🆕💚💛「おしえて」「なぁ、どうして丹恒先生は伊達メガネなんてしてるんだ?」
講師控室に置かれている革張りのソファに座ってアイスを食べようとしていた穹が、不意にそんなことを訊いた。
「……今更じゃないのか」
「まあそうなんだけどさぁ」
言いながら、引き出しから小さなスプーンを取り出すと、アイスクリームをひと匙掬う。
「うま!」
「声が大きい」
「はーい……」
勝手知ったる、というべきか。講義のない空き時間になると、穹はこうして俺の控室に来るようになった。学生たちには講義のない時間に使用できるラウンジが用意されているが、穹は「ラウンジはうるさくて好きじゃない」のだと言う。
大半の人間が初対面の際に抱く印象が「人当たりがよくて話しやすい」穹は、思いの外一人の時間を好むタイプだった。
2096