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    よーでる

    推敲に超時間かかるタチなので即興文でストレス解消してます。
    友人とやってる一次創作もここで載せることにしました。

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    よーでる

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    まずこの2人+@でちょっと冒険させてみることにしました。

    ##龍のうたった祭り歌
    #龍のうたった祭り歌
    festivalSongsSungByDragons

    シリィ・カーニバル第2話02「着いたー!」

     元気よく宣言したランに、カイは真顔になった。
     小高い丘を登り切った先に、透明な水の滴る石畳が広がっていた。ちゃんぷちゃぷと靴を濡らす浅瀬の先に、内から水の滲み出る塔が生えている。
     見上げれば雲に隠れて頂きは見えない。高く積み上げたというよりは石畳から自然と生えたかのような……あるいは空から降ってきたような、そんな建造物だった。
     当然のように水の上を歩くランが、水飛沫を上げながら跳ね回る。飛び散る水がその袖も肌も髪も濡らさないのはともかくとして、レクトは疑問を浮かべた。

    「ラン、ここに人がいるの?」

    「いっぱいいる!」

    「いない」

     溌剌としたランの言葉を、カイが否定する。
     歳月を経ても朽ちる気配を見せない光景に、独りごちるような解説が湧いてくる。

    「ここは、龍王国の遺跡だ。おそらく愛雨王の時代に作られた砦だな。周囲に街の痕跡はない……用途は龍穴の捜索か? いや、危険地帯に接する防衛線だった可能性も……」

    「あの、カイ? もしもし?」

     レクトに袖を引っ張られて、カイは我に返り真顔で頷いた。

    「ああ、よくやった。ラン」

     カイの感謝に、ランが「ほめられたー!」と万歳をする。
     嫌な予感にレクトは小声になった。

    「えーーっと、カイ、街に行くのは……」

    「後回しだ。野営の準備をしろ」

    「うわぁあんやっぱりィィィィ!!」

     街での食事が遠のいて落胆するレクトを放って、カイは砦に近づいた。
     裏手なのか、偽装されてるのか、窓どころか入口も見当たらない。愛雨王は千里眼と空間跳躍を得意とした王だ。内部に入るには出入り口を繋ぐ術式を解読しないといけないかもしれない。
     滝のように水を流す砦に触れた途端、石壁の水面に映るカイの虚像がぐにゃりと歪んだ。

    「カイっ!」

    「来るな!!」

     展開した障壁が飛びかかってきた虚像を阻んだが、足元の石畳もまた溶けて黒い沼地に変わっていった。
     ヘドロのような腐臭が空気を蝕み、沼地から呻き声を上げる泥の塊がいくつも迫り上がる。いつの間にか宙に浮いていたランが隣に浮かぶのを、カイは半眼で問い詰めた。

    「ラン。ここに、死んだ人間はどれだけいる?」

    「いっぱいいる!」

    「ぎゃああああカイ助けてぇええっ」

     死者と生者の区別も付かないのかと怒鳴りたかったが、そんな余裕はなかった。レクトの足元が渦のようになり、暗闇に引きずり込まれる。
     カイとしてはかなり放っておきたかったが……

    「遺跡調査の前に、まず安全確保が必要、か」

     舌打ちして、カイはレクトを追って嫌々暗闇へと飛び込んだ。
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    Replies from the creator

    よーでる

    PROGRESS完!! うおおお、十数年間ずっと頭の中にあったのでスッキリしたぁ。
    こういうカイムとマナが見たかったなー!!という妄執でした。あとどうしてカイムの最期解釈。
    またちょっと推敲してぷらいべったーにでもまとめます。
    罪の終わり、贖いの果て(7) 自分を呼ぶ声に揺すられ、マナはいっとき、目を覚ました。ほんのいっとき。
     すぐにまた目を閉ざして、うずくまる。だが呼ぶ声は絶えてくれない。求める声が離れてくれない。

    (やめて。起こさないで。眠らせていて。誰なの? あなたは)

     呼び声は聞き覚えがある気がしたが、マナは思い出すのをやめた。思い出したくない。考えたくない。これ以上、何もかも。だって、カイムは死んだのだから。
     結局思考はそこに行き着き、マナは顔を覆った。心のなかで、幼子のように身を丸める。耳を覆う。思考を塞ぐ。考えたくない。思い出したくない。思い出したく、なかった。

     わからない。カイムがどうしてわたしを許してくれたのか。考えたくない。どうしてカイムがわたしに優しくしてくれたのか。知りたくない。わたしのしたことが、どれだけ彼を傷つけ、蝕んだのか。取り返しがつかない。償いようがない。だって、カイムは、死んでしまったのだから。
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    よーでる

