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    みすみ

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    みすみ

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    大遅刻のクリスマス愛暦、年内滑り込みの投稿です💦
    お付き合いしている2人のお話です。
    なんやかんやイチャイチャしてます☺️

    #愛暦
    calendar
    #アダ暦
    personsCalendar
    ##愛暦

    聖なる夜だから(愛暦) 温暖な沖縄も、十二月ともなればそれなりに肌寒くなってくる。
     少し前までハロウィン一色だった街が、今度はイルミネーションに彩られ、あちらこちらの店先にクリスマスツリーやリースといったわかりやすい装飾が施される。
     キラキラと華やかな空気に、街行く人々もどこか浮き足立って見える。
     そんないつもとは違う装いの通りをいつも通りにスケートで滑りながら、暦は飲み込みきれなかったため息を吐き出した。
     ――折角のクリスマスだっていうのに。
     段差を飛び越えて綺麗な着地を決められても、今日はどうにも気分が上がらない。
     原因は、暦が一番分かっている。

     ***
     
    「……え、東京?」
    「あぁ。仕事の付き合いでな」
     呼び出されたホテルの一室。
     目の前に並べられた上等な紅茶とフォンダンショコラに舌鼓を打ちながら、愛之介と他愛ない話をしていた時だった。
     さり気なさを装って告げられた言葉に、暦は思わず正面の一人掛けのソファに腰掛けた愛之介をぽかんと見つめた。
    「クリスマスは、こっちに居るって言ってたじゃん」
    「仕方ないだろう。ご指名なんだ」
     心底面倒だと言いたげに顔を顰めながら湯気のたったカップを口元に運ぶ愛之介に、話が違うと思わず目の前のケーキに乱暴にフォークを突き刺した。食べかけのフォンダンショコラから、溶けたチョコレートがどろりと溢れていく。
    「行儀が悪いな。ケーキに罪はないだろう」
    「他に何か良いもんがあるのかよ」
    「……何事も犠牲はつきものだな」
     じとりと睨みつけながら返せば、しれっと手のひらを返してくる。尊い犠牲だと暦の手元を眺めながら呟いて、カップをソーサーに静かに置くと、ゆったりと足を組む。
    「面倒でも、こういう付き合いを疎かにするわけにはいかないんだ」
     分かるだろうと言外に言われた気がして、まるで暦がワガママを言っているような錯覚を覚えるが、今回に関してはそうではない。
    「俺との付き合いは、おろそかにしても良いってことかよ」
    「そうは言ってないだろう」
     暦は、どちらかと言うと季節のイベントを楽しむ方だ。例年は友達や家族と、あれこれと企画しては全力で楽しんでいたが、今年は初めて恋人と過ごすクリスマスだからと、いつも以上に浮かれていたのを自覚していた。
     事前に愛之介の予定も確認して、当日に何をしようかとあれこれと計画を練っていたというのに。
     楽しみにしていた分、落胆が激しい。仕事なのだから愛之介を責めても仕方ないと分かっているのに、この腹の中でぐるぐると行き場を失った感情をどう処理したら良いのか分からない。
    「……帰る」
    「暦、話はまだ」
    「帰るっ」
     上着とボードを掴んで立ち上がると、引き止めようとする愛之介の言葉も聞かずにそのまま部屋を出る。
     今は何を話しても恨み言しか言えそうになかった。
     エレベーターホールでボタンを連打して、ポーンという軽い音と共にゆっくりと開かれるエレベーターに乗り込んで、ロビーの階を押す。
     ゆっくりと扉が閉まるまで、愛之介は追いかけて来なかった。
     追いかけてきて欲しいなんて思わないけれど、どうにも面白くなくて唇を噛み締めた。
    「……楽しみに、してたのに」
     ぽつりと零れたのは、どうしても抑えられなかった本音だった。

