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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    夏のフェンヴァル🐺🦇
    ※Cuffing season…人肌恋しい季節のこと。

    #ディスガイア4
    disgaea4
    #執事閣下
    deacon
    #フェンヴァル
    fenval

    【Cuffing Seasons】「ヴァル様? いかがされましたか」

     吸血鬼のマントから複数匹の蝙蝠が飛び出し、キーキーと狼男を威嚇している。主の眷属にやつ当たることが憚られるのか、フェンリッヒは小さな生き物に道を阻まれ、噛み付かれても、ただされるがままだ。

    「どうもこうもな」

     ヴァルバトーゼの不機嫌そうな赤い瞳にギロリと睨まれ、フェンリッヒはたじろいだ。
     朝食のイワシのつみれ汁に血を仕込んだせいだろうか? それとも傷を負った泥棒天使にケムシ団子を食わせようとしたことが原因か? ……ひとつ、ふたつ、フェンリッヒの頭にはよぎるものがあったが、しかしその行いはいずれも仲間を想ってのこと。しかも、今更それしきのことで機嫌を悪くする主ではあるまいと首を傾げる。

    「ヴァル様」
    「ついてくるなと言っている!」

     苛立ちを隠さぬ声と共にフェンリッヒにクールの魔法が放たれる。すんでのところでそれを避けると、彼の代わりに魔法を被った燭台が焔を閉じ込めたままに凍てついた。

    「聞き分けのない奴だ。言って分からんのなら暗黒議会に掛け合ってでも……」
    「わかりました! そこまでおっしゃるのでしたら離れます!」

     議会の強制力を以ってひき剥がされてはたまらないとフェンリッヒは自らヴァルバトーゼとの距離を取った。二人の間に生まれた隙間は僅か2メートルにも満たぬほどであったが、日頃主の背からぴたり離れず付き従う彼からすればその距離は果てしなく遠いものに感じられた。

    「閣下、わたくしは……何かお気に障ることをしてしまいましたでしょうか」

     恐る恐る主の顔色をうかがう狼男の尾はしゅんと下に垂れ、強い重力に従うより他になかった。

    「……いのだ」
    「はい?」
    「何度も言わせるな。暑いのだ! お前、やたら体温が高いだろう。夏場にまで身を寄せられてはかなわん……」

     ヴァルバトーゼの口から発せられた言葉が予想だにしなかったもので、フェンリッヒは面食らう。狼は哺乳類としては最も体温の高いとされる生き物である。その血を引く人狼族、フェンリッヒもそれに違わぬのは道理であった。吸血鬼からすれば彼はそばにいるだけで暑く感じられたのだろう。ましてや、密着しているかの如くの距離感は耐え難かったに違いない。

    「この距離を保つように。良いな?」
    「かしこまりました……」

     分かりやすくしおらしくなった狼男の姿に多少の負い目を感じたのか、ヴァルバトーゼはぽそりと呟く。直後、その言葉の意味を汲み取って、フェンリッヒは目を輝かせた。

    「じきに寒くなる。……その頃にはお前の温度が恋しくなるだろうさ」
    「閣下……! わたくしはあなた様の為、いつでもこの身を捧げる所存です……! 湯たんぽとしてどうぞお使いください!」
    「暑い! フェンリッヒ、お前わざとやっているのではなかろうな!?」

     感極まり、主人の手を取るフェンリッヒ。彼の尾が上を向きしっかりと揺れているのを目視して、ヴァルバトーゼは肩をすくめた。

     マントに潜む蝙蝠がキュイと鳴く。吸血鬼は魔界の辺境、地獄に訪れるささやかな季節の移ろいを人知れず待ち侘びている。
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    last_of_QED

    DOODLEガラハイ🐺🦇【stand up!】
    お題「靴擦れ」で書きました。ハイドがストーカーに刺された過去を捏造しています(!?)のでご注意ください。

    ガラさんとハイドには、互いの痛みを和らげてくれる、一歩を踏み出すきっかけになってくれる…そんな関係にあってほしいです。
    【stand up】「ガラ、休憩だ」

     背後から名を呼ばれ、狼男は足を止めた。気配が背中まで迫って来るや否や、声の主はウンザリだとばかり、息を吐く。

    「休憩って……おれたち、さっきまでコーヒートークに居たんだよな?」

     両名は確かに五分前まで馴染みの喫茶店で寛いでいた。ガラハッドとゾボを頼み、バリスタ、それから偶然居合わせたジョルジと街の噂や騒動について会話を交わし別れたばかりだ。にも関わらず再び休憩を所望するこの友人をガラは訝しんだ。傾き始めた陽のせいかハイドの表情は翳り、どこか居心地が悪そうに見えた。

