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    王妃

    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部12話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第12話です。日々研鑽に励む王妃グリムヒルデが女王となる日がついにやって来ました。しかしグリムヒルデは意外なことに……。
    (本文約3100文字/豆知識(サファイアについて)410文字)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部⑫話「喪服と戴冠」 王妃は公務と秘薬の研究にいそしみつつも、決して忘れないことがあった。
     それは自らの「美」を磨く努力だった。
    「私はね、世界一美しくなければいけないの。いつどこで誰に見られても、この美で魂すらつかめるようなカリスマにならなければ。我が君亡き今、たみを従え諸国と渡り合うためには、私自身にカリスマ性が必要。秘薬でからめ取るのは補助に過ぎないのよ。勝負は第一印象で決まるの。だから絶対手を抜いては駄目」
     そして彼女は、毎朝毎晩、あの魔法の鏡に尋ねるのだ。
    「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰?」
     と。すると鏡は必ず応える。
    「王妃様、貴女あなたさまが世界で一番美しい」
     ディアヴァルには、王妃はそうやって鏡に尋ね、答えを得ることで自分を鼓舞しているように見えた。なんて強い女性ひとなのだろう。夫を失い、突然国政を任されて辛い日々なのに、それを他人に見せることもなく一人で運命に立ち向かっている。その姿を見ているだけで、心の底から深い尊敬の念と狂おしいほどの愛おしさが湧き上がってくるのだった。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部11話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第11話です。
    隣国の王を退けてからの王妃は、ディアヴァルを連れて毎日のように地下室へと降りてゆき、秘薬の研究をするようになります。ある日、王妃は子ども時代の思い出を語り始めました。それは哀しい物語だったのです…。
    (本文約3000文字/豆知識(魔女の大釜について)約1160文字)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部⑪話「王妃、生い立ちを語る」 隣国の王が穏便おんびんに帰っていってからのこと。
     ディアヴァルは今では城のあちこちに出入りして、時に姿を見せつけ、時にひっそりと物陰に隠れて聞き耳を立てて人々の噂を集めていた。それをグリムヒルデに伝えることは出来なくても、いつか役に立つこともあるかもしれない。それに何よりも、愛する人がどう評価されているのか気になってしまったのだ。
     人々の噂は、はっきりと変化していた。
     いまや王妃は、一日の多くを地下室で過ごすようになった。寂しがる姫には、おかあしゃまは大事なお仕事があるから、と言い聞かせて乳母に任せ、ディアヴァルを伴って地下へと降りてゆく。そこで秘薬の調合の研究に没頭するのだった。
     そんな日が続くと、城の中には「王妃は魔女だ」という噂が再び囁かれるようになった。ただ、以前とは違って、その囁きはおそれこそ含んではいたが、悪意は含まれていなかった。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第8話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第8話です。
    王妃と再会したディアヴァルは、ずっと側にいて欲しいと言われて幸福に酔いしれるのだった。そこへ誰かがドアを開けて入ってきた…。(本文約1630文字/豆知識は今回はお休みです。支部移植字に話数が減る予定なので今回はそれを見込んでの調整です)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部八話「命名」 ディアヴァルが王妃グリムヒルデに背中を撫でられて恍惚こうこつとなっていたその時、部屋のドアがキィっと開く音がした。
     誰か来た?! まさか追い払われたりはしないだろうか。王妃に魔女の疑いがかかってしまったりしたらどうしよう……。
     そんな心配が頭の中を駆け巡る。
     だが、次の瞬間、部屋に飛び込んできたのはスノーホワイト姫だった。
    「おかあしゃま、あのね……」
     そう言いかけた姫の顔はたいそう寂しげで、ディアヴァルはこんな小さな女の子がこんなにも寂しげな顔をするなんて、と胸を痛めた。が、次の瞬間、姫の顔がぱっと輝いた。
    「あっ!! カラスしゃん!! カラスしゃんだ!!」
    「そうよ、カラスさんが遊びに来てくれたのよ」
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第4話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第4話です。
    今回は王妃グリムヒルデと白雪姫の仲睦まじいティータイムにディアヴァルがお邪魔します。こんなにも仲睦まじい二人がなぜあんなことになってしまうのか、それは今後のお楽しみ…。(本文1940文字)

    ※今回の豆知識はWIRED誌から、鳥の「名付け」について。そう、鳥たちも「名前」を持っているのです……!
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部四話「小さなお茶会」 華やかな結婚式から数日後。王城の庭園で虫を漁っていたディアヴァルは、新王妃グリムヒルデと小さな女の子がやってくるのに気がついた。女の子は、結婚式でドレスの裳裾もすそを持っていたあの子だ。参列者からは姫と言われていた。年の頃は6歳かそこらだろうか。どうも人間の子どもの年齢はわかりにくい。
     グリムヒルデは、幼い姫の手を引いて庭園の東屋あずまやをめざしているようだ。片手にはバスケットを下げている。
    「東屋についたらおやつを頂きましょうね」と、グリムヒルデは小さな姫に声をかけた。
    「はい、おかあしゃま!」と元気よく姫が答える。
     ディアヴァルには、その声や口調は、見た感じの年齢より少しばかり幼く感じられた。だがその幼さは姫をより愛らしく見せているとも思った。
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    HbZld

    PROGRESS若い頃の姐さんは王妃様に実らせる気のない片想いをしていたと思っています。 城の石畳に軽快な蹄鉄の音が響く。蔦に彩られた城壁の間を、常歩で進む馬が二頭。白馬には黄金の髪の貴婦人が娘と共に横乗りし、白馬よりやや大きな馬体の黒馬には燃えるような赤い髪の女が跨っていた。
    「ウルボザは馬に乗るのも上手ね」
    「先生が良かったのさ」
    「ふふ。もうとっくに追い抜かされてしまったわ」
     目的地である桟橋まで辿り着くと、砂漠の女傑は黒馬からひらりと飛び降り、白馬に歩み寄って姫と王妃が下馬するのに順に手を貸した。
    「ウゆボじゃ、また来て。やくそくね!」
    女傑の名の発音は幼い姫にはまだ難しい。舌足らずに呼ばれた砂漠の若き長はくすぐったそうに笑って小さな姫を抱き上げた。
    「ああ。また会おう、御ひい様。約束だ」
    浅黒く精悍な頬が子どものふっくらとした頬に寄せられ、青く染めた唇がちゅっちゅっと音を立てる。頬を寄せ合う砂漠式の挨拶に姫は慣れた様子で応じた。
    「このまま連れて帰っちまいたいねえ」
    姫を桟橋に下ろしながら、女傑はしみじみと呟いた。王妃が片手で口もとを覆ってクスクスと笑う。たったそれだけの仕草がひどく優雅だ。
    「ダメよ。ロームが寂しがるわ」
    女傑は大袈裟にため息をついて見せてか 881