夜明けは訪れる ひゅう、と穴に落ちたような浮遊感とともに、脳みそが一瞬青白くなる。反射的に瞼をひらく。次の瞬間には、視界いっぱいに見慣れた自室の光景が広がっていて、思わず安堵の息を吐くと、浅かった呼吸が次第に落ち着くのがわかった。
重たい身体をゆっくりと起こした。シーツが自分の体温で生ぬるい。下を向くと、頭が脳震盪でも起こしたかのようにぐわんぐわんと揺れて吐きそうになった。ドクドクと喉の奥が脈打つ。ひゅう、と喉が鳴った。
無音の部屋を見渡す。たまに猫用の扉から入り込んだにゃんこたろうが寝ている間にベッドの隅で丸まっていることがあるのだが、今日は彼女の気分ではなかったらしい。
――嫌な夢を見た気がする。
寝覚めが最悪だったのでそう確信したのだが、内容が思い出せなかった。無理矢理思い出そうとすると傷つけて擦り切れたVHSのごとく、モザイクがかかった映像がプツプツと途切れて頭の中で再生される。その不気味さをただただ不快に思った。スウェットと肌の間に熱気がたまっていて、じっとりと汗を搔いているのがわかった。指で少し襟元を開けると冷たい空気が直接入ってきて、ぶるりと震えた。
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