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    佳芙司(kafukafuji)

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    リンク集【https://potofu.me/msrk36

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    POIPOI 71

    https://poipiku.com/3176962/4863950.html】の完結部分。

    #オスアキ

    続・男の勲章? * * *

    「よりによってジェイに見つかったぁ」
    「アキラ、声が」
    「あ、悪ぃ……いや俺悪くねーぞ、ヘマしたのはオスカーだろ」
     確かに、とオスカーは奥歯をぐっと噛み締めた。注意深く警戒していたつもりだったのに、それは徹底されておらず結果秘匿すべき事項を露呈するに至ってしまった。
     ジェイ・キッドマンという人物は進んで噂話や憶測を言い触らす性格ではないし、頭を下げて口外しないよう頼んでくるような人間を無下にするほど冷めた人物でもない。ただヒューマンエラーは如何なる場合も起こり得るので、うっかり口を滑らせて漏れてしまうという可能性はある。その時どう立ち回るべきか。オスカーは唸るように溜息を吐いた。
    「ま、ジェイなら多分言わないでくれるだろーしオスカーのは誤魔化せるレベルだからなんとかなるだろ。俺の方がやべーもん」
     言いながらパーカーの腕を抜いて放りながらタンクトップの肩を落として「ほらな」とアキラが指で示す。今日は念の為人の目につきにくく且つ体温調節がしやすいように重ね着していたらしい。
     所々に散らばった鬱血痕を視界に入れたオスカーが眉根を寄せて、難しい顔のまま軟膏を取り出し黙ってその箇所に塗り込んだ。舐めときゃ治るというアキラの言は昨夜のうちに退けられたので、アキラも今は静かに受け入れる。
    「湿布も張り替える。見せてみろ」
    「だいぶ腫れ引いてると思うけど」
    「いいから見せろ」
     半ば強引に剥ぎ取られたアキラのタンクトップの下、主に胸元や腰回りに痛々しい内出血の色が広がっていた。
    「……なんというか、昨日はすまなかった」
    「いやぁ、結構派手にやったよなぁ〜……」
     オスカーの言葉にアキラが苦笑しながら同意した。背中を向けるよう促されて、軟膏を更に塗り込まれる。指の形に浮き上がっている痣の上には湿布を貼られた。まるで重症を負ったかのように見えるが、まさか原因が恋人に夜につけられた傷だとは流石に誰も想像しないだろうな、とアキラは思う。
     不意にオスカーに引き寄せられて、背中が胸板にくっついた。腕には力が入り、ぎゅ、と抱き締められる。なのに苦しさはなく優しく閉じ込めるような絶妙な力加減で、アキラは安心して身を任せた。
    「……次からは、もっと気をつける」
    「ん。頼むぜオスカー」
    「ああ」
    「今はまだ俺達だけの秘密だもんな」
     耳許で囁かれた言葉に、アキラは思わずふへへと笑って斜め後ろにあるオスカーの頬に擦り寄った。お互いに唇を近付けあっているのに少しでも早く引き寄せたくて、身体をひねって腕を回した。

     * * *

     後日。
     オスカーがサウス居住スペースのリビングルームへ戻ると、ソファに座っているブラッドの姿があった。集中して手の中のタブレット端末を操作している様子だったので、邪魔にならないよう後ろを通り過ぎて自室に向かおうとしたが、すぐに呼び止められた。
    「どうしましたか?」
     訊ね返しつつブラッドの側に戻ろうと足を向けたところで、ブラッドにそっと手で制される。
    「そのままでいい。一言伝えたい事があっただけだ」
    「はい。なんでしょうか」
    「秘密事項は共有している相手がボロを出した時点でもう非公開には戻せないぞ」
    「ええと……はい、分かりました」
    「分かったならいい。俺が言いたかったのはそれだけだ」
    「はい、失礼します」
     どういう意味だろう。一体ブラッド様は何が言いたかったのだろうか。
     ぼんやりと考えながら着替えのために着ていた服を脱ぎ、部屋着を手にしたところでハッと気付く。姿見の鏡に映った自分の上半身、先日の時とは別の場所に、記憶にない“痕跡”がある。
     ――いつからだ、まさかあの日、あの時に。
    「ブラッド様!」
     慌てて服に腕と首を通したオスカーが勢い良くリビングに戻ってくるのを、まるで初めから分かっていて待っていたかのようにブラッドはソファで背中を屈めて震えながら笑いを堪えていた。



       〈了〉
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    佳芙司(kafukafuji)

