しあわせなら++
しあわせなら
アストルティアには年に一度、エイプリルフールという日がある。
冬の合間に訪れる新年の始まりとは別に、冬が終わった後の春の訪れを祝って、皆で笑う日だ。
この日だけは、悪質なものを除けば、つまらない嘘も悪戯も変わった遊びも何もかもを、待ちに待った春なのだからと許し合い、みんなで指差し笑い合った。
おおわらいの日、とも呼ばれるほどには。
魔物だっていつもと違う衣装でやってきたり、とある場所で見られる束の間の夢幻も、まるで神々の悪戯のように、アストルティアには不思議な出来事が起こり得る。
大陸の内海の真ん中に位置する、この小さなエテーネ島でも、朝からあちこちで笑い声が上がっている。
元々のエテーネの村にはなかった風習だが、新しいエテーネの村では、外界からやってきた人々が大勢暮らしており、それぞれの慣習を持ち寄って擦り合わせては、自然と馴染んでいった。
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