     ***

     あの後、どうにも気持ちの整理がつかないまま、やけくそになってクリスマスイブもクリスマス当日もシフトを入れた暦に、店長の岡がなんとも言い難い表情を浮かべたが、そこは何も言わせずに暇なんでと押し通した。
     あんな風に部屋を出て行ったせいか、愛之介からは何も連絡がない。子供のように癇癪を起こした暦に、呆れているのかもしれないと思う。
     暦も意地を張って連絡をしなかった。出来なかった。気持ちの整理がつかないまま連絡をしたところで、良い結果にならないだろうと言う事は分かっていたから。

     そうして迎えたクリスマスイブ。
     今夜は、家族でご馳走を食べる予定だ。
     いつも通りと言えばいつも通りのその予定が、何故だか少し寂しくて。そう思ってしまう自分が悔しくて。
     商品を並べる手つきがつい荒々しくなってしまうのを、深呼吸をして落ち着かせる。
     カウンターに戻ると、置いてあったスマートフォンが震えた。表示された通知は母からで、ロックを解除すると妹たちがホールケーキを囲んで思い思いにカメラに向かってポーズをとっている写真が送られてきていた。
    『ケーキの用意はばっちりよ!!』
    『まだ食うなよ!!』
     はしゃいでいる妹たちの様子につい吹き出して、冗談半分にメッセージを返すとスマートフォンをズボンのポケットに突っ込む。
     ささくれていた気持ちが少しだけ上向いた気がして、また気分が落ち込まないうちにと品出しの続きをすべく新しい段ボールを開封したのだった。

     ***

     家族との賑やかなイブを過ごして、翌日。
     サンタからの贈り物にはしゃぐ妹たちの相手をしながら、時折スマートフォンを見ては何も通知のない画面に落胆するのを繰り返すこと数回。
     七日と千日がお昼寝したのにあわせて部屋に戻り、バイトまでの時間を雑誌を読んで過ごそうかと気に入りの雑誌を手に、ベッドに乗り上げて壁を背もたれにして座る。
     なんとなくパラパラとページを捲るが、いまいち身が入らない。いつものように楽しく感じない。
     原因は明らかだが、かと言ってすぐに解決出来るわけでもない。
     雑誌を置いて、沈黙したスマートフォンを手にしてはまた戻す。それをまた数回繰り返して、あぁ〜っと声を上げた。
    「……こんなの、俺らしくねぇよなぁ」
     よし、とひとつ気合いを入れて、メッセージアプリを起動すると愛之介とのトーク画面を開き、少しばかり指を彷徨わせてから画面をタップする。
     折角のクリスマスなのにと恨み言のひとつも送ってやりたい気持ちはあるが、仕事なのだから仕方ないというのも分かっている。
     本当は、あの日だって愛之介なりに気を遣って美味い紅茶やケーキを用意してくれたのだろうと言うのも分かっていたのだ。美味いもので釣られると思われているのは子供扱いされているようで釈然としないが、それでも多少は申し訳ないと思ってくれたのだと思うと、擽ったいような気持ちになる。
    『帰ってきたら、』
     そう打ち込んでから、少し考えて文字を消す。代わりに、可愛らしくアレンジされたクリスマスツリーの絵柄に『メリークリスマス!!』と書かれたスタンプをひとつ選んで送信ボタンを押した。
     すぐには既読がつかないだろうとスマートフォンの画面を伏せるようにベッドに置くと、傍らに置いた雑誌を再び手に取った。
     暦から送ったメッセージには、手が空いたタイミングで律儀に返信をしてくる愛之介だ。きっと、今回も何かしらの返信があるだろう。
     スタンプだけのメッセージに、戸惑ったりするだろうか。
     約束をキャンセルされたのだから、これくらい困らせたってバチは当たらないはずだ。
     画面を見て眉間に皺を寄せる愛之介を想像したらなんだか楽しくなってきて、思わずふふっと息が零れた。
     
