十二月九日(2024)師走。町行く人はマスク姿が多くなり、バイト先の先輩女性が子供が熱で……と休みを取るのを快くシフト交代して、自分も喉がこそばゆい気がしてうがいをする。
目の端に見えたカレンダーは12/5。あと4日、どうにも風邪を引くわけにはいかないのだとスズランは気を引き締めて給湯室から出た。
「あ〜斎藤くん、ごめんね今日出てもらって。助かるよ」
「あ、いいえ。空いててよかったです」
「やっぱ季節柄体調不良が多いよねー気をつけようね」
「ですねえ」
就職先の決まっている三期生のスズランにとって、大学で募集の出ていた整形外科クリニック補助のバイトは社会経験を培うのにちょうどよく、広い年代と関わる中で生来の愛想の良さから患者ともスタッフともうまくやっていた。
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