猫従者【猫になったフィン】
金色の毛を蓄えた耳が跳ねている。腰からも毛足の長い尻尾があり、何の幻覚だと混乱した。
「…にゃあ」
眉を顰め低い声で鳴く従者にこれはどうも現実である事を理解した。
「フィン?」
「なぁー」
言葉も喋れないらしい。
「呪いかな」
可愛い耳が生えた頭を撫でれば、喉を鳴らし擦り寄ってきた。
正に猫だ。
【お昼寝】
木漏れ日の下で猫耳尻尾の従者に膝を貸してやりながら、ふさふさの毛を蓄えた長い耳を撫でる。
耳と尻尾だけが猫なのかと思っていたが性質も猫に寄っているらしい。長い四肢を丸めて鼻をぷすぷす鳴らし寝息を立てているのだから。
堪らず耳の付け根を掻いてやれば彼は嬉しそうに喉を鳴らした。
「猫だ…」
【マーキング】
不意に抱き締められた、と思ったら頭に顎を擦り付けられた。
喉を鳴らし、尻尾は器用にも腰に巻きつけられている。
「よしよし」
一生懸命俺にマーキングをしている彼の金糸を撫でれば益々顎を押し当ててくる。
「なぅ…」
暫くそうした後漸く我に返ったのだろう、俺を離したその顔は真っ赤に染まっていた。
【フィン視点】
何の呪いか魔法か、俺に猫の耳と尾が生え猫の鳴き声しか放てなくなっしまった。
王を呼びたくとも出てくる言葉は「にゃお」。それでも王は気付いてくれる。
「どうしたフィン〜?」
…耳の裏を掻かないでもらえるか。
「…んるる〜」
彼の手に抗えない。触れる手に擦り寄り喉を鳴らす。
その時俺は猫だった。
【猫従者とキス】
唇を触れ合わせるキスから角度をつけ唇を開き舌を絡める深いものへ。
「痛っ」
王が身動いだ。重ねていた唇を離し舌の先を指で触れる。
「にゃう」
耳を伏せる従者の頭を撫でて宥める。
「フィン、舌も猫なんだな。吃驚した」
離した腕を再び彼の太い首に回す。
「ね、もう一回」
その痛みさえ彼なら愛おしい。
【尻尾で語る】
隣に立つ彼のふさふさの長毛を蓄えた尻尾が腰に回されている…何か意味があっての事なのだろうか。
「フィン?」
「なぅ?」
呼び掛けても尻尾を外さない辺りどうやら無意識の行動のようだ。
『一体何だろう』
呼んだものだから取敢えず顎を掻いてやる。
喉を鳴らす彼を見て、もっと猫の事を知ろうと思った。
【おねこ従者と発情期】※R15?
「ぅなぁぉ〜ん」
物凄い鳴き声だった。聴いたことのない彼の唸る鳴き声。それが聴こえて直ぐに後ろから急に躰を抱き締められ、髪を掻き分けられたと思えば次いで項に牙を突き立てられる。ぷつりと皮膚が裂ける痛みが襲ってきた。
「いったたた!!こら、フィン!!!」
突然なんだというのだ。鋭い痛みに暴れつつ右手を後ろに回し彼の猫耳を探し当てると摘んで引っ張る。引き剥がそうと結構な力を入れているというのに、逆に腹部に回された彼の腕に力が籠もっていく。
「あるるるる〜」
彼の官能的な声色で猫の鳴き声を放つ。喉を唸らせながら再度俺の首を銜え直し、そのまま地面に組み伏せようと体重をかけてくる。体躯は彼の方が良い為、ろくに抵抗もできず躰を伏せられた。
「んるるゥ…」
大きな掌が腰に回る。左の太腿に長い尻尾が絡み、そこでやっと彼は噛み付いていた項を解放し、血が流れている牙の跡を舌で舐め取った。しかし暴挙を止めるつもりは無いらしい。強い力で躰を回転させられ、仰向けにされると高く腰を上げられ、両脚を開かれる。
「ちょっ、」
流石に羞恥に顔が赤くなる。最期の抵抗と彼の顔を睨み付けようと思い立つが、見上げて少し後悔をした。翡翠の瞳は瞳孔が鋭く尖り、舐めずる舌から長い牙が覗いている。形の良い唇の端から涎を垂らす様は飢えた獣さながらだった。つまりこの場合、獲物は俺ということになる。
「にゃお…なぁおん」
甘える上擦った声色で鳴く。寧ろ甘ったるい鳴き声はどこか猫の発情期の声に似た…発情期?
「ッ!!」
彼が腰を寄せてくる。短い衣装の裾から凶悪なモノが覗いていた。いつもの彼のモノだってとても逞しいと思うが、その逞しいモノに細かな棘が幾つも備わっている。
「まっ…おまえ、それ…!」
猫耳尻尾に言葉が猫なのだと思っていた。まさかそこも猫になってるだなんて、思いつきもしなかった。