「……そんな、笑えない冗談はやめてくれ」ぐしゃり。敵を叩き斬る音が廊下に響く。ぼたぼたと頬を伝う血は、彼がついさっき斬った[琥珀の試練]の血だ。乱暴にその血を拭い、残党を探す。その目には鋭い光こそ灯れど、弧を描くことは無い。
職員バジルは滅多に笑わない。作業中は勿論、鎮圧に出向いた時も、いつも。しかし、
「こっちは粗方片付いたよ〜。そっちは?」
「あぁ、こっちも問題なく片付いたよ」
───────しかし、職員ジュリアンの横だけは別である。彼女が傍にいる時だけは、時々笑みをこぼすことがある。「怪我はないか?」
「ないない![黎明の試練]相手にそんな苦戦するわけないでしょ」
「…そうか、ならいいんだ」
「相変わらず心配しすぎ〜。私、これでもチーフなんですけど?」
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