程よく都市部から離れた最寄駅は、帰り道に田園も見られる長閑なところである。駅から自転車で10分、コンビニの灯りに寄りつく蛾を横目に帰路を急ぐ。6月になったばかりだというのにむしむしと汗ばむ気温は、日が沈んでも下がる気配がなく湿気で髪が張り付いた。
(それでも川や田んぼがあるだけ夜風は涼しいかなぁ……蛙の声すっごいけど)
大合唱する蛙の声の中自転車を走らせる。
(にしても本当暑すぎるよね。あの頃は夏って言っても朝晩はスッキリ冷えたし、打ち水したりたらいの水に足を浸せば快適だったような…ここ200年くらいでひどい温暖化よ〜〜)
記憶を手繰り寄せて嘆く彼には、何故か江戸の末期、歴史で習うまでもなくエンタメでも取り上げられる不朽のテーマ『新撰組』——その一員として生きていた時の記憶がある。
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