かわいすぎるのが悪い僕はセックスを制限されていた。
その理由は主に年齢。将来的にセックスをする相手は14歳上の僕のことを11歳から知っている、僕の師匠だ。
その僕の師匠は、今僕の隣で潰れている。この人は下戸でお酒に滅法弱い。匂いだけで酔ってしまったり、アルコールが入ってると思い込むだけで出来上がってしまうほどだ。
僕はこうなることを分かっていた。分かっていて止めることはしなかった。そもそも止めても言うこと聞かないとは思うのだが、僕は師匠が潰れてわけが分からなくなるのを楽しみにしていたのだ。
僕は師匠が酔った姿を見て、それをオカズに自慰行為をしている。僕は正常な男なのだ。好きな人で自慰行為くらい当たり前にする。もちろん酔っていない師匠のこともオカズにしているので心配ご無用です。
何にせよ、不可抗力、仕方がないのだ。師匠がかわいすぎるのが悪い。
今日も師匠は自分の部屋の小さなテーブルに先程買ってきたレモンサワーの缶チューハイをいくつか並べた。
「早くモブも一緒に飲めるようになるといいのにな。あ、でもな酒は失敗することもあるんだからな。モブ!酒は飲んでも飲まれるなよ!」
――その言葉そのままお返しします。想像するに難くないことだったが、師匠は自分で買ってきたチューハイのひと缶を空にすることが出来ないまま、簡単に潰れてしまった。
「また、潰れちゃったんですか、師匠」
僕は師匠が酔って寝ていることを確認するために、テーブルに突っ伏してしまった師匠の顔を覗き込む。
「師匠」
もう一度呼ぶと、目があった。あっ起きてたのか……下心があった僕は内心少し焦った。しかし、師匠の目はとろんとし、普段よく動く口からは涎が垂れている。
「ん……モブぅ?」
普段そんな甘い声出さないくせに、お酒が入るとすぐこうだ。
「モブぅ、もう眠いからベッド連れてって……」
ゴクリ……
師匠はだらっとした身体をなんとか起こして、両手を僕の方に向けていた。まるで抱っこして――とでもいうようにだ。この有様をシラフの時の師匠に見せつけたかった。アンタ一体どういうつもりで僕を煽ってくるんだ。あぁこのままこの人を犯してしまおうか、なんて物騒な考えが一瞬浮かんでしまったが、それもこれも師匠がかわいすぎるのが悪い。
「わ、わかりました」
僕は自分の理性の全てを総動員させ、今にも暴れ出しそうな下半身をなんとか抑え込むことに成功した。
ゆっくりと屈みこみ、伸ばされていた師匠の腕を僕の首に絡ませた。そのまま膝下に腕を通して、僕は師匠を抱えた。僕より身長の高いこの人は、筋トレを続けた僕の身体より薄かった。ゆっくり立ち上がり、その身体を落としたりしないように、しっかり抱え込んだ。
思いの外顔が近く、身体も密着していた。
――あつい、何だか熱くてたまらない。
僕はその熱い身体を誤魔化しつつ、師匠をベッドまで運び、ゆっくりと横たえる。
さっきまでモブ、モブ言っていたのに、僕が抱えて運んでいる最中に眠ってしまったようだ。
「師匠……僕もう我慢できません。師匠がかわいすぎるのが悪いんですよ」
すぅーっと寝息をたてるその愛おしい顔を眺めながら、僕はまたいつものように自分の熱い身体を慰めた。
おわり
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俺はずるい。俺はお酒の力を借りて、いつもモブを誘惑している。もう俺はいつでも準備が出来ているというのに、あいつは一向に手を出してこない。
確かに大人になってから……とは言ったが律儀に守るやつがあるか……? 俺がこんなに誘惑しているのに、あいつの理性はまるで鋼のようだった。
俺は知っているんだ。あいつ俺が酔って潰れたとき、俺が眠っていることを確認したあと、俺を見ながら自慰行為をしていることを。あいつは隠してるつもりだろうが全部知っている。そして俺は寝たフリをしながら、モブから漏れた声や息遣い、そそり立つそれを必死にスっている音を聞いて興奮している。俺は変態なのかもしれない。早くモブに抱かれたい。モブの理性が吹き飛んでしまうその日まで、俺はまたお酒の力を借りて誘惑し続けるだろう。
それもこれも、あいつがかわいすぎるのが悪い。
おわり