絡める絡めとる離れてまた絡めとる 爪先に掠った血液を多量の砂糖水でたっぷりと薄めたような橙。薄い皮膜の向こうに揺蕩うほのかな色を指先でなんどもたどってから、ようやくそのやわらかな唇に自らのそれを重ね合わせた。
舌の上に砂糖を纏わせておけば、あちらから積極的に舐めてくれると覚えたのはわりと最近のことだった。
表皮を溶かし尽くすように隙間なく合わせてゆく。案の定、オーエンの方から唇をわりさいて舌を入れてくる。
最近、といってもそれはミスラの感覚であって、年月としてはここ五百年くらいのことである。オーエンとこういったことをし始めてからもう四桁の年を経る頃になる。そう考えれば半分あるいはそれより前に気づいた事実になるから、もはや最近と呼ぶには差し支える年月かもしれない。
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