    DOODLEどんどん敬語が剥げてますが語りじゃなく講義だからということで……
    あと大まかな国の特徴語ったらひとまず単発ネタ書き散らす作業に入れるかなぁ。
    ぶっちゃけお話の途中で世界観説明しようとすると毎回語りすぎたりアドリブで知らん設定出たりするのでその事前発散が狙い……
    巫術と法術について 今の世界の魔法は大きく分けて2種類あります。1つは精霊に語りかけて世界を変えてもらう魔法。王族が使っていたのがコレだね。
     精霊……王祖の末裔じゃなくても、精霊の声を聞きその力を借りれる人は増えています。それが龍王国衰退の遠因になったわけだけど、今はいいか。
     この方法は【巫術】と呼ばれています。長所は知識がなくても複雑な事象が起こせること。細かい演算は精霊任せにできるからね。代表的なのが治癒。肉体の状態や傷病の症状を把握するに越したことはないけど、してなくても力尽くで「健康な状態に戻す」ことができます。
     欠点は精霊を感知する素養がないと使えないこと。だから使い手は少ない。それと精霊の許しが出ない事象は起こせない。代表的なのが殺傷。自衛や狩りは認められてるけど、一方的で大規模な殺戮は巫術でやろうとしてもキャンセルされるし、最悪精霊と交感する資格を剥奪されます。
    1226

    よーでる

    DOODLE公主は本来プリンセスという意味ですが、祭り歌では公国の代表という意味の言葉になってます。アデラさんは武闘家系ギャルです。
    ほんとは東西南北それぞれの話するやるつもりだったけど西と南はちょっとド鬱なのでまたの機会にします。子どもに無配慮に聞かせたら怒られるやつ……
    一通りの世界観の説明が終わったので、明日からはこの世界観で単発話を量産する予定です。
    公国の興り(2)凍てず熔けぬ鋼の銀嶺 道行く花に光を灯しながら、アデラティア公子一行は海に臨む丘にたどり着きました。丘に咲く白い菫を見渡して、公子は軽やかに宣言します。

    「ここにわたしたちの都を作りましょう」

     こうして光る菫の咲き誇る白き都コノラノスは作られました。号は公国。龍王国最後の公子が興した国です。
     公子は精霊の声を聴く神官を集め、神殿を築きました。血ではなく徳と信仰で精霊に耳を澄ませ、精霊の祈りを叶え、世に平穏をもたらし人心を守る組織です。
     国の運営は神殿の信任を受けた議会が行います。アデラは神殿の代表たる公主を名乗り、花龍ペスタリスノの光る花【霊菫(たますみれ)】を国に広めました。

     霊菫は花龍の息吹。花の光が照らす場所に魔物は近寄らず、死者の魂は慰められ、地に還ります。公国が花の国と呼ばれる由縁です。
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    よーでる

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    巫術と法術について 今の世界の魔法は大きく分けて2種類あります。1つは精霊に語りかけて世界を変えてもらう魔法。王族が使っていたのがコレだね。
     精霊……王祖の末裔じゃなくても、精霊の声を聞きその力を借りれる人は増えています。それが龍王国衰退の遠因になったわけだけど、今はいいか。
     この方法は【巫術】と呼ばれています。長所は知識がなくても複雑な事象が起こせること。細かい演算は精霊任せにできるからね。代表的なのが治癒。肉体の状態や傷病の症状を把握するに越したことはないけど、してなくても力尽くで「健康な状態に戻す」ことができます。
     欠点は精霊を感知する素養がないと使えないこと。だから使い手は少ない。それと精霊の許しが出ない事象は起こせない。代表的なのが殺傷。自衛や狩りは認められてるけど、一方的で大規模な殺戮は巫術でやろうとしてもキャンセルされるし、最悪精霊と交感する資格を剥奪されます。
    1226

    よーでる

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    ほんとは東西南北それぞれの話するやるつもりだったけど西と南はちょっとド鬱なのでまたの機会にします。子どもに無配慮に聞かせたら怒られるやつ……
    一通りの世界観の説明が終わったので、明日からはこの世界観で単発話を量産する予定です。
    公国の興り(2)凍てず熔けぬ鋼の銀嶺 道行く花に光を灯しながら、アデラティア公子一行は海に臨む丘にたどり着きました。丘に咲く白い菫を見渡して、公子は軽やかに宣言します。

    「ここにわたしたちの都を作りましょう」

     こうして光る菫の咲き誇る白き都コノラノスは作られました。号は公国。龍王国最後の公子が興した国です。
     公子は精霊の声を聴く神官を集め、神殿を築きました。血ではなく徳と信仰で精霊に耳を澄ませ、精霊の祈りを叶え、世に平穏をもたらし人心を守る組織です。
     国の運営は神殿の信任を受けた議会が行います。アデラは神殿の代表たる公主を名乗り、花龍ペスタリスノの光る花【霊菫(たますみれ)】を国に広めました。

     霊菫は花龍の息吹。花の光が照らす場所に魔物は近寄らず、死者の魂は慰められ、地に還ります。公国が花の国と呼ばれる由縁です。
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