酔いに任せて勢いでやけにひどい飲み方をしている客がいるものだ。
良守は注文を片手に、厨房で眉間にシワを寄せる。
この客は入店から、度数の高い酒を種類問わず飲み明かしている。良守はフードやドリンクを作っているだけなので、この客が何歳で何人でこの量を消費しているのかはわからない。だが、これはあまり褒められた飲み方ではない。というのは、このアルバイトを始めてからの経験で簡単に理解できた。
時計を見れば、そろそろ終電が無くなる時間帯だ。
杞憂であればいいが。
つい、ため息が溢れる。
「墨村さん、このドリンクもう持って行っていいですか?」
ウェイターに声をかけられて、良守は「あぁ、ちょっと待って」と手際よくグラスに氷水を入れて盆に乗せる。
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