ustn17
PASTツイッターから駅の改札でキンコーンされるクラさん
救い、真横にありますそんな、とか細く漏れた言葉が、拙い異国の響きではなくついこの前まで聞き慣れたものであったはずの古の母国語であることに意識外で己の動揺を知る。
説明はされたはず。ある程度の対処法も共に教わった、はず。それでも咄嗟の判断というものは難しい。慣れていなれば尚のこと。
フラりと傾いだ長身をそのままにそっと流れから離脱するこちらをチラリとも見ずに足早に去っていく人の波から外れ、クラージィは天を仰いだ。
(神よ…)
これはもはや癖である。
今でもクラージィから捧げる信仰に翳りがなくとも過去に範疇を外れ、祈る資格を持たぬ己の声等届くはずもない。クラージィのために門が開くことはない。それで心の内で問い掛けてしまうのはもはや独り言やぼやきと変わらないのかもしれないが、今日もとまらない。
527説明はされたはず。ある程度の対処法も共に教わった、はず。それでも咄嗟の判断というものは難しい。慣れていなれば尚のこと。
フラりと傾いだ長身をそのままにそっと流れから離脱するこちらをチラリとも見ずに足早に去っていく人の波から外れ、クラージィは天を仰いだ。
(神よ…)
これはもはや癖である。
今でもクラージィから捧げる信仰に翳りがなくとも過去に範疇を外れ、祈る資格を持たぬ己の声等届くはずもない。クラージィのために門が開くことはない。それで心の内で問い掛けてしまうのはもはや独り言やぼやきと変わらないのかもしれないが、今日もとまらない。
kidd_mmm
MOURNINGモブ三人衆とノースディンの、畏怖そうで畏怖くないちょっと畏怖い話を書こうと思ったが続きが思いつかなくなったので供養した 出オチの勢いだけでやったらダメだったハハハ畏怖そうで畏怖くないちょっと畏怖い話「畏怖……イワゴウサン? 畏怖ダト思イマシタ。最近」
「イワゴウ……?」
誰だそいつは。ノースディンは眉間にしわを寄せる。吸血鬼の『畏怖欲』について話しているときに、クラージィが挙げた名前である。
コタツに招かれているノースディンの左隣では、目付きの鋭い男が飲んだ日本茶に咳き込んでいる。
「イワゴウさんに?」
一方、正面に座る眼鏡の男は膝の上の猫を撫でつつ同意した。
「あーわかります。ネコ好きのカリスマですよね、あの人」
どうやらイワゴウとやらは高いカリスマを持つ人物らしい。目付きの鋭い男――名前を思い出した。ミキだ――が説明を加えた。
「外国のかたは知らないかもですね-。日本で人気の写真家です」
「写真家」
729「イワゴウ……?」
誰だそいつは。ノースディンは眉間にしわを寄せる。吸血鬼の『畏怖欲』について話しているときに、クラージィが挙げた名前である。
コタツに招かれているノースディンの左隣では、目付きの鋭い男が飲んだ日本茶に咳き込んでいる。
「イワゴウさんに?」
一方、正面に座る眼鏡の男は膝の上の猫を撫でつつ同意した。
「あーわかります。ネコ好きのカリスマですよね、あの人」
どうやらイワゴウとやらは高いカリスマを持つ人物らしい。目付きの鋭い男――名前を思い出した。ミキだ――が説明を加えた。
「外国のかたは知らないかもですね-。日本で人気の写真家です」
「写真家」
kidd_mmm
TRAININGノスクラともクラノスともつかないやつ18(最終セクション)
R-1R-1(エピローグ)
「『ロナルドウォー戦記番外編 時を超えた客人 終わり』、と……」
ロナルドはデータを保存し、大きく伸びをした。それからすぐにバックアップをとる。
「お疲れさまロナルド君。バナナオムレットが冷やしてあるよ。ホイップクリームとカスタードの二色使いだ」
「マジで? 食う!」
「ヌー!」
ドラルクの言葉にロナルドは疲れた顔を輝かせた。ジョンは両の前脚を挙げて喜ぶ。事務所の隅では床板が跳ね上げられ、ヒナイチも出てきた。事務所の応接テーブルを囲んで、三人と一匹のお茶の時間が始まった。
