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    nezumihako

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    nezumihako

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    化物語パロ、そうすけスネーク
    宗→品要素あり

    そうすけ・スネーク神室町から少し離れた、山の中にある廃神社へ続く長い階段、品田と秋山は下からその階段を見上げていた。
    「よし!行きますか!」
    「待て待て待て待て待て待て待て!!」
    元気よく一段目に足をかけた品田に秋山は思わず待ったをかけた。
    元野球選手であり毎日トレーニングを欠かさない体力自慢の品田ならともかく、ヘビースモーカーで筋トレなどろくにしていない秋山がこんな長い階段を登れるわけがない。
    「なんですか?」
    「なんですか?じゃないよ!なんであんな神社に行くの!?」
    「…?」
    「俺が何か変なこと言ってるなぁ~みたいな顔やめろ!気を遣った愛想笑いするな!」
    困った表情をする品田に秋山は深くため息を吐き、階段を指差す。
    「なんであんな山の中の神社に行くんだよ」
    「え?あー…んと…この神社、使われなくて随分経ってるようでしてね…本殿に札を一枚貼りに」
    そう言って品田はジーパンのポケットから札を一枚取り出す。
    赤い字が書かれたそれに秋山は顔をしかめた。
    「なにそれ…」
    「んー…ちょっと特殊な札ですよ、さ!行きましょうか!秋山さんしんどいなら待ってても…」
    階段を登ろうとした品田がふと何かに気づき、顔を神社がある方へ向けた。
    釣られて秋山も顔を上げれば、誰かが階段を降りてくる。
    明るい髪色で、若い青年。
    秋山も品田も見たことがある…。
    「あれ?」
    「!」
    青年は品田と秋山に気づいては急いで階段を降りその場を走り去った。
    「いまの子…」
    「宗介くん…ですよね?」

    宗介、古牧宗介
    桐生の師である古牧宗太郎の孫であり、現在は祖父のもとで修行をしている青年である。

    「なんで宗介くんが?」
    「わかりませんけど…何か嫌な予感がしますね…ちょっと神社見てきます」
    そう言って階段をかけ上がっていく品田。
    「ちょ、ちょっと待てよ!…あぁもう!」
    秋山はガシガシと頭を掻き、品田の後を追った。

    約10分後

    秋山は境内にて死にかけていた。
    「も…煙草…やめよう…かな…」
    境内にあった石のベンチに腰掛けて肩で息を整えながらそう言った秋山に対し、息が乱れていない品田は苦笑しつつ壊れかけの本殿に近づいた。
    「とりあえず、先に札貼ってくるんで休んでてください」
    「言われなくても休んでるよ…」
    品田は秋山に軽く手をふりつつ、本殿に足を踏み入れた。
    「えっと…ここかな」
    先日にこの町を去った『親友』の言葉を思いだしつつ、柱に札を貼る準備をする。
    「お粥で作った糊を札によく塗って…」
    『お米ってのは人間にとって大切なものだろ?つまり神様への敬意だよ。敬意さえあれば接着剤でもガムテープでもなんでもいいさ。
    あぁでも、穴を空ける道具はだめだよ?画ビョウとか釘とか…穴を空けちゃうと二つの意味が生まれてしまうからね。
    出ていく、そして入る』
    「…よし」
    アロハ服がよく似合う『親友』の言葉をしっかり思いだしつつ、品田は柱にしっかりと札を貼った。
    「…これでよし…さて次は…」
    「品田!ちょっとこっち来て!品田!」
    本殿の横にある御神木の方から秋山の声が聞こえる。
    「秋山さん?」
    呼ばれるがまま御神木の側にいた秋山の元へ駆けつければ、秋山が口元を押さえて御神木を見ていた。
    「どしたんすか?」
    「これ…」
    僅かに震えている秋山の指先が示すのは御神木。
    品田も御神木を見て、眉を潜めた。
    「これは…」
    隠すかのように参道からは見えない位置に、御神木の根元に隠された、ぶつ切りにされた蛇の死体。
    「違う、そっちじゃない」
    「へ?」
    もう一度秋山が指差す方を見る。
    御神木の根元ではなく、御神木そのものを。
    「…!?」
    御神木には誰かの悪口が書かれた紙が釘で大量打ち付けられ、その紙の上からスプレーか何かで大きく『呪』と書いている。
    「…マジか」
    「…品田?」
    「穴を、あけてる…」

