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    pk_3630

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    平安時代AUの曦×澄♀ ③
    好きな子には貢ぎまくりたい帝(曦臣)と困惑する江澄♀
    ようやく距離も縮まって曦澄♀っぽくなったところまでです

    #曦澄

    平安時代AU 第3話「あの蓮花の衣装、どちらの姫君に贈るのかと気になっていましたが。江家の末の姫君でしたか」

    衣装だけではない。蓮花の香も当代一の名人と謳われる者にわざわざ調合させ、しかも御簾の内から江澄を眺められるようにと江澄の席までも指示を出していた。
    曦臣が幼少の時より仕えている侍女はその執心に正直驚いていた。今まで弟君と同様、特段女性に好意を示したことがなかったというのに江家の末の姫君にすっかり心奪われている様子だ。
    「紫の重ねを好んで着ているようだけれど、あの色合いの衣装も清らかでよく似合っている。まるで宮中に美しい蓮の花が咲いたよう」
    江澄は女性にしては背が高めで、紫色がよく似合う高雅な美しさを持っていた。その隙の無い佇まいは人を寄せ付けにくく、しかも婚姻が破断した姫として宮中でも遠巻きにされていることが多かった。
    最初は入宮した女官の挨拶を受けた時に、一人だけ周囲の者とは違う高貴さがある女官だと思い気に留めていた程度だった。今思えばあの時すでに江澄の孤高の美しさに心惹かれていたのだ。
    しかし、あの夜の出来事は決定的に曦臣の心を捕らえて離さなくさせた。
    涼やかで凛とした見た目とは裏腹に心細げに廊下を彷徨っていたこと、そして男達から隠すために抱きしめた身体が震えていたこと。月の光に照らされた江澄は挨拶の時の凛然とした姿ではなく、今にも消えてしまいそうな儚さが漂う姿だった。
    (この姫は私が守らなければ)
    曦臣は瞬時にそう想った。そして、その後江澄のことを調べさせてみるとますますその想いを強くさせていった。
    婚約の破断は本人には何の落ち度もなかったというのに不実な男よりも江澄が責めを負わされ、しかも実父は彼女を守ってやることもせずに悪い噂が流れるままとなっていた。そして宮中でも噂故に味方がおらず、江家の姫君だというのに部屋は中心から遠く外れた場所にされている。
    寝殿に呼び出した時は、手を揃えて許しを乞う姿に今までこの細い身体で一人きりで苦境に耐えてきたのかとやるせない思いで一杯だった。
    (何としてもこの姫は私が幸せにする、私の宮廷で江澄に肩身の狭い思いはさせない。)
    蓮花の衣装も香もその一つに過ぎない。江澄のためになることなら何でもしてあげたかった。