「いつの間にモジャモジャさんからネタ使用許可を貰っていたのかね」
ドラルクが人数分のカップに紅茶を注ぐ。
「斧で切り落とされるんで助けて下さいって言ったらOKくれた」
2147「『ロナルドウォー戦記番外編 時を超えた客人 終わり』、と……」
ロナルドはデータを保存し、大きく伸びをした。それからすぐにバックアップをとる。
「お疲れさまロナルド君。バナナオムレットが冷やしてあるよ。ホイップクリームとカスタードの二色使いだ」
「マジで? 食う!」
「ヌー!」
ドラルクの言葉にロナルドは疲れた顔を輝かせた。ジョンは両の前脚を挙げて喜ぶ。事務所の隅では床板が跳ね上げられ、ヒナイチも出てきた。事務所の応接テーブルを囲んで、三人と一匹のお茶の時間が始まった。
「いつの間にモジャモジャさんからネタ使用許可を貰っていたのかね」
ドラルクが人数分のカップに紅茶を注ぐ。
「斧で切り落とされるんで助けて下さいって言ったらOKくれた」
kidd_mmm
TRAININGノスクラともクラノスともつかないやつ17N-9N-9
「……そうか。では、このままあの街に?」
「そうしたいと思っている」
ノースディンには予想のついていたことだった。クラージィはあの街で暮らしたいと言うに違いないと。
「あの春の夜に、お前やヨセフがいなかったら、私は二百年後の世界を見る事なんてかなわなかった。あの街にドラルクがいなかったら、私は結局野垂れ死にしたかもしれなかった。今さら神のお導きとは言うまいが、この僥倖を私は大切にしたい」
相手は己の心を曲げないあまり、一度は死に至った男だ。そこには裏表も妥協もなく。それこそが彼の美点とノースディンはわかっている。今さら誰が彼を止められるだろう? 手元に置いておきたいとノースディンひとりが願ったところで、どうにかなる話では無いのだ。
2296「……そうか。では、このままあの街に?」
「そうしたいと思っている」
ノースディンには予想のついていたことだった。クラージィはあの街で暮らしたいと言うに違いないと。
「あの春の夜に、お前やヨセフがいなかったら、私は二百年後の世界を見る事なんてかなわなかった。あの街にドラルクがいなかったら、私は結局野垂れ死にしたかもしれなかった。今さら神のお導きとは言うまいが、この僥倖を私は大切にしたい」
相手は己の心を曲げないあまり、一度は死に至った男だ。そこには裏表も妥協もなく。それこそが彼の美点とノースディンはわかっている。今さら誰が彼を止められるだろう? 手元に置いておきたいとノースディンひとりが願ったところで、どうにかなる話では無いのだ。
suz_kisa
DOODLEクラノス(になりつつある?)モブ三人衆仲良し。三木さんはちょっとだけ引っかかりを感じた。
ノ…黒猫は鳴いてみたら、しこたま吸われて若干パニックです。でも、嫌というわけではないぞ。ぺしっ…
(一部…字面がヤバイ…。いや、猫…猫相手だから。クラさん、猫と信じて疑ってないから!) 2922
kidd_mmm
TRAININGノスクラともクラノスとのつかないやつ16アカジャというか再会したやつ見る前の構想そのままで終わりまで書く予定なので嫌だったらゴメンね
C-8C-8
いくつかのドアの前を通り過ぎて、教えられた部屋に入る。壁際にクローゼットと整えられたベッド、それから正面の書き物机をはさんで、本棚、姿見。掃除の行き届いた居心地の良い部屋だ。ベッドの上には新品のパジャマまで用意されている。
クラージィは柔らかいベッドに腰を降ろし、行儀悪く仰向けに倒れた。指で唇に触れる。まだ血と体温の味が口の中に残っている。なかなか牙の入らない肌の弾力も。
意外なことに――いや当然なのか、その味と感触は不快なものではなかった。自分で予想していたほどの抵抗も忌避もなく、かえって困惑するほど円滑にことは済んだ。