     ***

     クリスマス当日ともなると、流石に客足は減るらしい。
     ひと通りの作業が落ち着いて、一人ぼんやりとカウンターに頬杖をつく。
     ランガは家で家族とのんびり過ごすといって休みをとっている。
     暦も家に帰って家族と過ごすか、はたまた同級生たちの集まりに混ざろうかと考える。誘われた時は先約があると断ってしまったが、フラれたと正直に言えば揶揄われながらも温かく迎えてもらえるはずだ。
     休憩時間になったら連絡してみようかと、ひとつ伸びをして時計を見上げたところで、バックヤードから声がかかった。
    「暦、ちょっと頼まれてくれー」
    「うっす」
     店長の声に返事をして、残りの仕事をこなすべく小走りでバックヤードに向かったのだった。

     ***

     無事に本日の仕事を終えて、店長に挨拶をすると裏口から外へ出る。
     同級生に連絡をしたところ、よく行くカラオケに集まって盛り上がっているらしい。参加するのも帰るのも自由、この後はノリで決めると言った状況だから、いつでも来いよと言う同級生からの優しさ半分、憐れみ半分のメッセージに感謝しつつ、その言葉に甘えて少し顔を出そうかと考えながら道路に出る。
     手にしたボードを下ろして、店に向かって滑り出す。が、軽快に滑り出したスケートは、すぐに視界に入ってきた黒塗りの車にゆっくりと速度を落とすことになった。
     見覚えのあるその車の扉が開いてゆっくりと降りてきた男に、無視して通り過ぎてしまおうかという考えがちらりと過ぎったが、わざわざこんな日に喧嘩がしたい訳ではない。
     わざとらしくため息を吐いて目の前でブレーキをかけると、少し高い位置から苦笑する気配がした。
    「……もう少し喜んでもらえるかと思ったが」
    「タイミング悪りぃんだよ」
     その厚い胸板に軽く拳を当てると、怪訝そうに目の前の男ーー愛之介が、片眉を上げた。
    「これから、ダチと遊ぶ約束してんの」
    「僕というものがありながら?」
    「どの口が言ってんだよ」
    「この口かな?」
     約束を先にキャンセルしたのはどちらだという意味を込めて言えば、にこりと悪びれた風もなく笑ってみせる。
     思わずその頰をつねってやりたくなる衝動を抑えていると、腕を軽く引かれて車に乗り込むように誘導される。
     いつまでも立ち話をしているのも目立つので仕方ないと、誘われるままに乗り込むとドアを閉める。車が静かに走り出したのを感じながら、隣に座る愛之介に視線を移す。
    「……俺、そこのカラオケに行くんだけど」
    「そうか」
     頷いてはみせるが、暦をそこで下ろすつもりが無いのが態度でわかる。
    「愛之介」
     強めに名前を呼べば、前を向いていた視線が暦を見る。
     睨むでもなく、揶揄うでもなく、見慣れない色を浮かべたその目に、なんと言葉を続けて良いか分からなくなってしまう。
    「……腹を立てる程度には、君が楽しみにしていたのだと思ったから」
     内心で戸惑う暦から視線を正面に戻して、ぽつりと愛之介が零す。
     どこかつまらなさそうなその音に、暦はあれと目を瞬かせる。
    「無礼にならないギリギリのところで切り上げて帰ってきてみれば、君はあっさりと他の誰かと約束をしているなんて」
     あんまりじゃないか。
     非難がましく、音になるかならないかのところで呟かれた言葉に、暦はもしかしてと確信に近いものを抱いた。
    「……拗ねてる?」
    「拗ねていたのは君だろう」
     連絡のひとつも寄越さないと思えば、いきなりスタンプだけ送りつけてきて。
     じろりと、暦に戻ってきた視線に、恨みがましく呟かれた言葉に、むずむずと口元が緩んでしまう。
    「なぁ、やっぱり拗ねてるだろ?」
    「拗ねてない」
    「ていうか、帰ってくるなら連絡しろよ。分かってたら予定入れなかったのに」
    「大人しく待ってないのが悪い」
    「なにそれ理不尽」
     言い返しながら、スマートフォンを出してメッセージアプリを起動する。
