時雨
ちょこ
DONEアイドラ話燕くんと時雨先生の話 学院の使われていない音楽室、ここでたまにピアノを弾く時雨だったが、最近は生徒である燕が来るようになった。彼が来てはリクエストの曲を弾いたりレッスンをしたり。そんな時雨にとって今までが非日常だったものが日常になりつつある頃、燕が何か小さな紙袋を時雨に差し出した。一瞬なんだろうか、と受け取る。
「……先生に似合いそうだと、思いまして」
燕がそう言ったのでそっと中身を見る、中には小さな箱が入っていた。その箱を手にして書いてある文字を見た。沈丁花と書かれた文字に可愛らしい花のデザイン、香水かと気づくには時間はかからなかった。まさか生徒から香水を贈られるとは思わず、チラリと燕を見る。
「……。教師に香水を贈る生徒はお前くらいかもな」
「……すみません……」
「謝らなくていい。……相当悩んで考えた結果なんだろう? それを否定するなんて野暮だからな」
一瞬燕が悩みながら香水を選んだのを想像してしまい少し微笑む。箱から香水を取り出す、箱のパッケージに描かれたデザインからして可愛らしい瓶に入れられてるのかと思っていたが、シンプルな四角の瓶だった。蓋をとり手首につけた、優しくも甘い香りが鼻に入る。こ 946
ちょこ
DONEアイドラ小説榊先生と時雨の話時雨が資料室に用事があり、そっと扉を開く。資料室は主に教師が授業で使う資料や昔の記事や録音されたデータなどが残っている。データや資料の数の関係で部屋の広さは中々のものだ。掃除は定期的にされていると言われているが所々にホコリが溜まっており、部屋の空気の悪さに少し顔を顰めつつ目的の探し物を探す為中に入る。
探し物を探そうとしていたらなにやら誰かいたらしく声のする方へ顔を向けるとよく見知った背中が見えた。その人物は本棚の前で背伸びをしてなにか取ろうとしていたが、身長の関係か、はたまた庇ってる足のせいか、取れる様子はない。少し考えた時雨は音もなく近寄ると後ろからこれだろうか、とすんなり本を取った。突然伸びてきた手に驚いた様子で後ろを向いた人物──榊は時雨を見る。
「……これですか、榊先生」
「……な、なんですか!自分が高いアピールでも!?」
「……はぁ……?」
誰もそんなつもりで取ったのではないが、と思いつつ、相変わらず素直ではない先輩である榊を見る。時雨からしたら、足が悪いというのにあのまま背伸びして取るのは辛いだろうと思ったからだ。まぁ、それを言ったところで、相手は嫌味を言うのだろうか 732
ちょこ
DONEアイドラ小説九重先生と時雨の話時雨は人気のない校舎裏へと行っていた、手には時雨がお気に入りにしている和菓子屋の包みが。時雨は実は甘いものが好きなのだが、アイドルをしていた頃甘いもの好きなの似合わない、との一言を気にしてしまい、それから今の今まで周りには”甘いものが嫌いだ”と言うようになった。だが時雨が甘いものが好きと知っている相手には口止めをしている。そこまで気にしなくてもいいのにと言われるし自分でもそう思う、と思いつつこうして人気のないところに行ってはこっそりと甘味を食べるのだ。
校舎裏に着いて箱を開ける、中身は美味しそうな豆大福だ。時雨はこのお店の豆大福がお気に入りだ。なんといっても粒あんの甘さが時雨好みなのだ。少しだけ笑みを零れつつ手に取って食べた時、声をかけられた。
「あれ、時雨センセ?」
「……んぐっ……!」
この声は、と豆大福を吹き出しそうになりつつ何とか飲み込み声をかけられた方へむく。そこには九重が居た。手には煙草と何か小さな紙袋をもって、まさかここに人が来るとは思わず思わず目をそらす。九重は時雨の持っていた箱の中身をみて、自分の持っていた紙袋をちらりとみて話しかけた。
「時雨センセ、1つお願いあ 1031
ちょこ
DONEアイドラ小説ピアノの話の続き、燕くんと時雨の話あれから何日かたったある日、放課後ほぼ誰も来ない音楽室に入る時雨。ガラリ、と開けた、今日白銀は来るのだろうか、とふと思う。自分がいる時にしか聴かせないと言ったあの日から今日までここには来なかった、普段の授業や休み時間ですれ違ったりはしたが。特に約束もしている訳でもない、流石に来ないだろう、と椅子に座り鍵盤を撫でて弾き始める。今日は歌う気分では無いため伴奏だけだ。いつもよく弾く名前の無い曲を弾いているとふとなんとなく扉の方へ目線を向けるとなにやら人影がみえた。時雨は一瞬驚いたような顔をして演奏をやめ、そのまま扉の方へ行き開けた。