(いや、円滑……ではなかったな)
ノースディンは何も言わなかったが、かなり痛かったのではないだろうか。元から青白い顔が真っ白になっていた。その場に残してきてしまったのはまずかったように思う。心配だったが、棺までついていくのはさらにまずかろうとクラージィは思った。ドラルクからは、棺のありかは吸血鬼の社会において大変繊細な話題と聞いている。
2278いくつかのドアの前を通り過ぎて、教えられた部屋に入る。壁際にクローゼットと整えられたベッド、それから正面の書き物机をはさんで、本棚、姿見。掃除の行き届いた居心地の良い部屋だ。ベッドの上には新品のパジャマまで用意されている。
クラージィは柔らかいベッドに腰を降ろし、行儀悪く仰向けに倒れた。指で唇に触れる。まだ血と体温の味が口の中に残っている。なかなか牙の入らない肌の弾力も。
意外なことに――いや当然なのか、その味と感触は不快なものではなかった。自分で予想していたほどの抵抗も忌避もなく、かえって困惑するほど円滑にことは済んだ。
(いや、円滑……ではなかったな)
ノースディンは何も言わなかったが、かなり痛かったのではないだろうか。元から青白い顔が真っ白になっていた。その場に残してきてしまったのはまずかったように思う。心配だったが、棺までついていくのはさらにまずかろうとクラージィは思った。ドラルクからは、棺のありかは吸血鬼の社会において大変繊細な話題と聞いている。
suz_kisa
DOODLEクラノス(に今後至ります)不定期で続けます。(センセの呟きで齟齬が出なければ…)先日のぼん先生の呟きで、クラさんの日常が垣間見えたので…。呟きネタありなので一応ワンクッション。
猫好きなんだねクラさん。
一応、ノスはいます。ノスは、変身得意…だよね? 4441
kidd_mmm
TRAININGノスクラともクラノスともつかないやつ15N-8N-8
入浴と着替えを済ませたクラージィを、ノースディンは暖炉の前で迎えた。すでに夜明けの近い時間だ。窓にはカーテンが引かれている。
「もうニンニク臭はしないな、ひと安心だ」
「……血を吸わないとダメか?」
相変わらずクラージィは視線だけを壁に向けている。理由がわかっているとはいえ、視線を合わせて貰えないまま会話をするのがノースディンには少々辛かった。
「嫌なのか? 血が」
「そういうことでは無いんだが……パック詰めの血液しか飲んだことがないので、血が出るまで噛みつくのが、ちょっと」
「いや、血を出すために噛むんだぞ? 痕も残らん、安心して噛め。手首か、首筋か、どっちがいい?」
「普通は?」
「首だな」
「じゃあ、それで」
1517入浴と着替えを済ませたクラージィを、ノースディンは暖炉の前で迎えた。すでに夜明けの近い時間だ。窓にはカーテンが引かれている。
「もうニンニク臭はしないな、ひと安心だ」
「……血を吸わないとダメか?」
相変わらずクラージィは視線だけを壁に向けている。理由がわかっているとはいえ、視線を合わせて貰えないまま会話をするのがノースディンには少々辛かった。
「嫌なのか? 血が」
「そういうことでは無いんだが……パック詰めの血液しか飲んだことがないので、血が出るまで噛みつくのが、ちょっと」
「いや、血を出すために噛むんだぞ? 痕も残らん、安心して噛め。手首か、首筋か、どっちがいい?」
「普通は?」
「首だな」
「じゃあ、それで」
kidd_mmm
TRAININGノスクラともクラノスともつかないやつ14C-7C-7
風の音がする。
「ん……」
クラージィが身じろぎすると、すぐ耳元で声がした。
「起きたのか?」
「ノースディ……うわ?」
四方に暗い空が広がっている。足元に地面の感触がない。
「あまり動くなよ、バランスを崩すと危ない」
「飛んで、いるのか……?」
向かい風が顔に吹き付ける。クラージィが下を見ると、夜の街が輝いていた。
