「今日は七夕だよ、阿絮。夜は一緒に星を見よう?」
唐突な温客行の言葉に周子舒は虚をつかれ目を見開いた。うつらうつらとしていた意識がはっきりと覚醒し、隣に寝そべる男へと視線を向ける。
「…もう日付が変わったか?」
「とっくだよ、阿絮。そろそろ空が白み始めてもおかしくない刻限だ」
「そうか…まだ真夜中かと思っていた」
「ふふっ」
「なんだ?何を笑ってる」
「いや、昨夜は随分と早く寝台に入ったから…阿絮がそう思うのも仕方ないかなぁって」
「老温」
「うん?」
「だらしない顔になってるぞ」
「阿絮は耳朶が赤くなってるね?」
「余計なことを言うのはこの口か」
「んんっ」
唇をきゅっと指でつままれた温客行は『酷いよ、あしゅ~』と口にしたものの、言葉にはならず、もごもごと奇妙な音が漏れ出る結果となる。それがまぁ、なんとも間抜けな様子で。端正な顔の男には似つかわしくないそのさまに周子舒は思わず吹き出してしまった。
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