貴方に恋をしていた「もうやめよっか、この関係」
紫煙と共に吐き出された秋山の言葉に、品田はこの恋を捨てると決めた。
「わかりました」
優しい秋山に見せてもらった夢とつかの間の幸せの礼に、品田は精一杯の笑顔で秋山に答えた。
秋山と品田が身体だけの、セフレと呼ばれる関係を持ってから半年ほど経つ。
風俗ライターという職業柄、品田にソッチの経験と知識があったのが幸いしセックスで苦労することなく避妊もしなくていいからか、秋山に求められるがまま品田は秋山に抱かれた。
セックスの最中の秋山はとても優しく、女のように柔らかい部分もない品田を女のように扱い常に気遣うような言葉をかけてくる。
そんなことを半年の間に何度もされて気がつけば品田は秋山に恋心を抱いていた。
優しくされるだけで恋心を抱いてしまう自分の単純さに品田は小さく笑うが、どうしようもなかった。
ある日、仕事帰りにスカイファイナンスに呼ばれて訪ねれば秋山は初めて品田の仕事に口を出した。
驚きつつも聞いていれば品田にもう風俗に行くのはやめろという内容だった。
品田にすれば風俗ライターに風俗に行くなとは医者に病院に出勤するなというようなものだ。
「いや、仕事ですし…第一俺達セフレなんすから秋山さんには関係ないでしょ?」
無意識に、少しだけ強く言ってしまった。
互いの仕事には口を出さない、暗黙の了解だった筈。
品田がそう言ったら秋山は目を見開き、怒りを隠そうとせずに品田をソファーに押し倒し手荒に抱いた。
いつもみたいに優しくなく、まるで本当にセフレの…性欲処理をするだけの行為
「もうやめよっか、この関係」
笑顔で答え、衣服を着ながら品田はスカイファイナンスを後にする。
もう来る理由もない
携帯の電源を切り、名古屋とは違う行き先の新幹線に乗る
「さようなら、意味ない恋心」