大きな駅ビルと、バス乗り場の街灯。その周囲では無数の小さなビルが看板を煌々とさせてひしめいている。合間を縫うのは車のライトが続く道路だ。特徴的な円い陸橋が見える。少し離れて、集合住宅の通路の灯り、家々の窓。遠くの暗いのは川の方角か。
「灯りが、あんなにたくさん」
眩しい。クラージィは目を細めた。ノースディンは言った。
720風の音がする。
「ん……」
クラージィが身じろぎすると、すぐ耳元で声がした。
「起きたのか?」
「ノースディ……うわ?」
四方に暗い空が広がっている。足元に地面の感触がない。
「あまり動くなよ、バランスを崩すと危ない」
「飛んで、いるのか……?」
向かい風が顔に吹き付ける。クラージィが下を見ると、夜の街が輝いていた。
大きな駅ビルと、バス乗り場の街灯。その周囲では無数の小さなビルが看板を煌々とさせてひしめいている。合間を縫うのは車のライトが続く道路だ。特徴的な円い陸橋が見える。少し離れて、集合住宅の通路の灯り、家々の窓。遠くの暗いのは川の方角か。
「灯りが、あんなにたくさん」
眩しい。クラージィは目を細めた。ノースディンは言った。
kidd_mmm
TRAININGノスクラともクラノスともつかないやつ13アカジャとかでいろいろ情報出ているけど、当初考えていた内容から変更なしで終わりまで書くつもりですのでご了承下さい…
N-7N-7
「やあ赤毛の姫君、お邪魔しているよ」
「ちん!?」
見覚えのある赤毛の娘が床下から出てきたので、ノースディンは挨拶をする。応接セットの向かいに座る弟子が、警戒する赤毛の娘に声を掛ける。
「ヒナイチくん、今日のヒゲはお客さんだから、何もしないよ。しないでくださいよ? クッキーがあるけど、食べるかね」
赤毛の娘はノースディンに隙を見せないように不自然な歩き方で室内を大きく迂回し、ドラルクの隣に座った。ノースディンは苦笑した。人間に嫌われるのはどうでも良いが、会話の席では少々やりづらい。
「貴女の美しい顔に憂いがさすようなことはしないとも」
「カーッ! ナチュラルにやっとるじゃないか! なんだそのキメ顔!」
2823「やあ赤毛の姫君、お邪魔しているよ」
「ちん!?」
見覚えのある赤毛の娘が床下から出てきたので、ノースディンは挨拶をする。応接セットの向かいに座る弟子が、警戒する赤毛の娘に声を掛ける。
「ヒナイチくん、今日のヒゲはお客さんだから、何もしないよ。しないでくださいよ? クッキーがあるけど、食べるかね」
赤毛の娘はノースディンに隙を見せないように不自然な歩き方で室内を大きく迂回し、ドラルクの隣に座った。ノースディンは苦笑した。人間に嫌われるのはどうでも良いが、会話の席では少々やりづらい。
「貴女の美しい顔に憂いがさすようなことはしないとも」
「カーッ! ナチュラルにやっとるじゃないか! なんだそのキメ顔!」
kidd_mmm
TRAININGノスクラともクラノスともつかないやつ12C-6 C-6
年末にドラルクキャッスルマークⅡを訪れた吸血鬼たちの中には、自分の店で働かないかとクラージィに声を掛けてくれる者もいた。とりあえず二週間という話で、クラージィはその店のホール係を勤めている。
「これはアレだろうクラージィ、関西地方のレトリックでテンドンというヤツ」
クラージィがノースディンにバイトがあるので一緒には行けないと言うと、ノースディンとドラルクはすぐさま説明を求めた。
「いつの間にそんなことに。どこの店です?」
「ラーメンヘッド氏の……」
「ダメだーッ!」
言い終わる前に、ドラルクにすごい形相で叫ばれてしまった。
「におい意外は、とても良い店なんだが」
「猛毒ですよ!」
ラーメンヘッドのニンニクラーメンの店は同業者の集まる商業施設の中にある。未明まで開いているような店ではない。万一朝まで居ることになっても、この施設には日光の入る窓がない。昼間でも安全を確保できる……というのがクラージィの主張である。
