とある早朝夢だコレは夢だ
アイツが俺に言い放つ言葉、言われた事がある物から無い物まで。
言いたい事を言って満足したのか去って行く後ろ姿を動けずに見守る、夢なのに融通は効かない…いや、夢だからこそ融通が効かないのだろう。
夢らしく急に場面が変わり、気付くと自分の胸を般若の腕が貫いている…痛みは無い。
般若は何か言っているようだが聞き取れず意識が遠のく…誰かが俺を呼んでいる……
「…ぇ……けぇ…………KK…!!!!」
「っかは…っ!」
「起きた!良かったぁ…」
「はっ…は…あき、と?」
まるで溺れていたかの様な息苦しさに襲われながら、俺を夢から掬い上げた張本人を見る。
「おはよう、KK」
「あぁ…おはよう…って今何時だ?」
少し不機嫌そうな暁人に何かしたか?と思いつつ枕元の携帯を探す。
「朝の4時過ぎだよ、急にイビキが止まったかと思ったら青い顔し出すから、慌てて起こしたんだよ」
そう言う暁人は汗をかいているようで、寝間着代わりのTシャツで首元を拭っている。
「お前、寝てなかったのか?」
「………ちょっと嫌な夢見て目が覚めただけ…」
空調を効かせた部屋で寝ていたのに汗をかいていて不機嫌そうな理由はそれか。
「なんだお前も夢見が悪かったのか」
「え?KKも?」
てっきり無呼吸症候群かと…と抜かす暁人の頬を軽く引っ張る。
「い、いひゃいよけぇけ」
「生意気言う口はコレだろ?え?そこまで老いぼれた記憶はねぇぞ」
老化が一因でなる症状でも無いが今コイツは絶対、俺を年寄り扱いした、クソガキめ。
両頬をむにむにと引っ張る俺の手を剥がそうとしているのか、暁人は手の甲をカリカリと引っ掻いてくる。
「おーおー可愛い抵抗だな」
「うるはい、はなひへ」
ベットの上で男二人がじゃれ合う様に笑うのは傍から見たら些か滑稽ではあるだろうが、夢見の悪かった俺達はそのじゃれ合いが心地好く、嫌な汗をかきベタついた身体は気持ち悪いが、心は満たされていく。
しかし、そんな空間をぶち壊したのは暁人の腹の虫で、掌で包んでいる頬の温度が上がるのが文字通り手に取るように分かった。
「ったく、早朝から元気なこって」
「うぅ…」
「まぁ良い、せっかく早く目が覚めたんだ、どっかモーニングでも食べに行くか」
頬から手を離し、寝癖の付いた髪をくしゃりと撫で、準備するぞと言いベットから降りようとすると服の裾を引かれる。
「あ?外食は嫌か?」
「そ、そうじゃなくて、……ん」
「あぁ、おはよう暁人」
顔を赤くしながら此方を見上げ目を瞑る暁人に、忘れてたと思い、朝の挨拶と共に軽い口付けを落とす。
「ん、おはようKK」
カーテンの隙間から朝日が溢れ暁人を仄かに照らす。
あまりの綺麗さに先程見た悪夢も忘れ暁人を抱き上げ、準備の為に先ずは洗面所に向かう。
驚いた暁人が何か言っているが軽く聞き流す。
どうか今日一日が良い日でありますように。