難解ショコラミステリー ハッピーバースデー。今年もお祝いできて嬉しいよ。また近いうちに、一緒にご飯でもどう?
そんなような文面を、送りはしたのだけれど。
自分の手を離れて久しい後輩はますます多忙を極めており、元メンターのメッセージに返信する暇さえなさそうだった。部屋宛のプレゼントは本日中に受け取ってもらえるだろうか。何度もメッセージボックスの更新ボタンを押してしまう自分に呆れながら、ディノは携帯端末から目を離さないまま、ロッカールームの長椅子に上半身を横たえた。
二月十四日。フェイスの誕生日。ついでにバレンタインデー。数年前であればフェイスとは同じチームで、同じ部屋に帰り、日を跨ぐまで盛大なパーティーを催すことができたというのに、時の流れは寂しいものである。そうも言っていられないしがらみや責任というものが、自分や彼の目指す『ヒーロー』像とリンクしているのだから、不満は一切無い。仲間たちと同じ志を共有できていることは、誇らしくさえあった。
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