3797年末にドラルクキャッスルマークⅡを訪れた吸血鬼たちの中には、自分の店で働かないかとクラージィに声を掛けてくれる者もいた。とりあえず二週間という話で、クラージィはその店のホール係を勤めている。
「これはアレだろうクラージィ、関西地方のレトリックでテンドンというヤツ」
クラージィがノースディンにバイトがあるので一緒には行けないと言うと、ノースディンとドラルクはすぐさま説明を求めた。
「いつの間にそんなことに。どこの店です?」
「ラーメンヘッド氏の……」
「ダメだーッ!」
言い終わる前に、ドラルクにすごい形相で叫ばれてしまった。
「におい意外は、とても良い店なんだが」
「猛毒ですよ!」
ラーメンヘッドのニンニクラーメンの店は同業者の集まる商業施設の中にある。未明まで開いているような店ではない。万一朝まで居ることになっても、この施設には日光の入る窓がない。昼間でも安全を確保できる……というのがクラージィの主張である。
suz_kisa
DOODLEクラノス+三キ316死あたりの餃子ネタを見ての妄想です。前に書いてるのとちょっと繋がってます。本誌と呟きネタなので一応ワンクッション。
————————-
追加 先日のあかじゃでタコパ敗北卿になる以前に書いた物です。 2745
kidd_mmm
TRAININGノスクラともクラノスともつかないやつ11紙袋。
N-6N-6
ギルドを出たノースディンたちはいま、退治人ロナルドの事務所で、応接セットの狭いソファに詰まっている。事務所のあるじは黄色い男を追いかけたきり戻っていない。
ノースディンの向かいでは弟子が腕を組んで仏頂面をしている。その膝の上には彼の使い魔が、これまた不機嫌そうに座っている。左隣には親友。息子に出された紅茶には手をつけず、背中を縮めている。クラージィは対角線上の最も距離が開いた位置に座り、静かに顔を伏せていた。この場の誰とも目を合わせようとしない。
「えーと、つまり師匠はモジャモジャさんの『親』で、二百年ぶりに迎えに来た、と」
弟子の口調が刺々しい。
「日光の危険もわからない成りたてヒヨコちゃんを放っておいたの、無責任にもほどがあるでしょこのヒゲ」
2838ギルドを出たノースディンたちはいま、退治人ロナルドの事務所で、応接セットの狭いソファに詰まっている。事務所のあるじは黄色い男を追いかけたきり戻っていない。
ノースディンの向かいでは弟子が腕を組んで仏頂面をしている。その膝の上には彼の使い魔が、これまた不機嫌そうに座っている。左隣には親友。息子に出された紅茶には手をつけず、背中を縮めている。クラージィは対角線上の最も距離が開いた位置に座り、静かに顔を伏せていた。この場の誰とも目を合わせようとしない。
「えーと、つまり師匠はモジャモジャさんの『親』で、二百年ぶりに迎えに来た、と」
弟子の口調が刺々しい。
「日光の危険もわからない成りたてヒヨコちゃんを放っておいたの、無責任にもほどがあるでしょこのヒゲ」
kidd_mmm
TRAININGノスクラともクラノスともつかないやつ10出禁ヒゲ。
C-5 C-5
「波ァ!」
ヨセフの杖が光る。ギルドの中は大混乱になった。
「春先の薄着から透ける油断した毛……ッ!」
「雨粒がとどまりそうな鎖骨!」
「腰骨のラインを後ろから見たときの丸みを帯びた感じが」
退治人たちが慌てふためき、滅茶苦茶なことを口走る。
「ヨセフ!?」
「ははは! Y談の栄えあれ!」
ヨセフは思いもよらぬ駿足で去り、退治人たちはヨセフを追って出て行った。あとにはギルドマスターとドラルクとジョン、そしてクラージィが残された。
「今の、何ですか? ヒプノザ?」
ギルドマスターは日本語で答えたが、クラージィには理解できなかった。代わりにドラルクが答える。
「隠している性癖をさらけ出す催眠です。モジャモジャさん、耐性があるんですかね」
1784「波ァ!」
