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    一郎

    absdrac1

    MEMO青幻+一幻+天谷奴
    天谷奴と夢野の関係について勘ぐる一郎。
    中途半端な処で終わっていますが、現時点のプロットとしては、この後天谷奴の回想が入る予定です。
    プロットを書くためのメモ的なお試し作文です。
    不眠 夢野の容態は回復しつつあった。早朝夢野の様子を見に行った時には、昨夜からの熱が大分下がっていた。昨晩は五分粥を少ししか口にしなかったが、今朝は全粥を半分ほど食べている。
     兄弟三人が朝食を食べ終えた頃、天谷奴がやって来た。夢野が寝込んでいることを伝えると、男は女の部屋へと向かった。
     天谷奴の大柄な後ろ姿を見ながら、一郎は僅かに心配になった。病床の夢野と二人だけにして問題ないのか。これまでの一郎であったら微塵も湧かない疑問である。杞憂だとは分かっている。夢野との付き合いは天谷奴の方が長い。夢野としても、信頼を置いているのは一郎よりも天谷奴の方であろう。
     然し、夢野と天谷奴の関係に就いて、一郎は不思議に思うことがある。作家とその担当編集者と云う仕事上の繋がりを超えた、何かがあるような気がしてならない。だが、一体何が考えられるのだろう。彼らは只の少々親しい仕事仲間であろう。親しいとは云っても、単に仲がよい間柄とは異なる。上辺には現れない処で、別の結び付きを引き摺って動いているように思える。
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    absdrac1

    MEMO青幻+一幻+天谷奴
    天谷奴に唆される一郎。プロットを書くためのメモ的なお試し作文です。
    夫婦の構造 ダンボール箱を置き、汗を拭く。それから次に運ぶべきダンボールに手を掛ける。今日一日、一郎はこの単調な作業を続けている。
     梅雨の晴れ間に外仕事を依頼された。イベントの搬入の手伝いである。日射しが出ていて蒸し暑い。荷物は然程重くないが、汗だけは大量に吹き出してくる。それでも体を動かすことに集中すれば、彼女の姿を瞼の裏に浮かばせることはない。だが、単調であることが拙かった。
     ――残酷な夫婦だよなあ、あいつらは……。
     一郎は、昨日天谷奴から言われた言葉をふと思い出す。
     いや、駄目だ。彼女に関することを考えているじゃないか――。夢中で仕事をしていている合間に、彼女のことを忘れていると確認することは、彼女に就いて思考することに他ならない。どうしたら無心になれるのだろうか。忘れろと思う度に、却って余計に彼女を想う。日中に交わすさり気のない言葉があった。些細な日常のやり取りがあった。そのような中で、ふとした拍子に身体の一部が触れ合うこともあった。様々の時に感ずる相手の体温、匂い、反応、仕草、表情、……、それらの細部までを思い起こしてしまう。ああ、駄目だ、駄目だ――。仕事に集中しろ、無心になれと、自分に言い聞かせる。
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    DONE変若の澱の後遺症の影響で体が衰えゆく弦一郎と狼が雨宿りしながら語らう話。

    しんみりと切なくて温かい話を目指しました。
    青梅雨 じとり、と。頬に触れる空気に、纏わりつくような重さをふと覚えた。山稜から吹き付ける風は蒸れ、むせかえるほどの土気と露を含んだ山草の濃い香りを運ぶ。山の脈動と力強い息吹を感じる風の中に入り混じる微かな青梅の香を、熟達の忍びの鋭い嗅覚は機敏に感じ取った。
     空を見上げる。山に分け入った際は僅かな横雲がたなびいていた筈の空は、今や陰雲が無数に立ち込め、空本来の色を完全に覆い隠してしまっていた。時折遠雷の音が雲の切れ間から朧げな響きを伴って、鳴る。

    (もうすぐ雨が降る)

     ここから城へはどれほどか。遠くに目をやるも既に城は遠霞の向こう側に覆い隠され、そこにあるのはただ白いもやばかりである。
     どこか雨を凌げる場所を探すほかあるまい。忍び———狼は判断し、くるりと踵を返した。手に持ち運んでいるものを抱えなおし、雨に濡らさぬよう自身の首に巻かれている色褪せた白橡色(しろつるばみいろ)の襟巻をそっとそれにかぶせる。己は濡れても良いが、今腕に抱えているものだけは決して濡らしてはならない。
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