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    Mogmogsmaka

    ハマったものを軽率に書いていきたいです。現在は真Vのフィン主メイン。

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    Mogmogsmaka

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    けんさんよりリクエスト頂きました、「夏の日を共に過ごす」フィン主です。
    けんさん、リクエストありがとうございました!!

    #フィン主
    finMaster

    夏の過ごし方清々しいほどの晴天。高く積まれた雲。焼け付く日差しに、熱せられたコンクリートを撫でる風は最早熱風だ。
    「暑い…」
    じりじりという効果音が似合う真夏の帰路を学校指定のローファーで踏みならし歩く。品川駅まで来れば構内は多少は涼しいが、どの時間帯でも相変わらず人気が多く視界は暑苦しい。
    明日から夏休みに入る。
    特に部活動に所属していない少年にとって夏休みは読書に集中できる期間で、それまでに書店に寄りめぼしい本を幾つか見つけて購入をしていた。空調の効いた部屋で、ちょっと良い紅茶なんて淹れてする読書は格別である。
    寮に着くと先に帰っていた生徒達がこぞって出かけるのを目にした。海に行こうだとか、キャンプしに行こうだとかアクティブな言葉にインドア派の少年はちょっとした目眩を覚えた。それが悪いとは言わない。ただこの暑さの中で元気なものだと同じ高校生ながら感心したまでだ。
    「お帰りなさい、我が王」
    自室の扉を開き玄関でローファーを脱いでいると、短い廊下の奥の部屋に待機していた従者…フィンの出迎えがあった。他の仲魔達は皆ダァトの養成の集落にいる。彼だけは護衛の為に少年の元に留まっているのだ。
    「ただいまあ…あつ…」
    学園指定の鞄を備え付けのソファに置くと、冷蔵庫から作り置いておいたアイスティーのボトルを取り出し、グラスを二つ手にして彼の元へ向かう。テーブルに置いたグラスにアイスティーを注ぐと一つをフィンに差し出しソファへと座る。彼も少年の前に座ると、礼儀よく「頂きます」と言ってグラスに口を付ける。
    「…ねえフィン、暑くないの」
    従者である彼は基本的に装備を解かない。今も兜と鎧は外しているもののマントと剣を携え騎士然としている彼に言った。
    「万が一に備えて剣は外せないが…そうだな、此処は涼しいから」
    「まあ空調効かせてるからね。外、凄いよ。目玉焼き焼けそう」
    うんざりと外の様子を話す少年に、フィンは長い睫を揺らした。
    「そんなにか?」
    「そんなにだよ、日本じゃこれが最早普通」
    不思議そうに訊いてくるフィンに答えた。猛暑日、酷暑、なんて呼ばれる夏の日。空調無しでは過ごすことが難しいほど、日本の夏は湿度も温度も高く過ごし辛い。だからこそ少年は外へと遊びに行く生徒達に感心してしまうわけだが。
    話す内に喉が渇き、アイスティーを一気に飲み干しておかわりを注ぐ。たっぷりとあった液体が呆気なく減っていくのに、今度はピーチティーで作ろうかな、とぼんやり考える。
    「フィンの国は暑くないのか?」
    「ん、そうだな。少なくとも日差しで料理はできないな」
    フィンもグラスに残った最後の一口を飲み干す。
    「休日は良く狩りや遠乗りに出かけたものだったが」
    「流石狩猟集団」
    やはり国も、生きてきた世界も違うのだと改めて認識した。彼の故郷であるエリン…現アイルランドの夏場の気候も朝は肌寒いほどなのだと以前調べて知った。
    「お前さんの国では、夏場はどう過ごすんだ?」
    「どう…」
    縄印学園に入学してからは実家から離れて寮生活を送っていたし、それほど親しい友人も居なかったので夏場や冬場など極端な気候の季節は専ら部屋に閉じこもり趣味である読書に集中していた。
    日本の夏らしい過ごし方なんて、ここ数年全くしていなかった事実に気付く。
    ふと窓の外を見れば、絵に描いたような夏空。蝉の声が響いていて、はしゃぐ学生の声も遠くに響いている。正に夏の景色。
    「…体験してみる?」
    フィンとなら、久方ぶりに夏を満喫しても良いかと思えた。