開けたらそこには白銀がいた、まさか来るとは思わずお互いに少しだけ驚く顔をする。
「……、よく来たな」
「すみません、演奏の手を止めてしまいました」
「……いやいい、中に入りなさい。……何が聴きたい」
「……先生の好きな曲を」
白銀は中に入って椅子に座る、それにしても自分の好きな曲か、と時雨は少し悩んでしまった。ストレスか知らないが、あの日アイドルを辞めてから”好きな曲”というものが消えてしまったのだ。好きという気持ちすらも霧のようにモヤモヤと隠れてしまってい 1247
ちょこ
DONEアイドラ小説ピアノを弾く時雨と聴く燕くんの話この広い学院の中にも滅多に使われていない教室はある、時雨のいる音楽室もまた、その教室のひとつだ。ここを通るものなどましてやこの音楽室を使うのも時雨ぐらいだろう。わざわざこんな遠くにある音楽室を使うような生徒もいない、特殊な学院からか音楽室やレッスン室などいくつもあるからだ。時雨はたまにこの音楽室にくる、ここに置いてあるグランドピアノで弾くために。時雨は上着を脱いで椅子にかけると、ピアノの椅子に座る。そっと鍵盤を撫でたあと押す、ポロン、と心地のよい音が耳に入る。この音が好きなのだ、ピアノの音は聴いていて安心する。
今日もまた、あの曲を弾こうと鍵盤を滑らせるように弾く。この曲に名前はない、時雨が気まぐれで考えて弾いているいわばオリジナルの曲だ。けれど、この曲が好きかと言われるとそうでもない。好きでも嫌いでもない、腕が鈍らないように弾いているだけなのだから。
茜色の優しい夕焼けの光がそっと窓から入り込み、教室を、ピアノを、そして時雨の色素の薄い髪を染めるのだ。真っ黒で光のない目にも優しい茜色が混じる。少し気分の良かった時雨はそっと歌い出す、歌うと言っても歌詞はないため言葉になっていない歌 2013
ちょこ
DONEアイドラ小説バレンタインイベント
佐々木先生と美男くんと時雨の話時雨が廊下を歩いていると前方に佐々木と華王がいた、華王はなにか紙らしきものを手に持っており、隣にいる佐々木はなにやら笑っている。そのまま通り過ぎようとしたが、佐々木に見つかり呼ばれてしまった。
「あ、水無瀬〜!」
「……大声で呼ばないで貰えますか……華王、それ佐々木先生のポスターか」
「あぁ!貰いました!」
華王が持っていたポスターには少し見覚えがあった、まだ持っていたのかと時雨は思いつつそういえば、と佐々木が思い出すように言った。
「水無瀬もポスターあったよな〜、確か評判良かったやつ」
「水無瀬先生にも?」
「そうそう!確か水無瀬がライブ中言った言葉も当時騒いで……イダダダ!水無瀬抓るな!」
「いつのこと言ってるんですか?」
これ以上は言うな、と言わんばかりに時雨は佐々木の背中を強く抓る、あの頃は楽しくアイドルをしていたが、今の自分にとってはもはや黒歴史と言っていい。抓る手を離すと背中を優しくさする佐々木。
「すまんな華王、騒がしくして」
「大丈夫だ先生!それにしても少し想像つかないな、どんな風な事言ったんですか、先生」
「ほら水無瀬〜!華王もそう言ってるしさ〜!」
「………」
1078
ちょこ
DONEアイドラ小説弓道場にきた時雨と佐々木先生の話生徒たちは既に帰り、静まった弓道場にそっと入る人物が。水無瀬時雨である、彼は実は学生時代は弓道部に所属していた、大会などにも出場したほどの腕前だ。彼はたまに誰もいない弓道場に来ては、こっそりと弓を引く。
今日もまた弓を構え、的を真っ直ぐと見る、静かな時間、集中しているからか時雨の耳には何も入らない、それからか誰かが入ってきたのにも気づいてなかった。キリ、キリと引いて狙いを定めて手を離す。矢は見事的の真ん中を射抜く、すると後ろから小さな拍手が聞こえた。
「さすが水無瀬、真ん中射抜くとは」
「……盗み見は感心しませんね……」
露骨に嫌そうな顔をする時雨を横目に笑う佐々木巡。もう1回と言う彼の言葉にため息を吐くともう一本矢を持った。見せてくれるのかと拒絶されると思っていた彼は少しだけ驚いていた。これで終わりにしますから、と一言いってまた構える。時雨が真剣な顔で的を見るのを黙ってみる彼。時雨はこういう時話しかけられるのが嫌なのだ、例え集中していて聞こえていないのだろうと言われるのも嫌いだ。いつもは自分にお構い無しに話しかける彼が、こういう時は話しかけずに黙って自分を見る。そんな彼が見ている 840
ちょこ
DONEアイドラ小説時雨がトップアイドルを捨てる話いつから歌うのが苦痛になっただろうか?
