名前を呼ぶー愛情とは、物質に向けるモノでは無い。あの日、あの男が言い残した言葉。
それを否定するつもりはない。
でも、僕はやっぱり。
触れられたいし、触れていたい。
身体が無い恋人に触れることが出来ないのは、とてもつらい。言っても仕方の無いことだと分かっていても。
我儘な僕はいつだってこんなふうに彼を困らせてしまうけれど、それでも僕らは存外、上手く愛し合えている、と、思っている。
ー彼がどう思っているかは…聞いてないけど、きっと、たぶん、同じように感じてくれているから、僕たちはこうして今日もふたりで、いきている。
ーーー
「伊月、今日飲みいかねーか?」
その日最後の講義が終わって一息ついた途端、隣に座る男に唐突にそう声をかけられて、暁人はうーん、と首を傾げた。確か、冷蔵庫に使いかけの鶏肉があったことを思い出す。
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