし、掃除でもと思ったけど最近こまめに暁人が来ているせいかそこそこ小綺麗に整っている。本当にこれ以上やることがない。
     一人で黙って座っていると、いらないことまで考えてしまいそうだ。KKが強いことも今まで一人でやってきたことも知っているが、それでも今が幸せだからこそ、この手からこぼれてしまうのではと考えてしまう。
    「よし」
     いいこと考えた、と。暁人はソファから立ち上がるとかけておいたコートを手に取りその身にまとった。一人で家にこもってるからそんなことを考えてしまうのだ。どうせなら建設的なことをしよう。
     そうかたく決意すると、暁人はアパートの外に飛び出したのだった。

    ***************

    「オマエ、なにやってんだよ」
     家で待ってるんじゃなかったのか、と後ろから聞き覚えのある低音で呼びかけられ、思わずびくりと震えてしまう。
     幽玄坂の路地裏、ムードもなにもないそこに突如現れた恋人に暁人はなんて言い訳しようと考える。いや、別に悪いことをしてるわけじゃない。危険というほどのこともしてない。だから怒られはしない――と思うのだが。疲れてるのかどこか剣呑な眼差しのKKに、じり……と無意識に後ずさってしまう。そうするとKKの方も眉を跳ね上げて、暁人が後ずさった分以上に近づいてくる。
    「な、なにKK?」
    「オマエが逃げるからだろうが」
    「に、逃げてないっ」
     なにせ路地裏だ、逃げる場所は限られているし例え場があったとしても師である男から逃げ切れるはずもない。すぐに追い詰められて、壁に背中が当たった。右手をすり……と撫でられ、その流れで顎を軽くつかまれる。鋭かった男の眼差しは、暁人に触れた途端恋人をからかう茶目っ気に満ちたものへと変わった。
    「で? 暁人くんはなーにオイタしてたんだ?」
    「べつに、何も」
    「ほーん。あちこち歩き回って小さい淀みを祓ってたんじゃねえのか」
    「見てたの?!」
    「いや?」
     見たのは声をかけるちょっと前の一回だけで、指を触ればずいぶん冷えてたから他にもやってたんだろうってカマかけただけだ、と告げられ「ずっる……」という拗ねたような声が出てしまう。
    「ほら、全部吐いちまえよ」
     顎から外された大きな手が、頭に移動してがしがしと撫でられる。
    「黙秘は?」
    「却下だ。……家にいると思ってた恋人が、夜の歓楽街でホイホイ歩いてるのに気づいたときのオレの気持ちも考えてくれや」
     そうやって言えば暁人が口を割ると思ってる顔だ。そして悔しいがそれは事実で。渋々と、暁人は自分の思いつきを話すことになる。
    「KKのうちに行く途中に穢れになる前の淀みとか、マレビトっぽいの見つけてさ……早めに祓っちゃえば、年末年始はもしかしたらゆっくりできるかなって」
     黙って聞いていてくれるKKに、またガキだって笑われるだろうかと思うと、顔も見れないしどうにも声は小さくなりがちだ。
    「ご飯の準備終わって暇だったし。ツリー、一緒に見れなかったから、年末年始のカウントダウンは二人で聞けたらいいなって、そう思って」
     それで、ちまちまと祓ってました。
     そう告白してそっとKKの反応を確認すれば――顔を覆って大きくため息をつく姿が目に入って、やはり短絡的すぎて子供だと呆れられたのだろうかと落ち込みそうになる。対等でありたいと願うのに、ついKKに対しては我慢がきかない。
    「暁人オマエ……」
    「ごめん。子供っぽいことして。KK疲れてるのに」
    「そうじゃねえ、逆だ。……あんま、可愛いことしてくれんな」
    「か、かわ……?!」
     そんな要素があっただろうか。KKはたまに暁人に対する評価がバグってる気がする。頭に疑問符を飛ばし続ける暁人に、KKは目元をゆるめて軽くハグをしてきた。
    「KK?」
     年上の恋人はすぐに身を離し、代わりとでも言うように暁人の手を握ってくれた。夜とはいえ普段はあまりしないそれに目を見張っていると、ぐいとその手を引かれる。
    「――腹減った、帰るぞ。うまい飯、作ってくれてるんだろ?」
    「……うん! あとはチキンを焼くだけだからすぐできるよ」
     二人で並んで帰る道のりは、寒いけれどどこか温かい。
    「クリスマスと言やぁ鳥か」
    「予約してたケーキもとってきたし」
    「一人で行かせて悪かったな」
    「すごい混んでたから、KK行かなくて正解だったかもね」
     想像したのか目に見えて渋くなるその顔に、ははっと笑いが漏れる。
    「ま、ケーキはオマエが好きなだけ食えよ。オレには別にデザートがあるから」
    「へ? そんなのあったっけ?」
     冷蔵庫の中身を思い出すけれど、これといってデザートらしきものはなかったはずだ。そう言った暁人に、KKはニヤァと笑って見せた。見覚えのある含みのある笑みにぞわりと背筋に何かが走り、頭の中に逃げろと警鐘が鳴る。それに気づいたのか横の男は暁人の耳元に口をよせ、一言「オマエ」とだけ常より低い声で囁いた。耳を掠める温かい吐息によって走る快感に、とっさに繋いでいない手で耳を隠して「オッサンくさ!」と叫ぶ。だが当の『オッサン』はどこ吹く風で。後はそのまま何事もなかったように帰途につく。

     果たして『デザート』がどうなったのか。それはクリスマスが明けたらわかることだろう。
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    nachi_osora

    DONE素敵企画『K暁小説プロット交換企画』に参加させていただきました。企画してくださったサブ様(@subaccount3210)には大感謝です!
    いただきましたプロットはサブさんのものでした!
    素敵プロットはこちら
    https://x.com/subaccount3210/status/189562569526

    とんでもない夢を見てしまって頭を抱えるあきとくんお話。
    R15程度ではあるかもしれない。
    夢に堕ちて、夜の淵 ――とんでもない夢を見てしまった。

     目が覚めた瞬間がばりと跳ね上がるように起き上がると、暁人は勢いよく布団をはねのけ己の下半身を確認してしまう。――異常なし、だ。思わず顔を覆って地の底よりも深いため息をつく。それは安堵のものであり、当惑のものでもあり、自己嫌悪からのものでもある。
    「なんで、あんな夢……」
     夢に出てきたのは年の離れた相棒――KKと呼ばれる男だ。あの夏の夜に(強制的ではあったが)体を共有し、共に戦い、事件を無事に解決へと導いたのはまだ記憶に新しい。そのまま別れることを覚悟していたのに、どういうわけか彼を含め事件の関係者(般若除く)は無事に己の体を取り戻して甦った。
     あれから凛子とエドの熱心な勧誘により暁人もアジトのメンバーとして過ごしている。だが当たり前にKKと別々の体になった現状では、相棒とは言いつつも師と弟子のような関係になっていた。KKというバフがなくなった暁人は筋が良いと褒められはするもののあの夜に比べれば弱体化は否めないし、そして年上との経験値の差というものは一朝一夕で埋まるものでもない。KKという男は一人でそれだけの場数を踏んできたのだ。
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