    「悪魔だから関係ないだろうけど、フィン白いから」
    と、同じく肌の白い自分に使っていた日焼け止めクリームをたっぷりとフィンの肌に塗り込んだ。服は自分の物では入らないからユヅルに見繕って貰って見合うものを貸して貰った。いつもの装束を脱いだ、現代の衣服を身に纏うフィンは元々の見た目の格好良さも相まってまるで雑誌に出てくるモデルのようだ。
    『長官もそうだけど、力ある悪魔は視認されるからであって…体験させてあげるってだけで、一緒に遊ぼうとか思ってないから…!』
    と頭の中で自分への言い訳を言い聞かせながらも楽しみに胸が高まっていく。火照る頬をそのままにサコッシュにスマホや財布を入れると、不思議そうにテーラードジャケットの裾を引っ張っているフィンに声を掛けた。
    「さ、行こう」
    「ああ」
    手を取り部屋を後にした。廊下から階段を使い一階へ。寮母さんに挨拶をして寮の入り口を出れば分かってはいたが、むわりと心地悪い熱気と湿度が上がっている。普段ならうんざりする感触に、それでも足取りが軽いのはきっと隣にフィンが居るからなのだろう。他愛もない会話をしながらあっという間に品川駅に着いた。本当は悪魔だが見た目は白人の成人男性の為、切符を一枚購入し自分はICカードを翳してホームを潜る。先程出かけると決めて咄嗟に調べた目的地は、本日夏祭りがあるという海辺の神社。フィンが初めて乗る電車でも吊革を掴みしっかりと脚を踏ん張り転げないのは、流石体幹が出来ているなあと感心してしまう。
    電車はどんどん都心部から離れ、それにつれて乗客が少なくなってくる。空いた座席に座り、流れる景色を眺めるだけでも不思議と楽しかった。
    「到着、っと」
    人気の少ない駅に降り立つ。見れば、今日を夏祭りの日と知っているのだろう、浴衣を着た人がちらほらと見えた。地図アプリを立ち上げ、フィンの手を取って目的地を目指す。
    「凄い人だな、宴会でもあるのか?」
    参道に並ぶ露店。行き交う人の波を見て目を丸くしたフィンが言った。
    「うーん、お祭りだから此処に祀られてる神様に感謝する儀式…かな?日本だと夏の風物詩の一つみたいなものだ」
    「成る程」
    祭に来るなど、親元で暮らしていた中学生以来ぶりであった。人の波と様々な屋台の並ぶ景色、遠くで聞こえる祭り囃の音に胸が高鳴る。少年は数年間忘れていた夏の空気を感じ取っていた。祭りを楽しむ人波の中に二人も混じっていく。
    「お前さんの世界の祭りってのは不思議だな。ルグナサとは随分雰囲気が違う」
    「まあ儀式って言っても名前ばっかりで、基本は楽しむためのものだからな」
    辺りに漂う独特の熱気と、屋台の少しチープな食欲を誘う匂い。フィンならば何を食べるだろうか、と考えて少年はりんご飴の露店の前に立ち止まった。真っ赤で艶やかな飴は屋台ならではのものだ。手際よく煮詰めた飴をりんごに纏わせている店主と思わしき男性の隣で店番をしている女性に小さいものを二つ頼むと代金を渡して飴を二つ受け取り、一つをフィンに手渡した。
    「はいどうぞ。林檎のお菓子だよ」
    「へぇ」
    手渡されたりんご飴を不思議そうに眺めているフィンの前で一口囓る。砂糖が煮詰まったまったりとした甘さと林檎の酸っぱさが程良く交わる。チープであるが祭りの雰囲気と相まってとても美味しく感じられた。その様子を見たフィンも、少年に倣い飴を囓った。
    「…ん、美味いな」
    「だろ?こういったお菓子や食べ物なんかを売ってるんだ。娯楽もあるけど」
    「ほう、中々面白そうだ」
    『…あ』
    フィンの瞳がきらきらと輝き出す。それを見て、少年の胸も高まった。祭りに来ていたときは自分もこんな顔をしていたのだろうと、懐かしさと楽しさを思い起こす。食べ終えたりんご飴の棒をゴミ箱に捨てて、二人は歩き出した。
    色々な露店を見て回り、綿飴を買ってみたり、かき氷を食べたり、型抜きをしてみたり、金魚すくいをやってみたり。