アイドル衣装に身を包み、酷い顔をしている時雨はふとそう思った。化粧で隠されてはいるが最近眠れなかったり、食事もあまり食べていない。それでも見た目では分かりにくいせいか、周りは何も言ってこない。水無瀬時雨なら大丈夫、だとでも思っているのだろうか。
いつからだろうか、マイクが鉛のように重たいと思ったのが。いつからだろうか、今着ている衣装を着ると身を締め付けられるほど窮屈だと思ったのは。いつからだろうか、ステージに立つと息苦しく感じるようになったのは。いつからだろうか、作曲をしてはそれを破り捨てるようになったのは。
いろんな”いつから”がはこびってくる、いつからだ、いつからこんなふうになった?前の自分はもっと、もっと楽しく歌ってたはずだ。ライバルと思っていたあの人と一緒に競って、歌って、笑って、曲も一緒に作って、もうあの人はこの芸能界に居ない。引退してトップアイドルだった彼と世代交代するように自分がトップアイドルになった。彼が出演していた番組は自分になり、世間は”佐々木巡”から”水無瀬時雨”へと乗り換えっていった。情けないことに、ずっと隣で何もか 3099
ちょこ
DONEアイドラ小説時雨と美男くんの話「そこ、そこの所は少し高めに歌う」
授業中、生徒らに課題曲を出してそれぞれ練習をし、今テストということで別室で時雨の目の前で歌う生徒。今歌った生徒に課題点などを話す時雨、元トップアイドルの指導が貰える、と思って時雨の授業を選ぶ生徒は多かったが、時雨の指導は厳しかった。Hackを出して歌ったとしても何一つ表情を変えずに淡々と言うのだ。
「……なんだ?Hackをだしてそれか。もう少し基本からするんだな、芸能界じゃ潰れるぞ、それは」
ガッカリした様子で部屋から出る生徒の背中をみて少しため息を吐く、あの生徒にはこの指導をするか、と書き込んでいるとノック音が聞こえた。次の生徒かと返事をする。入ってきた生徒は華王美男だった、美男はいつものような自信満々な出で立ちで時雨を見た。
「華王か、早速歌っていい」
「完璧に歌ってみせます、先生」
「ほう……?」
相変わらずの自信だ、と少し微笑み曲を流す。他の生徒もこのくらいの自信を持てばいいのに、と思いつつ真っ直ぐと華王をじっと見る。華王は歌い出す、Hackを持ってないというのに歌えている、さっきの生徒はvocalHackを持っていたのだが、時雨から 1083
ちょこ
DONEアイドラ小説体調の悪くなった時雨を佐々木先生が保健室まで運んだ話頭がぼんやりとする、廊下を歩いていておもわず足取りが重くなる。廊下にある鏡を見た自分の顔を見て少し顰める時雨。顔色は悪く、立ってるだけというのにふらついて慌てて壁に手を置く。頭がぐるぐるとまわり、目もぐらぐらと焦点が合わない。貧血かもしれない、と思った時には遅かった。倒れそうになった時、誰かから腕を掴まれた。
「大丈夫か!?」
慌てた様子で声をかけられたような気がして、返答しようとしたがそのまま意識が遠のく。
「………っ!」
どのくらい時間が経っただろうか、消毒液の匂いとチャイムの音で慌てて起き出す。時雨は自分の状況が分かっていなかった、いつの間にか保健室のベッドで横になっていたからだ。あの時自分は倒れたはず……と考え込んでいるとカーテンが勢いよく開いた。
「水無瀬!大丈夫か!」
自分を心配する声の正体は佐々木巡だった、何故ここに彼がいるのか分からなかったが、彼が持っていたペットボトルのお茶を渡された時話してくれた。
「お前急に倒れたんだぞ?覚えてないか?貧血で倒れたんだろうって。お前顔色悪いけど……ちゃんも飯食ってるのか?」
「……はぁ……、そしてなぜ佐々木先生がここに?」
「 1074
ちょこ