ヨセフの杖が光る。ギルドの中は大混乱になった。
「春先の薄着から透ける油断した毛……ッ!」
「雨粒がとどまりそうな鎖骨!」
「腰骨のラインを後ろから見たときの丸みを帯びた感じが」
退治人たちが慌てふためき、滅茶苦茶なことを口走る。
「ヨセフ!?」
「ははは! Y談の栄えあれ!」
ヨセフは思いもよらぬ駿足で去り、退治人たちはヨセフを追って出て行った。あとにはギルドマスターとドラルクとジョン、そしてクラージィが残された。
「今の、何ですか? ヒプノザ?」
ギルドマスターは日本語で答えたが、クラージィには理解できなかった。代わりにドラルクが答える。
「隠している性癖をさらけ出す催眠です。モジャモジャさん、耐性があるんですかね」
kidd_mmm
TRAININGノスクラともクラノスともつかないやつ8うーん。
C-4 C-4
ケンを起点に、『親』の居ない新米吸血鬼の話は街の吸血鬼たちの知るところとなった。吸血鬼は目新しいものが大好きだ。年末年始の休業期間中、ロナルドの事務所は夜ごと吸血鬼たちの訪問を受けた。
クラージィは吸血鬼たちに取り囲まれ、質問攻めにあった。
「誰に噛まれたかわかんないの? まじで?」
「いつシンヨコに? 街には慣れた?」
「身体細いなー、血ちゃんと飲んでる?」
「能力とかは?」
「バイト探してるんだったらウチに来いよ!」
日本語勉強中のクラージィにとってはかなりハードな時間だ。
「シンヨコに来たの、一ヶ月? くらい? 能力はワカラナイ……無い、たぶん」
新顔の同胞と思う存分雑談に興じた吸血鬼たちは、帰り際
2089ケンを起点に、『親』の居ない新米吸血鬼の話は街の吸血鬼たちの知るところとなった。吸血鬼は目新しいものが大好きだ。年末年始の休業期間中、ロナルドの事務所は夜ごと吸血鬼たちの訪問を受けた。
クラージィは吸血鬼たちに取り囲まれ、質問攻めにあった。
「誰に噛まれたかわかんないの? まじで?」
「いつシンヨコに? 街には慣れた?」
「身体細いなー、血ちゃんと飲んでる?」
「能力とかは?」
「バイト探してるんだったらウチに来いよ!」
日本語勉強中のクラージィにとってはかなりハードな時間だ。
「シンヨコに来たの、一ヶ月? くらい? 能力はワカラナイ……無い、たぶん」
新顔の同胞と思う存分雑談に興じた吸血鬼たちは、帰り際
suz_kisa
SPOILERクラノス+ロナドラ先週の本誌314死ネタなのでワンクッション
ノスが自販機にいた前後の話
ロナ君は謝って一度逃げたけど、自販機の前で途方にくれているノスをそのままに出来なくて戻ったと勝手に妄想しました。
————————-
追加 先日のあかじゃでタコパ敗北卿になる以前に書いた物です。 6468
kidd_mmm
TRAININGノスクラともクラノスともつかないやつ6第一村人。
C-3 C-3
「おーい、そこのあんた! ヘイ、ユー!」
通りの向こうからクラージィを呼び止める者がある。見覚えのある姿だ。頭と口を布で覆い、奇抜な模様の服を着た吸血鬼。シンヨコに来て最初に言葉を交わした相手だ。
「やっぱりそうだ、この間の! あれからどう……良いようになったみてえだな」
困っているならあの建物に向かえ。そう言ってドラルクキャッスルマークⅡを示してくれたのはこの男である。クラージィは男に心から礼を述べた。
「ありがとう、とても」
「お、日本語!」
並んで歩きながら互いに名を名乗る。男の名前は長く、クラージィには何度繰り返しても上手く言うことが出来なかった。
「仕方ねえ、ケンでいいよ。ケン」
「ケン、さん」
2402「おーい、そこのあんた! ヘイ、ユー!」
通りの向こうからクラージィを呼び止める者がある。見覚えのある姿だ。頭と口を布で覆い、奇抜な模様の服を着た吸血鬼。シンヨコに来て最初に言葉を交わした相手だ。
「やっぱりそうだ、この間の! あれからどう……良いようになったみてえだな」
