棺と紙と花ドラキュラ伯爵は、神を恨むあまり悪魔に身を変えた人間だという。
しかし彼はなお人に触れ、出逢い、また求める者に知識を授け、人の世を無益に拒まなかった。やがて愛する者との間に子をもうけたが、再び愛する者を奪われ、彼は憎しみに染まった──初めは神に、次いで人そのものに。
子は、父に刃を向けることを選んだ。人の世が父の憎悪に飲み込まれる前に。
人は、暴虐の限りを尽くす魔王ドラキュラに挑んだ。人の世のため、命を賭して。
「いっ………、つ……」
悪魔城での戦いは過酷だ。人への憎しみや餓えに突き動かされた悪魔が、尽きることなく行く手を阻む。
ラルフが城に乗り込んでからも数多の死体や人であったものを見た。手遅れにならなかったのはサイファとグラントのふたりだけだ。
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