DONEアイドラ小説文化祭の話(if) 佐々木先生と時雨が1日限りの復活祭あぁ、なんて事だ。一日だけアイドルとして復活しろだと?ふざけるな、もうアイドルとしての俺は死んでいるというのに、いまさらステージに立てというのか?あの日あの時重圧に耐えきれなくてステージから、アイドルから逃げたこの俺に立てというのか。しかも佐々木巡と組めと言うのか、トップアイドル同士組んだら盛り上がるから、と簡単に言ってくれたが俺の気持ちはそれどころじゃなかった、自分よりトップアイドルとして輝いていた佐々木巡、自分がいざトップアイドルになった時初めて彼の凄さを知ったのだ、その重すぎる重圧に。アイドルをしていた頃は彼からそんなの微塵も感じなかった、キツイ、やしんどいなんて言葉すらだ。どんな気持ちで、彼はアイドルをしていたのだろうか、未だに分からない。
「………もう”アイドルの水無瀬時雨”は死んでるんです、俺はもう……」
そう言ったものの、もう決まった事だからとそのまま1日限りのトップアイドル同士の復活祭は決まってしまった、憂鬱だ、本番のステージの事を考えて既に吐き気が込み上げてくる。観客の声、ペンライトの光、照明、熱気、全てが自分にとってはトラウマのように気持ち悪く、考えるだけで震えて 2248
36o
DOODLE時雨さん(@shigure_0111)から絵を提供してもらい描かせていただきましたー!久々にこの塗り方して楽しかった🥰
時雨さんありがとー!!
1、2枚目が描かせていただいた36。作、3、4枚目が元絵の時雨さん作
#フォロワーさんの絵を自分の絵柄で描く 4
うっさー
PASTとーえいゼロツーは映画を意識して、まつげパシパシっぽく。
ストリウスさんのあの長い毛は、Gガンのマスターアジアの帯みたいに、硬い武器になるといいなぁ〜☺️
時雨さんの目のふちが赤っぽいのツボです。
メギド3人はドロンボーみたいな三人乗り自転車乗って!そしておストさんの髪がズオスに頻繁に当たって! 9
沙弥(さや)
DONE久しぶりのワンドロ、大好きな長兄描かせていただきました。頑張ったのは……時雨の旗……描く前に本棚ひっくり返したけど載ってる図録が見つからなくて結局検索した…和歌のエピソード好きなので短冊を添えて(シェフの気まぐれ構図)
島津は色滅茶苦茶好きな設定にしてるのに全然カラー描けてないですね。課題にします
#歴創版日本史ワンドロワンライ
okjk114mara
CAN’T MAKE【晴天時雨のこっくりさん】・レオ×祝
・大誠×祝要素有り
・微ホラー表現有りその少年は目前に垂れる濡れた金色の前髪を鬱陶しげに掻き上げた。
夏の日差しが暑く刺すというのに自分が今いる教室の窓を開けて手を出してみれば、一二三と数える間にずぶ濡れになるくらいの大雨を食らった。
「…狐の嫁入りがおいでなさった、って感じかな?」
それは突然の事だった。
放課後で皆が家路へと向かってる最中、暗雲もなくそれは天から降り注ぎ、殆どの生徒は駆け足で校門を潜っていくのを一人、タイミングを逃した富樫レオだけは教室の窓から見送るように見つめていた。
「狐が結婚をするのかい?」
唐突に声が後ろからして振り返る。
見ればそこには雨にやられたらしい…びしょ濡れの風間祝と思われる少年が教室に来ていた。
彼はずぶ濡れになった制服のブレザーを脱ぎ、素直な疑問らしい言葉をレオに話しかけている。
その光景がまるで迷い猫が毛繕いをするような仕草に似ていて、思わずレオは吹き出してからポケットからハンカチを取り出して彼の濡れた頬や頭を撫でた。
「どうしたの、シュウ?キミはコイビトと一緒に帰ったはずじゃなかったかい?」
少し意地の悪い言葉に、シュウと呼ばれた少年は恥ずかしげに前髪を掻き上げ呟い 4098