困っているならあの建物に向かえ。そう言ってドラルクキャッスルマークⅡを示してくれたのはこの男である。クラージィは男に心から礼を述べた。
「ありがとう、とても」
「お、日本語!」
並んで歩きながら互いに名を名乗る。男の名前は長く、クラージィには何度繰り返しても上手く言うことが出来なかった。
「仕方ねえ、ケンでいいよ。ケン」
「ケン、さん」
kidd_mmm
TRAININGノスクラともクラノスともつかないやつ4左右とか決めていない
ヒゲ出てこない
C-2 C-2
「ロナルドさん、こんばんわ。きょうはさむいですね?」
「クラージィさん! 覚えるの早いですね、日本語!」
ロナルドの驚いた顔を見て、クラージィは静かに笑う。ドラルクは楽しげにロナルドへ話して聞かせた。
「モジャモジャさん、前職は悪魔祓いなんだって。上達が早い訳だよ」
「悪魔祓い? 退治人の始まりみたいな、あれ?」
ロナルドは興味深げにクラージィを見た。
「悪魔祓い、いろんな国行く……行きます。相手、ヴァンパイアだけじゃない。アー、ポゼシェ・デモニカ……日本語で……?」
クラージィは複数の言語を混ぜながらどうにか会話をつないでいく。
「悪魔憑き」
ドラルクが助け船を出した。
「悪魔憑きとは、話をします。コトバだいじ」
1612「ロナルドさん、こんばんわ。きょうはさむいですね?」
「クラージィさん! 覚えるの早いですね、日本語!」
ロナルドの驚いた顔を見て、クラージィは静かに笑う。ドラルクは楽しげにロナルドへ話して聞かせた。
「モジャモジャさん、前職は悪魔祓いなんだって。上達が早い訳だよ」
「悪魔祓い? 退治人の始まりみたいな、あれ?」
ロナルドは興味深げにクラージィを見た。
「悪魔祓い、いろんな国行く……行きます。相手、ヴァンパイアだけじゃない。アー、ポゼシェ・デモニカ……日本語で……?」
クラージィは複数の言語を混ぜながらどうにか会話をつないでいく。
「悪魔憑き」
ドラルクが助け船を出した。
「悪魔憑きとは、話をします。コトバだいじ」
kidd_mmm
TRAININGノスクラともクラノスともつかないやつ2左右とか決めていない
ヒゲ出ていない
C-1 C-1
ここは世界の東の果て。正確には日本という国のシンヨコハマという街で、今は新暦二〇二二年のクリスマス前。野犬に喰い破られたはずの腹は塞がっていて、クラージィ自身は吸血鬼となっていた。いったい何が起きたらそうなるのか。
わかっているのは『誰かが噛んだ』ということだけ。差し出された鏡の中には背後の壁しか映っていなかった。コツを教わってようやく映ったクラージィの顔は、赤い瞳と鋭い牙を備えていた。
「な、なるほど、それでいまも私は生きている、と……」
「で、『親』……貴方を噛んだ吸血鬼は?」
「わからない」
未明の街をさまよい、薦められるままに訪れた場所でクラージィが出会ったのは、あの日出会った『悪魔の子供』が立派に成長した姿だった。彼はあの日と同じ笑顔とクッキーでクラージィをもてなし、ドラルクと名乗った。あの日と違うのは、ドラルクの隣に丸い奇妙な動物がいることだ。名前はジョン。
2079ここは世界の東の果て。正確には日本という国のシンヨコハマという街で、今は新暦二〇二二年のクリスマス前。野犬に喰い破られたはずの腹は塞がっていて、クラージィ自身は吸血鬼となっていた。いったい何が起きたらそうなるのか。
わかっているのは『誰かが噛んだ』ということだけ。差し出された鏡の中には背後の壁しか映っていなかった。コツを教わってようやく映ったクラージィの顔は、赤い瞳と鋭い牙を備えていた。
「な、なるほど、それでいまも私は生きている、と……」
「で、『親』……貴方を噛んだ吸血鬼は?」
「わからない」