    「…あの神社、どうやら蛇信仰の中心地みたいですねぇ」
    「蛇信仰?」
    「ええ、蛇は穀物を荒らす鼠を食べることから神格化されたらしいです」
    そのあと、帰路についた二人はあの神社と蛇の遺体について話し合っていた。
    「なんで蛇を神様として奉っていた神社で蛇が殺されてるのさ…それに、あれをやったのが宗介くんだとしたらさ…」
    「んー…なんともいえないんですよね…まだ」
    ガシガシと頭を掻いてため息を吐いた品田と眉を潜める秋山。
    「…ん?」
    ふと秋山が藪の方から聞こえた物音に気づき、足を止めた。

    ガサガサ ザッ… ガサガサ…

    「…?」
    「どうしました?秋山さん」
    「いや、なんか物音が…」
    「物音?」
    秋山の言葉に首をかしげつつ、薮から聞こえる物音に耳をすます品田。

    ガサガサ…ガサガサ…

    「…誰かいる?」
    「…まさか」
    視力2.0である品田が目を細め、藪の奥にいる人物を見つめる。
    秋山もなんとか目を凝らして見るが、人影が何かしていることしか分からない。
    「…宗介くん!」
    品田が人影に声をかけ、藪の中に駆け出した。
    「っ!?」
    「え?宗介くん!?」
    声をかけられて顔をあげ、目を見開く宗介。
    その手には蛇が握られていた。
    「あ…しな、だ」
    「蛇を殺しちゃだめだ!落ち着いて!」
    するりと、宗介の手から蛇が逃げ出す。
    「あ…」
    「落ち着いて宗介くん、一体なんで蛇を…」
    宗介に目線を合わせるようにしゃがみ、優しく声をかける秋山。
    すると宗介はうつむき、唇を噛む。
    「それは………ぐぅっ!」
    突如苦しみだし、自分の胸元の服を掴んで踞る宗介。
    「宗介くん!?」
    「待って秋山さん」
    品田が秋山を制止し、宗介の袖の隙間から見えた肌を指差した。
    まるで蛇のタトゥーのような模様が見える。
    「…動いてる?」
    「…あぁ、なるほどなぁ」
    「?」
    「取り敢えずお祖父さんのとこまで…」
    「じいさんは、だめだ…!」
    品田のジャケットを掴み、そう訴えた宗介に二人は顔を見合わせた。
    「秋山さん」
    「…わかったよ、じゃあウチの事務所に行こう」

