暑さも寒さも彼岸までと言うが、最近は少し暑さがマシになってきたなと思った頃から段々と店頭にオレンジや黒や紫が増え始める。10月に入ればどこもかしこもハロウィン色だ。
「ハロウィンとバレンタインの浸透は小売業の勝利だな」
新米を担ぎ帰路を歩きながら、あとは恵方巻きかとぼやくKKに昔はなかったんだよねとスーパーの袋を下げた暁人が反応する。
二人とも秋物の長袖だが日が暮れてくると寒く感じるようになってきた。必然的にアジトへの足取りが早くなる。重い荷物も夕食に直結するなら幾分軽く感じるものだ。
「バレンタインはあったぞ。 まあ本命か義理の二択で今ほどの規模じゃねえが」
それでも口が動くのは一人ではなくかけがいのない相棒であり師弟であり恋人である暁人と歩いているからだ。傍目からはそうは見えないだろうし、見えるようなことをするつもりもないが四十路過ぎても足取りが軽くなるのだから我ながら現金なものだ。
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