「はいあーん」
「あー・・・」
暁人が肉野菜炒めを箸で摘み、俺の口に入れてくる。俺は渋々それを受け入れた。
「うめぇ、けどもっとガツンとしたものがなぁ・・・」
「そりゃあ残念、でもKKの健康のためなんだからさ、これくらいしないとね~。僕は偏食持ちを調きょ、じゃなくて躾し直すのは好きだしさぁ」
「今調教って言わなかったか?」
「あら?そんなこと僕が言ったかしらねぇ?僕はね、KKのことが好きなんだよ。だからKKの食生活はちゃんと管理しないと」
「へいへい、わーったよ」
「・・・ほんとKK大好き!愛してる!可愛い!抱きたい!襲いたい!!」
暁人が俺に抱きついて胸と股をまさぐってきた。
「やめろ、触るな!」
俺は暁人の頭を押しのけながら周囲を見ると、麻里が丁度部屋から出てきたところだった。
「お邪魔しましたー」
麻里は直ぐ様、部屋に引き返し、扉を閉めた。
「あっ!ちがっ、麻里ぃいいいいいい!」
暁人が叫ぶ。
「お、お前が変なことするからだろ!」
「だってKKが可愛いのがいけないんだもん!」
「何だその理由!?」
「だっていい年したおじさんをヒイヒイ言わせたいんだもん!可愛いもん!」
「だもんじゃねぇ!だからそういうことを言うなって言ってるんだ!!」
「もうKKったらそんな顔して照れちゃって」
「違うわ!お前が気持ち悪いだけだ!」
暁人の発言に正直ドン引きしている。あんな発言されたら無理もない。
「KKが反抗期だ・・・ああ、でもそういう態度も可愛いなぁ♡」
「うるさいぞこのド変態ホモ野郎」
「それは差別だー!」
俺は冷たく言い放ったが、暁人はいつもの調子。
「ったく、よくそんな恥ずかしいことをすらすらと言えるな」
「へ?だって本当のことだもん」
「・・・あっそ」
俺は呆れながら食事を続ける。
「うん!・・・でもKKにはもっと僕の前では素直になって欲しいなぁ」
暁人がそうボソッと呟いていた。
「KK、ご飯美味しい?」
「ああ、旨いよ。この野菜炒めは味付けは好きだ」
「そっかぁ・・・良かったぁ・・・」
暁人は安堵の表情を浮かべる。こいつは基本的に俺のことを気遣ってくれるが、たまに愛が暴走してこの前は口にすらできないことをしでかそうとして、女性陣に説教されていたのを目にした。
「そもそも1つ聞いていいか?」
「何?」
「なんでお前女口調なんだ?」
「優しくしようと意識しているから、かな」
「優しくって・・・そんな女みたいな口調で喋ってたら気持ち悪いだけだろ?」
「KKも最初はそう思ったの?でも今は違うでしょ?」
暁人は俺に笑いかけてきた。どうやら図星らしい。
「・・・そうだな、俺もそう思うよ」
確かに初めは違和感だらけだったが、それも最近は慣れてしまった。
「でっしょー?」
「・・・はぁ」
俺は思わずため息を溢す。この分だと、俺の悩みはまだまだ続くだろう。
「ね?KK」
「なんだ?」
「好きだよ♡」
暁人が俺に抱きついてきた。そしてそのまま顔を近付けてくる。
「お兄ちゃーん、ちょっと聞きたいこ・・・と」
ドアを開け、最悪のタイミングで麻里が出てくる。
「あ」
俺と暁人の唇が触れ合う寸前の光景に一瞬固まってしまう。
「・・・えーと、私お邪魔しちゃった感じ?」
「ああいや!違うんだ!」
「そっそうだよ!これはね、KKが僕に甘えてきたんだよ!」
「・・・なんかキショイし気持ち悪い」
「・・・麻里、それは流石に言い過ぎだ」
俺はこの空気を何とかしようと言葉を発する。
「麻里ぃい・・・何でそんなこと言うのさぁ・・・」
暁人は涙目になり、捨てられた子犬のように麻里を上目遣いで見つめた。
「わ、わかったから・・・とりあえずご飯時くらいイチャイチャはやめてよね」
「なんとか理性を保つ努力はする」
****
「はぁ~」
「どうしたの麻里ちゃん」
「ちょっと愚痴らせて」
「いいよ」
家に麻里ちゃんが来るなり愚痴を聞かされることになった。
「お兄ちゃんがKKさんと暮らし始めたのはいいんだけどさ、お兄ちゃんがとにかく気持ち悪い」
「うん」
「KKさんの事を常に気にかけてるのはわかるんだけど、妙にストーカーみたいな感じで」
「それで?」
「家にいても四六時中KKさんの事ばかり話すし、KKさんにセクハラするし、部屋でもKKさんの写真をずっと見てニヤニヤしたりしててキモいし」
「・・・うん?」
「極めつけにこの前、KKさんの下着持ってったりしてたし、お兄ちゃんがキモすぎて辛い」
「KKドンマイ」
「KKさんから聞いたけど未だに下着が返ってきてないしそれどころか自分のと混ざってわからないって」
「うわぁ・・・」
「もう嫌、あんなお兄ちゃん見たくない」
「・・・2人だけで暮らしとけば良かったんじゃ?」
「それだと私が困るもん。あんなド変態でも私の兄だし家に置いておかないと、料理とかで」
「あー」
「でもやってることがニホンザル以下だし」
「でもニホンザルよりかは知能はあると思うよ」
「なんか一発ぶん殴りたくなってきた」
「落ち着いて麻里ちゃん!」
「もういっそのこと絵梨佳ちゃんと一緒に暮らしてもいいかな?」
「凛子がいいって言うなら」
「呼んだ」
何処からともなく凛子登場。
****
「と言うわけで居候することにしました」
「やめて!胸が寂しくなる!」
「あんたの胸は寂しくないでしょー!」