    ◆◆◆◆◆

    「蛇切縄」
    「じゃきりなわ……?」
    奥の部屋で宗介から一通り話を聞いてソファーに寝かせ、秋山が待つ事務所へ戻って漸く一息吐いた品田はそう語りだした。
    「まず間違ってないでしょう、蛇ですね」
    「蛇って…いかにも不吉な象徴だね」
    咥えた煙草に火を点け、顔をしかめる秋山。
    「そんなイメージで大丈夫ですよ…蛇切、蛇縄、蛇切り縄…そのまま『くちなわ』って呼ぶ地方もあるらしいです」
    「何で縄?そもそも蛇切縄ってどんな怪異なのさ」
    「蛇の交尾って2匹の蛇が絡まるでしょ?縄の由来はそこから…そして蛇切縄は人の悪意によって遣わされた怪異です」
    「悪意?俺には蛇なんて邪悪なイメージしかないよ、邪悪じゃない蛇なんてツチノコぐらいだよ」
    「懐かしいですねぇ、懸賞金欲しさにアイツを頑張って探したことあるんですよ…ま、見つかんなかったけど」
    そう言って遠くを見る品田に秋山は思わず苦笑する。
    「…で、蛇切縄は…」
    「あぁそうそう…話を聞く限りではありますが宗介くんは…『運』が悪かったんですよ」
    煙草を咥え、秋山から火を貰いながら品田は語りだした。
    「運?運が悪くて怪異に憑かれたりとかあるの?」
    「この場合は…ね、あの神社、もうずっと昔に廃棄されてるから『それ』を抑えるプロがあそこにはいないんですよ」
    「…?」
    「あの神社を中心によくないものが集まりすぎてるんですよ…宗介くんはたまたまそういう…『呪われやすい場』で、そういう空気のもとで「誰か」に「運悪く」呪われてしまったんですよ」
    品田の言葉に秋山はガシガシと頭を掻いてため息を吐いた。
    「そんな大事だったのあれ…先に言ってよ」
    「お札はちゃんと本殿の戸に貼ったんで…それである程度『よくないもの』は分散されていきますよ」
    そう言って品田と秋山は短くなった煙草を灰皿に押し付けて火を消し、秋山は新しい煙草に火を点けた。
    「話を戻しましょうか、宗介くんから聞いた話では蛇切縄の呪いの発端…まぁ若者にありがちな色恋沙汰ですね」
    品田は語りだした。
    事の始まりは宗介がある女の子を振った事だ。
    仲間内で結構人気のある女の子だったのかもしれない。
    「…でもその子のことを好きな友達がいて…いや、もう「友達だった奴」と言うべきですかね…そいつが宗介くんに呪いをかけたそうですよ、俺たちが見たあの御神木に打ち付けてあった札はそいつの仕業のようです」
    「えぇ…10代がやるのに随分本格的だね…まぁ確かに昔からこっくりさんやらキューピットさんやら流行ったけど」
    秋山の言葉に品田は軽く頷きながら紙や墨を用意し始めた。
    「…まぁとにかく、宗介くんはインターネットや図書館でその呪いを解く方法を調べていたみたいですよ」
    「ネットや図書館にあるやつなんて怪しいよ、蛇を殺せば蛇の呪いが解けるなんて嘘くさい話じゃない」
    「いや、蛇の『ぶつ切り』は蛇切縄の撃退法としては間違ってないですよ…『手順』が間違っていたんです」
    「手順?」
    「呪いを解くのは、呪いを掛けるより難しいんですよ…それにこの場合、重要なのは蛇じゃなくて『縄』なんですよ」
    そう言いながら、紙を切り墨を摩っていく品田。
    「縄はなにかと呪術的なことに使われましてね、ほら神社とか…遥ちゃんの時も縄を張り巡らせてたでしょ?縄は結界を作り防衛する…そういうものなんですよ」
    「遥ちゃんの時…そういえばそうだった…」
    「『蛇切縄』はその発想を応用して防御じゃなくて攻撃にした呪いなんです。
    つまり『護る』んじゃなくて『閉じ込める』。『結界で縛り上げる』んですよです。だったらその縄を切ってしまえばいい」
    品田は墨を摩る手を止め、例の手帳を取り出してとあるページを開き、秋山に見せた。
    そのページには遊女らしき女が蛇に全身を締め上げられ、口に蛇の頭が入り苦しんでいる絵が書かれていた。
    「っ!?」
    「…少しだけ宗介くんに見せてもらいましたが…首のあたりまで蛇の痣が出来てました。それより上にきたら…アウトです」
    「は…?」
    「この呪いをかけた子がどこまで理解していたかはこの際関係ありません。
    そこには悪意…いや殺意がある。蛇切縄は人を殺すための怪異なんですよ」
    品田の言葉に秋山は目を見開き、煙草を乱暴に灰皿に押し付ける。
    「そんなっ!」
    「ああ大丈夫っすよ!祓えますから!これで」
    そう言って品田は手帳を仕舞い、ペン立てからカッターナイフを拝借しては自分の掌を切る。
    「えっ」
    切り口から出た血を摩った墨に垂らし、筆で混ぜては紙にサラサラと何か書いていく。
    「はい完成」
    「なにそれ…札?」
    「ちょっと強力な護符ですよ、抜き身だと危ないから…」
    出来た札を空の御守りに入れ、しっかりと紐で封をする品田。
    「これで大丈夫ですよ!」
    「…お前の血が混じってるから?」
    「そうそう!…聞いたんでしょ?『子守龍』のこと」
    「…まぁね」
    「さ!宗介くんを起こしてあの神社に向かいましょう!」
    品田の言葉に秋山は深いため息を吐いた。
    「またあの階段登るの…」
    「嫌なら待っててくださいよ」
    「行くよ…行くけどさぁ…」
    ガシガシと頭を掻く秋山に品田は笑った。

    ◆◆◆◆◆◆

    人気がない境内。
    縄を張り巡らされた『結界』の中心で、宗介は品田に渡された御守りを握りしめた。
    「…本当に、祈ればいいのか」
    「そうそう!大丈夫、落ち着いて…目を閉じて呼吸を整えて、この結界の中で祈る」
    「…分かった」
    そう言ってちらりと品田を見てはすぐ顔を反らして座る宗介、その耳は真っ赤だ。
    品田と秋山は側にある石のベンチに座り、儀式を見守る。
    「しかしまぁ…なんで宗介くんてばその女の子フッちゃったんですかねぇ…結構可愛い子らしいですよ、宗介くんもイケメンだしモテそうですけど」
    「お前が準備してた時にさりげなく訊いたけど…なんでも最近好きな人が出来たらしいよ」
    「へぇ」
    「…夢を諦めず、泥臭くても真っ直ぐ生きるその姿に惚れたんだって」
    「あら~、青春っすね」
    「……………はぁー」
    秋山は深いため息を吐いてはふと御神木を見て、ぶつ切りにされた蛇を思い出す。
    「…そういえば、お前あの時『穴』をあけてるって言ってたけど」
    「あぁ…あれですか、本来ならこの呪いなんて発動する筈がなかったんですよね」
    「運が悪かったってやつ?」
    「この溜まり場の…よりによって御神木に「穴」をあけて呪いをかけた…『穴』は出口にもなれば入り口にもなってしまいますからね…呪いで穴を開けられ、手順を間違って解呪の儀をしてしまったから…」
    「だからか…」
    そんなことを話していたら、宗介の様子が変わる。
    御守りを握り締め、苦しそうに呻いている。
    「ぐ、ぅ、うっ…!」
    「品田…!」
    「大丈夫です」
    より強く御守りを握り締めれば宗介の身体から鱗が少しずつ剥がれていき、剥がれた鱗が光の粒子となって消えていく。
    「…」
    「…祓えた…のか?」
    身体が楽になったのか、宗介はゆっくりと目を開いては握り締めていた御守りを手放す。
    「!!」
    「品田…?」
    目を見開いた品田に秋山は首を傾げ、宗介も不思議そうな表情をする。
    「宗介くん!!御守りを手放しちゃだめだ!!」
    「え」

