死が二人を別つまで 古く薄暗い社。
外は昼で晴れだと言うのに、中に光はほぼ入って来ない。一歩足を進めればそれだけで埃の匂いが強くなり、長く人の訪れる事がなかったのだと解る。
——今日、俺は、この社に昔から住まう神の嫁になる。
「……神様」
口を開く。角隠しで上半分が隠れた視界には、誰の姿もない。
「故あって、あなたに嫁ぎに参りました。どうか、姿をお見せ下さい。そして、私の村を豊かにして下さい」
反応はない。それでも俺は、声を張り言葉を続ける。
「最早帰る家はありません。情けと思い、どうか私をお側に置いて下さい」
背を伸ばし堂々と、教えられた言葉を口にする。すると——辺りの空気が、急激に変わった。
「!!」
「……ったく。折角気持ち良く寝てたってのに」
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