現パロ カブユウ家の鍵を閉めると、そのまま隣の家の敷地に入り、自分の家のものじゃない合鍵でとびらを開く。
整理されたと言うよりも、無頓着でものの少ない家だ。慣れた足取りでリビングに向かうと、ふぅとため息をつく。
「またソファでねてる・・・」
大きめのソファの上で、溶けるように眠っているのはこの家の主だ。
このエンジンシティの消防署署長カブ。通称、燃える男。
消防署長が燃える男だなんて、不謹慎かもしれないけど、その情熱、諦める事ないひたむきな姿勢、真摯で温厚な性格はこの町の名物で多くの人に慕われている。
額に張り付いた灰色の髪を拭い、奥の部屋から取り出したブランケットをおなかにかけると、キッチンに向かった。
持ってきたおかずの入ったタッパーを冷蔵庫にしまっていると、足下に大型犬二匹がすり寄ってくる。甘えん坊の二匹は、彼が保護犬で処分すれすれだったのを引き取った子だ。
ご主人様が寝ているのを分かっているのか、吠える事をせずにペロペロとなめてくる。甘えん坊なのは知っているけど、いつもよりもじゃれつきが激しい。
「もしかして、ご飯まだ?」
言葉が伝わらないのは分かっているが、そう問えば、目をキラキラとさせてくる。分かりやすいなぁと思いながら、餌をとりだし皿に取り分けてあげるとハグハグと美味しそうに食べ始めた。
二匹の様子に安心して、リビングに戻る。割と騒いでしまったけど、彼は眠ったままだ。
普段の厳しい表情が抜け、子供のように穏やかな表情だ。
署長とはいえ自ら危険な前線に出て、部下を率いながら緊張する現場を立ち回っている人だ。疲れ切ってこんなところで寝てしまったのだろう。
「お疲れ様です」
そっと近づいて、頬にキスを落とした。