    「具合でも悪いのか?」
    「……ああ、もう一歩も歩けそうにない。助けてくれ」

     かつて、オークに集団で殴られようが、ストーカーに刺されようが、皮肉を吐いて飄々としていた男が今、明確に助けを求めている。数十年に及ぶ付き合いの中でも初めてのことで、ガラは咄嗟にスマートフォンに手を掛けた。「911」をコールしようとした時、その手を制止したのはあろうことかハイド自身だった。
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    last_of_QED

    DONEガラハイ🐺🦇【As you wish, Mr.Hyde.】
    バレンタインのお話🍫Xにてupしたもの。記録用にこちらにも載せておきます✍️
    【As you wish, Mr.Hyde.】 今にも底の抜けそうな紙袋が二つ、どさりとフローリングに下ろされる。溢れんばかりの荷物、そして良く見知った来訪者を交互に見比べて人狼が尋ねた。

    「なんだこれ」
    「かわい子ちゃんたちからの贈り物だ。毎年この時期事務所に届く。……無碍にも出来ないからな、いくつかはこうして持ち帰るんだ」
    「マジかよ……これ全部か……?」

     愕然とする人狼を横目に、ハイドは手が痺れたと笑うだけだった。今日は二月十四日、いわゆるバレンタインデー。氏に言わせれば、これでも送られてきた段ボールの大半を事務所に置いてきたのだという。

    「さすがは天下のハイド様だ……」
    「まあ、悪い気はしない」

     ソファに腰を下ろし、スリッパを蹴飛ばしてしまうと吸血鬼はくじ引きのように紙袋へと腕を突っ込んだ。無作為に取り出したファンレター。封を開き便箋を取り出すと、丁寧にしたためられた文字の列をなぞった。一通り目を通した後で再び腕が伸ばされる。次にハイドが掴み取ったのは厚みのある化粧箱だった。リボンを解けば、中には宝石にも見紛うチョコレートが敷き詰められていた。どれにしようかと迷う指先。気まぐれに選んだ一つを口の中に放り込んだ時、ガラがおもむろに通勤カバンを漁り始めた。
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    last_of_QED

    DOODLE主人に危機感を持って貰うべく様々なお願いを仕掛けていくフェンリッヒ。けれど徐々にその「お願い」はエスカレートしていって……?!という誰もが妄想した執事閣下のアホエロギャグ話を書き散らしました。【信心、イワシの頭へ】



    「ヴァルバトーゼ閣下〜 魔界上層区で暴動ッス! 俺たちの力じゃ止められないッス!」
    「そうか、俺が出よう」

    「ヴァルっち! こないだの赤いプリニーの皮の件だけど……」
    「フム、仕方あるまいな」

    何でもない昼下がり、地獄の執務室には次々と使い魔たちが訪れては部屋の主へ相談をしていく。主人はそれに耳を傾け指示を出し、あるいは言い分を認め、帰らせていく。
    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    BLANK【5/24 キスを超える日】ほんのり執事閣下【524】



     かつてキスをせがまれたことがあった。驚くべきことに、吸血対象の人間の女からだ。勿論、そんなものに応えてやる義理はなかったが、その時の俺は気まぐれに問うたのだ。悪魔にそれを求めるにあたり、対価にお前は何を差し出すのだと。
     女は恍惚の表情で、「この身を」だの「あなたに快楽を」だのと宣った。この人間には畏れが足りぬと、胸元に下がる宝石の飾りで首を絞めたが尚も女は欲に滲んだ瞳で俺を見、苦しそうに笑っていた。女が気を失ったのを確認すると、今しがた吸った血を吐き出して、別の人間の血を求め街の闇夜に身を隠したのを良く覚えている。
     気持ちが悪い。そう、思っていたのだが。
     ──今ならあの濡れた瞳の意味がほんの少しは分かるような気がする。

    「閣下、私とのキスはそんなに退屈ですか」
    「すまん、少しばかり昔のことを思い出していた」
    「……そうですか」

     それ以上は聞きたくないと言うようにフェンリッヒの手が俺の口を塞ぐ。存外にごつく、大きい手だと思う。その指で確かめるよう唇をなぞり、そして再び俺に口付けた。ただ触れるだけのキスは不思議と心地が良かった。体液を交わすような魔力供給をし 749