    行事が終わり江澄が部屋に戻ろうとすると、高位の女官が寄って来て「今日からあなたのお部屋はこちらです」と案内された。宮中の中心から近い部屋で、部屋の設えも今までとは比べ物にならない程立派で華やかだった。
    「姫様、ご几帳にも屏風にも蓮の花が…それにお道具類もこれ程立派なものが揃っているだなんて」
    侍女は夢でも見ているかのようにうっとり部屋を見回していたが、江澄は困惑のほうが大きく、華やかな部屋の中に身の置き場がないように立ち尽くしてしまった。
    「江澄」
    曦臣の声が後ろから聴こえ、はっと振り返る。侍女はこのような場をきちんと心得ておりさっと退室した。そうして部屋の中でまたしても二人きりとなった。
    「ようやく御簾越しではないあなたを見れた。蓮花重ねの衣装、私が考案したのだけれど気に入ってくれた?」
    「主上、衣装や香だけでなくこの部屋も調度品も主上が用意されたのですか。」
    「ええ、あなたに相応しいものをと思って。」
    江澄が眉をひそめて俯いたことで曦臣は焦った。何か嫌なことがあっただろうか、気に入らないものがあっただろうか。長身を少し屈め眉尻を下げて江澄の顔を覗き込む。
    「江澄、気に入らないものがあったなら正直に話してほしい。」
    「主上のお心はありがたいです。しかし、私程度の位でこんな立派な部屋を与えられては周囲に示しがつきません。」
    「それなら大丈夫、あなたの位は上げることになっている。いや、違うな。正しく言うなら、当初の入宮の際に不手際があり適切でない位を授けてしまったから、元々授けられるべきだった位に戻したということになるね。」
    江澄は自分を特別扱いしたことによる軋轢を危惧したのだろうが、彼女の位を上げる以上、それに見合った部屋に移すことは当然であり誰にも文句を言わせるつもりはなかった。
    そもそも江家ほど高貴な家の姫が、仕度もそこそこにあの程度の位の女官として入宮させたほうがおかしいことだったのだ。この不手際の責任の一端は江家当主である江楓眠にあるのだから、そちらへの追及もおいおい考えねばなるまい。
    「江澄、あなたが心配することは何もない。困ったことがあれば遠慮することなく私に言って。」
    春の陽だまりのような温かな笑顔を向けられても、江澄はまだ困惑していた。
    「…どうして?」
    江澄は俯いた顔を上げ消え入りそうな声で問うた。
    「どうして…、私なんかにそれ程優しくするのです」
    揺れる瞳で見つめられ、曦臣はたまらなくなって江澄のほっそりとした身体をかき抱いた。
    「あなただからだよ。あなたの笑った顔を見たいから」
    ひゅっと江澄が小さく息をのむ音が聞こえる。そのまま欲望の赴くままに江澄の唇を奪ってしまいそうになったが、そうなれば歯止めがきかなくなると必死に自制した。
    このまま、この美しい蓮の花が宮中で咲き綻んでいてほしい。それが曦臣の願いだった。

    すっかり夜の帳が下り、部屋の高灯台の灯が二人を艶めかしく照らしている。
    江澄はしばらく曦臣に抱きしめられたまま夢のような心地に浸っていた。本当はこれは都合の良い夢なのではないかとも思ったが、抱きしめられた感触や息遣い、何よりしっとりとした気品高く香る白檀が現実だと教えてくれる。
    「二人きりの時はあなたを阿澄と呼びたい。あなたも私のことは主上ではなく曦臣と呼んで。」
    「主上、そんなことはいたしかねます。」
    「主上ではなく曦臣だよ、阿澄。」
    誰もが畏れ敬う帝から子供のようにあどけない笑顔を向けられたことで、つい江澄もつられて笑顔を零した。
    (その昔、寵妃の笑顔見たさに無茶をして国を滅ぼしてしまった王がいたというが。なるほど、こんな気持ちだったのかもしれない。)
    始めて目にした江澄の笑顔を前に、帝としてこれ以上ない不吉なことを考えてしまう。今までの曦臣ではあり得なかったことだが、江澄に出会ってから自分でも知らなかった感情や想いが次々と表面に現れ始めた。
    その想いがどこに行きつくのか、この時の二人はまだ予想もしていなかった。


