【3島ほのぼの】漁師の日常「毎日毎日寒いのう……」
この小屋での暮らしが始まってから一月ほど経ったある夜。薄っぺらい布団を広げその上にごろんと身を転がした真島さんは、横向きになって手足を折り曲げ、小さく体を丸めていた。
「兄弟はろくに動かんから余計寒いんやろ」
真島さんの布団に隙間なく自分の布団を敷き終えると、お前も明日の朝から乾布摩擦、どや? と緩く首を傾げる冴島さんの提案に言われた方はあからさまに顔を顰め。べっと舌を出してからすぐにそれを引っ込めると、拗ねた子供のように口を尖らせた。
「はあー! 寒い寒い」
「文句ばっか言わんと、寒いんならちゃんと布団被りや」
ほれ。首まで被らんかい。そう言って真島さんの足元に纏まった布団を掴んで広げると、冴島さんは見た目の無骨さとは裏腹の優しい手付きでそっと彼の首元まで布団を掛けてやり。その上、山になった部分でぽんぽんと優しく手を弾ませる姿に俺は思わず母親みたいだな……と心の中で呟いた。
3875