『真夜中の悪魔』覚醒は唐突に訪れる。
呼ばれたように閉じていた目を開けて、伸ばした手の先に温もりがないことに横たえていた体を起こす。
かけられていた羽毛の布団がゆっくり肩を滑り落ちていく。それをぼんやりと目で追って……温もりがあるべき場所に視線を戻す。指先に感じた熱は温く、冷めきる前だった。といっても今は冬。実はここを出てさほど時は経っていないのかもしれない。
……疲れていた。そう、自覚することができるくらいには忙しい時期だった。だが、それは向こうも同じこと。雑務であると承知の上で、あいつにはいろいろと任務と称して仕事を振った。あいつにしか、キースならば上手くやるであろうという信頼も含めて、だ。事実、多生の問題は生じたものの、今は上手くやっていると聞く。
2725