    夜もまだまだ開けないうちに寝所に戻ってきた曦臣を見て侍女は少し驚いた顔をした。
    「主上、江家の末の姫君と夜を明かさないのですか。」
    「彼女はこのまま高位の女官として扱う。」
    「側室としてお求めにならないとは。かの姫がお気に召しませんでしたか。」
    「そうではない」
    そうではないのだ。むしろ、彼女を抱きしめ言葉を交わすうちに自分の中に眠っていた欲がじわりじわりと大きくなっていくのを感じた。同時に、江澄への想いが強すぎることを自覚し、欲望のままに男女の仲になってしまうことが怖ろしいとも思った。
    曦臣の母は身分がそれほど高くない女性だった。しかし父に見初められ更衣として入内した。後ろ盾がなかった母は寵愛を一身に受けたものの、味方がいない宮中では色々とあったらしく、心労がたたり忘機を産んでしばらく経った後亡くなった。
    江澄に口づけようとした瞬間、彼女と母の境遇が重なった。もし江澄をこのまま公に寵愛し、そして母と同じことが起きてしまったらと怖くなったのだ。
    そうなるよりこのまま江澄を女官として側に置いておきたい。我ながら臆病なことだが、彼女を苦しめ失ってしまうよりは余程良い考えなのだと思っていた。
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    PROGRESS長編曦澄17
    兄上、頑丈(いったん終わり)
     江澄は目を剥いた。
     視線の先には牀榻に身を起こす、藍曦臣がいた。彼は背中を強打し、一昼夜寝たきりだったのに。
    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
    「よかった、あなたをお守りできて」
     藍曦臣は目を細めた。その拍子に目尻から涙が流れ落ちる。
     江澄は眉間にしわを寄せた。
    「おかげさまで、俺は無事だったが。しかし、あなたがそ 1337

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    PROGRESS恋綴3-2(旧続々長編曦澄)
    転んでもただでは起きない兄上
     その日は各々の牀榻で休んだ。
     締め切った帳子の向こう、衝立のさらに向こう側で藍曦臣は眠っている。
     暗闇の中で江澄は何度も寝返りを打った。
     いつかの夜も、藍曦臣が隣にいてくれればいいのに、と思った。せっかく同じ部屋に泊まっているのに、今晩も同じことを思う。
     けれど彼を拒否した身で、一緒に寝てくれと願うことはできなかった。
     もう、一時は経っただろうか。
     藍曦臣は眠っただろうか。
     江澄はそろりと帳子を引いた。
    「藍渙」
     小声で呼ぶが返事はない。この分なら大丈夫そうだ。
     牀榻を抜け出して、衝立を越え、藍曦臣の休んでいる牀榻の前に立つ。さすがに帳子を開けることはできずに、その場に座り込む。
     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
     牀榻の支柱に頭を預けて耳をすませば、藍曦臣の気配を感じ取れた。
     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
     江澄は己の肩を両手で抱きしめた。
     夏の夜だ。寒いわけではない。
     藍渙、と声を出さずに呼ぶ。抱きしめられた感触を思い出す。 3050

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    PROGRESS恋綴3-5(旧続々長編曦澄)
    月はまだ出ない夜
     一度、二度、三度と、触れ合うたびに口付けは深くなった。
     江澄は藍曦臣の衣の背を握りしめた。
     差し込まれた舌に、自分の舌をからませる。
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     藍曦臣の腕に力がこもる。
     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
     全身で壁に押し付けられて動けない。
    「ら、藍渙」
    「江澄、あなたに触れたい」
     藍曦臣は返事を待たずに江澄の耳に唇をつけた。耳殻の溝にそって舌が這う。
     江澄が身をすくませても、衣を引っ張っても、彼はやめようとはしない。
     そのうちに舌は首筋を下りて、鎖骨に至る。
     江澄は「待ってくれ」の一言が言えずに歯を食いしばった。
     止めれば止まってくれるだろう。しかし、二度目だ。落胆させるに決まっている。しかし、止めなければ胸を開かれる。そうしたら傷が明らかになる。
     選べなかった。どちらにしても悪い結果にしかならない。
     ところが、藍曦臣は喉元に顔をうめたまま、そこで止まった。
    1437

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    PROGRESS長編曦澄11
    兄上やらかしの全貌
    (重要なネタバレを含みます)
     蓮花塢の風は夏の名残をはらみ、まとわりつくようにして通りすぎる。
     江澄は自室の窓辺から暗い蓮花湖を見下ろした。片手には盃を、片手には酒壺を持っている。
     一口、二口、酒を含む。雲夢の酒である。
     天子笑はこれもまた美味であるが、雲夢の酒はもう少し辛い。
     もう、三日前になる。雲深不知処で天子笑を飲み、浮かれた自分はこともあろうに藍曦臣に酒をすすめた。
     まったく余計なことをしたものだ。
     江澄は舌を打った。
     