    REHABILI園子さんは正真正銘のお嬢様なので本人も気付いてないような細かなところで育ちの良さが出ている。というのを早い段階で見抜いていた京極さんの話。
    元ネタ【https://twitter.com/msrnkn/status/1694614503923871965】
    京園⑰

     思い当たるところはいくらでもあった。
     元気で明るくて表情豊か。という、いつかの簡潔な第一印象を踏まえて、再会した時の彼女の立ち居振る舞いを見て気付いたのはまた別の印象だった。旅館の仲居達と交わしていた挨拶や立ち話の姿からして、慣れている、という雰囲気があった。給仕を受ける事に対して必要以上の緊張がない。此方の仕事を理解して弁えた態度で饗しを受ける、一人の客として振る舞う様子。行儀よくしようとしている風でも、慣れない旅先の土地で気を遣って張り詰めている風でもない。旅慣れているのかとも考えたが、最大の根拠になったのは、食堂で海鮮料理を食べた彼女の食後の後始末だった。
     子供を含めた四人の席、否や食堂全体で見ても、彼女の使った皿は一目で分かるほど他のどれとも違っていた。大抵の場合、そのままになっているか避けられている事が多いかいしきの笹の葉で、魚の頭や鰭や骨を被ってあった。綺麗に食べ終わった状態にしてはあまりに整いすぎている。此処に座っていた彼女達が東京から泊まりに来た高校生の予約客だと分かった上で、長く仲居として勤めている年輩の女性が『今時の若い子なのに珍しいわね』と、下膳を手伝ってくれた際に呟いていたのを聞き逃す事は勿論出来なかった。
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    ohoshiotsuki

    MAIKING死神ネタでなんか書きたい…と思ってたらだいぶ時間が経っていまして…途中で何を書いているんだ…?って100回くらいなった。何でも許せる方向け。モブ?がめちゃくちゃ喋る。話的に続かないと許されないけど続き書けなかったら許してください(前科あり)いやそっちもこれから頑張る(多分)カプ要素薄くない?いやこれからだからということでちゃんと続き書いてね未来の私…(キャプションだとめちゃくちゃ喋る)
    隙間から細いオレンジ色の空が見える。じんわりと背中が暖かいものに包まれるような感覚。地面に広がっていくオレの血。ははっ…と乾いた笑い声が小さく響いて消える。ここじゃそう簡単に助けは来ないし来たところで多分もう助からない。腹の激痛は熱さに変わりそれは徐々に冷めていく。それと同時にオレは死んでいく…。未練なんて無いと思ってたけどオレの本心はそうでも無いみたいだ。オレが死んだらどんな顔するんだろうな…ディノ、ジェイ、ルーキー共、そしてブラッド―アイツの、顔が、姿が鮮明に思い浮かぶ。今にもお小言が飛んできそうだ。
    …きっとオレはブラッドが好きだったんだ
    だから―
    ―嫌だ、死にたくない。

    こんな時にようやく自覚を持った淡い思いはここで儚い夢のように消えていく…と思われたのだが――
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    佳芙司(kafukafuji)

    TRAININGエマ視点→【https://poipiku.com/3176962/6268101.html】

    『Let’s take the long way home sometimes.』
    ゆめくろのグランフレア×エマちゃん(グラン視点) マイスターボードにメッセージの着信を知らせる音が鳴った。先程エマに送った、仕事が終わったら迎えに行くという旨のメッセージに対する返信で『なるべく早く仕事を終わらせるから』とスタンプ付きで書かれていた。
     忙しいだろうに、わざわざ返事を送ってくれる気遣いが嬉しい。小さな約束を交わせる事がこんなにも心をあたたかくして満たされるなんて、今まで知らなかった。迎えに行く事を許される事も、帰りが待ち遠しいと思う人がいる事も、全部この上なく喜ばしい。
     エマは連盟本部所属のギルドキーパーとして、国を越えて様々なギルドと連携を取り、調整と便宜を図る役目を担っている。更には自分達『月渡り』のためにも日々駆け回っている。只でさえ忙しいのだからと、彼女の負担を減らすためにも報告書の提出時にはミスのないよう注意深く確認し、送られてくる依頼書だけでなく請求書や明細書にもきちんと目を通すようメンバーに徹底させている。クロウは努力しているようだがイツキやノアにはなかなか難しいようで、ルージュは言わずもがなのため、なんとか体裁を取りまとめるのは結局リーダーの自分の役割だ。
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