    特に金魚すくいではフィンの持ち前の狩猟スキルが遺憾なく発揮され、「これは全部捕っても良いのか?」というとんでもない言葉と共に実際ポイが破れるまでに器いっぱいの金魚を捕らえ、そのあまりの見事なポイ捌きに人集りが出来てしまう程であった。流石に店主から待ったと言う名の降参が入り、最終的には捕ったものの中から選んだ黒出目金二匹と小赤八匹袋に入れて持たされた。するとフィンはそれを、隣で一匹も掬えずにいた少年に手渡したのだ。
    「君に育てて貰いたがっているから」
    と、優しい笑みと共に手渡せば、涙目だった少年は笑顔でフィンに礼を述べ袋の中に浮かぶ金魚を嬉しそうに眺めていた。同じく礼を述べる両親と手を振り去っていく少年の様子を見守るフィンに見惚れるうら若き乙女が沢山居たことに、少年は気付いていた。気付きながら『俺のフィンは格好良いだろう』と鼻高くなっていたのは胸の内に仕舞っておく。
    あれはこれはと様々な屋台を巡り、楽しんでいると時間はあっという間に流れて日が落ちていく。紫と朱の幻想的な空が映り始め灯籠に灯が灯ると、人の流れが徐々に海辺へと移り始めた。これまた不思議そうに目で追うフィンに告げる。
    「花火があるんだ」
    調べて、それがあったからわざわざ都心から離れたこの場所に来たのだ。今は配布されていた祭りの団扇を扇ぐフィンの手を引いて、二人も人の流れに乗った。向かう先は会場となっている浜辺。着けばそれなりに人がいた。花火師が準備を行っている場所から少し離れた草の茂る斜面に寄り添って座る。
    「何が始まるんだ?」
    「日本の夏の景色、だよ」
    歩道の街灯の合間に吊されている祭りの提灯にも灯が灯る。一番星がどれか分からなくなる程星が出て、空が濃藍に染まっていく。スマートフォンの時計が20時を示すと、途端に大きな音が鳴り響いた。
    「ッわ、て、敵か!?」
    直ぐ近くで体を揺さぶるほどに響く音で、フィンは咄嗟に愛剣を顕現させると柄を握った。
    「あはは、違うよ。空見て」
    ある種想像通りの反応に思わず笑いながら空を指さし示すと、丁度良く破裂音をさせながら夜空に一輪の花火が咲いた。構えをとったまま、フィンは驚きに瞳を瞬かせてそれを見つめる。そのうちに次々と花火が上がり始め、軽快な音楽が鳴り響いていた。一つ上がる度に周りからは歓声と拍手が上がり、フィンは遂に愛剣を仕舞った。
    「凄いな…光の花か」
    色とりどりの花火が上がる。
    「…綺麗…」
    花火を見るのも久しぶりだった。こんなにも綺麗なものだったかと、感嘆の声が出る。フィンの一言から思いついて夏祭りに来てみたが、思い返すととても楽しく、親元を離れて久しく忘れていた夏の過ごし方を思い出せた。
    「俺ね、こうして夏の日を過ごすの、久しぶりだったんだ」
    少年が小さく呟いた。フィンが視線を少年へと向ければ、その端正な横顔は花火の光に照らされ、瞳が輝いているのが見える。
    「忘れてた、夏ってこうだったんだって」
    「そうか」
    フィンは微笑むと視線を夜空へと戻す。主従二人で寄り添って次々に打ち上がる花火を眺める。様々な色に照らされている内にフィンの手がそっと伸びて草の上に置かれた少年の手を握った。触れるその手を握り返して、そっと視線を交じり合わせる。互いの姿が様々な色に照らされている。
    「有り難う。お前さんの世界の夏を過ごせて楽しかった」
    鳴り響く音の中でも、はっきりと声が聞こえた。
    「俺の方こそ、久しぶりの祭りをフィンと過ごせて楽しかった」
    周りの人々が花火に視線を奪われている中で、フィンと少年の距離が知らず近くなる。指を絡めて、鼻先を触れ合わせる。密やかな触れ合いは誰にも気付かれてはいなかった。
    「来年の夏も一緒に楽しみたいな」
    「来年と言わずとも、季節が巡る限り共に過ごそう」
    「…うん」
    一際大きな音が鳴り響いた。人々が放たれた軌道を追い、歓声を上げて夜空に咲く大輪の花を見上げる最中。
    少年とフィンは誓いの口付けを交わした。
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