    パンッ

    乾いた音と同時に、結界の役割を担っていた縄が切れた。
    「が、ァ…!!」
    宗介の身体に絡み付くように浮き出る鱗。
    「は?はぁ!?何で!?失敗したの?!」
    「違う、違うんだ…!!確かに祓った…けど、蛇は一匹じゃなかったんだ!!」
    「…!?まさか、そのフラれた子が…!」
    品田は宗介の身体をハッキリみた訳ではない。
    胸元を開き、首回りまで蛇の鱗が浮き出ていたのを見せてもらっただけ。
    だから
    「あの札は『一回分』しか効力がないんです!!」
    「なんだって!!?」
    二人は宗介に駆け寄り、品田は秋山には見えない…おそらく宗介に絡み付き首を絞めているのだろう蛇を掴んだ。
    「秋山さん!宗介くんをお願いします!」
    しっかりと蛇を掴み、無理やり引き剥がしたのだろう。
    その瞬間、品田の腕から何かに噛まれたように血が吹き出た。
    「品田!!」
    「ぐっ…!」
    それでも品田は蛇を離さず、二人から離れた場所まで噛まれたまま転がる。
    シューシューと見えない蛇の威嚇が響き渡り、品田は小さく舌打ちをした。
    「くそったれ!!」
    暴れる蛇を押さえつつ必死に頭を働かせる。
    ((祓わないと…蛇は呪いをかけた子に帰ってしまう!))
    『人を呪わば穴二つ』
    人に害を与えれば自分にも悪いことが起こる、それは素人が行った呪術でもいえること。
    「っ!」
    蛇の歯が深々と刺さり品田の腕に巻き付いては締め付け、ミシミシと腕の骨が悲鳴をあげる。
    「、ぁ…ぐっ…このっ!!」
    なんとか蛇を振り払い、血を流しながらも再び蛇を押さえようとふらつきながらも立ち上がる品田。
    蛇もシュー…シュー…と威嚇し様子を窺っているらしい。

    「品田!!」
    「!?」
    蛇と品田の間に入るように飛び込んできた秋山が品田を押し倒す。
    咥えていた煙草を吸い、肺に紫煙を存分に溜め込んでは一気に吐き出した。
    「離してください秋山さん!なにを…!!」
    「落ち着け品田、興奮するな!…蛇は臆病な生き物だし、煙が苦手な筈だ…」
    無理やり品田を押さえ込みつつ蛇の様子を窺う秋山。
    蛇は威嚇を止め、吐き出された紫煙から逃げるように静かにその場から…神社から去ろうとする。
    それを見た品田は秋山の下でもがいた。
    「離してくださいよ秋山さん!!蛇が、蛇が呪いをかけた子の元にかえってしまう…!」
    「品田…お願いだからさ、助けるべき人を間違えないでよ…」
    「あ…」
    秋山の言葉に品田はもがくのを止め、気絶している宗介の方へ顔を向けた。
    「『人を呪わば穴二つ』…なんでしょ?」
    品田は悔しそうに歯を食い縛り、拳を作っては地面を殴った。

    ◆◆◆◆◆◆

    数日後

    「…で?」
    「なんだよ」
    品田の隣に座る宗介をちらりと見ながら秋山は煙草に火を点けた。
    「なんだよじゃないよ、何で品田にくっついてるのさ」
    「品田に礼をする為だ」
    「いや礼とかいいんだけど」
    困ったように笑う品田に宗介は身体をくっつけ、顔を赤くする。
    「いいから!これからきっちり礼をしてくから覚悟しておけよ!」
    新たな恋敵出現に秋山は頭痛を覚えたのだった。
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