     その様子を愛之介が機嫌悪そうに見てくるのを感じながら、手早くメッセージを打ち込んで送信する。
    「……なぁ、この後時間あるんだろ?」
    「さぁな」
    「じゃあ、どっか行こーぜ」
    「……約束は?」
    「今、行けなくなったって連絡したからへーき」
    「……そうか」
     少しだけ距離を詰めて、組まれた足の上に乗せられた左手にそっと自分の手を重ねてみる。
     暦のものよりも大きな手は、外に居た暦の手よりも温かい。
    「珍しく積極的だな」
    「まぁ、たまには?」
     今日を楽しみにしていた暦の為に予定を調整してくれたのだと言われて、嬉しくない訳がない。そうしても良いと思われるくらいには、暦は大切にされているということだ。
     重ねた手を取られて、指の先に愛之介の唇が軽く触れる。そのまま手を引かれて、唇同士が触れ合おうとしたところで、ふと思い出した。
    「あ、プレゼント」
    「……は?」
     そのまま溢れてしまった言葉に、愛之介が動きを止める。僅かに寄せられた眉に余計なことを言ってしまったと後悔したが、続きを促すようにそのまま見つめられて、そっと目を逸らしながら恐る恐る続ける。
    「いや、今日会えると思わなかったから、家に置いてきたなって」
    「……それは、今言うことか?」
    「それは俺も思ったけど!思い出したもんは仕方ないだろ」
    「君は本当に……」
     近づいていた体を離して、頭が痛いと言わんばかりにため息を吐いた愛之介に、慌てて離れそうな手を掴む。それに珍しく驚いたように目を見開いた愛之介に、勢いのまま口を開いた。
    「も、もっかい!その、しきりなおしって……ことで……」
    「なんだ、キスしたいのか?」
    「わ、悪りぃかよ!!」
    「……へぇ?」
     機嫌がなおったのか、打って変わって意地の悪い笑みを浮かべた愛之介に顔が熱くなる。
    「ていうか、先に約束やぶったのそっちなんだからな」
    「そうだな」
     熱くなった顔を隠す為に、そっぽを向いて怒っていることをアピールをすれば、頬に手を添えられてあっさりと戻されてしまう。
    「どうしたら、機嫌をなおす?」
    「……っ」
     親指で目元をゆっくりと撫でられて、思わず目を閉じる。いたずらな指先が、頬を撫でて唇に触れた。
     答えを促すように唇をふにふにと押しながら、目の前で楽しそうに笑う愛之介の思うように転がされている気がしてならないのが悔しいが、今日は素直になってやっても良いかと暦は腹を括った。
    「……たくさん、甘やかしてくれたら、考えてやる」
    「……なるほど」
     見上げた愛之介の目が怪しい光を帯びたのが見えたと思ったら、鼻先にちゅ、と濡れた感触と共に甘く噛みつかれる。
    「……っ」
     抗議しようと開いた口をそのまま塞がれて、欲しかった口付けを与えられる。味わうように唇を舐められて、僅かに開いた隙間から舌が忍び込んできた。
    「んぅ……っは、あいの、すけ」
    「安心しろ……たっぷりと、可愛がってやる」
     口内を荒らされて、呼吸が苦しいのに物足りなくて、体がじわりじわりと熱をもってくる。
     吐息が触れる距離で、獰猛な笑みを浮かべた愛之介が囁いた。
    「泣いても離してやらないから、覚悟しろ」
    「ひぇ」
     甘やかしてくれるんじゃないのか、一体どんな目に遭うのだと思わず涙目になった暦に、愛之介は耳朶に口付けてから耳元でゆっくりと囁いた。
    「れき、返事は?」
    「お、お手柔らかに……」
    「善処はする」
     あ、これダメなやつだ。
     どこか諦めに近い感情が湧くが、これからの時間は愛之介を独り占め出来るのだという期待や喜びが上回ってしまうのも事実で。
     明日を無事に迎えられるかは自信がないが、今日はクリスマスなのだ。たまには素直になったり甘えたって、きっと許されるだろう。
     車が停まるまでもう少しだけと、暦は愛之介の唇に己のそれをゆっくり重ねたのだった。
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