     酒を飲んだ藍曦臣は、しばらくはただにこにことしていただけだった。
    「味はどうだ?」
    「味、ですか」
    「うまいだろう?」
    「そうですね。おいしい……」
     突然、藍曦臣の目から涙が落ちた。ぽたぽたと流れ落ちていく涙に、江澄はぎょっとした。
    「ど、どうかしたか」
    「ここで、おいしいお茶をいただきました。二人で」
    「二人?」
    「阿瑶と二人です」
     胸を衝かれた。
    「阿瑶は本当に優しい」
     息がうまく吸えない。どうして奴の名前が出てくる。
    「私が蘭陵のお茶を好むことを覚えていてくれて、おみやげにといただいたことがありました」
     動転する江澄をよそに、藍曦臣は泣きながら、またにっこり 1527

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    PROGRESS続長編曦澄6
    思いがけない出来事
     午後は二人で楽を合わせて楽しんだ。裂氷の奏でる音は軽やかで、江澄の慣れない古琴もそれなりに聞こえた。
     夕刻からは碁を打ち、勝負がつかないまま夕食を取った。
     夜になるとさすがに冷え込む。今夜の月はわずかに欠けた十四夜である。
    「今年の清談会は姑蘇だったな」
     江澄は盃を傾けた。酒精が喉を焼く。
    「あなたはこれからますます忙しくなるな」
    「そうですね、この時期に来られてよかった」
     隣に座る藍曦臣は雪菊茶を含む。
     江澄は月から視線を外し、隣の男を見た。
     月光に照らされた姑蘇の仙師は月神の化身のような美しさをまとう。
     黒い瞳に映る輝きが、真実をとらえるのはいつになるか。
    「江澄」
     江澄に気づいた藍曦臣が手を伸ばして頬をなでる。江澄はうっとりとまぶたを落とし、口付けを受けた。
     二度、三度と触れ合った唇が突然角度を変えて強く押し付けられた。
     びっくりして目を開けると、やけに真剣なまなざしとぶつかった。
    「江澄」
     低い声に呼ばれて肩が震えた。
     なに、と問う間もなく腰を引き寄せられて、再び口を合わせられる。ぬるりと口の中に入ってくるものがあった。思わず頭を引こうとすると、ぐらり 1582

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    PROGRESS続長編曦澄9
    嵐来る(羨哥哥が出ます。ホワイサンも名前だけ出ます)
     十日が過ぎた。
     藍曦臣から文はない。自分から文を出そうにも、何を書いたらいいか分からない。
     江澄はひと月は待つつもりでいた。
     そのくらい待てば、藍曦臣からなにかしら連絡があると思っていた。
     ところが、その前に思わぬ客を迎えることになった。
    「元気か、江澄」
     白い酒壺を片手に、門前に立つのは黒い衣の人物である。
    「何をしにきた。とうとう追い出されたか」
    「まさか! 藍湛がいないから遊びに来たんだよ」
    「いらん、帰れ」
    「そう言うなよー、みやげもあるぞ、ほら」
     酒壺が三つ、天子笑とある。
     江澄は魏無羨を客坊へと通した。
    「俺は忙しいんだ。夜になるまで、ここいにいろ。勝手にうろつくなよ。あと、ひとりで酒を全部飲むなよ」
     魏無羨は「はいはい」と返事をして、ごろりと床に寝転がった。相変わらず、図々しいやつだ。
     江澄はそれでも夕刻には政務を切り上げた。
     せっかくの天子笑を全部飲まれてはかなわない。
     家僕につまめるものを持たせて客坊へと向かう。途中、笛の音が聞こえた。
     物悲しい響きの曲だ。
    「お、江澄。待ってたぞ」
     江澄が顔を見せると、彼はすぐに吹奏をやめた。
    「おとなし 2640