「お兄ちゃん…あの人…」
「あぁ…彼だ…」
あの頃の姿ではないが大人になったKKの面影はまさに昔の彼と同じで麻理は兄とKKの再会に目に涙を浮かべるものKKの「しらねぇ」の言葉を聞き涙は引っ込んだ。そして暁人を見るのを恐れる。兄の、悲しんだ顔を、見るのが、嫌だからだ。
それでも恐る恐る暁人の顔を見ると暁人は驚きに目を見開くもすぐに平静を装いKKと絵梨佳に近づく。
「ようこそおいでくださいました。穢れを祓っていただく間よろしくお願いします。僕は暁人、そしてこちらは妹の麻里です。」
ペコリとお辞儀をすると麻里も慌ててお辞儀をする。顔を上げた麻里は警戒を顕にしKKを見る。だが暁人はそれを窘め不満そうな顔をしながらも渋々暁人の後ろに隠れた。
そしてKKはというと麻里のその態度に引っ掛かりを感じるがそれどころではなく気になる所があった。それは暁人に関することだ。何故なら暁人は右片目を隠すかのように狐の面をつけ、腹部を出す衣装にその腹部には太極図、そして何より4本の尻尾だったのだ。
その視線を感じたのか暁人は困ったように眉を下げ笑いながら「今の僕では穢れの場所までお連れできません。なので彼にその役割を任せます」と言い神主を呼び指示を出す。KKが神主に目線を寄越したことでホッとしたのも束の間突然心臓を掴まれるかのような痛みに小さく呻きその声に気づいた麻里は暁人の手を握る。再びKKが暁人の方へ目線を寄越す頃には痛みは消え代わりに尻尾が一本消えていた。それを見たKKは目を見開き「お前……元は幾つだ」と聞いてきた。
麻里は「兄に対して失礼ですよ!」と声を上げるも暁人は麻里を宥め「9本です。僕は九尾の狐、ここの守り神を務めております」と微笑んだ。KKは先程暁人の尻尾が4本なのを見て下っ端だと思っていたがそれは勘違いだったのを理解して後悔する。狐の尻尾は所謂力の源。それが減ると言うことは相当な苦痛が暁人を襲っているのだとKKは理解した。それと同時にこのままでは危険だと察知し神主に穢れの場所まで案内を急ぐよう伝えた。
絵梨佳は麻里に近づくと眉を下げ心配そうな顔を見せながら御神水を渡しKKの後に続いた。
麻里と暁人は絵梨佳から貰った他の神社から汲まれた御神水を飲むとほっと息を吐く。
そして暁人はKKのその後ろ姿を見て懐かしいなぁと思いつつ麻里に手助けしてもらいながら神主たちの後を遅れて着いていく。たまにKKが立ち止まりなにかを聞いている素振りを見せるのを麻里は首を傾げ暁人はKKが何かを知りかけているのだと知り昔の記憶なんて思い出さないでほしいと祈った。思い出さない方がきっと幸せだと…そう信じているからだ。