未明の街をさまよい、薦められるままに訪れた場所でクラージィが出会ったのは、あの日出会った『悪魔の子供』が立派に成長した姿だった。彼はあの日と同じ笑顔とクッキーでクラージィをもてなし、ドラルクと名乗った。あの日と違うのは、ドラルクの隣に丸い奇妙な動物がいることだ。名前はジョン。
suz_kisa
DOODLEクラノス+ロナドラ(両方くっついてません)31日の垢じゃのもじゃの発言で妄想爆発しまして…
また勢い任せなので、口調不安定です。
後半戦は両方酔ってるという事で。
一昨日の垢じゃなので一応ワンクッション
————————-
追加 先日のあかじゃでタコパ敗北卿になる以前に書いた物です。 3196
suz_kisa
DOODLE昏き夢の垢ジャ最後からの捏造話③完(出来てないロナドラ)+クラとノス
勢い任せなので捏造設定多数。
クラさんの口調が不安定。
ノス戻ってきました。
拳兄は面倒見がいいと思ってます。
————————-
追加 先日のあかじゃでタコパ敗北卿になる以前に書いた物です。 3877
dps94kakuriyo
TRAININGクラ「あの男が酒を飲んで帰ってきた時は多少身構えてしまう」かくあれかし 外は雪が降っている。
村外れは森林に面していて特に雪深く、明け方にはまた積もっているだろう。だが今日の雪掻きはきっと無駄ではない。放っておけば教会への道は閉ざされてしまうのだから。
ありふれた日々の繰り返しが如何に幸福であるか、過去の私は振り返ることも、また気付くこともなかった。
バタン。
「ん?」
遠くで窓の開く音がした。組んでいた指を解き、居間を出て屋敷の主の部屋に向かう。果たして、そこには雪を纏わせたノースディンが立っていた。
「ノースディン」
「……ああ」
吹雪の悪魔——いや、氷笑卿。纏わりついていた雪は全て氷結し、パラパラと床に落ちては砕けていく。その直中で、彼はその名の通り薄らと笑っていた。
878村外れは森林に面していて特に雪深く、明け方にはまた積もっているだろう。だが今日の雪掻きはきっと無駄ではない。放っておけば教会への道は閉ざされてしまうのだから。
ありふれた日々の繰り返しが如何に幸福であるか、過去の私は振り返ることも、また気付くこともなかった。
バタン。
「ん?」
遠くで窓の開く音がした。組んでいた指を解き、居間を出て屋敷の主の部屋に向かう。果たして、そこには雪を纏わせたノースディンが立っていた。
「ノースディン」
「……ああ」
吹雪の悪魔——いや、氷笑卿。纏わりついていた雪は全て氷結し、パラパラと床に落ちては砕けていく。その直中で、彼はその名の通り薄らと笑っていた。
dps94kakuriyo
TRAININGクラージィとノースディンの三十年に渡る思い出。そのプロローグ。
さらば、愛しき日々1 村で唯一の教会に、身なりの良い一人の老人が訪れた。その男は村外れの大きな屋敷に住む貴族で、慈悲深いことから村人に「お貴族様」と大変慕われていた。だが、近頃は病を患い、姿を見せることも少なくなっていた。
教会の慎ましい居室には、同じく一人の老人がベッドに横たわっていた。目は落ち窪み、豊かな毛髪は全て雪のように白くなり、この土地に神の教えを説きにきた頃の面影は随分と失われていた。
「ご機嫌よう、ノースディン」
老いた神父が手を僅かに上げて答えると、ノースディンと呼ばれた老貴族はその姿を変えた。曲がった腰はまっすぐに伸び、肌に深く刻まれた皺は見る間に張りを取り戻す。髪も髭も身体も、生命力を発露して輝くばかりだ。
1386教会の慎ましい居室には、同じく一人の老人がベッドに横たわっていた。目は落ち窪み、豊かな毛髪は全て雪のように白くなり、この土地に神の教えを説きにきた頃の面影は随分と失われていた。
「ご機嫌よう、ノースディン」
老いた神父が手を僅かに上げて答えると、ノースディンと呼ばれた老貴族はその姿を変えた。曲がった腰はまっすぐに伸び、肌に深く刻まれた皺は見る間に張りを取り戻す。髪も髭も身体も、生命力を発露して輝くばかりだ。