side・オルト
「なぁクリック、お前最近ちゃんと眠れてないだろう?」
何かあったか?と続けて尋ねる俺に、クリックはビクッと肩を震わせた。
「い…嫌だなぁオルト。全然そんなことは…無い…ぞ?」
決して俺と目を合わせず、しどろもどろに『なんでもない』アピールをするクリック。
本当にコイツは駆け引きや交渉に向いてないな、とつくづく感じた。
「そ…それじゃ、ちょっと急いでるから、また後でな?」
逃げるように俺から去っていくクリックの手には数通の封筒が握られていた。
「……なんでもない奴がそんな青白い顔をして隈をつくってる筈がないだろう」
しかし俺が無理に聞き出そうとしたところでコイツは絶対に話そうとしないだろう。
「……仕方ない。癪だが、アイツの力を借りるか」
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